報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「帰省3日目」 4

2018-09-15 19:15:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月28日16:17.天候:晴 JRさいたま新都心駅→ホテルメトロポリタン]

 太陽が傾きつつもまだまだ暑いさいたま新都心駅に、今日最後の北行快速が到着する。
 もっとも、田端駅に差し掛かる頃には既に各駅停車の表示になっているのだが。

〔さいたましんとしん〜、さいたま新都心〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 この駅の京浜東北線ホームにはホームドアがある為、電車のドアが開くまで少しのブランクがある。

 稲生:「やっぱり外は暑いですねー」
 マリア:「うん。日本の夏は本当にジメジメしている」
 稲生:「こういう時は、カラッとした気候のヨーロッパが羨ましいですね」
 マリア:「“魔の者”さえいなければ、夏の間はイギリスに戻ってもいいんだけどな……」

 電車を降りて改札口に向かうまでの間、そんなことを話す魔道師2人。

 稲生:「そんなに手強いですか。ヤノフ城では辛くも勝ったって感じでしたけど……」
 マリア:「ただの眷属に辛勝してるようじゃ、本物相手には勝てないよ」
 稲生:「それもそうですね」

 改札口を出て左に曲がる。
 この辺りは高層ビルが林立しているということもあり、強い風が吹き抜けるポイントだ。

 稲生:「うーん……。大気の状態が不安定だ。もしかしたら、またゲリラ豪雨とかあるかもしれませんね」
 マリア:「スコールか。そうかもしれないな」
 稲生:「まだ空は晴れてますけど、油断ならないのが日本のゲリラ豪雨というヤツでしてね。早いとこ帰りましょう」
 マリア:「そうだな」
 稲生:「……と、その前に」
 マリア:「?」

 稲生、ホテルメトロポリタンに入る。
 まさか、ついにマリアと……【お察しください】。

 ローソン店員:「いらっしゃいませー」
 稲生:「えーと、ロッピー、ロッピー……と」

 ……ではなく、テナントとして入居しているローソンに入った。
 そして、店内にあるロッピーに向かう。
 因みにローソンはロッピー、ファミリーマートはファミポートと色々あるが、この端末の正式名称が分かる方はいらっしゃるだろうか?
 マルチメディアキオスク端末というらしい。
 稲生はスマホ片手に慣れた手つきで端末を操作した。

 マリア:「何をしてるの?」
 稲生:「ちょっとね……高速バスのチケットを……」
 マリア:「帰りの?」
 稲生:「ええ。帰りの」
 マリア:「今頃?」
 稲生:「今頃……です」

 操作が終了すると、ベーッとバーコードが記載された用紙が発行される。

 稲生:「それじゃ、ちょっと行ってきます」
 マリア:「Year.」

 一体稲生は何のバスのチケットを発券したのだろうか。

 稲生:「お待たせしました。それじゃ帰りましょう」
 マリア:「ああ」

[同日16:45.天候:曇 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 イリーナ:「やあ、お帰り」
 稲生:「先生、ただいま戻りました」
 イリーナ:「色々楽しんだみたいだねぇ」
 稲生:「おかげさまで。でも、まだまだですよ」
 イリーナ:「まだ遊び足りないの?」
 稲生:「マリアさんと約束したんですよ」
 イリーナ:「結婚の?」
 マリア:「師匠ッ!」
 稲生:「そ、それはまだ……。この前仙台に行った時、威吹と一緒に船旅をした話をしたら、マリアさんもってことになりまして……。明日はそこに行こうかと……」
 イリーナ:「あー、それは残念ね。明日は止めた方がいいわよ」
 稲生:「えっ?それはまたどうして?」
 イリーナ:「これを見て」

 ここはリビング。
 なのでテレビがある。
 イリーナはリモコンを取ると、テレビを点けた。

〔「……これはもう大変な異常気象としか言いようがありません。気象学上、有り得ないことが発生したわけです。よって、どんな被害が出るか分かったものではありません」「なるほど。えー、何度もお伝えしておりますように、日本近海で突然台風が発生しました。関東直撃は明日になるもようで……」〕

 普通は南太平洋上で発生するはずの台風が、何故か伊豆諸島で発生したのこと。

 稲生:「な、何ですかこれは!?」
 イリーナ:「ナスっちがバカンス……もとい、合宿で大島って所に行ったんだけど、そこで魔法の実験をしたら台風を発生させちゃったらしくて……」
 マリア:「あの組、日本を超エンジョイしてるじゃないですか」
 稲生:「アナスタシア組で合宿という名のバカンスに行き、そこで魔法の実技講習を行ったら、弟子の誰かが失敗したってことですね」
 イリーナ:「う、うん。日本語に直すとそんな感じ。さすが日本人ね」
 稲生:「いえ、先生も最初から日本語を話しておられます」
 イリーナ:「私はロシア語しか喋ってないわよ?」
 マリア:「迷惑な連中め!」
 稲生:「魔法で発生させたのだから、魔法で消すこともできるのでは?」
 イリーナ:「私もそう言ったのよ。いや、私とあのコとはジャンルが違うから、私がどうこう言えることではないんだけどね。そしたら、こんなことを言ってきたのよ。『1度焼いたステーキ肉を生肉に戻す魔法があると思う?』なんて……」
 稲生:「え?ホイミとかケアルとか唱えればいいんじゃ?」
 イリーナ:「それは生き物の話。あくまでこれは気象現象の話なんだから」
 マリア:「要はアナスタシア先生の力を持ってしてもダメってことですね。分かりました」
 稲生:「ちぇっ。せっかく計画してたのに……」
 イリーナ:「ゴメンねぇ。私からナスっちにはよく言っておくから。『こっちのバカンス妨害してんじゃねーよ』ってね」
 マリア:「こっちはバカンスであることは認めるんですね。因みに、こっちに直撃するのはいつですか?」
 イリーナ:「明日の朝からだね。で、1日掛けて通過するみたい。だから明日のバカンスは申し訳無いけどオジャンに……」
 稲生:「そんなに早く?!」
 イリーナ:「消すことは無理だけど、なるべくスピードアップさせたり、勢力を弱めるように努力はできるみたい」
 マリア:「自分達の不始末なんだから、自分達で処理して欲しいですね」
 イリーナ:「ま、向こうもそう言ってるんだけど……。明日は映画でも観てたら?」
 稲生:「今日、映画観て来たんですけどね。先生はどうなさるんです?」
 イリーナ:「アタシもナスっちのせいで計画がパーよ。申し訳無いけど、ここにいさせてもらえる?」
 稲生:「それは構いませんよ。せっかくだから先生、講義してくださいよ」
 イリーナ:「えぇ?」
 マリア:「それはいいな。師匠、魔法の根本から教えてください」
 イリーナ:「せっかく1日昼寝しようと思ってたのにぃ……」
 マリア:「何言ってるんですか。たまには起きて……」

 その時、マリアはハッと気づいた。

 稲生:「? マリアさん?」
 マリア:「あ、いや、何でも無い」
 イリーナ:「しょうがない。そこまで言うなら、やらせてもらうわ。だけど、明らかに眠くなるラテン語講座から始めるけどいい?」
 稲生:「は、はは……。お手柔らかに、お願い致します」
 マリア:「よろしくお願いします。(師匠、ここ最近むしろ寝てないんじゃないのか?)」

 夜はちゃんと寝ているのだが、最近イリーナが昼寝している所を見る機会が無いことに気づいたマリアだった。
 これは何を意味しているのか……。
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「大石寺系教団の皆さんに質問です」の意図について。

2018-09-15 10:28:22 | 日記
 当ブログのコメント欄で常連(?)の皆様方が盛り上がっておられる中、流れをスルーした私は同じコメント欄でこんな質問をさせて頂いた。

「日蓮大聖人御在世の時に実在した熱原の法華講衆と今の日蓮正宗法華講は同じですか?イエスかノーでお答えください。できれば、その理由もお答えください」

 これに実質的な回答を寄せて下さったのは、いおなずんさんだけであった。
 改めて、回答して下さったいおなずんさんには感謝申し上げたい。
 尚、いおなずんさんにあっては、事実上の「ノー」回答であった。

 実はこれ、別に正解や不正解を求める質問ではない。
 心理テストのようなものだ。
 コメント欄にはこの質問をさせて頂く前に、こんな枕詞を並べた。

「私がこのブログで使い始めた用語、『ガチ勢』『エンジョイ勢』『傍観勢』。これを見分ける質問が1つあります」

 と。
 つまり、それらを振るいに掛ける為の心理テストだったのである。
 では、実際に答えて頂いたいおなずんさんは、あの回答でどこに部類するのか?
 それに答える前に、言い出しっぺの私はどういう回答をするか?
 そこから始めたいと思う。

 私も同じ質問をされたら、「ノー」と答える。
 実は「ノー」と答えた時点で、その信徒さんはほぼ自動的に『エンジョイ勢』となる。
 その為、「できればその回答をした理由もお答えください」とも書いたのだが、「ノー」と答えた人にあっては、理由まで述べる必要は無い。
 文証を出せと言われたところで、そんなものあるわけないだろう。
 では、どうして私も「ノー」だと思い、それが『エンジョイ勢』となるのか?

 そもそも熱原の法講衆とは、如何なる集団だったのか?
 もちろん、そんなものは信仰者であれば自ずと分かるだろう。
 顕正会でも紹介しているが、その顕正会にあっても、熱原の法華講衆のことについては、『ガチ勢』ですら文句を付けないほど正確に紹介している。
 彼らが今でも語り継がれている理由は何ぞや?
 顕正会的な視線で恐縮だが、それは宗内で確認されている、史上初の信徒の殉教者だからであろう。

「ああ、なるほど。『エンジョイ勢』は殉教する気は無く、『ガチ勢』は殉教する気があるからなのか」

 違う。
 多分、『ガチ勢』であっても、殉教する気までは無いと思うぞ。
 彼らのブログを見てみろ。
 そんな思いまでは伝わってこない。
 ここでは、あくまで信徒のことを言っている。
 お坊さんの中には、樺太の末寺住職のような立派な殉教者もいるだろう。
 だが、あくまでもここでは信徒に限定した話をしている。

 今の法華講は何だ?
 各末寺に支部を構え、認証されているか否かで騒ぎ、法華講連合会に統率されているではないか。
 熱原の法華講衆とは、そんなにガチガチに組織化されたものではなかったはずだ。
 ただの信徒集団を、日蓮大聖人がそのように名付けたものだろう。
 もちろん、「ただの」と言っては失礼だな。
 大聖人が御自ら強い信心を持ち合わせた信徒の集団だと認証され、御自ら名付け親となられた集団だ。

 え?違う?法華講連合会は法華講支部を統率するものではないって?
 何を仰る。
 それぞれデカい法華講支部から総講頭だの大講頭だの出して、『挨拶』や『激励』しているではないか。
 これを見て私は、

「あーあ。権威の象徴だな」

 と思ったものだ。
 創価学会がまだ日蓮正宗の正式な外郭団体だった頃、総講頭を池田会長が務めていたことがあっただろう?
 学会を追い出して、今は法華講の関係者だけが要職に就くようになったわけだが……。
 総講頭とか大講頭とか、どなたでしたっけ?
 熱原の法華講衆に、そんなものあったかね?
 その代表格として三烈士も語り継がれているが、彼らはその集団において本当にリーダーだったのか。

 そういったことから、私は熱原の法華講衆と今の法華講組織は違うと答えるわけである。
 今はどう思われているか分からないが、トチロ〜さん、やけに報恩坊さんの支部認証に拘っていたことがあった。
 私は、「それがそんなに大事なことなのか?」と常々思っていた。
 恐らく、連合会における発言権があるか無いかの違いで、功徳の大小は関係無いと思うのだが。
 もしも功徳の大小に関係があるというのなら、それこそ文証を出して頂こうか。

 つまり、『ガチ勢』は最初の質問に「イエス」と答えるわけだ。
 それこそ、理由を述べて頂きたい回答である。
 まず、大聖人の御書にはそんなこと書いていないから、そこから文証を持って来ることは不可能だ。
 如何に立正安国論を記された大聖人とはいえ、まさか法華講衆がこんな組織化されるとは思われなかっただろう。
 では、御歴代上人の御指南から持って来ることになるわけだが……。
 不良信徒だった私には、第何代の御法主上人が『熱原の法華講衆と今の法華講は同じである』旨の御指南をされたかさっぱり分からない。
 これでも夏期講習会とか御講とかには何度か参加したことのある身。
 また、御登山する度に『妙教』や『大日蓮』の他、各機関紙を購入して読んでいた。
 もしそういった御指南があるのなら、どこかで見聞する機会があったはず。
 それでも、『ガチ勢』はどこからか、そういった御指南を引っ張り出してくるかもしれない。

 『エンジョイ勢』がそこまですると思うかい?
 いや、私はしないな。
 なので、「イエス」と答え、私が知らない御指南をどこからか引っ張り出してきて、「どやァ!?」としてくる時点で、あなたは『ガチ勢』なのである。
 ん?『傍観勢』はどうなのかって?
 もちろん、無回答に決まってるじゃん。
 トチロ〜さん、実は『隠れ傍観勢』ですね?
 新しい支部運営を行うに当たり、なるべく他支部からの風当りを少なくする為、『ガチ勢』でも『エンジョイ勢』でも無い第3の立場、『傍観勢』であると。
 『エンジョイ勢』でありたい私がまた信仰したくなった時、

「うちは『傍観勢』だから『エンジョイ勢』はダメだよ」

 ということにならぬよう……。
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“大魔道師の弟子” 「帰省3日目」 3

2018-09-12 19:28:25 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月28日11:30.天候:晴 東京都千代田区外神田 某ステーキ店]

 稲生:「少し早いですけど、タイミングもいいんで、お昼にしましょう」
 マリア:「それがここなんだ」
 稲生:「何だかね、食べログで評判が良かったんですよ。もう1つ御徒町にも支店があるんですが、同じ人が同じ評判を書き込んでいるので……」
 マリア:「誰だ、それ?」
 稲生:「えー……『新生法華の星』?何だこりゃ?まあ、いいか。まだ空いてる時間だから、並ばずに入れますね」

 稲生とマリアは店内に入った。

 店員:「いらっしゃいませ!」
 稲生:「2名です」
 店員:「2名様!こちらへどうぞ!」

 店内はカウンター席しかない。
 稲生とマリアは並んで座った。

 マリア:「ステーキか」
 稲生:「そうです」

 場所柄、外国人の姿も多い。
 近くの席には英語圏の国の客が2人いて、その2人の外国人観光客も英語で何か言っていた。

 外国人A:「日本じゃ、なかなか美味いステーキに当たらなくてね。でも、ここのは当たりだ」
 外国人B:「なるほど。確かにな」

 字幕を付けるとしたら、こんな感じ。
 マリアの場合は自動通訳魔法を使っているので、日本語吹き替えだ。

 稲生:「今日のランチメニューはハンバーグみたいですね」
 マリア:「お、いいじゃない。これにしよう」
 稲生:「いいですか?じゃ、僕も……」

 稲生は店員を呼んで、ランチを注文した。
 先に来たのは、セットのライスとオニオンスープとサラダ。

 稲生:「お目当ての物も手に入りましたし、マリアさんにとっては旅行の目的を果たしましたね?」
 マリア:「そういうことになるな。でも、まだ休暇は続くんでしょ?」
 稲生:「先生からは、今週一杯まで休んでいいということでした」
 マリア:「じゃあ、まだ時間あるわけだ」
 稲生:「まあ、そうです。ま、学生はまだ夏休みですからね。違和感は無いんですが……」

 先にスープとサラダを平らげてしまうと、そこで注文したハンバーグがやってくる。

 マリア:「“魔の者”に1つだけ感謝することがある」
 稲生:「何ですか?」
 マリア:「取りあえず、食べ物がマズいイギリスから出るきっかけを作ってくれてありがとう」
 稲生:「イヤミですね。フィシュ&チップスとローストビーフは美味いと思いますけどね」
 マリア:「それだけだよ」

 マリアはナイフとフォークを取った。

 稲生:「お、さすが専門店のは美味しいですね」
 マリア:「さっきのアメリカ人達を唸らせるわけだ」
 稲生:「よく分かりましたね。アメリカ人って」
 マリア:「あの男達の英語、向こうの訛りがあったからね」
 稲生:「聞き取りにくい英語ではありましたが……」
 マリア:「だろうね」

 映画でも字幕スーパー版で見ると、俳優によっては聞き取りにくい英語で喋っていることが多い。
 ネイティブには分かるみたいだが……。

 稲生:「午後はどうします?もうメインのミッションは終了してしまいましたが……」
 マリア:「そうねぇ……。せっかくここまで来たんだから」
 稲生:「?」

[同日15:25.天候:晴 秋葉原電気街某所]

 エレーナ:「毎度〜!魔女の宅急便でーす」
 稲生:「おおっ!もう来た!」
 エレーナ:「そりゃもう、稲生氏の頼みなら迅速だよ」
 マリア:「調子のいいことばかり言いやがって」
 エレーナ:「ありゃりゃ?だいぶ荷物あるねぇ……」
 稲生:「そうなんだ。これは精密機器だから、気をつけて運んでよ」
 マリア:「壊したら弁償だぞ?」
 エレーナ:「分かってるよ」

 エレーナに輸送を頼んだのは、ヨドバシカメラで買った家庭用プロジェクターだけでは無かった。
 昼食後に向かったのはゲームセンターだったのだが、そこで稲生が思いの外ハッスルしてしまい、大きなぬいぐるみやフィギュアを取ってしまった。
 他にもミク人形やハク人形に迫られて、お菓子を大量に取ったり。
 で、持ち切れなくなってしまったので、止む無くこの場でエレーナを呼んだ次第。

 エレーナ:「それじゃ、運賃の方は……」
 稲生:「今払うよ」
 エレーナ:「さすが稲生氏!太っ腹〜!」
 マリア:「後払いにしたら、取り立てが闇金並みだからな」
 エレーナ:「あったり前じゃん。金払わないヤツは殺す」
 マリア:「守銭奴魔女」
 エレーナ:「怠け者魔女」
 稲生:「はいはい、ブレイクブレイク!」

 2人の魔女が胸倉を掴み合うのと同時に、稲生が割って入った。

 稲生:「じゃ、取りあえずこれが着手金」
 エレーナ:「あざーす!屋敷の人形達に必ず受け取るように伝えといて」
 稲生:「了解。それじゃ、よろしく」

 エレーナはホウキの先端に纏めた荷物を括りつけると、それで舞い上がった。

 稲生:「あれで大騒ぎにならないんだから凄いよ」
 マリア:「空飛ぶ魔女の殆どはあんな感じさ」

 マリアは空を仰いで言った。
 因みにホウキで空を飛ぶ魔法は、少なくともダンテ一門においては専科扱いになっている為、イリーナ組で習得することはない。

 稲生:「それじゃ、そろそろ帰りましょうか」
 マリア:「そうだな。師匠も、いつ帰って来るか分からないし……」
 稲生:「そうですね」

 身軽になった稲生達は秋葉原駅に向かった。

[同日15:37.天候:晴 JR秋葉原駅→京浜東北線快速電車10号車内]

〔まもなく1番線に、快速、大宮行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。次は、上野に止まります。御徒町へは、山手線をご利用ください〕

 今日最後の快速電車がやってくる。
 この後は終電まで各駅停車となる。

〔あきはばら〜、秋葉原〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕

 到着放送は日本語のみだが、接近放送や発車放送では英語も流れるようになった。

 稲生:「次の上野で、上野始発の中距離電車でも乗ろうかなぁ……」

 まだ夕方のラッシュが始まる前なので、そんなに混んではいなかった。
 ただ、着席はできなかったので、そんなことを考える稲生だった。

〔1番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車が午後の日差しを浴びながら出発する。

〔次は上野、上野。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、宇都宮線、常磐線、地下鉄銀座線、地下鉄日比谷線と京成線はお乗り換えです。上野の次は、田端に止まります。鶯谷、日暮里、西日暮里へおいでのお客様は、山手線をご利用ください〕

 この辺りは駅間距離が短く、放送で喋っている間に御徒町駅を通過してしまう。

 マリア:「この辺りも人が多いな」
 稲生:「アメ横もそうですし、御徒町駅の北側から上野駅の南側へ至る商店街も賑わってますからね。この辺も外国人が多いですよ」
 マリア:「そうか」

 その為か、京浜東北線が快速運転を始めるに当たり、御徒町駅が通過扱いとなることに対して、地元商店街関係者から反対運動が起きたほどである。
 対応策としてアメ横が最も賑わう年末年始は快速運転そのものを行わないこと、休日ダイヤは停車することとなった。
 その代わり神田駅は通過……することもないので、段々と快速が遅くなっていく。
 終いには京浜東北線の快速運転そのものが廃止になるのではないかと作者は見ている(末期には上野〜田端間しか通過しなくなったりしてな。日暮里駅だけは京成に客を流さないよう、最後まで意地でも止めないw)。

 マリア:「まだまだ見所はあるんだな」
 稲生:「ありますよ、そりゃ。まだ、約束は実行していませんしね」
 マリア:「?」
 稲生:「ほら、この前、有紗絡みで松島に行ったことがあったでしょう?威吹が遊覧船で船酔いしたヤツ」
 マリア:「ああ!」
 稲生:「僕にとってのメインは、その約束の実行です」
 マリア:「分かった。期待してるよ」

 マリアは口角を上げて頷いた。
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“大魔道師の弟子” 「帰省3日目」 2

2018-09-12 10:18:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月28日10:30.天候:晴 東京都千代田区外神田→神田花岡町 JR秋葉原駅→ヨドバシカメラ]

 稲生達を乗せた京浜東北線快速電車が秋葉原駅のホームに滑り込む。
 並行する山手線と違い、まるでポイントで副線に入るかのように前後がカーブしている為、ホーム出入の際は大きく揺れる。

〔あきはばら〜、秋葉原〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、神田に止まります〕

 ドアが開くと大勢の乗客達がホームに降りて行く。
 稲生とマリアもそれに続いた。

 稲生:「ヨドバシなら、さいたま新都心にもあるだろうというツッコミが来そうですが……」
 マリア:「作者の都合だろ、どうせ」

 そうそう。……って、おい!
 かくいう作者は横着して、大宮ビックカメラに……おや、会社から電話?何だろう?

 稲生:「取りあえず、買う候補は決まっているので、そこへ直行しましょう」
 マリア:「ああ、分かった」

〔まあるい緑の山手線♪真ん中通るは中央線♪新宿西口駅前と〜♪アキバのヨドバシカ・メ・ラ♪〕

 多摩:「カットカット!雲羽、上の歌詞間違うとる!」
 雲羽:「え?どこですか?」
 多摩:「ここ、ここ!点が抜けてる!」
 雲羽:「ああ、なるほど。顕正会版と日蓮正宗版の御経本で、1ヶ所マルの位置が違うのと同じですね」
 多摩:「そんなの知らん!」
 雲羽:「正解は、こう↓」

〔まあるい緑の山手線♪真ん中通るは中央線♪新宿西口、駅前と〜♪アキバのヨドバシカ・メ・ラ♪〕

 多分これ、意味を知らない人には思いっ切り些事だと思う。
 顕正会版と日蓮正宗版の御経本、『止舎利弗』と『止。舎利弗』の違いの意味を知らないと些事に見えるのと同じ。

 稲生:「それじゃ4階に行きましょう」
 マリア:「4階ね」

 稲生とマリアはエスカレーターで上に上がり……。

 警備隊長:「おい、雲羽!」
 雲羽:「あれ、隊長!?」
 警備隊長:「オメ何やってんだ、ここで!?」
 雲羽:「いや、ちょっと映画の撮影を……」
 警備隊長:「撮影!?オマエ、なに無断で撮影してんだ!ちょっとこっちへ来い!」
 雲羽:「いや、カンベンしてくださいよ、こっちは休み……!」

 ガシッとかつての同僚に両腕を掴まれる作者。

 警備隊長:「ヨドバシ警備隊が今デスマーチ中と知っての嫌味か、あぁっ!?」
 班長A:「ヒマヒマ部隊の隊長さんには分からないでしょうけどね、こっちは1週間休みナシなんスよ?」
 雲羽:「いや、それは知ってる!」
 班長B:「取りあえず、防災センターまで来てもらいまひょーか」

 店内無断撮影の廉でズールズールと地下の防災センターに連行される作者の図。

 マリア:「? 何か下の階が騒がしいな」
 稲生:「だから、無理して都内に出ること無かったのに……」

[同日11:00.天候:晴 ヨドバシAkiba4F AV売り場]

 店員:「このホームシアターでしたら、割とお安く……」
 稲生:「ホントだ。確かに安い。これならイリーナ先生も御納得して頂けるでしょう。どうですか、マリアさん?」
 マリア:「うーん……。正直、どれも大差無いなぁ……」
 店員:「因みにこちらの商品ですと、更にこういった機能が……」
 稲生:「あ、それは凄いですね。それじゃあ、つまり……こういうことで?」
 店員:「そうなんです。あと、こちらの方になりますと……こういったこともできます」
 稲生:「ほおほお。すると、こっちは……」
 店員:「こちらはですね……」

 段々とマリアには付いていけない話に進んで行く。

 マリア:(師匠の講義より難しい……)

 稲生と店員の間で専門用語が飛び交う。

 マリア:(段々とこの説明書が呪文の羅列に見えてきた……)

 マリアが蚊帳の外に立たされていると、どうやら商談が纏まったようだ。

 稲生:「それじゃ、これでお願いします」
 店員:「よろしいですか?ありがとうございます。それでは、レジまでご案内させて頂きます」
 稲生:「あ、マリアさん、大丈夫ですか?」
 マリア:「あ、ああ」
 稲生:「多分あれでいいと思います」
 マリア:「う、うん。そこは勇太に任せる」

 マリアはダンテやイリーナが言っていた、『男手も必要だ』の意味が少し分かったような気がした。

 マリア:「欲しいと言い出した私が言うのも何だが、設置とか大丈夫なのか?」
 稲生:「今の話を聞いていて、何とかなりそうです。ただ、1つ問題が……」
 マリア:「輸送ならエレーナにやらせるよ」
 稲生:「いえ、そういうことじゃなく、ポイントを全部使用して、ギリギリ予算内かどうかの瀬戸際なんです。もし予算オーバーしたら……」
 マリア:「そこは私から師匠に言っておくよ。勇太は設置と設定お願い」
 稲生:「分かりました。助かります」

 これが男性と女性の役割分担だと思われますが、皆さん如何でしょう?

 横田:「クフフフフフ……最近のカメラの性能の向上は、顕正会の弘通並みでありますなぁ……」
 別の店員:「この超小型レンズでしたら……あの、お客様、あくまでも防犯用ですからね?悪用はいけませんよ?」
 横田:「クフフフフフ……。靴の中に仕掛ける時代は終わりました。今はこの眼鏡に仕掛け……店舗前で『風のいたずら』を狙うのです」←店員の話を全く聞いていない。

 レジ店員:「ありがとうございまーす!」
 稲生:「どうも」
 マリア:「それじゃ、次に行こうか」
 稲生:「はい」

 もちろん稲生が持つ。
 そして、戻りはエレベーターに乗った。

 稲生:「さっき、横田理事みたいな人がいたような気がしたんですが……」
 マリア:「気のせいだろう」
 稲生:「最近の女子制服のスカートは、強風でも簡単に捲れない構造になっているとのことです」
 マリア:「それは素晴らしい。それじゃ『風のいたずら』を待ったところで……って、何で勇太が知ってるんだ!?」
 稲生:「あ、いや、その……。この前、エレーナがそんなこと言ってたもんで……」
 マリア:「あいつ、また余計なことを……。他に何か言ってた?」
 稲生:「『マリアンナのスカートは学校制服の規格じゃないから安心しな』だそうです」
 マリア:「あのバカ……!」

 こうして魔道師の買い物は終了した。
 尚、作者は警備隊の皆に一杯奢るという保釈金を確約して保釈された。
 因みに店舗側には内緒である。
 当たり前だ。
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“大魔道師の弟子” 「帰省3日目」

2018-09-10 19:07:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月28日07:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 起床した稲生勇太。
 今度のアラームは大宮駅7番線である。
 ま、特に珍しいものではない。

 勇太:「うーん……!」

 勇太は大きく伸びをした。

 勇太:「丑寅勤行をやったからいいか……。昨夜は雷ドッカンドッカン落ちてて、夜中に目が覚めたもんなぁ……」

 ズルズルとベッドから這い出す。
 着替えを手に部屋から出ると、すぐ近くのシャワールームで誰かかシャワーを使っていた。

 勇太:(こ、今度はマリアさんだよな……?)

 勇太はダダダッと階段を駆け下りる。
 そして、急いで1階の客間に向かった。

 勇太:「マリアさん!?」

 勇太はドアをドンドンと叩く。
 すると、中から出て来たのはセクシー下着を着けたイリーナ。

 イリーナ:「ああ。マリアなら、上のシャワー使わせてもらってるわよ」
 勇太:「わ、分かりましたーっ!」

 勇太は慌てて客間を出て行った。

 イリーナ:「あらあら」

[同日08:00.天候:晴 稲生家]

 勇太:「昨夜は凄いゲリラ豪雨でしたけど、誰かがライディーンでも使いました?」

 皆で朝食を取っている中、勇太はイリーナに聞いた。

 イリーナ:「おっ、よく知ってるねぇ……。でも残念。昨夜のはただの自然現象よ」
 勇太:「そうでしたか……。勇者しか使えない雷撃魔法ですもんね」
 イリーナ:「あれは悪魔と契約して使う魔法じゃないからね。別名、『神の雷』とも言われる魔法で、どちらかというと聖職者が使う魔法だったりするのよ」
 勇太:「へえ……」
 佳子:「勇太、今日はどこ行くの?」
 勇太:「マリアさんが家庭用プロジェクター欲しいって言うんで、取りあえずアキバまで」
 イリーナ:「マ・ヌゥ・サを習得すれば、そんなもの要らないわよ?」
 マリア:「だから、それホラーしか観れないじゃないですか」
 イリーナ:「本当に映画が好きになったのね」
 マリア:「屋敷の中に引きこもって人形ばかり作るのも飽きてきましたから」
 イリーナ:「地下にプールといい、段々と屋敷がホテルみたいになってきたわね」
 勇太:「さすがにデストラップのオンパレードでは、まだそうとは言えませんよ?」
 マリア:「どうせ侵入者なんていないんだから、もう撤去でいいじゃないですか」
 イリーナ:「甘いわね。あれでも作動する時はあるのよ」
 勇太:「そうなんですか?メイド人形達が武装して、ズチャラズチャラと屋敷内を見回りしている時点で十分だと思いますけど……」
 イリーナ:「ま、そこは私に考えがあるのよ」
 勇太:「先生もアキバへ行かれますか?」
 イリーナ:「いや、私は他に行く所があるから。2人で行ってらっしゃい。ああ、そうそう、マリア」
 マリア:「はい?」
 イリーナ:「欲しい物があるのはしょうがないけど、無駄使いはしないようにね」
 マリア:「わ、分かってますよ」
 勇太:「先生、なるべく安いのを買いますから」
 イリーナ:「勇太君に任せれば安心かしらね」

[同日09:35.天候:晴 JR大宮駅西口→京浜東北線ホーム]

 佳子の運転する車で駅まで送ってもらった魔道師達。

 勇太:「ありがとう、母さん」
 佳子:「それじゃ、気をつけてね」
 マリア:「アリガトウゴザイマス」
 イリーナ:「どうもすいませんねぇ……」

 駅構内に入る3人。

 勇太:「本当にいいんですか?別行動で……」
 イリーナ:「ええ。私は秋葉原には行かないからね。でも今日中には戻るから」
 勇太:「分かりました。お気をつけて」
 イリーナ:「ん、それじゃね」

 イリーナは北改札の方へと向かった。

 勇太:「僕達も行きましょう」
 マリア:「そうだな」

 稲生達は中央改札(北)からコンコースへと入った。

 勇太:「秋葉原まで乗り換え無しで行こうとすると……京浜東北線かな。少し時間が掛かりますけど……」
 マリア:「いや、いいよ。これで」
 勇太:「じゃ、ケト線で」

 手を繋いで進めば、まるでカップルのよう。
 いや、もうカップルみたいなものか。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、9時43分発、快速、蒲田行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 ホームへの階段を下りると、既に電車が発車を待っていた。

 勇太:「埼京線の緑、京浜東北線の空色……」
 マリア:「何が?」
 勇太:「この色をシンボルカラーとした悪魔は何だったかなぁ……と」

 そこへズイッと現れた英国紳士のコスプレをしたベルフェゴール。
 マリアの契約悪魔である。
 普段はどこかに隠れているわけだが、要所要所で現れる。
 肌が山手線のウグイス色をしている他は、人間と変わらない。
 シルクハットに片眼鏡を着けているが、普通は右目に着ける所を左目に着けている。
 これはベルフェゴールが、あくまで人間ではないことを主張する為だという。
 肌の色からして人間ではないとすぐに分かるのだが、悪魔の考えることはなかなか理解しがたい。
 手にはセクシーポーズを撮るエレーナの写真を持っていて、その後ろにソロバンを持ってVサインをしている悪魔マモンの姿があった。

 勇太:「ああ、マモンだったのか」
 マリア:「こいつの笑顔がキモいから、さっさとしまってくれ」

 ベルフェゴールは大きく頷くと、写真をシルクハットの中にしまった。
 今度は鳩でも出て来るのだろうか。
 稲生とマリアは最後尾の車両に乗り込んだ。

[同日09:43.天候:晴 JR京浜東北線快速10号車内]

 発車時刻になり、ホームに発車メロディが鳴り響く。
 大宮アルディージャのテーマソングから取ったもの。
 政令指定都市に2つのプロサッカーチームがあるのは珍しい。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 ブルーの座席に腰掛ける2人の魔道師。
 稲生はスマホで、家庭用プロジェクターの候補を探していた。
 水晶球要らずである。
 ドアが閉まって、電車が走り出した。
 この時点では、並走する上野東京ラインよりも空いている。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は京浜東北線、快速、蒲田行きです。停車駅は田端までの各駅と、上野、秋葉原、神田、東京、浜松町です。浜松町から先は、各駅に停車致します。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 昨夜と打って変わって晴れ渡る空。
 晩夏の太陽光が車内に降り注ぐ。

 勇太:「いくつか候補があるんで、これで探してみましょう」
 マリア:「さすがだな」
 勇太:「ポイントもあるから、それを使えばもっと安くできるはずです」
 マリア:「そんなにポイント溜まってるのか?」
 勇太:「ええ。この前マリアさんが買った紅茶サーバーですよ」
 マリア:「あ……」

 師匠へのお茶汲みは、弟子の仕事である。
 だがマリアの場合、少しでも楽をする為、紅茶サーバーを衝動買いした。
 多分、それがイリーナにバレているのだろう。
コメント
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