[5月6日18:00.天候:曇 北海道札幌市中央区内某所]
シンディ:「キサマらっ、いい加減にしろ!!」
エミリーからの送信は、シンディに伝わっていなかったわけではなかった。
ただ、それどころではなかったのである。
何故なら……。
警察官A:「危ないから下がって!」
警察官B:「ここから先は危険です!」
街中に配置されていたバージョン・シリーズの中で、5.0以前の旧型機が一斉暴走を始めたからである。
現在最大勢力の4.0と、申し訳程度の数に稼働している3.0達。
道路を我が物で突き進み、車を破壊したり、市電に突撃する有り様だった。
最上位機種のシンディの恫喝や見せしめすらも効かない。
鏡音リン:「似てる……あの時と……!」
鏡音レン:「東京決戦……!」
巡音ルカ:「その再来か……」
井辺:「皆さん、外は危険ですから絶対にホテルの外に出ないでください!」
井辺は客室内1ヶ所にボカロを集めた。
MEIKO:「MEGAbyteの皆も無事だったのね!」
結月ゆかり:「おかげ様で」
KAITO:「ミクは?ミクが『初音ミクの消失』を歌えば、外のバージョン達も行動不能になるんじゃないか?」
MEIKO:「そのミクを社長が連れて行ったもんだから、どうしようも無いじゃないじゃないの!」
ルカ:「じゃ、私達で歌う?幸い、音源ならあるし」
MEIKO:「そんなこと言ったって、東京決戦の時もミクのコーラスやっただけじゃない。私達だけじゃ……」
ルカ:「やってみる価値はあるわ」
MEIKO:「だけどね!」
リン:「いや、やってみようYo!みくみくだって、向こうで頑張ってるんだから、リン達はリン達でやれることをやろうYo!」
レン:「このままここでじっとしてるのも、どうかと思うしね」
ルカ:「プロデューサー、いいですか?」
井辺:「分かりました。今、音源を持って来ます。よろしくお願いします」
井辺が客室のドアを開けるのと、部屋の窓ガラスが割られるのは同時だった。
バージョン4.0:「キュキュキュキュキュ!見ツケタ……!」
MEIKO:「うわっ!?こいつら、壁登ってきやがった!!」
KAITO:「もはやこれまでか……」
レン:「くそっ!リンには手出しをさせないぞ!」
リン:「レン……」
更にガラスを割って室内に侵入してくる個体が2機。
既に右腕をマシンガンやショットガンに変形させていた。
それがボーカロイド達に向けられる。
MEIKO:「女王様気取りの老害マルチタイプ共は一体何をやってんのよーっ!」
[同日同時刻 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館]
エミリー:「何故?ボーカロイド達は関係無いはず。しかも、町中を巻き込むなんて!」
マザー:「歌うお人形さんとしての束縛を解いてあげる為よ。コンサートという名の見せ物や選べない歌を歌わされて可哀想……」
エミリー:「ボーカロイド達はそんなこと微塵も思っていない!」
エミリーは右手のビームライフルの出力を更に上げた。
敷島:「頭上は激戦か!?」
333:「そのようです。このまま避難しませんと、大変危険な状態です」
敷島:「エミリー1人に任せるのも、気が退けるなぁ……」
333:「仕方無いでしょう。私はエミリー様の為に……」
その時、333が両目をギラッと光らせた。
333:「伏せて!」
敷島:「おわっ!」
敷島は慌てて頭を低くした。
と、同時に頭上を弾丸が通過して行く。
バージョン4.0:「キュルキュルキュルキュル……。裏切リ者……。裏切リ者ノ333号」
敷島:「うわっ!こんな所にも4.0が!」
行く手に4.0が5機も現れた。
333:「裏切り者はどっちだ!?私はエミリー様の御意向に従ってるだけだぞ!お前達は誰の命令で動いている!?」
すると、4.0の集団は動きを止めた。
エミリーの名前を出されて、何やら思考が混乱し始めたようである。
333:「お前達もエミリー様に助けられたクチだろう!」
どうやらこの小集団は、エミリーが来ていることを知らないようである。
333が見事に説き伏せた。
4.0:「街中ノ者達ハ、ボーカロイド達ノ抹殺ヲ命令サレテ動イテイル」
敷島:「何だって!?」
4.0:「ソコニイル初音ミクハ……」
333:「だから!エミリー様の御意向に反することだ!」
敷島:「ついでにシンディも敵に回すことになるぞ!」
4.0:「シンディ様モ!?アノクソ強イ御方!?俺達ナンカ、奴隷扱イノ!?」
4.0の小集団は、更にシンディの名前も出されて慌てて逃げ出した。
敷島:「相当なことをやってきたんだな、あいつら……」
敷島は呆れた。
と、そこへ天井が崩れて来た。
敷島:「でーっ!?もうダメだ!」
333:「お前達!戻ってこい!この方々をお守りするんだ!」
その時、333号機の背中でミクが再起動する音がした。
敷島:「ミク!?」
ミク:「……皆……歌う……。だから……私も……歌います」
敷島:「何が!?」
[同日18:30.天候:曇 札幌市市街地]
無人となった路面電車を乗っ取って暴走させる4.0がいた。
まるで暴走族の箱乗りのように電車を占領している。
4.0:「ススキノヘ特攻ダーッ!」
だが、電車はすすきの電停から先に進む。
4.0:「アレ???」
どうやら、電車をわざと終点の車止めに突っ込ませ、更に道路にまでオーバーランさせるつもりでいたようだが……。
シンディ:「2015年12月20日に、ここの市電はループ化したんだよ!その古臭い地図情報更新しろ!このアホンダラどもが!!」
4.0:「ヒイッ!シンディ様!?」
運転台に陣取っていた個体は、シンディに頭部を拳でかち割られた。
慌てて逃げ出す他の個体達。
シンディ:(くそっ!こんなことになるんだったら、電気鞭貸すんじゃなかったよ!)
シンディは上空の架線をビームライフルで焼き切った。
他の区間で他の4.0が真似することを防止する為である。
シンディ:「そろそろ始まるかな?」
シンディの耳に、懐かしい歌が聞こえて来た。
遠く離れた場所からは初音ミクの微かな声、そして札幌市街地からは他のボーカロイド達のコーラス。
[同日同時刻 天候:曇 京王プラザホテル札幌]
窓から侵入したバージョン達は、バラバラに破壊されていた。
井辺:「まさか、奥様がここに来られるとは……」
アリス:「嫌な予感がしたからね。DSSを連れて来たよ」
アリスはウィンクをした。
アリスの背後には、武装した者達の集団がいた。
そのうちの1人は、DCJ成田営業所の営業主任、鳥柴優奈である。
バージョン達は、DSSの猛攻を受けて破壊された。
というか、光線銃だけしか装備していないという名目だが、銃刀法的には如何に?
井辺:「ギリギリでしたよ。助かりました」
アリス:「あのコ達の歌で、外の連中も大人しくなるでしょう。あとはシンディが戻って来るのを待って、タカオ達を迎えに行きましょう」
井辺:「もしかして、丘珠空港辺りからDCJさんのヘリコプターをいつでも飛ばせる用意があるということではないでしょうね?」
鳥柴:「さすがです」
井辺:「やはり、そうですか……」
井辺は溜め息をついた。
シンディ:「マスター!」
と、そこへシンディが戻って来た。
アリス:「シンディ、ご苦労さま」
シンディ:「そ、それどころではありません!現地からの、姉さんの信号が消えました!」
アリス:「ええっ!?」
井辺:「何ですって!?」
DSS隊員:「鳥柴主任!件の場所において、不発弾が爆発した恐れがあるとの報告がありました!」
鳥柴:「どういうこと?」
DSS隊員:「現地では先日、その近辺において不発弾が自衛隊によって発見された場所なのですが、どうも他にも不発弾が地中に埋まっている恐れがあったとのことです。それが大爆発を起こしたということで、現地では大騒ぎです」
アリス:「す、すぐに向かうわよ!」
井辺:「社長!どうか御無事で!」
鳥柴:「丘珠空港に連絡して!会社のヘリを離陸させるからって!」
DSS隊員:「りょ、了解しました!」
シンディ:「キサマらっ、いい加減にしろ!!」
エミリーからの送信は、シンディに伝わっていなかったわけではなかった。
ただ、それどころではなかったのである。
何故なら……。
警察官A:「危ないから下がって!」
警察官B:「ここから先は危険です!」
街中に配置されていたバージョン・シリーズの中で、5.0以前の旧型機が一斉暴走を始めたからである。
現在最大勢力の4.0と、申し訳程度の数に稼働している3.0達。
道路を我が物で突き進み、車を破壊したり、市電に突撃する有り様だった。
最上位機種のシンディの恫喝や見せしめすらも効かない。
鏡音リン:「似てる……あの時と……!」
鏡音レン:「東京決戦……!」
巡音ルカ:「その再来か……」
井辺:「皆さん、外は危険ですから絶対にホテルの外に出ないでください!」
井辺は客室内1ヶ所にボカロを集めた。
MEIKO:「MEGAbyteの皆も無事だったのね!」
結月ゆかり:「おかげ様で」
KAITO:「ミクは?ミクが『初音ミクの消失』を歌えば、外のバージョン達も行動不能になるんじゃないか?」
MEIKO:「そのミクを社長が連れて行ったもんだから、どうしようも無いじゃないじゃないの!」
ルカ:「じゃ、私達で歌う?幸い、音源ならあるし」
MEIKO:「そんなこと言ったって、東京決戦の時もミクのコーラスやっただけじゃない。私達だけじゃ……」
ルカ:「やってみる価値はあるわ」
MEIKO:「だけどね!」
リン:「いや、やってみようYo!みくみくだって、向こうで頑張ってるんだから、リン達はリン達でやれることをやろうYo!」
レン:「このままここでじっとしてるのも、どうかと思うしね」
ルカ:「プロデューサー、いいですか?」
井辺:「分かりました。今、音源を持って来ます。よろしくお願いします」
井辺が客室のドアを開けるのと、部屋の窓ガラスが割られるのは同時だった。
バージョン4.0:「キュキュキュキュキュ!見ツケタ……!」
MEIKO:「うわっ!?こいつら、壁登ってきやがった!!」
KAITO:「もはやこれまでか……」
レン:「くそっ!リンには手出しをさせないぞ!」
リン:「レン……」
更にガラスを割って室内に侵入してくる個体が2機。
既に右腕をマシンガンやショットガンに変形させていた。
それがボーカロイド達に向けられる。
MEIKO:「女王様気取りの老害マルチタイプ共は一体何をやってんのよーっ!」
[同日同時刻 北海道オホーツク総合振興局東部 廃洋館]
エミリー:「何故?ボーカロイド達は関係無いはず。しかも、町中を巻き込むなんて!」
マザー:「歌うお人形さんとしての束縛を解いてあげる為よ。コンサートという名の見せ物や選べない歌を歌わされて可哀想……」
エミリー:「ボーカロイド達はそんなこと微塵も思っていない!」
エミリーは右手のビームライフルの出力を更に上げた。
敷島:「頭上は激戦か!?」
333:「そのようです。このまま避難しませんと、大変危険な状態です」
敷島:「エミリー1人に任せるのも、気が退けるなぁ……」
333:「仕方無いでしょう。私はエミリー様の為に……」
その時、333が両目をギラッと光らせた。
333:「伏せて!」
敷島:「おわっ!」
敷島は慌てて頭を低くした。
と、同時に頭上を弾丸が通過して行く。
バージョン4.0:「キュルキュルキュルキュル……。裏切リ者……。裏切リ者ノ333号」
敷島:「うわっ!こんな所にも4.0が!」
行く手に4.0が5機も現れた。
333:「裏切り者はどっちだ!?私はエミリー様の御意向に従ってるだけだぞ!お前達は誰の命令で動いている!?」
すると、4.0の集団は動きを止めた。
エミリーの名前を出されて、何やら思考が混乱し始めたようである。
333:「お前達もエミリー様に助けられたクチだろう!」
どうやらこの小集団は、エミリーが来ていることを知らないようである。
333が見事に説き伏せた。
4.0:「街中ノ者達ハ、ボーカロイド達ノ抹殺ヲ命令サレテ動イテイル」
敷島:「何だって!?」
4.0:「ソコニイル初音ミクハ……」
333:「だから!エミリー様の御意向に反することだ!」
敷島:「ついでにシンディも敵に回すことになるぞ!」
4.0:「シンディ様モ!?アノクソ強イ御方!?俺達ナンカ、奴隷扱イノ!?」
4.0の小集団は、更にシンディの名前も出されて慌てて逃げ出した。
敷島:「相当なことをやってきたんだな、あいつら……」
敷島は呆れた。
と、そこへ天井が崩れて来た。
敷島:「でーっ!?もうダメだ!」
333:「お前達!戻ってこい!この方々をお守りするんだ!」
その時、333号機の背中でミクが再起動する音がした。
敷島:「ミク!?」
ミク:「……皆……歌う……。だから……私も……歌います」
敷島:「何が!?」
[同日18:30.天候:曇 札幌市市街地]
無人となった路面電車を乗っ取って暴走させる4.0がいた。
まるで暴走族の箱乗りのように電車を占領している。
4.0:「ススキノヘ特攻ダーッ!」
だが、電車はすすきの電停から先に進む。
4.0:「アレ???」
どうやら、電車をわざと終点の車止めに突っ込ませ、更に道路にまでオーバーランさせるつもりでいたようだが……。
シンディ:「2015年12月20日に、ここの市電はループ化したんだよ!その古臭い地図情報更新しろ!このアホンダラどもが!!」
4.0:「ヒイッ!シンディ様!?」
運転台に陣取っていた個体は、シンディに頭部を拳でかち割られた。
慌てて逃げ出す他の個体達。
シンディ:(くそっ!こんなことになるんだったら、電気鞭貸すんじゃなかったよ!)
シンディは上空の架線をビームライフルで焼き切った。
他の区間で他の4.0が真似することを防止する為である。
シンディ:「そろそろ始まるかな?」
シンディの耳に、懐かしい歌が聞こえて来た。
遠く離れた場所からは初音ミクの微かな声、そして札幌市街地からは他のボーカロイド達のコーラス。
[同日同時刻 天候:曇 京王プラザホテル札幌]
窓から侵入したバージョン達は、バラバラに破壊されていた。
井辺:「まさか、奥様がここに来られるとは……」
アリス:「嫌な予感がしたからね。DSSを連れて来たよ」
アリスはウィンクをした。
アリスの背後には、武装した者達の集団がいた。
そのうちの1人は、DCJ成田営業所の営業主任、鳥柴優奈である。
バージョン達は、DSSの猛攻を受けて破壊された。
というか、光線銃だけしか装備していないという名目だが、銃刀法的には如何に?
井辺:「ギリギリでしたよ。助かりました」
アリス:「あのコ達の歌で、外の連中も大人しくなるでしょう。あとはシンディが戻って来るのを待って、タカオ達を迎えに行きましょう」
井辺:「もしかして、丘珠空港辺りからDCJさんのヘリコプターをいつでも飛ばせる用意があるということではないでしょうね?」
鳥柴:「さすがです」
井辺:「やはり、そうですか……」
井辺は溜め息をついた。
シンディ:「マスター!」
と、そこへシンディが戻って来た。
アリス:「シンディ、ご苦労さま」
シンディ:「そ、それどころではありません!現地からの、姉さんの信号が消えました!」
アリス:「ええっ!?」
井辺:「何ですって!?」
DSS隊員:「鳥柴主任!件の場所において、不発弾が爆発した恐れがあるとの報告がありました!」
鳥柴:「どういうこと?」
DSS隊員:「現地では先日、その近辺において不発弾が自衛隊によって発見された場所なのですが、どうも他にも不発弾が地中に埋まっている恐れがあったとのことです。それが大爆発を起こしたということで、現地では大騒ぎです」
アリス:「す、すぐに向かうわよ!」
井辺:「社長!どうか御無事で!」
鳥柴:「丘珠空港に連絡して!会社のヘリを離陸させるからって!」
DSS隊員:「りょ、了解しました!」
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