報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサの調査」

2024-01-08 21:55:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月11日10時00分 天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 坂上「愛原!今日と明日は登校禁止だと言っただろ!」
 リサ「ごめんなさい。どうしても調べたいことがあるの。……あるんです」

 リサは担任の坂上修一に懇願した。

 坂上「新聞部の部室の鍵か。一体、何を調べるんだ?」
 リサ「“学校の七不思議特集”。そこの語り部の1人、日野貞夫を」
 坂上「日野……日野か……」

 坂上は何かを感じ取ったのか、職員室から鍵束を持って来た。

 坂上「日直が俺で良かったな。取りあえず、新聞部の鍵を貸してやるから、探してこい」
 リサ「ありがとうございます」
 坂上「いいか?俺が鍵を貸したなんてことは内緒だぞ?俺が怒られちまう」
 リサ「分かりました。……先生は何か御存知ないですか?」
 坂上「俺がここの現役新聞部員だった頃、新聞部の先輩に日野って人がいた。下の名前は忘れたが、新聞部でありながら、科学部とも通じていた人だった」
 リサ「ここで死んだ日野貞夫との関係は?」
 坂上「それは知らん。親戚だったのかもしれないし、或いは名字が同じなだけの赤の他人かもしれないな。とにかく、気が済んだら、さっさと鍵を返して帰れ。分かったな?」
 リサ「はい!」

 リサは坂上から新聞部室の鍵を借りると、それで新聞部の部室に向かった。
 因みに今のリサは、部活動への入部が認められていない。
 その為、各部へは助っ人として出入りしているだけである。
 リサは誰もいない廊下を突き進んだ。

 リサ(この男子トイレは、個室の中から無数の手が現れるところ。当時、受験生だった語り部とその知り合いが被害を受けた)

 リサはトイレの前を通った際に、そんな話を思い出した。
 旧校舎で起きた話も新校舎で起きた話も、結局は、白井伝三郎が旧校舎に仕掛けた特異菌の菌床が放っていた胞子を吸った生徒や教職員が幻覚を見ていただけだと分かった。
 特異菌の菌床を全て駆除し、リサを除く全ての学校関係者に治療薬を投与したところ、怪奇現象はリサが起こしている物以外全て無くなった。

 リサ(この階段は無限階段。取り込まれた者は、絶対に1階まで下りられず、永遠と昇り降りをさせられる……)

 そして、新聞部の部室に到着する。
 当然、人の気配は無い。
 リサは坂上から預かった鍵でもって、部室のドアを開けた。
 今日は曇りである為、部室内は薄暗い。
 本当は照明を点けた方がいいのだが、点けるとここに誰かがいるのが外から分かってしまう。
 だからリサは、照明は点けなかった。
 鬼型BOWのリサは、暗闇でも目が見える。
 リサは早速、部室内のキャビネットに収納されている歴代の“七不思議特集”を確認することにした。
 全盛期は90年代半ばから、2000年代にかけて。
 日本アンブレラが潰れて以降は、誰も特異菌を管理する者がいなくなった為、怪奇現象は“トイレの花子さん”の他、お化けや幽霊ではなく、生きている人間が織り成す怖い話が中心となっている。
 リサが入学してからは、そこにリサが起こしている怪奇現象もあった。
 恐らく来年の会合は、全てリサに関する物になるだろう。

 リサ「……あった!」

 坂上がまだ現役生だった頃と、1年後輩で副担任の倉田恵美が現役生だった頃に、日野という新聞部員は登場している。
 坂上の時は先輩部員として、倉田の時は部長として登場している。
 倉田の時、日野部長は白井伝三郎の被害に遭って行方不明になっていた。
 それから時を経て、日野はまたここの学生として現れたことになる。
 但し、その場にいた坂上が何の反応もしなかったことから、顔や下の名前は変えていたのだろう。
 おおかた、行方不明になった時、日本版リサ・トレヴァー『10番』にさせられたのだろう。
 その時、部室のドアが開けられた。

 リサ「!?」

 リサがびっくりして振り向いた。
 その際、瞳が赤く光る。

 坂上「おいおい。また、七不思議を増やす気か?俺じゃなかったら、びっくりしたぞ」
 リサ「先生」
 坂上「探し物は見つかったか?」
 リサ「分かったような分かんないような……」
 坂上「そうか」
 リサ「日野博士って誰だろう?白井伝三郎は分かるけど。カムフラージュでここの科学教師をやっていたり、大学の客員教授をやっていたりしたことは分かってるけど」
 坂上「そのことなんだが、1つだけ思い出したことがあってな」

 坂上は部室の照明を点けた。
 当然、室内が明るくなる。
 リサの赤い瞳が黒くなった。

 坂上「俺が現役時代、ここの新聞部員だってことは知ってるだろ?」
 リサ「ええ」
 坂上「日野さんはその時、先輩だった。誰にも分け隔てなく優しい人でさ、当然俺にも優しかったよ。時々、飯とか奢ってくれたりとかさ」
 リサ「いい先輩!」
 坂上「そうさ。だが、どうもそれは上辺だけだったみたいなんだ」
 リサ「どういうこと?」
 坂上「ある時を境に、俺は日野先輩に嫌われてしまった。それでもあの人は、ニコニコしてたよ。でも、心の中では俺を嫌ってた」
 リサ「どうして分かるの?」
 坂上「ある時、俺は先輩が忘れて行ったノートを見てしまったことがある。それはどうも、日記のようなものだった。そしてその中に、こんなことが書いてあったんだ。『俺の親父と坂上の親父は、同じ会社で働いている。ところが坂上の親父が出世したせいで、俺の親父は出世できなかった』ってな」
 リサ「それ、先生のせい?」
 坂上「いや、違うよ。俺は父親の会社になんて、関知してない」
 リサ「……ねぇ、先生。もしかして、先生のお父さんの会社って、アンブレラ?」
 坂上「この際だから白状するけど、実はそうなんだ。日本アンブレラの営業マンだったよ。研究職じゃない」
 リサ「日野さんのお父さんも?」
 坂上「違う。俺もあのノートを見るまでは、日野先輩のお父さんが同じ会社だなんて知らなかったんだ」
 リサ「まさか、そのお父さんが……」
 坂上「気になってうちの父親に聞いてみたら、そうだったよ。ただ、日野先輩のお父さんってのは研究職だったらしいんだ。畑が違うから、出世競争とかも恐らく関係無いと思うんだがな……」
 リサ「研究職!?じゃあ、博士って呼ばれてた?」
 坂上「……かもしれんな。それがどうかしたのか?」
 リサ「それ!それが、愛原先生が知りたい情報!もっと詳しく教えて!聞いたらソッコー帰るから!」
 坂上「オマエなぁ……。愛原さんの手伝いだったのか?」

 坂上は呆れた。

 坂上「まあいい。詳しくとはいえ、俺が知ってるのはここまでだ。うちの父親は営業部門だったから、せいぜい日野という名の研究職員がいる程度の間柄だったそうだぞ」
 リサ「なのに恨まれたんだ?」
 坂上「なあ。変な人だったのかもしれない。まあ、どうせもうこの世にいない人だ」
 リサ「アンブレラが潰れてから、日野博士はどうなったんだろう?」
 坂上「さあなぁ……。うちの父親も、あんな悪の製薬会社で働いてたってことで、犯罪者扱いでさ。なかなか、次の就職先が見つからなくて苦労してたなぁ……。結局、タクシーの運転手をやることになって、今に至るけど」
 リサ「そうなんだ」
 坂上「まあ、営業で車をよく運転していたからってのもあったけどな。研究職はどうだったんだろうなぁ?」
 リサ「日野博士、医師免許とか持ってたの?」
 坂上「それは分からん。製薬企業の研究職だから、薬剤師の資格とかは持っていたかもしれないな」
 リサ「ふーん……」

 これ以上の情報は得られないと思ったリサは、帰宅することにした。
コメント
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