報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

小説の途中ですが、ここで本日の日記をお送りします。

2015-11-26 23:15:00 | 日記
 本日の更新は都合により、休止させて頂きます。

 というテンプレートを用意したのだが、結構ネタがあったので、このまま日記として更新させて頂く。
 というのは“普段着の折伏”の成果が出て来たこともあり、私の所属寺院まで対象者となりそうな人をご案内できたからである。
 概要は大方説明した。
 あとは、本山のことについて説明すれば良い。
 幸い今月末、添書登山に行く予定なので、色々と資料を調達することもできるだろう。

 平日行動できる強みが、警備業界にある。
 多くの宗教団体が週末を中心に活動をしており、それは日蓮正宗も同じであるため、実は警備業界には信心深い人がたまにいても、宗教の勧誘を受ける機会が無い。
 そのため、創価学会やキリスト教以外の他教に染まっている人は意外と少ない。
 つまり、開拓の余地はしっかりあるのだ。

 が、私以外に平日行動できる人間はおらんのか。
 折伏の応援頼んでも、誰も来やしねぇw
 これが顕正会なら誰も来ないばかりか、
「平日行けるわけないだろ!週末に約束取れ!!」
 と、逆ギレされる始末だった。
 さすがに今の法華講ではそこまでヒドくはないが、こんなんで誓願達成しろと言われても困るんだがね。
 ま、それはつまり、顕正会式折伏法には頼らず、自力で折伏せよということに他ならない。
 そういえば私の紹介者も、私への折伏の時は1人で来てたな……。
 しょうがない。うちの班はそういう方針なのだろう。
 一般人相手に御書を開いてもしょうがないので(教学の無い私には、一般人相手の折伏は大助かりだ)、いかに日蓮正宗が良い宗派かを説明するので手一杯だった。
 幸い、仕事運の向上という功徳の現証を持って、ある程度の裏付けはできた。
 あとは、相手の気持ち次第。

 こればかりは本人の気持ち次第だからね。
 でもまあ、顕正会などより先に折伏できて良かったと思うよ。

 このように、街頭折伏などせんでも、折伏はできるんだがね。
 そりゃまあ、チンタラやってることに変わりは無いから、組織の誓願なんてブッチギリで下回るさ。
 だけど、それに囚われて新興宗教のような勧誘法に成り下がるのもどうかと思う。

 私は私なりに成果を出しているのだから、それで良いのではないと考えている。

 別に、仏敵を叩き潰すということを否定するつもりはない。
 パラパラ茜のオバハン、顕正会員バーズ氏、沖修羅新宗の河童教祖は叩き潰されてもしょうがないだろう。
 しかし、私が相手にしているのはそのような仏敵ではなく、何も知らぬ一般人だ。
 日蓮正宗のことは世間に知られていない。
 その通りだが、だからこそ却って色眼鏡を使われずに話し掛けやすいんじゃないかな?
 どうしても、創価学会と絡めて話をしなければならない部分が気になるところではあるけれど。
 でも、それで仏法の話ができれば、それはそれで仏種を蒔いたことになるんじゃないかと思う。

 在家信徒は、ここまでやれば十分なんじゃないの?
 と、私は思うのだが……。
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“大魔道師の弟子” 「幽霊達のクルーズ船」

2015-11-26 02:26:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[日付不明 時刻不明(夜間) 天候:晴 クイーン・アッツァー号(船橋区画) 稲生勇太]

 用具室でペンチとゴム手袋を手に入れた稲生は、魔道師の姿をした化け物(“魔の者”?)の攻撃を交わしながら、何とか照明の灯る廊下へ飛び出た。
 ヒューズボックスの所へ行こうとしたが、その前にやることがあったことに気づいた。
 まずは船長室へ戻る。
 その中のベッドルーム。
 そこには緑色に塗装された木製のクロゼットがあって、しかし観音扉は針金でギチギチに取っ手が固定されていて開かない状態だった。
「よし。これで……」
 ペンチで針金を切り落とす。
 針金は真っ二つになって、クロゼットから落ちた。
 こんなものがヒューズの代わりになるのか分からないが、やってみるしかない。
 ついでに、中に何があるのか気になって開けようと思った。
 しかし、
(魔物がいて、いきなり飛び出して来たらどうしよう……?)
 と、急に不安に駆られてしまった。
 ところがクロゼットの中から、
「別にキミを取って食おうとか、そんなことは微塵も考えていないよ。安心して開けなさい」
 と、男の声がした。
 どこかで聞いたことのあるような声だが……?

 稲生は観音扉を開けた。
 そこにいたのは、人ではなかった。
 といっても、不安的中で魔物が潜んでいたわけでもない。
 船長の制服などがハンガーに掛けられていたのは当然として、要はその下に一冊の本が置かれていたのだ。
 その本を拾い上げようとした稲生は、思わずのけ反りそうになった。
 本が勝手にクロゼットの中から出てきて、稲生の前でフワフワ飛んでいたのだ。
 その本の表紙には天の川の模様柄が描かれていて、タイトルは英語であったが、和訳すると、“星界号航海日誌”であった。
 男の声は、その本から聞こえてきた。
「私は“スターオーシャン”号といって、今キミのいる“クイーン・アッツァー”号とは同型の姉妹船の船長を務めている者だ。私の船に来たまえ。話がある」
 どうやら、『スターオーシャン』までは和訳する必要は無かったようだ。
「船に来いって……。どうやって行くんです?」
「この本を持って、まずはその船の船橋まで来ると良い。話はそれからだ」
 スターオーシャン号の船長と名乗る男の声がする本は、稲生の手の中に収まった。
 本の大きさはA4サイズで、厚さは数センチある。
 市販の時刻表の表紙を厚紙にして、中の紙質ももっと丈夫にした感じだ。
 稲生は言われた通り、船橋に向かうことにした。
 が、そこへの入り口と思われるドアには鍵が掛かっている。
「参ったな……。鍵を持っているのは……副船長さんかな?」
 しかし副船長の幽霊らしき姿は、どこにも見当たらない。
「あ、そうだ。ヒューズ」
 稲生はその前にやることがあったことを思い出し、ヒューズボックスへ向かった。

 ゴム手袋を装着して、ヒューズボックスを開ける。
 それのおかげで、感電せずに済んだ。
 隣の無事なヒューズを見ながら、適当に繋いでみる。

 バチッ!(火花が一瞬飛び散った)

「うわっ!」
 突然の火花に驚いたが、それでも何とか繋げられたような気がする。
 一応、試しに電気の点かなかった部屋に行ってみた。

「うふふふふふふふ……!」
 用具室に入ると、また例のジェシカ師の姿をした女の化け物が襲い掛かってきたが、稲生が電気のスイッチを入れると見事に点灯した。
 女はまたしても魔道師のローブのフードを深く被り、光から逃げ去るようにして消えた。
「やった!」
 この調子で会議室に戻り、そこでもスイッチを入れる。
 果たして、会議室でも電気が点いた。
 すると室内にいた船員の幽霊は天井を見上げ、
「光だ……。やっと……明るくなった……。これでもう……アイツが……来る事は……ない……」
 安堵の声を漏らした。
 恐らく死ぬ間際まで、化け物に襲われる恐怖に取り憑かれていたのだろう。
 それでこの会議室に地縛霊として括られてしまっていたようであるが、その恐怖から解放されたからなのか、スーッと消えていった。
 仏法上では意味が違うが、世間一般的に言えば、『成仏』したのだろう。
 その船員が残した置き土産が2つあった。
 1つは、床に落ちた鍵が1つ。
 タグには浮輪の絵が書いてあった。

 

(もしかして、これって……?)
 稲生は拾い上げて思った。
 もしかしたら、これが船橋へ通じるドアの鍵なのではないかと。
 そして、もう1つ。
「こ、これは……!?」
 さっきまで船員がいた所に浮かぶ、紫色の宝石のようなもの。
 ゴルフボールのような形であった。
「何だろう、これ……?」
 稲生の手の中に収まったが、それで何か起こるというわけでも無かった。
(とにかく、船橋へ向かおう)
 会議室の外へ出ると、そこに副船長が佇んでいた。
「あっ、副船長さん」
「……よくぞ、私の部下を助けてくれた……。礼を言おう……」
「いえ、僕は大したことはやってませんよ」
「この船には……あの者のように、この船に囚われた者達が何人もいる」
「ええっ?」
「私の部下達は元より……その他のスタッフ……乗船客の皆さん……。それぞれが……それぞれの思いに縛られて……この船から出ることができずにいる……。キミのような人物が現れるのを待っていた……。どうか……この船の……化け物を退治してくれとまでは……言わない。だがどうか……せめて、それに殺されてしまった者達を救ってもらいたい……。頼んだぞ……」
 副船長はそう言うと、稲生に敬礼してやはり消えていった。
 あの紫色のゴルフボールみたいな宝石を残して……。
(一体、これは何なんだろう?)
 稲生は副船長の残したそれを手にすると、今度は船橋に向かった。

(よし、開いた!)
 果たして会議室の船員が置いて行った鍵は、船橋へ通じるドアの鍵だった。
 そこも照明が消えていたが、スイッチを入れるとちゃんと点灯した。
 船橋には誰もいなかった。
 副船長は船長が行方不明だと言っていたが、船長の座る椅子にも見当たらなかった。
 しかし、舵輪は勝手に動いている。
 一瞬、幽霊が操舵しているのかと思ったが、その周辺の機器を見て、ただ単に自動航行システム(オートパイロット)になっているだけのようだった。
 それで、ここに来たはいいものの、その後はどうすれば良いのだろう?
 稲生がその疑問を心に浮かべると、再び本からさっきの男の声がした。

 そこから出た指示とは……。
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小説の途中ですが、ここで閑話休題と行きましょうか。

2015-11-24 19:27:54 | 日記
 私が今行っているヘルプ先は、来年から私の正式な異動先となる。
 そこは今年の7月から始まった現場で、R35の私を除けば、全員がR45の独身男女の職場である。
 そのR45(女性だからL45か)の女性警備員なのだが、たまにヘルプで行く程度の私から見れば、冗談もよく言う快活なアネさんといった感じだ。
 あと10年若く、私と同世代以下であれば、食事にでも誘うところなので残念である。
 ところが、私と違って、毎日顔を合わせている正勤者の人達からすると、そうでもないらしい。
 毎日顔を合わせているからなのか、やはりお互いに癖というのが見えてきたらしい。
 私も他人事ではないのだが、やはり40代ともなると、そろそろ親の介護をどうしようとなる年代であるようで、これは私が20歳の時、初めて社会に出てから何回も目の当たりにしてきた。
 そしてそれは、アネさんも同様らしい。
 実は、今年の初めに私が書いた“非婚のススメ”の通りに彼女はなってしまったのである。
 アネさんは独身で、他に兄弟もおらず、1人で母親の介護をしなければならないらしい。
 “非婚のススメ”に、それがどういう意味だか書いた記憶がある。
 結婚でもしていれば、そのストレスをダンナにでもぶつけることができるのだろうが、していない場合、最悪は爆発して流血の惨を見ること必至であるようなことを書いた記憶がある。
 確か、愛国 清澄さんもこのことについて書いておられなかったかな?
 その介護の苦労について、職場で私らに愚痴る分にはまだ良い。
 私もこれから親を介護する世代になるわけだし、既にそれに入っている同世代の隊長達も他人事ではないからだ。
 だから、あまり歳を取ってから、つまり40代になってからの婚活は、もれなく相手の親の介護が付いてくるかどうかが焦点のような気がする。
 20代女性なら、まだ相手の外見だの収入だのに拘っていられるが、歳を取って来るとそうもいかないのだよ。
 そうだろう?パラパラ茜のオバハンよ?ブログで自分の親の介護のことについて触れていないのは、どうしてかね?
 愛国さんだって、その心労を吐露しておられるのだぞ?

 そのアネさんなのだが、どうもここ最近、おかしくなってきているようだ。
 昨日、勤務をドタキャンした。
 警備員という仕事には、ノルマが無い。
 強いて言うなら、時間通りに出勤して時間通りの配置について、時間通りに帰ることがノルマかな。
 そのノルマの為に、日曜日も大晦日も元旦も出勤しなくてはならないのだ。
 そして、契約先の契約内容を履行する為には、正にその契約内容通りの時間に勤務しなければならないわけだ。
 アネさんはそれを蹴ってしまったわけである。
 担当の警務主任が慌ててやってきて、代理要員を確保したり、顧客のユーザー様に陳謝したりと大変であった。
 警務主任は事務職なので、本来昨日は休みであるはずだったのだが、アネさんのドタキャンの為に慌ててやってきたというわけだ。
 それまでにも副隊長や隊長が何度かアネさんと連絡を試みたが、隊長は、
「本当に具合が悪そうだった」
 とし、副隊長にあっては、
「確かに具合が悪そうではあったが、まるで二日酔いのそれに似ていた」
 とも言う。
 いずれにせよ、通常出勤できない体調であったのは事実であろうが、それにしても連絡が遅いのには閉口した。
 実は私は一昨日にもヘルプに行っていて、アネさんが元気に勤務していたことを知っている。
 その後の親の介護で大変だったのだろうとは思うし、いくらL45といってもまだ“終了”していなければ、女性特有のアレもあるだろうが、前者
はともかく、後者は急に来るものなのかは、男で、尚且つ身近に生殖能力のある女性がいない私には分かるものではない。

 実は副隊長は友人の紹介で、年下の未婚女性に会うことになっていた。
 無論、アネさんのドタキャン程度でそれがキャンセルになるわけではない。
 だた、彼は私と同様、嫌煙家である。
 紹介される38歳の女性は、喫煙者なので、それだけでNGとのこと。
 しかし、まず会わないことには紹介者の顔も立たなくなるので、取りあえず会うだけ会うとのことであった。
 “非婚のススメ”にも書いたと思うが、やはり男は独身のままの方が勝ち組のような気がしてしょうがない。
 この来年から新しい職場となるヘルプ先の人々を見て、今年始めに書いた記事の内容に確信を持つようになった。
 うちの母方の祖母は、仙台の善修寺近くの介護施設に入所しているのだが、私の両親が健在だからこそ、円滑な介護ができているかのように見える。
 片親(つまり母親)だけなら、かなり大変なのではないかとも思う。
 無論、それだけの為に結婚するのはナンセンスである。
 私が万が一仮に結婚するなら年下が良いというのは、もれなく親の介護がすぐにやってくるような(あるいは現在進行形)年代では困るからだ。

 実は私のこの考え、しっかり小説にも繁栄されている。
 意識して書いたわけではないが、自然とそうなった。
 “アンドロイドマスター”シリーズの平賀奈津子は30代前半で平賀太一と結婚したし(つまり、まだ親が元気な世代)、アリス敷島にはそもそも親がいない。
 “ユタと愉快な仲間たち”シリーズにおいて、栗原江蓮は女子高生だったから両親が元気なのは当然だし、稲生勇太が惚れているマリアンナ・スカーレットにも親はいない(そういえば、完全にいないとした描写は無いナ……)。

 茜オバハンや職場のアネさんとか見てると、やはり女は歳取るとこうなるか……と思って、やっぱり結婚する気は失せるのである。
 あ、来年は別に“新・非婚のススメ”とかは書きませんよ、ええ。

 1番良いのは、私のそんな考えを真っ向から崩してくれる女性が現れてくれることなんだろうが、これを祈ろうとして登山しようとしたら、登山バスが事故りそうな気がするからやめておこう。
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“大魔道師の弟子” 「クイーン・アッツァー号のブリッジエリアで」

2015-11-24 10:48:51 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[日付不明 時刻不明(夜間) 天候:晴 クイーン・アッツァー号(船橋区画) 稲生勇太]

 副船長の幽霊から「夜は危険だから」という理由で、船橋区画の廊下には出ないように注意された稲生。
 しかし案内された船長室で待てど暮らせど、状況が変わる様子が無い。
 痺れを切らした稲生は、意を決して副船長の注意を破ることにした。
 照明の点いていない暗い廊下に出ると、
「うふふふふふふ……」
「!?」
 すぐ近くで若い女の笑い声がした。
 稲生がその方向に顔を向けると、そこにいたのは見覚えのある……。
「うわっ!?」
 ナレーション間に合わず、稲生の体が持ち上げられた。
 具体的には、魔法の杖を持った女が稲生を『見えざる力』で、天井まで持ち上げ、床に叩き付けるというものだ。
「うう……」
 背中を打ちつけた稲生は、起き上がるのに苦労した。
「あ、あなたは、魔道師さんですよね!?僕は怪しい者じゃありません!僕は稲生勇太と言いまして、イリーナ・レヴィア・ブリジット先生の弟子です!」
 だが、そんな稲生の言葉を聞いていないかのように、もう1度同じ攻撃をしてきた。
「わわわわっ!ちょっと!ちょっと待ってー!」
 ゆっくりと体が持ち上がる稲生。
 バタバタと四肢をバタ付かせて抵抗を試みる稲生だったが、そんなこと無駄で……は無かったようだ。
 右足が壁に当たる。
 その壁には、何かがあった。
 それは照明のスイッチ。
 足が当たったショックでスイッチが入り、廊下の照明が点灯した。
「キャアアアアアアッ!!」
「!!?」
 廊下が明るくなると、女は急に叫び声を上げて、フードで顔を隠すような仕草をすると、そのまま消えて行った。
 と、魔法が切れたのか、再び稲生は床に落ちる。
「な?な?」
 稲生が驚愕していると、
「光だ……。奴らは……光を嫌う……」
 副船長の声が聞こえた。
 すぐ後ろに、影だけの姿となった幽霊の副船長がいた。
「彼女は一体、何なんですか?」
「分からない……。彼女は急に現れて……そして、この船を襲った……。理由は……分からない……」
「光を嫌う……?待てよ……」
 それは“魔の者”の特徴ではなかったか。
 人間に憑依している間は、ある程度明るい所でも大丈夫だったが、それでも力を発揮できるのは夜間とか暗い場所。
 だから魔界の劇場でアカネは明るい場所では稲生達と戦おうとしなかったし、ヤノフ城決戦の時も夜間だった。
 人間界での移動時は昼間だったこともあって、確かに“魔の者”が姿を現すことはあっても、攻撃はしてこなかった。
 それは、“魔の者”が光を嫌うことの証である。
「電気の明かりでも逃げて行くとは……」
「ブリッジ付近であっても……電気の点かない所がある……」
「どういうことですか?」
「ヒューズが飛んだらしく……一部点かない所がある……。いいか?そういう所には、立ち入らないことだ……」
 副船長はそう言うと、どこかへ消えてしまった。
「……船長室に戻れって言わなかったな。よし」
 それなら電気の点かない所には注意するとして、船橋区画を探索してみることにした。

 まずは、廊下の向こうまで行ってみることにする。
 そこは会議室になっていた。
 で、そこは電気が点かない。
「まずいな……」
 しかし入ってすぐに、あの魔道師の姿をした“魔の者”が襲って来ることはなかった。
(あれ?待てよ。確か、あの魔道師の……どこかで見たような……?)
「誰だ……?」
「はっ!?」
 薄暗い会議室の、机の椅子に座っている者がいることに気づいた。
「そこにいるのは……誰だ……?」
 どうやら、別の船員の幽霊であるようだ。
 副船長と声が違う。
「え、えーと……僕はですね、どういうわけだか、この船に期せずして迷い込んでしまった者でして……けして、怪しい者では……」
「誰でもいい……。明かりを……明かりを点けてくれ……」
「えっ?」
「暗い……。このままだと……アイツが……アイツが来る……。助けてくれ……」
「アイツって、あの魔道師の姿をした人のことですか?」
「早く……明かりを……」
「こっちに来てください!廊下や船長室は電気が点きますから!」
 しかし、いくら稲生が呼び掛けても、船員は椅子から立ち上がろうとしなかった。
 いわゆる、地縛霊というヤツだろうか。
 その場に囚われてしまったまま死んでしまった為に、そこから動くことができない。
「どうやら、ヒューズが飛んでしまったようなんです。何とか、直す方法は無いでしょうか?」
「ヒューズボックスが……エレベーターの横に……ある。ヒューズは旧式のもので……繋ぐには……針金がいる……。だが、針金が……無い。もう……直せない……。用具室にあるのは……ペンチだけ……。ううう……」
 船員は今の状況を知っているのか、それだけ言うと頭を抱えて机に突っ伏してしまった。
「ちょっと待っててください」
 稲生は再び廊下に出た。
 取りあえず、まずはヒューズボックスを探すことにした。

 廊下を探索していると、確かにエレベーターが1機あった。
 しかしボタンを押してみたが、このエレベーターも電源が落ちているのか、全く反応しない。
 少なくとも乗り場に、『船首甲板、プロムナードへ』と書かれているので、少なくともそこへ行くエレベーターのようだ。
 そして船員の言う通り、確かにヒューズボックスがあった。
 開けてみると、ヒューズが2つある。
「これ……素手で触ったらマズいよな?」
 ただ、分かったことはあった。
 確かに、ヒューズの1つが飛んで無くなってしまっている。
 それが副船長の言う、船橋区画で一部電気が点かなくなった原因なのだろう。
 そして、その1つが会議室というわけだ。
「針金ねぇ……。あっ」
 そこで稲生は、針金のある場所を思い出した。
 あとは、用具室とやらにあるペンチを探す必要があった。
 それも適当に廊下に面したドアを開けると、すぐに見つかった。
 しかしその部屋も電気が点かない一部の部屋らしく、スイッチを押しても電気が点かなかった。
「えーと、ペンチは……と」
 稲生が窓から差し込む月明かりだけを頼りに用具室内を探すと、やっとこさペンチとゴム手袋が見つかった。
「よし!」
「うふふふふふふふ……!」
「!?」
 あの笑い声が聞こえた。
 そして、フードの隙間から見える赤い髪と緑色の目を見てユタは思い出した。
「ジェシカ先生!やめてください!」
「……!?」
 稲生が叫ぶと、一瞬魔道師の姿をした“魔の者”は不気味な笑みを消した。
「ジェシカ……?」
「くっ……!」
 動きが止まったので、稲生は急いで用具室の外に出ようとした。
 だが、
「ははははははは……!」
 再び不気味な笑みに戻ったジェシカ?らしき者は、稲生を魔法で持ち上げて、また床に叩き付けた。
「うっ……!」
 それでも這うようにして、何とか外に出た。
「はぁ、はぁ……!」
 ケガは無いのだが、ひどく体がだるい。
 どうやらあの魔法は、敵を攻撃するだけでなく、体力も奪うらしい。
 稲生は船長室で見つけた体力回復薬を使用した。
「ふう……」
 驚くほど、それまでのだるさが嘘のようになる。
「よし!頑張るぞ!」
 稲生は立ち上がって、ヒューズボックスに向かったのだった。
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“大魔道師の弟子” 「謎の豪華客船」

2015-11-23 20:35:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月26日14:45.マリアの屋敷2F・イリーナの部屋 稲生勇太]

 邸内2階の東西には、ゲストルームがいくつかある。
 そのうちの西側1室をイリーナが使い、東側1室を稲生が使っている。
 西側は1階にマリアの部屋があることから、イリーナの部屋も稲生の部屋より広い。
 広いというか、二間続きと言った方が良い。
「失礼します」
 入るとまず最初に執務室のような部屋になっていて、もう1つ奥がベッドルームがある。
 トイレとシャワーは備え付きだが、なるべくならバスタブに浸かりたいイリーナは共用のバスルームを使用することが多い。
 マリアの部屋には洗面台以外の水回りが無い為、実質的に師弟コンビ専用といったところか。
 東側にも共用バスルームはあるが、東側に住んでいるのは稲生だけであるため、実質的に稲生専用だったりする。
 尚、来客がある場合はこの限りではない。
 一応、稲生は挨拶して入ったが、当然今はイリーナが留守中の為、誰もいない。
 荷物の伝票を見ると、備考欄にベッドルームに入れておくように書かれていた。
「一体、中身は何だろう?」
 品名には『小物類』と書いてあったので、魔法具か何かが入っているのだろうか。
 もちろん、勝手に開けたりはしない。
 ベッドルームに入ると、元々イリーナがきれいに使っているのか、それともメイドの人形達がしっかり手入れをしているのか、とても整っている。
「ここに置いとけばいいかな」
 稲生はベッドの横に荷物を置いた。
 そして、ふと顔を上げた時、稲生は目を見開くことになる。
「!? あれは……」
 室内に飾られている絵画。
 ごく普通の油絵だ。
 大きさもA1版サイズを縦向きにした感じ。
 しかし、その絵は大きな船が描かれていた。
 船首部分が手前にあるのだが、それをこちらから向かって、右斜めに見ている感じ。
 つまり、船首部分が向かって右斜めに突き出て来る感じの描き方だ。
 その為、船首の横に描かれた船の名前が読み取れた。
「クイーン……アットア?……いや、アッツァ?アッツァーかな?」
 ユタが首を傾げ、絵に触ろうと手を伸ばした時だった。
「うっ……!」
 突然足に力が入らなくなり、まるで引力が逆転したような感じになる。
 そして、目は開けているはずなのに、閉じたかのように視界が無くなる。
 この感じ、まさに貧血だった。

 昔は……威吹と出会った頃は……よく……倒れ………。

[日付不明 時刻不明 天候:晴 クイーン・アッツァー号(船橋区画) 稲生勇太]

「……っと!……もしもし?大丈夫か?」
「う……」
 稲生は誰かに肩を叩かれて目を覚ました。
「ここで……寝てたら……いけない」
「あ、すいません……。あれ?」
 稲生は上半身だけ起こすと、周りを見渡した。
 確か、マリアの屋敷のイリーナの部屋にいたはずだが……?
「ここで……何をしている……?」
 中年の男の声がした。
「あ、いえ、すいません!僕も何が何だか、さっぱり!気が付いたらここに……!って、ここはどこですか?」
「……クルーズ船、クイーン・アッツァー号のブリッジ付近だ。ここは……乗客の立ち入りは……禁止だ」
「そ、そうですよね!」
 稲生はさっきから辺りを見回している。
 何故なら、声の主の姿が見えないからだ。
 さっき、肩を叩かれた感触はあったのだが……。
「……もうすぐ、日が暮れる。ここは……危険だ。安全な場所へ……案内しよう」
「は、はい」
 稲生は立ち上がった。
 しかし、相変わらず声の主の姿は見えない。
 稲生が倒れていた場所は、船橋区画の廊下。
 丸い窓から外を見ると、確かに夕方であった。
(僕は2〜3時間は倒れていたのかな?でも、何でいきなり船?)
 確かに時折、足元から揺れを感じる。
 それは確かに船の揺れだ。
「……申し遅れた。私は……この船の副船長だ」
「副船長さん……です、か?でも、姿が……。!?」
 その時、夕日が丸い窓を通して薄暗い廊下に差し込んで来た。
 そして稲生が見たのは、影だけの姿になっている副船長の姿だった。
 斜めに見ると、頭の海員帽の形が見えるので、少なくとも船員なのだと分かった。
「姿が見えない……か。そうか。やはり、私も死んで……」
「えっ?」
 副船長を名乗る人影は、とある部屋の中にスッと入った。
 ドアを開けずに、ドアの中を通って。
「ゆ、幽霊!?」
 そうかもしれない。
 だが、その副船長を名乗る幽霊らしき影からは、少なくとも敵意や殺意らしきもの……つまり、怨念のようなものは感じない。
 ドアには、船長室と書かれていた。
「し、失礼します!」
 稲生はもちろん生きている人間なので、普通にドアノブを回して中に入った。
 そこは豪華客船の船長室らしく、豪勢な造りになっている。
 入ると、室内は明るい執務室になっていた。
「あの、副船長さん……ですよね?」
「そうだが……?」
「船長室に勝手に入ってもいいんですか?」
「船長は……いない」
「いない?」
「この船が……化け物に襲われてから……いなくなってしまった。今……この船の中を彷徨う者の中で……1番の責任者は……私だけだと思う……」
「化け物に襲われた?何ですか、それは?」
 稲生が質問すると、副船長は窓の外を見た。
 稲生のその質問に答える気は無いようだ。
「日が暮れた。今……とても、危険な時間だ」
「危険な時間?」
 嵐が来るのだろうか?
 しかしその割には船は大きく揺れることはないし、窓の外を見ても、嵐どころか、きれいな月明かりである。
「……ここから……出ては……ならない。キミも……死んでしまう」
「えっ!?」
「いいな……?ここから……出ては……ならない」
 それだけ言うと、副船長は先ほどの廊下にドアを開けずに出て行ってしまった。
「一体、何なんだろう?」
 稲生は船長室を見渡した。
 先述したように、豪華客船(クルーズ船と呼ばれる船は、ほとんどイコール豪華客船である)の船長室というだけあって、恐らく客室のそれと負けず劣らずの広さなのではないだろうか。
 例え豪華客船であっても、下級船員は2段ベッドで大部屋だという話を稲生は聞いたことがある。
 執務室内は、特に何も無さそうだった。
 そして、この部屋には、先ほど稲生達が出入りしたドアとは別に、もう1つドアがあった。
 このドアのことについては、副船長は何も言っていなかった。
 開けてみると、何かの部屋のようだが、暗かった。
 ドアのすぐ横にスイッチがあったので、入れてみると照明が点灯した。
 そこは、ベッドルームになっていた。
 やはり下級船員の2段ベッドと比べて、船長室は寝る所も個室であるらしい。
 そのベッドはきれいに整えられていた。
 そして、部屋には緑色に塗装された木製のクロゼットが置かれている。
「?」
 だが、そのクロゼットの観音扉には、針金がギチギチに巻いてあって、開けられるのを拒んでいるかのようだ。
 そしてベッドルームには、更にもう1つドアがある。
 何となく予想は付いていたが、このドアを開けて中に入って電気を点けると、バスルームになっていた。
「……何も無いか」
 結局、船長室の中を探してみたところ、見つかったのは体力回復薬と称する瓶入りの飲み物だけ。
 しかしその薬は、稲生も見たことがある。
 確か、ポーリンが作っていたものだ。
 それがどうして、謎の豪華客船の船長室にあるのだろう?

 待てど暮らせど、状況が変わる見込みが無い。
 副船長が迎えに来る様子も無い。
「しょうがない」
 副船長からは外に出るなと言われたが、稲生は意を決して船長室の外に出ることにした。
 明かりの点かない真っ暗な廊下。
 そこに出た稲生を待ち構えていた者がいた。
 それは……!
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