[11月8日17:15.天候:雨 埼玉県さいたま市西区 デイライト・コーポレーション・ジャパン埼玉研究所 敷島孝夫、平賀太一]
敷島は東京の事務所に残る井辺と、電話連絡をしていた。
「……誰から通信が来たんだ?」
{「シー君です。あの、私がKR団の秘密研究所から一緒に脱出した……」}
「警察から脱走したってんで、鷲田警視が捜してるよ。鳥みたいなサイズだからって、本当に鳥かごにでも入れてたんじゃないのか?」
実際、警察のヘリで輸送する際、鳥かごを使用していたのを思い出す。
「……悪い。で、そのシーが何だって?」
{「埼玉のデイライト・コーポレーション……つまり、社長達の所へ向かうので、迎えに来てほしいとのことです」}
「こっちに来てどうするんだ?」
{「よく分かりませんが、バージョン400を止められるのは自分しかいない、と……」}
「はあ!?」
その時、バンッと机を叩く音がした。
「あー、もうっ!やっぱダメだ!」
「平賀先生!?」
「これ以上の入力はムリです!どうも、ミスリードだったみたいで……」
「何ですって!?」
「……や、やはり、アルエットを破壊するしか……!」
「平賀先生、ちょっと待ってください!まだ方法があるかもしれないんですよ!アリス!俺はちょっと外へ出て来る!いいですか、研究者の皆さん!?アルエットのオーナーは私です!私の許可無く破壊することは許しません!」
敷島は大研究室の研究員達に言うと、大研究室を飛び出した。
「シンディ、ちょっと一緒に来てくれ!」
{「何なの?」}
「警察に捕われた妖精型ロイドがこっちに向かっているらしい。シンディ、分かりやすいように電波を発信しておいてくれ!」
{「……何だかよく分からないけど、了解」}
シンディは屋上に向かい、敷島は外に出た。
「うわっ、何だ、凄い雨!」
ゲリラ豪雨ではないはずだ。
もう11月にもなったのに……。
[同日17:30.天候:雨 同場所・正面エントランス前 敷島孝夫]
〔「何ということでしょう!あのロボット達は、自衛隊でも太刀打ちできません!……ああっ!今度は米軍機が撃墜されました!このままでは原発が破壊されます!東日本の皆さん、お達者で〜!」「……えー、錯乱……もとい、混乱した現場からお伝えしました。ええ、我々とて他人事ではありませんよ。大阪のスタジオからお送りしてますがねw」〕(←このマスゴミが!)
「来たっ!」
屋上にいるシンディがすぐに気づいた。
敷島が上空を見上げると、雨の中、薄紫色の光の玉が近づいて来た。
「おおっ!正にティンカー・ベル!」
敷島は、屋上でシンディがキャッチしたのを確認して、急いで中に入った。
そして、
「社長!」
ずぶ濡れになったシンディが両手に妖精型ロイドを大事に持って、上から下りて来た。
「キミがシー君だね?話は井辺君から聞いてるよ。あのバージョン400を止められるんだって?」
「……うん。ボクを……電波の発信元に連れてって」
「社長、早くアルエットの元へ!」
「おう!」
敷島は急いで大研究室へシーを運び込んだ。
「これが、あの妖精型ロイド……!?」
「死ぬ前に現物が見れて良かった……!」
「ちょっと!研究熱心なのはいいですが、まずは400を何とかする方が先!」
〔「……最後の関門が突破されました!第2原発は目の前です!あの大震災でも爆発は免れた第2原発が、正にテロで破壊されようとしています!!」「えー、大宮の駅前では顕正会員達がシュピレヒコールを上げています。今度はJR大宮駅前に切り替えてみましょう」……「浅井先生の御指南は正しかった現証です!」「浅井先生に背く日本は必ず滅亡します!」「皆さん、顕正会に入信すれば助かります!急いで本部にて入信勤行を!」〕
「それでキミ、どうすればいいんだい!?」
「あのコードとボクを接続してください」
「分かった!」
平賀はアルエットから伸びた配線の一部をシーの体と接続した。
「その後は?」
「パスコードを入力してください。それは……」
平賀はシーの言うパスコードをいくつか入力した。
それは今まで平賀が打っていたものとは、だいぶ違った。
そして、それはある法則があった。
「1つは南里先生の生年月日だぞ?」
「もう1つはウィリアムじい様の誕生日ね」
「てことは、あとの3つは十条兄弟や吉塚広美さんの生年月日じゃないのか?」
「今までの苦労は何だったんだ!!」
「平賀先生、その鬱憤は400を自爆させて発散させましょう。……パソコン叩いちゃダメ!」
「てかタカオ、今自爆させちゃダメでしょ!?」
〔「ロボット達、何故かカウントダウンを始めています!もうここで爆発させる気のようです!我々、報道陣も緊急離脱します!やはりヒーローは現実には存在しなかったもようです!!」〕
「正義のヒーローなんざ、いるわけねーだろ!」
〔「浅井先生、バンザーイ!」「池田のせいだぞ、バーロー!」〕
「いたら、宗教なんざいらねーよ!」
「……最後に999を打ち込んでください!」
「スリーナインだな!」
最後に平賀がテンキーを叩く。
すると、アルエットの体内から何かが飛び出した。
飛び出したと言っても、体から外に出たわけではない。
飛び出してきたそれは、まだアルエットの体に接続されたままだった。
だが、それはデジタル数字の表示板が付いていて、今まさにカウントダウンしているところだった。
「あの装置を切り離してください!」
「ぺ、ペンチ!ペンチはどこだ!?」
「いや、むしろドライバーの方が!!」
「いや、あのまま触ったら感電する!その前にゴム手袋だ!」
慌てる人間達。
「ちょっとどいて」
室内にいたシンディがアルエットの前に出ると、その装置に手を伸ばした。
表示数は残り5秒!……3、2……1!
「っえーい!!」
シンディは力任せにその装置を引きちぎった!
ロイドならではの怪力ゆえだ。
ロイドなら感電の心配も無い。
シンディは元々手に皮手袋を着用しているというのも功を奏したようだ。
装置は残り1秒の状態でシンディに引きちぎられ、表示自体が消えた。
「ど、どうなの?」
敷島はテレビを見た。
〔「皆さん、さようならーっ!」〕
「だ、ダメか……?」
敷島達が固唾を飲んで、テレビ画面を見た。
〔「現場の鈴木さん、何も起こらないようですが?……鈴木さん!?」「……あれ?どうしたんでしょうね?……ちょっと、ヘリを寄せてもらえませんか?……ああっ、ロボットが頭部から煙を噴き出して停止しています!」「爆発寸前でしょうか?」「カウントダウンが止まっています!どういうわけだか、残り1秒で止まっています!」「ということは、ロボット達が停止した?」「そのようです!正に奇跡です!」〕
「アルエットのこの装置と連動していたとは……!」
「敷島さん、電波が止まりました!」
「やったーっ!!」
歓喜に渦巻く大研究室。
と、そこへ、
「警察だ!敷島孝夫……さん、ヘリコプターを持ってきたぞ。さあ、現場へ行こうか。……何の騒ぎだ?」
鷲田警視達が遅れてやってきた。
「……社長。取りあえず、アタシと姉さんで、あのポンコツ4機、ブッ壊してくるわ。いいでしょ?」
「あ、ああ!但し、爆発はさせるなよ!?するんだったら、遠く離れた海の上とかな!」
「分かってるわよ。……というわけで鷲田警視、アタシと姉さんを乗せて現場まで運んでくれない?」
「しかし、現場は立ち入り制限区域だぞ」
「アタシと姉さんなら大丈夫。何だったら、原子炉の中まで入ってこようか?」
「い、いや、それは現場の人間達と専用のロボットに任せてくれ。……頼まれる時がもし来たら、その時は頼む。取りあえずは、あのデカ物を処分してくれるだけでよろしい」
「了解」
鋼鉄姉妹達は警察のヘリに乗って、原発に向かって行った。
(だいぶ変わったなぁ……)
鋼鉄姉妹達を原発除染作業用に使わなかったのは、旧ソ連製の人型兵器ということで、逆にテロに使われないか警戒されたからだ。
それが今、取りあえず原発に近づくことまで許された。
彼女達が安全で、それ以外に危険なロボットが存在していたことが周知されたからだろう。
「じゃあ、アルエットを早く戻してください」
「分かりました」
「シー君、ありがとう。キミのおかげだよ」
敷島が優しく声を掛けると、シーは涙を流して喜ぶ顔になった。
「うれしい……初めて褒めてもらえた……」
「そうだったのか?」
「あの……1つお願いが……あるんですけど……」
「?」
KR団の最後の野望を阻止することに成功した敷島達。
シーの願いとは何か?
そして、英雄は誰か?
いたら、宗教など必要ない。
敷島は東京の事務所に残る井辺と、電話連絡をしていた。
「……誰から通信が来たんだ?」
{「シー君です。あの、私がKR団の秘密研究所から一緒に脱出した……」}
「警察から脱走したってんで、鷲田警視が捜してるよ。鳥みたいなサイズだからって、本当に鳥かごにでも入れてたんじゃないのか?」
実際、警察のヘリで輸送する際、鳥かごを使用していたのを思い出す。
「……悪い。で、そのシーが何だって?」
{「埼玉のデイライト・コーポレーション……つまり、社長達の所へ向かうので、迎えに来てほしいとのことです」}
「こっちに来てどうするんだ?」
{「よく分かりませんが、バージョン400を止められるのは自分しかいない、と……」}
「はあ!?」
その時、バンッと机を叩く音がした。
「あー、もうっ!やっぱダメだ!」
「平賀先生!?」
「これ以上の入力はムリです!どうも、ミスリードだったみたいで……」
「何ですって!?」
「……や、やはり、アルエットを破壊するしか……!」
「平賀先生、ちょっと待ってください!まだ方法があるかもしれないんですよ!アリス!俺はちょっと外へ出て来る!いいですか、研究者の皆さん!?アルエットのオーナーは私です!私の許可無く破壊することは許しません!」
敷島は大研究室の研究員達に言うと、大研究室を飛び出した。
「シンディ、ちょっと一緒に来てくれ!」
{「何なの?」}
「警察に捕われた妖精型ロイドがこっちに向かっているらしい。シンディ、分かりやすいように電波を発信しておいてくれ!」
{「……何だかよく分からないけど、了解」}
シンディは屋上に向かい、敷島は外に出た。
「うわっ、何だ、凄い雨!」
ゲリラ豪雨ではないはずだ。
もう11月にもなったのに……。
[同日17:30.天候:雨 同場所・正面エントランス前 敷島孝夫]
〔「何ということでしょう!あのロボット達は、自衛隊でも太刀打ちできません!……ああっ!今度は米軍機が撃墜されました!このままでは原発が破壊されます!東日本の皆さん、お達者で〜!」「……えー、錯乱……もとい、混乱した現場からお伝えしました。ええ、我々とて他人事ではありませんよ。大阪のスタジオからお送りしてますがねw」〕(←このマスゴミが!)
「来たっ!」
屋上にいるシンディがすぐに気づいた。
敷島が上空を見上げると、雨の中、薄紫色の光の玉が近づいて来た。
「おおっ!正にティンカー・ベル!」
敷島は、屋上でシンディがキャッチしたのを確認して、急いで中に入った。
そして、
「社長!」
ずぶ濡れになったシンディが両手に妖精型ロイドを大事に持って、上から下りて来た。
「キミがシー君だね?話は井辺君から聞いてるよ。あのバージョン400を止められるんだって?」
「……うん。ボクを……電波の発信元に連れてって」
「社長、早くアルエットの元へ!」
「おう!」
敷島は急いで大研究室へシーを運び込んだ。
「これが、あの妖精型ロイド……!?」
「死ぬ前に現物が見れて良かった……!」
「ちょっと!研究熱心なのはいいですが、まずは400を何とかする方が先!」
〔「……最後の関門が突破されました!第2原発は目の前です!あの大震災でも爆発は免れた第2原発が、正にテロで破壊されようとしています!!」「えー、大宮の駅前では顕正会員達がシュピレヒコールを上げています。今度はJR大宮駅前に切り替えてみましょう」……「浅井先生の御指南は正しかった現証です!」「浅井先生に背く日本は必ず滅亡します!」「皆さん、顕正会に入信すれば助かります!急いで本部にて入信勤行を!」〕
「それでキミ、どうすればいいんだい!?」
「あのコードとボクを接続してください」
「分かった!」
平賀はアルエットから伸びた配線の一部をシーの体と接続した。
「その後は?」
「パスコードを入力してください。それは……」
平賀はシーの言うパスコードをいくつか入力した。
それは今まで平賀が打っていたものとは、だいぶ違った。
そして、それはある法則があった。
「1つは南里先生の生年月日だぞ?」
「もう1つはウィリアムじい様の誕生日ね」
「てことは、あとの3つは十条兄弟や吉塚広美さんの生年月日じゃないのか?」
「今までの苦労は何だったんだ!!」
「平賀先生、その鬱憤は400を自爆させて発散させましょう。……パソコン叩いちゃダメ!」
「てかタカオ、今自爆させちゃダメでしょ!?」
〔「ロボット達、何故かカウントダウンを始めています!もうここで爆発させる気のようです!我々、報道陣も緊急離脱します!やはりヒーローは現実には存在しなかったもようです!!」〕
「正義のヒーローなんざ、いるわけねーだろ!」
〔「浅井先生、バンザーイ!」「池田のせいだぞ、バーロー!」〕
「いたら、宗教なんざいらねーよ!」
「……最後に999を打ち込んでください!」
「スリーナインだな!」
最後に平賀がテンキーを叩く。
すると、アルエットの体内から何かが飛び出した。
飛び出したと言っても、体から外に出たわけではない。
飛び出してきたそれは、まだアルエットの体に接続されたままだった。
だが、それはデジタル数字の表示板が付いていて、今まさにカウントダウンしているところだった。
「あの装置を切り離してください!」
「ぺ、ペンチ!ペンチはどこだ!?」
「いや、むしろドライバーの方が!!」
「いや、あのまま触ったら感電する!その前にゴム手袋だ!」
慌てる人間達。
「ちょっとどいて」
室内にいたシンディがアルエットの前に出ると、その装置に手を伸ばした。
表示数は残り5秒!……3、2……1!
「っえーい!!」
シンディは力任せにその装置を引きちぎった!
ロイドならではの怪力ゆえだ。
ロイドなら感電の心配も無い。
シンディは元々手に皮手袋を着用しているというのも功を奏したようだ。
装置は残り1秒の状態でシンディに引きちぎられ、表示自体が消えた。
「ど、どうなの?」
敷島はテレビを見た。
〔「皆さん、さようならーっ!」〕
「だ、ダメか……?」
敷島達が固唾を飲んで、テレビ画面を見た。
〔「現場の鈴木さん、何も起こらないようですが?……鈴木さん!?」「……あれ?どうしたんでしょうね?……ちょっと、ヘリを寄せてもらえませんか?……ああっ、ロボットが頭部から煙を噴き出して停止しています!」「爆発寸前でしょうか?」「カウントダウンが止まっています!どういうわけだか、残り1秒で止まっています!」「ということは、ロボット達が停止した?」「そのようです!正に奇跡です!」〕
「アルエットのこの装置と連動していたとは……!」
「敷島さん、電波が止まりました!」
「やったーっ!!」
歓喜に渦巻く大研究室。
と、そこへ、
「警察だ!敷島孝夫……さん、ヘリコプターを持ってきたぞ。さあ、現場へ行こうか。……何の騒ぎだ?」
鷲田警視達が遅れてやってきた。
「……社長。取りあえず、アタシと姉さんで、あのポンコツ4機、ブッ壊してくるわ。いいでしょ?」
「あ、ああ!但し、爆発はさせるなよ!?するんだったら、遠く離れた海の上とかな!」
「分かってるわよ。……というわけで鷲田警視、アタシと姉さんを乗せて現場まで運んでくれない?」
「しかし、現場は立ち入り制限区域だぞ」
「アタシと姉さんなら大丈夫。何だったら、原子炉の中まで入ってこようか?」
「い、いや、それは現場の人間達と専用のロボットに任せてくれ。……頼まれる時がもし来たら、その時は頼む。取りあえずは、あのデカ物を処分してくれるだけでよろしい」
「了解」
鋼鉄姉妹達は警察のヘリに乗って、原発に向かって行った。
(だいぶ変わったなぁ……)
鋼鉄姉妹達を原発除染作業用に使わなかったのは、旧ソ連製の人型兵器ということで、逆にテロに使われないか警戒されたからだ。
それが今、取りあえず原発に近づくことまで許された。
彼女達が安全で、それ以外に危険なロボットが存在していたことが周知されたからだろう。
「じゃあ、アルエットを早く戻してください」
「分かりました」
「シー君、ありがとう。キミのおかげだよ」
敷島が優しく声を掛けると、シーは涙を流して喜ぶ顔になった。
「うれしい……初めて褒めてもらえた……」
「そうだったのか?」
「あの……1つお願いが……あるんですけど……」
「?」
KR団の最後の野望を阻止することに成功した敷島達。
シーの願いとは何か?
そして、英雄は誰か?
いたら、宗教など必要ない。