報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「事情聴取」

2024-01-20 21:26:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日21時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 この家の全ての窓にはシャッターが付いている。
 昭和時代に建てられた家なら雨戸があるだろうし、平成時代以降に建てられた家ならシャッターだろう。
 だが、普通は窓の外側にあるものだ。
 しかし、この建物のシャッターは何故か窓の内側にあった。
 後付けなのだろうかと首を傾げていたが、いざシャッターを閉めてみて、その意図が分かった。
 そもそもが、この建物の窓ガラスは全て防犯性を高めた防弾ガラスである。
 にも関わらず、窓の外側にシャッターがあるのなら、せっかくのガラス窓を開けて開閉作業をしなくてはならない。
 その際、外敵に襲われる恐れがある。
 それで、窓を開けずに開閉作業ができるよう、シャッターを内側に付けたのだ。

 愛原「これで少しは凌げるだろう」
 リサ「ゾンビはこれで防げるだろうけど、私みたいなヤツだったら、簡単にこじ開けちゃうよ?」
 愛原「分かってる。リサも見ただろ?蓮華のヤツ、漬物石みたいな大きな石や岩をカタパルトの如く投げて攻撃してくるんだぞ。こんなシャッターでも、無いよりはマシさ」
 リサ「まあ、そうだけど……」
 パール「先生!1階に、善場主任が到着されました!」
 愛原「よし、俺が行く!」

 私は階段を駆け下りた。
 そして、同じく強化ガラスの玄関扉を開ける。
 防弾ガラスだが、外側からはこちらが見えないように、スモークフィルムが貼られている。
 曇りガラスにしてしまうと強度が落ちてしまう為、自動車に貼られているものと同じ、外側からは中が見えないスモークフィルムが貼られているのだ。
 なので、善場主任からは私が見えないだろうが、私の方からは見える。
 ドアスコープ要らずだ。

 愛原「善場主任、お疲れ様です」
 善場「こんな夜分に恐れ入れます」
 愛原「善場主任こそ、お休みだったでしょうに、大変ですね」
 善場「仕方がありません。私もエージェントの端くれですから」

 善場主任、自ら政府機関のエージェントだと認めている。
 私はガレージのシャッターを開けて、善場主任達が乗って来た車を入れてあげた。
 いつもなら運転手役の部下が1人いるだけだが、今は他にも黒スーツ姿の男達が車から降りている。

 愛原「シャッター閉めますか?」
 善場「お願いします。あなた達はここで待ってて」
 部下A「はっ!」
 部下B「承知しました」

 私と善場主任はエレベーターに乗って、事務所のある2階に向かった。

 愛原「これです。この手紙です」

 そして、リサから回収した手紙を善場主任に見せた。

 善場「拝見します」

 主任は手袋をはめると、封筒を確認した。

 善場「リサ宛てですね」
 愛原「はい。『果たし状』とあります。中には写真と手紙が入っています」

 主任はそれも確認した。

 善場「嬉々として人食いを報告するとは、救い難いですね」
 愛原「人食い鬼を憎む少女が、憎まれる側になってしまいましたね……」
 善場「この手紙を見つけた時の状況を教えてください」
 愛原「はい」

 私はその時の状況を話した。

 愛原「……というわけで、本人自らこの手紙を投函してきた可能性が高いです。警戒の為に一応、この家の窓のシャッター全てを閉鎖しています」
 善場「良い判断です。手紙には、決闘を行う日時や場所が記されていませんね」
 愛原「そうなんです。だから、彼女がいつ襲って来るか分からないんですよ」
 善場「手紙の内容から推測するに、彼女が雪辱を味わった藤野かもしれませんね」
 愛原「藤野ですか」
 善場「はい。つまり今度の春休み、藤野に行った時が警戒だということです。BSAAに連絡して、警戒を強化してもらおうと思います」
 愛原「それは助かります」
 善場「ん?」
 愛原「どうしました?」
 善場「この写真、裏にフィルムが貼られているようです」
 愛原「えっ?それは気づきませんでした」
 善場「ちょっと剥がしてみます」

 主任は写真の裏に張られているフィルムを剥がした。
 すると、その下には赤い字でこう書かれていた。

 愛原「『愛原先生も鬼にならない?』だって!?」
 善場「なるほど。栗原蓮華は、愛原所長を仲間に引き入れようとしているみたいですね」
 愛原「人間を辞めたくありませんよ」
 善場「当然です」
 愛原「リサにも、『いっそのこと、先生がBOWになれば一緒になれるじゃん!』と言われましたし」
 善場「後で説教しておきます」
 愛原「上野利恵からも、『愛原先生が鬼になってくれれば、どんなに幸せなことか』と求愛されましたし……」
 善場「後で警告文を送付しておきます」
 愛原「その娘達からは、『先生が鬼化して、私達のお父さんになってください』と言われたこともあります」
 善場「同じく警告文を送付しておきます。……というか愛原所長は、BOWにモテますね」
 愛原「人間にはモテず、未婚のままアラフォーを迎えました」
 善場「り、リサが早く人間に戻れるといいですね」
 愛原「明日から私達はどうしたら良いでしょう?明日は午後……夕方前には2泊3日で仙台方面に行く予定なんですよ」
 善場「それは予定通りに行って頂いて構いません。むしろ、ここから離れた方が良いかもしれませんね」
 愛原「やはりそうですか」
 善場「ここで決闘したらどうなるかは栗原蓮華も分かっているでしょうが、油断はできないと思っています」
 愛原「分かりました」
 善場「一応、明日以降の予定を教えて頂けますか?」
 愛原「そう来ると思いまして、行程表を先ほど作成しました。こちらです」
 善場「ありがとうございます。さすがは愛原所長は用意が宜しいですね」
 愛原「恐れ入ります」

 あとは栗原蓮華がどのタイミングでこの手紙を郵便受けに投函したのかであるが、あいにくとガレージのシャッターは閉まっていた為、ガレージの外は防犯カメラには映っていない。
 だが、近所のスーパーやマンションの駐車場にはカメラが仕掛けられているようで、それで解析したいとのことだった。
 とはいえ、今日はもう夜だから、明日以降になるだろう。

 善場「明日の出発前までは戸締りをきちんとして、なるべくアポ無しの来訪者は受け入れないことをオススメします」
 愛原「はい。そうさせて頂きます」

 善場主任らが帰ったのは、22時台になってからだった。
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“私立探偵 愛原学” 「手紙」

2024-01-20 14:51:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日20時17分 東京都中央区築地 築地駅前バス停→都営バス錦11系統車内]

 レイチェルを築地駅で見送った後、私達はこの駅前から出る都営バスに乗り込んだ。
 往路と同じバス路線で、菊川まで来た道を戻る感じである。
 つまりは、前に住んでいたマンションと旧・事務所の前を通るというわけだ。
 今度は進行方向左側にあるので、往路よりも確認しやすいはずだ。
 外が確認しやすいよう、後ろを確保する。
 今度は2人席に座った。
 1番後ろの座席よりも狭いが、リサ的には私と密着できるから嬉しいようだ。
 お腹が一杯になり、食欲は満たされたからか、リサは今度は私の腕と自分の腕を絡めて寄り掛かっている。
 この路線は都営バスの中では比較的本数が少ない為、あまり利用者は多くない。
 発車時刻になっても、席が全て埋まるということはなかった。

〔「20時17分発、浜町中の橋、森下駅前、菊川駅前経由、錦糸町駅前行き発車致します」〕

 折り戸式の前扉が閉まる。

〔発車致します。お掴まり下さい〕

 バスは定刻通りに築地駅前停留所を発車した。
 ルート的には、都道50号線(新大橋通り)をしばらく進むことになる。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは新富町、浜町中の橋経由、錦糸町駅前行きでございます。次は築地二丁目、築地二丁目でございます。中央区役所、築地警察署はこちらです。警備会社の全日警、東京中央支社へおいでの方は、菊川一丁目でお降りになると便利です。次は、築地二丁目でございます〕

 バスは夜の都道を走行する。

 高橋「先生、本当に料金とか大丈夫っスか?随分高かったみたいっスけど……」
 愛原「殆どが、栗原家からもらった商品券で支払ってるからね。こっちが自腹なのは、交通費くらいのもんだ。京成スカイライナーは成田エクスプレスよりも安いし、戻りは快速だし、快速のグリーン料金は特急のそれよりも安いから、そんなに経費は掛かってないんだよ」
 高橋「そういうことっスか」

 狡賢い考えだが、今後、栗原家はお家取り潰しになる可能性が高い。
 支払い能力が無くなる前に、頂いた物は使っちゃおうという魂胆だ。

 愛原「リサ、明日は学校は早めに終わるのか?」
 リサ「その予定。わたしが赤点取らなかったらね」
 愛原「赤点を取らないことを願うよ」
 高橋「取ったら、お前だけ置いてけぼりだw」
 リサ「そうならないようにするよ」

 リサは肩を竦めた。

 愛原「まあまあ。夕食は母さんが鍋でも用意してくれてることになってるから」
 リサ「鍋!?すき焼き!?」
 愛原「かもしれんな」
 リサ「よっし!」
 高橋「さっき、あんだけ魚食ったのによォ……」
 リサ「今度は肉だよ!」
 愛原「そ、そうだな」

[同日20時33分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス錦11系統車内]

 バスは前のマンションの最寄りのバス停で、乗降を取り扱った。

〔発車致します。お掴まり下さい〕

 ここからでもマンションは見える。
 工事用の仮囲いがされており、通り側からマンションを見ることはできない。

〔ピンポーン♪。次は菊川駅前、菊川駅前でございます。都営バス、とうきょうスカイツリー駅前方面、豊洲駅前、新橋方面と都営地下鉄新宿線をご利用のお客様は、お乗り換えです。次は、菊川駅前でございます〕

 リサが降車ボタンを押した。

〔次、止まります。お降りの際はバスが停車してから、席をお立ちください〕

 事務所が入っていたビルの前を通過する。
 一瞬だけだったが、私の事務所が入居していた5階はまだ空室になっているようで、『テナント募集』の貼り紙がしてあった。
 あの騒ぎでは、借り手が付かないのかもしれない。
 今の事務所だって、前は設備工事会社が入居していたらしいが、その前はどうも暴力団の組事務所だったという噂があり、それで入居しやすかったというのはある。

 愛原「なるほど。やっぱり俺達がいた影響はあったわけか……」
 高橋「いや、それは無いですよ、先生。考え過ぎですって」
 愛原「うーん……」

 しばらくして、バスが菊川駅前のバス停に到着する。
 私達は席を立つと、中扉から降りた。

 愛原「うっ、冷えるなぁ」
 リサ「寒い?わたしが温めてあげる」

 リサはガシッと私の左腕に絡みついて来た。
 リサのようなBOWは、概して体温が高い。

 愛原「ありがとう。温かいよ」

 バスを降りたら、菊川駅前交差点の横断歩道を渡る。

 愛原「帰ったら、明日に備えて……」

[同日20時45分 天候:晴 同区菊川2丁目 愛原家]

 無事に事務所兼自宅に帰宅する。
 郵便受けを開けると、郵便物やチラシなどが入っている。
 祝日は普通郵便は配達されないはずだが、何か入っているということは、速達か何かだろうか?

 愛原「『愛原リサ殿へ。果たし状』……果たし状!?」
 リサ「!?」
 高橋「ケンカの申し込みっスか!?」
 愛原「らしいな」

 家の中に入る。
 リサも学校では『魔王軍』の『魔王』をやっているものだから、特異菌や寄生虫の非感染者や非寄生者を中心に敵がいるらしい。
 何としてでも、再びブルマを廃止させようという動きとか。

 パール「すぐにコーヒーお淹れしますね」
 愛原「悪いな」

 手紙は郵便で届いたわけではなく、直接投函されたようだ。
 リサに渡すと、リサは早速中を開けた。

 リサ「これは……!」
 愛原「どうした?」
 リサ「栗原蓮華からだ!」
 愛原「なにっ!?」

 手紙と一緒に写真も入っていた。
 それは鬼姿の栗原蓮華が人間を襲った後に撮った写真のようだ。
 返り血を浴びても尚不敵な笑みを浮かべ、しかもその両手には人間の首を髪を掴んで持っている。

 愛原「う……」
 高橋「エッグ……!」
 パール「これは……ヤってますね」

 手紙には『人食いをしていないリサよりも、多くの人を食った自分の方が強いはずだ。藤野での雪辱を果たすから、首を洗って待っていろ』のようなことが書かれていた。
 BOW化すると人間だった頃の記憶は失われるというが、どうも特異菌とかの場合は、そこまで記憶が無くなるというわけでもないらしい。
 確かにリサ、藤野で人間だった頃の栗原蓮華と戦って勝ったことがある。
 どうやらその時の悔しさが、鬼になっても尚残っているらしい。
 『鬼同士の戦いなんて不毛なことは分かっているけど、これだけは譲れない』ともあった。

 高橋「せ、先生!昨日の新聞っスけど、群馬の山道で事故った車に乗ってた人達、首が無くなってるって書いてありますよ!?」
 愛原「それか!」

 しかし、手紙は直接投函されている。
 ということは……。

 愛原「気をつけろ!多分あいつ、直接ここに来て手紙を入れて行ったんだ!」
 高橋「ま、マジっスか!?」
 リサ「フザケやがって!わたしが返り討ちにしてやる!」

 リサもまた一気に鬼化した。

 愛原「待て待て!ここで戦ったら大騒ぎになる。多分、蓮華もそのことは知っているはずだ。今は襲ってこないだろう。もっとも、どこか遠くからこの家を見張るくらいのことはしそうだがな。とにかく、俺は善場主任に連絡する。お前達は窓のシャッターを全部閉めてくれ」
 高橋「分かりました!」

 元々は暴力団組事務所だった建物ということもあってか、窓ガラスは全て強化ガラスかつ防弾仕様。
 全ての窓にはシャッターが付いている。
 鉄格子は、いざという時の脱出用としてか、それは付けられていなかった。

 リサ「わたし、ちょっと屋上に出て、様子を見て来る」
 愛原「分かった。無理はするなよ。本当はBSAAが退治する奴だから」
 リサ「分かってるよ」
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