報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「帰省3日目」

2018-09-10 19:07:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月28日07:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 起床した稲生勇太。
 今度のアラームは大宮駅7番線である。
 ま、特に珍しいものではない。

 勇太:「うーん……!」

 勇太は大きく伸びをした。

 勇太:「丑寅勤行をやったからいいか……。昨夜は雷ドッカンドッカン落ちてて、夜中に目が覚めたもんなぁ……」

 ズルズルとベッドから這い出す。
 着替えを手に部屋から出ると、すぐ近くのシャワールームで誰かかシャワーを使っていた。

 勇太:(こ、今度はマリアさんだよな……?)

 勇太はダダダッと階段を駆け下りる。
 そして、急いで1階の客間に向かった。

 勇太:「マリアさん!?」

 勇太はドアをドンドンと叩く。
 すると、中から出て来たのはセクシー下着を着けたイリーナ。

 イリーナ:「ああ。マリアなら、上のシャワー使わせてもらってるわよ」
 勇太:「わ、分かりましたーっ!」

 勇太は慌てて客間を出て行った。

 イリーナ:「あらあら」

[同日08:00.天候:晴 稲生家]

 勇太:「昨夜は凄いゲリラ豪雨でしたけど、誰かがライディーンでも使いました?」

 皆で朝食を取っている中、勇太はイリーナに聞いた。

 イリーナ:「おっ、よく知ってるねぇ……。でも残念。昨夜のはただの自然現象よ」
 勇太:「そうでしたか……。勇者しか使えない雷撃魔法ですもんね」
 イリーナ:「あれは悪魔と契約して使う魔法じゃないからね。別名、『神の雷』とも言われる魔法で、どちらかというと聖職者が使う魔法だったりするのよ」
 勇太:「へえ……」
 佳子:「勇太、今日はどこ行くの?」
 勇太:「マリアさんが家庭用プロジェクター欲しいって言うんで、取りあえずアキバまで」
 イリーナ:「マ・ヌゥ・サを習得すれば、そんなもの要らないわよ?」
 マリア:「だから、それホラーしか観れないじゃないですか」
 イリーナ:「本当に映画が好きになったのね」
 マリア:「屋敷の中に引きこもって人形ばかり作るのも飽きてきましたから」
 イリーナ:「地下にプールといい、段々と屋敷がホテルみたいになってきたわね」
 勇太:「さすがにデストラップのオンパレードでは、まだそうとは言えませんよ?」
 マリア:「どうせ侵入者なんていないんだから、もう撤去でいいじゃないですか」
 イリーナ:「甘いわね。あれでも作動する時はあるのよ」
 勇太:「そうなんですか?メイド人形達が武装して、ズチャラズチャラと屋敷内を見回りしている時点で十分だと思いますけど……」
 イリーナ:「ま、そこは私に考えがあるのよ」
 勇太:「先生もアキバへ行かれますか?」
 イリーナ:「いや、私は他に行く所があるから。2人で行ってらっしゃい。ああ、そうそう、マリア」
 マリア:「はい?」
 イリーナ:「欲しい物があるのはしょうがないけど、無駄使いはしないようにね」
 マリア:「わ、分かってますよ」
 勇太:「先生、なるべく安いのを買いますから」
 イリーナ:「勇太君に任せれば安心かしらね」

[同日09:35.天候:晴 JR大宮駅西口→京浜東北線ホーム]

 佳子の運転する車で駅まで送ってもらった魔道師達。

 勇太:「ありがとう、母さん」
 佳子:「それじゃ、気をつけてね」
 マリア:「アリガトウゴザイマス」
 イリーナ:「どうもすいませんねぇ……」

 駅構内に入る3人。

 勇太:「本当にいいんですか?別行動で……」
 イリーナ:「ええ。私は秋葉原には行かないからね。でも今日中には戻るから」
 勇太:「分かりました。お気をつけて」
 イリーナ:「ん、それじゃね」

 イリーナは北改札の方へと向かった。

 勇太:「僕達も行きましょう」
 マリア:「そうだな」

 稲生達は中央改札(北)からコンコースへと入った。

 勇太:「秋葉原まで乗り換え無しで行こうとすると……京浜東北線かな。少し時間が掛かりますけど……」
 マリア:「いや、いいよ。これで」
 勇太:「じゃ、ケト線で」

 手を繋いで進めば、まるでカップルのよう。
 いや、もうカップルみたいなものか。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、9時43分発、快速、蒲田行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 ホームへの階段を下りると、既に電車が発車を待っていた。

 勇太:「埼京線の緑、京浜東北線の空色……」
 マリア:「何が?」
 勇太:「この色をシンボルカラーとした悪魔は何だったかなぁ……と」

 そこへズイッと現れた英国紳士のコスプレをしたベルフェゴール。
 マリアの契約悪魔である。
 普段はどこかに隠れているわけだが、要所要所で現れる。
 肌が山手線のウグイス色をしている他は、人間と変わらない。
 シルクハットに片眼鏡を着けているが、普通は右目に着ける所を左目に着けている。
 これはベルフェゴールが、あくまで人間ではないことを主張する為だという。
 肌の色からして人間ではないとすぐに分かるのだが、悪魔の考えることはなかなか理解しがたい。
 手にはセクシーポーズを撮るエレーナの写真を持っていて、その後ろにソロバンを持ってVサインをしている悪魔マモンの姿があった。

 勇太:「ああ、マモンだったのか」
 マリア:「こいつの笑顔がキモいから、さっさとしまってくれ」

 ベルフェゴールは大きく頷くと、写真をシルクハットの中にしまった。
 今度は鳩でも出て来るのだろうか。
 稲生とマリアは最後尾の車両に乗り込んだ。

[同日09:43.天候:晴 JR京浜東北線快速10号車内]

 発車時刻になり、ホームに発車メロディが鳴り響く。
 大宮アルディージャのテーマソングから取ったもの。
 政令指定都市に2つのプロサッカーチームがあるのは珍しい。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 ブルーの座席に腰掛ける2人の魔道師。
 稲生はスマホで、家庭用プロジェクターの候補を探していた。
 水晶球要らずである。
 ドアが閉まって、電車が走り出した。
 この時点では、並走する上野東京ラインよりも空いている。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は京浜東北線、快速、蒲田行きです。停車駅は田端までの各駅と、上野、秋葉原、神田、東京、浜松町です。浜松町から先は、各駅に停車致します。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 昨夜と打って変わって晴れ渡る空。
 晩夏の太陽光が車内に降り注ぐ。

 勇太:「いくつか候補があるんで、これで探してみましょう」
 マリア:「さすがだな」
 勇太:「ポイントもあるから、それを使えばもっと安くできるはずです」
 マリア:「そんなにポイント溜まってるのか?」
 勇太:「ええ。この前マリアさんが買った紅茶サーバーですよ」
 マリア:「あ……」

 師匠へのお茶汲みは、弟子の仕事である。
 だがマリアの場合、少しでも楽をする為、紅茶サーバーを衝動買いした。
 多分、それがイリーナにバレているのだろう。

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