報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「日光紀行」

2023-06-27 15:41:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明(恐らく夏) 時刻不明(恐らく夜間以外の時間帯) 天候:晴 場所不明(恐らく古民家)]

 私は変な夢を見た。
 それは、次のような内容だった。
 私はどこか、古い和室にいた。
 それは古い畳が10枚ほど敷かれた和室だった。
 室内には何も無い。
 強いて言えば、窓があるくらい。
 その窓からは、山並みを見ることができる。
 一体、ここはどこだろう?
 ふと気づくと、その和室の片隅に、1人の少年がいることが分かった。
 少年の年齢は不明だが、恐らく10歳くらいだろう。
 体育座りをして、顔を両足に突っ伏しているので、顔は分からない。
 黄土色の半ズボンを穿いて、白い靴下を履いている。
 そして、上はネイビーブルーの半袖Tシャツであった。
 そんな少年がふと顔を上げると、目はリサのように瞳が赤くなり、口を開けると牙が生えている。
 そして、手は普通の爪だったものが、長く鋭く伸びている。
 両耳は丸かったのが、尖り、少年が頭を抱えると、見る見るうちに額から1本角が生える。
 どうやら、鬼に変化する所らしい。
 そして、鬼に変化しきったところで、私と目が合った。
 マズいと思うのだが、体が動かない。
 ようやく辺りを見回した時、この空間には窓が4つしか無いことが分かった。
 即ち、この空間自体が独立した建物である。
 少年が爪を立てて、迫って来る。
 ヤバい!逃げなければ!
 どこに!?
 しかし、この空間にはドアが無い。
 どうして窓しか無いのか?
 何とかして逃げないと、食い殺されてしまう。
 だが、何とか後ろに後ずさった私は、何故か奈落の底へと落ちて行った。

[12月30日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原「わーっ!」

 そこで私は目が覚めた。
 どうやら、夢だったようだ。
 しかし、どうしてあんな夢を?

 愛原「うーん……」

 とにかく私は起きることにした。
 洗面所で顔を洗っていると、リサ達も起きて来た。
 2人の少女は、学校で使用している緑色のブルマと体操服を着ている。
 絵恋はジャージを着ていたが。

 リサ「おはよう、先生」
 絵恋「おはようございます」
 愛原「おー、おはよう」

 起きてきた時、リサは浮かない顔をしていた。

 愛原「どうした、リサ?眠いか?」
 リサ「いや……変な夢見ちゃって……」
 愛原「変な夢?」

 リサが話した夢の内容は、私が見たのと、ほぼ同じ内容だった。
 だが、リサはその少年の正体を知っていた。

 リサ「あれはあの男だよ」
 愛原「あの男って、鬼の男?」
 リサ「そう」
 愛原「え?でも、お前と戦ったのは、お前と同じくらいの歳のヤツだったんだろう?俺が見た夢の少年は、小学生くらいだったぞ?」
 リサ「その男の小さい時だよ、きっと。あいつも、元は人間だったんだ」
 愛原「そこは、やっぱりそうか」

 やっぱり、元から鬼族なんて普通いるわけがない。
 リサのように、何らかの原因で、人間が鬼化したものだと私は思っていた。
 私が見た夢は、正にその瞬間だったのだろうか。

[同日07時56分 天候:晴 同地区 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線771K電車・先頭車内]

 高橋「俺達は次の電車で行きますんで」
 愛原「そうか?」

〔まもなく1番線に、各駅停車、新宿行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 私達はまず岩本町駅に行く必要があるので、上り電車に乗る必要がある。
 一方、高橋とパールは篠崎に行くので、下り電車に乗る。
 つまり、このホームでお別れとなる。
 強風を伴ってやってきた電車は、京王電鉄の車両だった。
 年末休みということもあり、車内は空いている。

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。きくかわ~、菊川~〕

 愛原「それじゃ、また向こうでな」
 高橋「はい、お気をつけて」

 私達は先頭車に乗り込み、ローズピンクの座席に腰かけた。
 すぐに短い発車メロディが鳴る。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 そして、車両のドアとホームドアが閉まる。
 駆け込み乗車は無かったが、再開閉することなく、ドアが閉まる。
 運転室から発車合図のブザーが僅かに聞こえたかと思うと、ハンドルをガチャッと操作する音が聞こえ、それからエアーの抜ける音がして電車が動き出した。
 高橋のヤツ、お涙頂戴的に両手を振っていた。
 私が先頭車に乗ったのは、この為。
 リサがいるから、基本的には先頭車または最後尾に乗らないといけないのだが、最後尾に乗ってしまうと、高橋のヤツ、ホームを全力疾走するだろう。
 お見通しである。
 それで、先頭車に乗ったのだ。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです〕

 愛原「それにしても……」

 私は2人の少女の荷物を見た。
 2泊3日とはいえ、随分大きな荷物だ。
 男よりも荷物が多くなるのは分かるが、それにしても大きくないか?

 愛原「随分、荷物があるなぁ?」
 リサ「服とか着替えとかが入ってる」
 愛原「別に旅行なんだから、そんな時まで体操服着なくていいんだよ?」
 リサ「それはそんなに嵩張らない。ブルマだったら、既に穿いてるし」

 リサは黒いスカートの下を指さして言った。

 リサ「もっと別のもの。後で着替えて、先生に見せてあげる」
 愛原「一体、何なんだ?」

 私は首を傾げた。
 尚、こんな大きい荷物では重いだろうと思ったが、階段においてはリサが絵恋の荷物までヒョイと軽々しく持った。
 やはり、そこは鬼型BOWである。
 今は角とかは隠しているが、それでもパーカーのフードを被っていた。

 リサ「朝御飯まだ食べてない。お腹空いたんだけど?」
 愛原「もちろん、旅心を演出する為に、上野駅で駅弁買うよ」
 リサ「おー!」

 因みに、変な夢を見たのは私とリサだけ。
 絵恋もパールも高橋も、あのような夢は見ていないとのことだ。
 あの和室は一体何なのだろう?
 これから行く古民家と、何か関係があるのだろうか。

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