報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「手紙」

2024-01-20 14:51:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日20時17分 東京都中央区築地 築地駅前バス停→都営バス錦11系統車内]

 レイチェルを築地駅で見送った後、私達はこの駅前から出る都営バスに乗り込んだ。
 往路と同じバス路線で、菊川まで来た道を戻る感じである。
 つまりは、前に住んでいたマンションと旧・事務所の前を通るというわけだ。
 今度は進行方向左側にあるので、往路よりも確認しやすいはずだ。
 外が確認しやすいよう、後ろを確保する。
 今度は2人席に座った。
 1番後ろの座席よりも狭いが、リサ的には私と密着できるから嬉しいようだ。
 お腹が一杯になり、食欲は満たされたからか、リサは今度は私の腕と自分の腕を絡めて寄り掛かっている。
 この路線は都営バスの中では比較的本数が少ない為、あまり利用者は多くない。
 発車時刻になっても、席が全て埋まるということはなかった。

〔「20時17分発、浜町中の橋、森下駅前、菊川駅前経由、錦糸町駅前行き発車致します」〕

 折り戸式の前扉が閉まる。

〔発車致します。お掴まり下さい〕

 バスは定刻通りに築地駅前停留所を発車した。
 ルート的には、都道50号線(新大橋通り)をしばらく進むことになる。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは新富町、浜町中の橋経由、錦糸町駅前行きでございます。次は築地二丁目、築地二丁目でございます。中央区役所、築地警察署はこちらです。警備会社の全日警、東京中央支社へおいでの方は、菊川一丁目でお降りになると便利です。次は、築地二丁目でございます〕

 バスは夜の都道を走行する。

 高橋「先生、本当に料金とか大丈夫っスか?随分高かったみたいっスけど……」
 愛原「殆どが、栗原家からもらった商品券で支払ってるからね。こっちが自腹なのは、交通費くらいのもんだ。京成スカイライナーは成田エクスプレスよりも安いし、戻りは快速だし、快速のグリーン料金は特急のそれよりも安いから、そんなに経費は掛かってないんだよ」
 高橋「そういうことっスか」

 狡賢い考えだが、今後、栗原家はお家取り潰しになる可能性が高い。
 支払い能力が無くなる前に、頂いた物は使っちゃおうという魂胆だ。

 愛原「リサ、明日は学校は早めに終わるのか?」
 リサ「その予定。わたしが赤点取らなかったらね」
 愛原「赤点を取らないことを願うよ」
 高橋「取ったら、お前だけ置いてけぼりだw」
 リサ「そうならないようにするよ」

 リサは肩を竦めた。

 愛原「まあまあ。夕食は母さんが鍋でも用意してくれてることになってるから」
 リサ「鍋!?すき焼き!?」
 愛原「かもしれんな」
 リサ「よっし!」
 高橋「さっき、あんだけ魚食ったのによォ……」
 リサ「今度は肉だよ!」
 愛原「そ、そうだな」

[同日20時33分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス錦11系統車内]

 バスは前のマンションの最寄りのバス停で、乗降を取り扱った。

〔発車致します。お掴まり下さい〕

 ここからでもマンションは見える。
 工事用の仮囲いがされており、通り側からマンションを見ることはできない。

〔ピンポーン♪。次は菊川駅前、菊川駅前でございます。都営バス、とうきょうスカイツリー駅前方面、豊洲駅前、新橋方面と都営地下鉄新宿線をご利用のお客様は、お乗り換えです。次は、菊川駅前でございます〕

 リサが降車ボタンを押した。

〔次、止まります。お降りの際はバスが停車してから、席をお立ちください〕

 事務所が入っていたビルの前を通過する。
 一瞬だけだったが、私の事務所が入居していた5階はまだ空室になっているようで、『テナント募集』の貼り紙がしてあった。
 あの騒ぎでは、借り手が付かないのかもしれない。
 今の事務所だって、前は設備工事会社が入居していたらしいが、その前はどうも暴力団の組事務所だったという噂があり、それで入居しやすかったというのはある。

 愛原「なるほど。やっぱり俺達がいた影響はあったわけか……」
 高橋「いや、それは無いですよ、先生。考え過ぎですって」
 愛原「うーん……」

 しばらくして、バスが菊川駅前のバス停に到着する。
 私達は席を立つと、中扉から降りた。

 愛原「うっ、冷えるなぁ」
 リサ「寒い?わたしが温めてあげる」

 リサはガシッと私の左腕に絡みついて来た。
 リサのようなBOWは、概して体温が高い。

 愛原「ありがとう。温かいよ」

 バスを降りたら、菊川駅前交差点の横断歩道を渡る。

 愛原「帰ったら、明日に備えて……」

[同日20時45分 天候:晴 同区菊川2丁目 愛原家]

 無事に事務所兼自宅に帰宅する。
 郵便受けを開けると、郵便物やチラシなどが入っている。
 祝日は普通郵便は配達されないはずだが、何か入っているということは、速達か何かだろうか?

 愛原「『愛原リサ殿へ。果たし状』……果たし状!?」
 リサ「!?」
 高橋「ケンカの申し込みっスか!?」
 愛原「らしいな」

 家の中に入る。
 リサも学校では『魔王軍』の『魔王』をやっているものだから、特異菌や寄生虫の非感染者や非寄生者を中心に敵がいるらしい。
 何としてでも、再びブルマを廃止させようという動きとか。

 パール「すぐにコーヒーお淹れしますね」
 愛原「悪いな」

 手紙は郵便で届いたわけではなく、直接投函されたようだ。
 リサに渡すと、リサは早速中を開けた。

 リサ「これは……!」
 愛原「どうした?」
 リサ「栗原蓮華からだ!」
 愛原「なにっ!?」

 手紙と一緒に写真も入っていた。
 それは鬼姿の栗原蓮華が人間を襲った後に撮った写真のようだ。
 返り血を浴びても尚不敵な笑みを浮かべ、しかもその両手には人間の首を髪を掴んで持っている。

 愛原「う……」
 高橋「エッグ……!」
 パール「これは……ヤってますね」

 手紙には『人食いをしていないリサよりも、多くの人を食った自分の方が強いはずだ。藤野での雪辱を果たすから、首を洗って待っていろ』のようなことが書かれていた。
 BOW化すると人間だった頃の記憶は失われるというが、どうも特異菌とかの場合は、そこまで記憶が無くなるというわけでもないらしい。
 確かにリサ、藤野で人間だった頃の栗原蓮華と戦って勝ったことがある。
 どうやらその時の悔しさが、鬼になっても尚残っているらしい。
 『鬼同士の戦いなんて不毛なことは分かっているけど、これだけは譲れない』ともあった。

 高橋「せ、先生!昨日の新聞っスけど、群馬の山道で事故った車に乗ってた人達、首が無くなってるって書いてありますよ!?」
 愛原「それか!」

 しかし、手紙は直接投函されている。
 ということは……。

 愛原「気をつけろ!多分あいつ、直接ここに来て手紙を入れて行ったんだ!」
 高橋「ま、マジっスか!?」
 リサ「フザケやがって!わたしが返り討ちにしてやる!」

 リサもまた一気に鬼化した。

 愛原「待て待て!ここで戦ったら大騒ぎになる。多分、蓮華もそのことは知っているはずだ。今は襲ってこないだろう。もっとも、どこか遠くからこの家を見張るくらいのことはしそうだがな。とにかく、俺は善場主任に連絡する。お前達は窓のシャッターを全部閉めてくれ」
 高橋「分かりました!」

 元々は暴力団組事務所だった建物ということもあってか、窓ガラスは全て強化ガラスかつ防弾仕様。
 全ての窓にはシャッターが付いている。
 鉄格子は、いざという時の脱出用としてか、それは付けられていなかった。

 リサ「わたし、ちょっと屋上に出て、様子を見て来る」
 愛原「分かった。無理はするなよ。本当はBSAAが退治する奴だから」
 リサ「分かってるよ」

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