[2月23日21時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]
この家の全ての窓にはシャッターが付いている。
昭和時代に建てられた家なら雨戸があるだろうし、平成時代以降に建てられた家ならシャッターだろう。
だが、普通は窓の外側にあるものだ。
しかし、この建物のシャッターは何故か窓の内側にあった。
後付けなのだろうかと首を傾げていたが、いざシャッターを閉めてみて、その意図が分かった。
そもそもが、この建物の窓ガラスは全て防犯性を高めた防弾ガラスである。
にも関わらず、窓の外側にシャッターがあるのなら、せっかくのガラス窓を開けて開閉作業をしなくてはならない。
その際、外敵に襲われる恐れがある。
それで、窓を開けずに開閉作業ができるよう、シャッターを内側に付けたのだ。
愛原「これで少しは凌げるだろう」
リサ「ゾンビはこれで防げるだろうけど、私みたいなヤツだったら、簡単にこじ開けちゃうよ?」
愛原「分かってる。リサも見ただろ?蓮華のヤツ、漬物石みたいな大きな石や岩をカタパルトの如く投げて攻撃してくるんだぞ。こんなシャッターでも、無いよりはマシさ」
リサ「まあ、そうだけど……」
パール「先生!1階に、善場主任が到着されました!」
愛原「よし、俺が行く!」
私は階段を駆け下りた。
そして、同じく強化ガラスの玄関扉を開ける。
防弾ガラスだが、外側からはこちらが見えないように、スモークフィルムが貼られている。
曇りガラスにしてしまうと強度が落ちてしまう為、自動車に貼られているものと同じ、外側からは中が見えないスモークフィルムが貼られているのだ。
なので、善場主任からは私が見えないだろうが、私の方からは見える。
ドアスコープ要らずだ。
愛原「善場主任、お疲れ様です」
善場「こんな夜分に恐れ入れます」
愛原「善場主任こそ、お休みだったでしょうに、大変ですね」
善場「仕方がありません。私もエージェントの端くれですから」
善場主任、自ら政府機関のエージェントだと認めている。
私はガレージのシャッターを開けて、善場主任達が乗って来た車を入れてあげた。
いつもなら運転手役の部下が1人いるだけだが、今は他にも黒スーツ姿の男達が車から降りている。
愛原「シャッター閉めますか?」
善場「お願いします。あなた達はここで待ってて」
部下A「はっ!」
部下B「承知しました」
私と善場主任はエレベーターに乗って、事務所のある2階に向かった。
愛原「これです。この手紙です」
そして、リサから回収した手紙を善場主任に見せた。
善場「拝見します」
主任は手袋をはめると、封筒を確認した。
善場「リサ宛てですね」
愛原「はい。『果たし状』とあります。中には写真と手紙が入っています」
主任はそれも確認した。
善場「嬉々として人食いを報告するとは、救い難いですね」
愛原「人食い鬼を憎む少女が、憎まれる側になってしまいましたね……」
善場「この手紙を見つけた時の状況を教えてください」
愛原「はい」
私はその時の状況を話した。
愛原「……というわけで、本人自らこの手紙を投函してきた可能性が高いです。警戒の為に一応、この家の窓のシャッター全てを閉鎖しています」
善場「良い判断です。手紙には、決闘を行う日時や場所が記されていませんね」
愛原「そうなんです。だから、彼女がいつ襲って来るか分からないんですよ」
善場「手紙の内容から推測するに、彼女が雪辱を味わった藤野かもしれませんね」
愛原「藤野ですか」
善場「はい。つまり今度の春休み、藤野に行った時が警戒だということです。BSAAに連絡して、警戒を強化してもらおうと思います」
愛原「それは助かります」
善場「ん?」
愛原「どうしました?」
善場「この写真、裏にフィルムが貼られているようです」
愛原「えっ?それは気づきませんでした」
善場「ちょっと剥がしてみます」
主任は写真の裏に張られているフィルムを剥がした。
すると、その下には赤い字でこう書かれていた。
愛原「『愛原先生も鬼にならない?』だって!?」
善場「なるほど。栗原蓮華は、愛原所長を仲間に引き入れようとしているみたいですね」
愛原「人間を辞めたくありませんよ」
善場「当然です」
愛原「リサにも、『いっそのこと、先生がBOWになれば一緒になれるじゃん!』と言われましたし」
善場「後で説教しておきます」
愛原「上野利恵からも、『愛原先生が鬼になってくれれば、どんなに幸せなことか』と求愛されましたし……」
善場「後で警告文を送付しておきます」
愛原「その娘達からは、『先生が鬼化して、私達のお父さんになってください』と言われたこともあります」
善場「同じく警告文を送付しておきます。……というか愛原所長は、BOWにモテますね」
愛原「人間にはモテず、未婚のままアラフォーを迎えました」
善場「り、リサが早く人間に戻れるといいですね」
愛原「明日から私達はどうしたら良いでしょう?明日は午後……夕方前には2泊3日で仙台方面に行く予定なんですよ」
善場「それは予定通りに行って頂いて構いません。むしろ、ここから離れた方が良いかもしれませんね」
愛原「やはりそうですか」
善場「ここで決闘したらどうなるかは栗原蓮華も分かっているでしょうが、油断はできないと思っています」
愛原「分かりました」
善場「一応、明日以降の予定を教えて頂けますか?」
愛原「そう来ると思いまして、行程表を先ほど作成しました。こちらです」
善場「ありがとうございます。さすがは愛原所長は用意が宜しいですね」
愛原「恐れ入ります」
あとは栗原蓮華がどのタイミングでこの手紙を郵便受けに投函したのかであるが、あいにくとガレージのシャッターは閉まっていた為、ガレージの外は防犯カメラには映っていない。
だが、近所のスーパーやマンションの駐車場にはカメラが仕掛けられているようで、それで解析したいとのことだった。
とはいえ、今日はもう夜だから、明日以降になるだろう。
善場「明日の出発前までは戸締りをきちんとして、なるべくアポ無しの来訪者は受け入れないことをオススメします」
愛原「はい。そうさせて頂きます」
善場主任らが帰ったのは、22時台になってからだった。
この家の全ての窓にはシャッターが付いている。
昭和時代に建てられた家なら雨戸があるだろうし、平成時代以降に建てられた家ならシャッターだろう。
だが、普通は窓の外側にあるものだ。
しかし、この建物のシャッターは何故か窓の内側にあった。
後付けなのだろうかと首を傾げていたが、いざシャッターを閉めてみて、その意図が分かった。
そもそもが、この建物の窓ガラスは全て防犯性を高めた防弾ガラスである。
にも関わらず、窓の外側にシャッターがあるのなら、せっかくのガラス窓を開けて開閉作業をしなくてはならない。
その際、外敵に襲われる恐れがある。
それで、窓を開けずに開閉作業ができるよう、シャッターを内側に付けたのだ。
愛原「これで少しは凌げるだろう」
リサ「ゾンビはこれで防げるだろうけど、私みたいなヤツだったら、簡単にこじ開けちゃうよ?」
愛原「分かってる。リサも見ただろ?蓮華のヤツ、漬物石みたいな大きな石や岩をカタパルトの如く投げて攻撃してくるんだぞ。こんなシャッターでも、無いよりはマシさ」
リサ「まあ、そうだけど……」
パール「先生!1階に、善場主任が到着されました!」
愛原「よし、俺が行く!」
私は階段を駆け下りた。
そして、同じく強化ガラスの玄関扉を開ける。
防弾ガラスだが、外側からはこちらが見えないように、スモークフィルムが貼られている。
曇りガラスにしてしまうと強度が落ちてしまう為、自動車に貼られているものと同じ、外側からは中が見えないスモークフィルムが貼られているのだ。
なので、善場主任からは私が見えないだろうが、私の方からは見える。
ドアスコープ要らずだ。
愛原「善場主任、お疲れ様です」
善場「こんな夜分に恐れ入れます」
愛原「善場主任こそ、お休みだったでしょうに、大変ですね」
善場「仕方がありません。私もエージェントの端くれですから」
善場主任、自ら政府機関のエージェントだと認めている。
私はガレージのシャッターを開けて、善場主任達が乗って来た車を入れてあげた。
いつもなら運転手役の部下が1人いるだけだが、今は他にも黒スーツ姿の男達が車から降りている。
愛原「シャッター閉めますか?」
善場「お願いします。あなた達はここで待ってて」
部下A「はっ!」
部下B「承知しました」
私と善場主任はエレベーターに乗って、事務所のある2階に向かった。
愛原「これです。この手紙です」
そして、リサから回収した手紙を善場主任に見せた。
善場「拝見します」
主任は手袋をはめると、封筒を確認した。
善場「リサ宛てですね」
愛原「はい。『果たし状』とあります。中には写真と手紙が入っています」
主任はそれも確認した。
善場「嬉々として人食いを報告するとは、救い難いですね」
愛原「人食い鬼を憎む少女が、憎まれる側になってしまいましたね……」
善場「この手紙を見つけた時の状況を教えてください」
愛原「はい」
私はその時の状況を話した。
愛原「……というわけで、本人自らこの手紙を投函してきた可能性が高いです。警戒の為に一応、この家の窓のシャッター全てを閉鎖しています」
善場「良い判断です。手紙には、決闘を行う日時や場所が記されていませんね」
愛原「そうなんです。だから、彼女がいつ襲って来るか分からないんですよ」
善場「手紙の内容から推測するに、彼女が雪辱を味わった藤野かもしれませんね」
愛原「藤野ですか」
善場「はい。つまり今度の春休み、藤野に行った時が警戒だということです。BSAAに連絡して、警戒を強化してもらおうと思います」
愛原「それは助かります」
善場「ん?」
愛原「どうしました?」
善場「この写真、裏にフィルムが貼られているようです」
愛原「えっ?それは気づきませんでした」
善場「ちょっと剥がしてみます」
主任は写真の裏に張られているフィルムを剥がした。
すると、その下には赤い字でこう書かれていた。
愛原「『愛原先生も鬼にならない?』だって!?」
善場「なるほど。栗原蓮華は、愛原所長を仲間に引き入れようとしているみたいですね」
愛原「人間を辞めたくありませんよ」
善場「当然です」
愛原「リサにも、『いっそのこと、先生がBOWになれば一緒になれるじゃん!』と言われましたし」
善場「後で説教しておきます」
愛原「上野利恵からも、『愛原先生が鬼になってくれれば、どんなに幸せなことか』と求愛されましたし……」
善場「後で警告文を送付しておきます」
愛原「その娘達からは、『先生が鬼化して、私達のお父さんになってください』と言われたこともあります」
善場「同じく警告文を送付しておきます。……というか愛原所長は、BOWにモテますね」
愛原「人間にはモテず、未婚のままアラフォーを迎えました」
善場「り、リサが早く人間に戻れるといいですね」
愛原「明日から私達はどうしたら良いでしょう?明日は午後……夕方前には2泊3日で仙台方面に行く予定なんですよ」
善場「それは予定通りに行って頂いて構いません。むしろ、ここから離れた方が良いかもしれませんね」
愛原「やはりそうですか」
善場「ここで決闘したらどうなるかは栗原蓮華も分かっているでしょうが、油断はできないと思っています」
愛原「分かりました」
善場「一応、明日以降の予定を教えて頂けますか?」
愛原「そう来ると思いまして、行程表を先ほど作成しました。こちらです」
善場「ありがとうございます。さすがは愛原所長は用意が宜しいですね」
愛原「恐れ入ります」
あとは栗原蓮華がどのタイミングでこの手紙を郵便受けに投函したのかであるが、あいにくとガレージのシャッターは閉まっていた為、ガレージの外は防犯カメラには映っていない。
だが、近所のスーパーやマンションの駐車場にはカメラが仕掛けられているようで、それで解析したいとのことだった。
とはいえ、今日はもう夜だから、明日以降になるだろう。
善場「明日の出発前までは戸締りをきちんとして、なるべくアポ無しの来訪者は受け入れないことをオススメします」
愛原「はい。そうさせて頂きます」
善場主任らが帰ったのは、22時台になってからだった。