報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夜の帰京」

2024-01-02 23:17:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月9日20時18分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東海道新幹線742A列車1号車内→JR東京駅]

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、東京、東京です。到着ホームは15番線、降り口は左側です。本日、お忘れ物が大変多くなっております。網棚、座席の上、網ポケットの中など、今一度よくお確かめください。携帯電話など、車内マナーへの御協力ありがとうございました。また、お降りの際、電車とホームの間が広く空いている所がございます。お足元にも、ご注意ください。本日も新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 品川駅を出た“こだま”742号は、今度は東海道線や山手線などと並走する。
 ここまで来たら、もう帰って来たという気になる。
 私は席を立ち、網棚に乗せていたコートを羽織った。
 そうしているうちに、列車がホームに入線する。
 14番線と15番線ホームは、16番線から19番線ホームと比べても、ホームが湾曲している。
 しかもよく見ると、東北新幹線などのJR東日本のホームと並行している。
 これはかつて国鉄時代に、東海道新幹線と東北新幹線の相互直通計画があった際、それ用ホームとして設計されたから……という噂があるが、これはガセ。
 実際は急増する東海道新幹線の列車本数に対応する為、国鉄時代に東北新幹線用のホームを融通してもらったからというのが実話である。
 まあ、旧国鉄時代でないとできないことだろう。
 旅客導線としてはそんなに違和感が無いように駅は改良されたが、バックヤード的には歪な箇所も存在する。
 これ以上は作者の警備機密に関わるので、お話しできない。

〔とうきょう、東京です。とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました〕

 列車からホームに降りると、私達は階段の方に向かって歩き出した。

 高橋「先生、ちょっと一服して行っていいですか?」

 高橋はホーム上の喫煙所を指さして言った。

 愛原「しょうがないな。じゃあ、俺は下のトイレに行ってるから、そこで落ち合おう」
 高橋「分かりました。ダッシュで行ってきます!」
 愛原「ああ」

 高橋はホーム上の喫煙所に小走りに向かい、私は下りエスカレーターに乗った。
 そして、スマホの画面を見る。
 実はさっき、リサからLINEが来ていたのだ。
 その内容は、『もう東京駅着いた?』であった。
 そこで私は今、着いたから、これからタクシーに乗って帰る旨を伝えた。

[同日20時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 東京駅からタクシーに乗り、それで事務所まで戻る。

 高橋「チケットでオナシャス」
 運転手「はい、ありがとうございます」
 愛原「お前も、こういうのに慣れてきたな」
 高橋「あざっす」

 チケットでの支払いは高橋に任せ、私は先にタクシーを降りた。
 すると、正面のガラス扉が内側から開けられる。

 リサ「お帰りィーっ!」

 そこからリサが飛び出してきた。
 真冬だというのに、上はパーカーだけ羽織り、その下は体操服とブルマであった。

 リサ「日帰りになってくれて嬉しい!」

 そう言ってリサが抱き着いてくる。

 愛原「日帰りになった理由が大変だったんだからな」

 私はそう言って、リサを引き剝がした。
 そうしているうちに、高橋もタクシーから降りて来る。

 高橋「先生。チケットの控えと領収証です」
 愛原「ああ、ありがとう」

 タクシーがドアを閉めて、走り去った。

 高橋「アプリの支払いができないタクシーでしたねぇ……」
 愛原「たまに、そういうのもあるさ。それより中に入ろう」
 リサ「寒かったでしょお?一緒にお風呂入ろ!」
 愛原「ええっ!?」
 高橋「くぉらっ!」
 リサ「夫婦が一緒にお風呂入って何が悪いの?」
 高橋「誰が夫婦だ!」
 愛原「悪いな、リサ。今日は先に1人で入っててくれ。これから、事務作業があるんだ」
 リサ「ええー……」

 リサは残念そうにした。

 愛原「これ、お土産。富士山サブレーな。おやつの時間の時にでも食べてくれ」
 リサ「わぁ!」
 愛原「じゃあ、報告書作成するから高橋も手伝ってくれ」
 高橋「了解っス!コーヒー淹れましょうか?」
 愛原「あー……じゃあ、お願いしようかな」
 リサ「わたしは?わたしは?」
 愛原「お前は学校に行く準備でもしてろ。もうすぐ学年末テストなんだろ?」
 リサ「うん。来週」
 愛原「来週かよ。勉強しないとマズいだろ」
 リサ「まあ、まだ明日、学校あるし」
 愛原「だったら……」
 リサ「お兄ちゃん、コーヒーはわたしが淹れるね!」
 高橋「なぁにぃ!?俺の仕事取るんじゃねぇ!」
 リサ「お兄ちゃんの分も淹れるから」
 高橋「な、なに!?」

 私は溜め息をついた。

 愛原「分かった分かった。じゃあ、コーヒー淹れはリサにお願いするから、コーヒー淹れたら寝るんだぞ」
 リサ「はーい」

 リサは紺色のブルマを穿いた尻をプルンプルン振るわせて答えた。

 高橋「先生、報告書って、どうしますか?」
 愛原「やっぱり、ガス爆発のせいで予定が狂ったわけだから、そこから書いた方がいいだろう。民宿の近くまで行くバスに乗ったところまでは、予定通りだったんだから」
 高橋「そうっスね」
 愛原「現場の写真……あ、そうだ!リサ、俺宛てに何か届いてなかったか?」
 リサ「いや、見てないねぇ……」
 高橋「俺、ちょっとポスト見てきます!」
 愛原「ああ、頼む」

 高橋は再び事務所を出ると、玄関の方に向かった。
 リサはネスカフェバリスタで、一杯ずつコーヒーを淹れている。

 リサ「はい、先生のコーヒー」
 愛原「ありがとう」
 リサ「先生、少しお酒の臭いがするね。飲んできたの?」
 愛原「ちょ、ちょっとだけな。あの後、水やお茶を飲んだけど、まだ臭うかな?」
 リサ「わたしはね。お兄ちゃんはどっちかっていうと、タバコ臭い」
 愛原「あー、まあ、そうか。まあ、今夜はもう飲まないから、明日までには抜けるだろう。早いとこリサも、高橋にコーヒー淹れてやれよ」
 リサ「分かった」

 リサが給湯室に行くとのと、高橋が戻って来るのは同時だった。

 高橋「先生!ありました!」
 愛原「本当にあったか!」

 茶封筒の中にあり、開けると、USBメモリーが入っていた。
 それをPCに接続すると、正に高野君が見せてくれた動画が保存されていた。

 愛原「あとはこれを明日、善場主任に渡すだけだな」
 高橋「アネゴに会ったことは内緒にするんスね?」
 愛原「一応な」
 リサ「高野さんに会ったの?」
 愛原「向こうでちょっとな。重要な情報を手に入れたんだ。一応、高野君に会ったことは、善場主任には内緒な?」
 リサ「分かったよ。はい、コーヒー」
 高橋「おう、サンキュ」
 愛原「急いで仕上げるぞ。明日の午前中に提出だ」
 高橋「了解です」

 とはいうものの、結局作成が終わったのは、日付が変わる前くらいであった。
コメント
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