報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「大男 総身に知恵が 回りかね」

2015-10-27 19:42:08 | アンドロイドマスターシリーズ
[期日不明 時刻不明 場所不明 井辺翔太]

「う……」
 井辺はまた意識を失っていたようだ。
 目が覚めると、再び牢屋の中に入れられていた。
 そのベッド(壁からチェーンで吊っている粗末なものだが)の上に寝かされていた。
 起き上がって、自分の体を見てみたが、特に機械化された様子は無い。
 確かエリオットに連行されて地下へのエレベーターを降りた時、突然眠くなったのだ。
 催眠ガスが噴き出ていたらしい。
 エリオットは人間ではないのか、一緒にいても大丈夫だったようだ。
 最初の地下牢とはまた違った構造をしているので、別にまた地下牢があったのだろう。
 因みに、今度は扉に鍵が掛けられていた。
「シー君?シー君、いるかい?」
 しかし、シーの声はしなかった。
 一緒に捕まってしまったのか?それとも……。
「ん?」
 廊下は薄暗い。
 だが、ドアの開く音がしてその時だけ明るくなる。
 何やら足音が聞こえて来た。
「あっ!?」
 それはバージョン3.0だった。
 両目をライトのように光らせて、自分の進行方向を照らしている。
 そして、手には金属バットのような鉄パイプを持っていた。
「オヤ、気ガツイタノカイ」
「喋れるのか?すると、キミは46号機ではないな?」
「アア。アノぽんこつネ。ボクハ50号。エリオット様ノ忠実ナ下僕サ」
「ということは、キミの任務は……」
「ソノ通リ。キミヲ、ココカラ出サナイコトダ」
「ううっ……!」
「今、エリオット様ハ色々ト準備デ忙シイ。ソレガ終ワルマデ、ココデオトナシクシテルンダヨ?サモナイト……」
 3.0は太い鉄パイプを振り上げた。
「ロボットに命令される人間か……。なるほど。鷲田警視の懸念が、ここで当たってしまったわけか」
「鷲田警視?」
「ちくしょうっ!!」
 クールな井辺もついに爆発し、粗末なベッドを蹴り上げて八つ当たりした。
「オイ、ヤメロヨ!ベッドガ壊レルダロ!!」
「うるさい!」
 もう1回蹴り上げる。
 甲高い金属音がし、眩い光に照らされた。
 50号が鉄パイプで牢屋の鉄格子を叩き、両目をハイビームにして井辺を照らした。
「ココノ設備ヲ壊シタラ、ボクガ怒ラレルンダゾ!イイ加減ニシロ!!」
「……銃火器も装備できない旧型ロボットが!」
「何カ言ッタカ?」
「……銃火器か……。なあ、ちょっと」
「何ダ?」
「外部から、色々と電波が入っていないか?……マルチタイプの姉妹さんからとか?」
「1回アッタンダケドネ、エリオット様ガ遮断シテクレタヨ」
「やっぱりか……!」
 エミリーとシンディによる『呼び掛け』はあったらしい。
 だが、いち早く気づいたエリオットがこの洋館のロボット達に対し、彼女らの命令が聞けないよう、シャットアウト措置をしてしまったようだ。
「マルチタイプはキミ達の上位機種だろ?逆らったら、マズいんじゃないのかい?」
「大丈夫。ボク達ニハ、エリオット様ガ付イテル」
「その権限か……」
 井辺も詳しいことは知らないが、アクセス権限がどうの……というシステムの流用だろうか。
「どうせそこにいるんなら、このドアの鍵を掛けてても無意味なんじゃないの?」
「オートロック、サ。外側カラハ、ボクノ手デシカ開カナイケド、閉メレバ何モシナクテモ、ロックガ掛カルンダ」
「ああ、そう」
「……オット。ソロソロ、バッテリーガ切レチャウ」
 50号は立ち去ろうとする直前、井辺の方を向いた。
「イイカイ?ボクハコレカラ、バッテリーヲ交換シテクルケド、戻ルマデオトナシクシテルンダヨ?」
「はいはい」
 片言の機械喋りをする50号機は鉄パイプを持って、さっき来た道を戻って行った。
 閉まった途端、電子ロックの掛かる音がしたので、例えこの牢屋から脱出しても、結局あのドアを開けなければならないだろう。
 出て右側はそうなっているが、左側にも通路が続いている。
 左側はどうなっているのだろうか。
 井辺は何とか格子の隙間から顔を出して、左を見てみた。
 すると、向こう側にもドアがあるようだ。
 右のドアは赤ランプが点いていて、いかにも電子ロックされてますよといった感じ。
 しかし、左側は普通の鍵なのだろうか。
 電子ロックらしい機器は見受けられなかった。
(まずは何とかしてここを脱出しないと……。そうだ!)
 ここで井辺は一計を案じた。
(なるほど。これはもしかしたら、上手く行くかもしれない……)
 まずは井辺、粗末なベッドを壊した。
 何回か蹴っていたら、鎖が外れて床に落ちたのである。
「あとは……」

 それから30分後。
 ずんぐりむっくりした体型の50号機が、バージョン3.0の短所である、のっそりとした足取りでやってきた。
「ン?」
 すると50号機は、牢内の異変にすぐに気づいた。
 両目をギラリと光らせ、壊れたベッドを直視する。
「アアッ!?ベッドヲ壊シタァ〜!」
 そして、扉を開けて中に入って来る。
「直サナキャ!エリオット様ニ怒ラレル!!」
 井辺のことはそっちのけで、急いでベッドの修理を始めた。
 井辺の作戦は、見事成功した。
 ベッドに気を取られ、ドアを開けっ放しにしている。
 井辺は急いで牢屋から出ると、ドアを閉めたw
「ン?……ン?……ンンっ?!」
 最初、50号は何が起きたのか分からなかったようだ。
 だが、首を360度横に回転させて、やっと気づいたようだ。
「アアッ!サテハ逃ゲル気ダナ!?ソウハサセナイゾ!!」
 50号機は手持ちの鉄パイプで思いっ切り、何度もドアを叩いた。
 その間に井辺は左のドアに向かう。
 さすがに右側のドアは、相変わらず電子ロックの赤ランプが点いていたからだ。
 だが、ここも鍵が掛かっていた。
 が、よくドアノブを引っ張ってみると、鍵が掛かっているのではなく、ただ単に立て付けが悪くなって、ドア枠に引っ掛かっているだけのようだ。
「開け!開いてくれ!!」
 そうしているうちに、牢屋のドアが壊された。
「ハハハハハハハ!ソノドアハ壊レテルンダ!逃ガシハシナイゾ!」
 だが、井辺とて小柄な体型ではない。
 持ち前の腕力で、何とかこじ開けることに成功した。
 ドアの向こうはちょっとした資材置き場になっていた。
 更に向こうにはドアがある。
 そのドアも鍵は掛かっておらず、素直に開いた。
「!?」
 その先は素掘りの洞窟のような空間になっている。
 そして、水の流れる音がした。
 地下水脈に繋がっていたのだ。
 その手前にはフェンスと、水路の所まで直接行く木製のドアがあった。
 井辺はフェンスを乗り越えて、水路の所まで行く。
「ハハハハハハハハ!ソコハ行キ止マリダヨ!」
 だから鍵が掛かっていなかったのか。
 この木製のドアにも、よく見たら鍵は掛かっていなかった。
「ううっ……」
 50号機は近づいてくると、手持ちの鉄パイプでドアを何回か殴り付けた。
 が、先ほど牢屋のドアを壊すのに使ったせいで、折れ曲がっていた。
「コウナッタラ……!」
 50号機は鉄パイプを捨てると、大きく後ろに下がり、
「ウオオオオオオオ!!」
 一気にドアに体当たりした。
 ドアはメチャクチャに壊れ、50号機は井辺のいる縁まで来た……かに見えた。
「ワアアアアッ!?」
 勢い余って、そのまま水脈に転落した。
「……え?」
 多くのバージョン・シリーズは生活防水しか施されていないと井辺は聞いたことがある。
 実験用として海水にも耐えられるように施された4.0は一部存在するものの、本格的に潜水までできるようになったのは、最新モデルの5.0である“マリオ”と“ルイージ”だけだそうだ。
 ということは……。
 50号機は水脈に流されて行き、そして沈んだ後、2度と上がって来ることはなかった。

「御愁傷様です」
 井辺は50号機が流されていった方向に向かって一礼すると、しょうがないので牢屋に戻って来た。
「!」
 と、同時に電子ロックされていたドアが開いた。
「!?」
 そのドアの向こうから来たのは……。
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“新アンドロイドマスター” 「明らかになる陰謀」

2015-10-25 21:51:52 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月18日04:00.ヘリコプター機内 敷島孝夫、3号機のシンディ、鷲田警視、村中課長]

「まさか、いきなりへりで東北に向かうことになるとは、私もVIPになった気分です」
 敷島がそんなことを言うと、鷲田が答えた。
「KR団殲滅は使命だからな。その黒幕が確保できるかもしれないとあれば、ヘリの1機くらい飛ばすさ」
「さすがは警視」
「お前さんの部下、井辺君とやらは、本当に東北にいるのだろうな?」
「確率は高い、という意味です」
「なにっ?」
「エミリーが高確率で受信したのだから、ほぼ確実ですよ」
「いや、しかしたかだかロボットが受信したくらいで……」
「その高性能さ、目の当たりにすることになりそうですよ。幸い、今度の『ボカロ・フェス』は宮城県のセキスイハイム・スーパーアリーナですから、場所的にもちょうどいい」
「意外とその辺りなんじゃないのか?」
「可能性は無きにしもあらずですが、まだ結論を出すのは早いですよ。今までKR団を相手にしてきましたが、どうも戦う相手が小粒ばかりだと思ってはいたんですよ。もっと戦闘ロボットとかいても良さそうなのにいないし……。最悪、マルチタイプのコピーくらい出てくるかと思ったんですが、それも無いし」
 恐らく、計画はしていたのだろう。
 まずレイチェルがそうだし、アルエットを手に入れようとしていたのも、それが原因なのかもしれない。
「エミリーやシンディが電波を送って、向こうのバージョン達に命令を送っています。それで分かるかと思います」
「ていうか、もう既に分かったんだけどね」
「おっ?」
「なにっ!?」
 シンディの開いた口に警察幹部2人は反応した。
「何故かバージョン3.0が多く集まる箇所がある。そしてそこにアタシの命令を送っても、姉さんが命令を送っても、うんともすんとも言わない連中がいる。そこしか無いと思うね」
「場所はどこだ!?」
 シンディはその場所を話した。
「よし、向かうぞ!」

[期日不明 時刻不明 天候:晴 井辺翔太&シー]

「翔太さん!」
 シーが見たのは、豹変したエリオットにライフルで狙撃される井辺の姿だった。
 幸い、被弾は免れたようで、井辺はジグザグに逃げ出した。
 そんな井辺は、敷島が前に言っていたことを思い出した。
『ショットガンは近距離戦には向いているが、遠距離戦には不向きだ。それと同様、ライフルは遠距離攻撃に向いているが、近距離には不向きだ。それと、ポンプアクション式だとリロードが遅いから、そこに隙ができる』
 と。
 今のシンディはライフルを着装しているが、前期型と後期型で種類が違う。
 前者は手動式だった為、リロード中に隙があったという特徴があった。
 後期型はオート式になった為、リロード中の隙が無くなった。
「あれは何ですか!?」
 しかし、敷島ほど銃火器に詳しくない井辺には、あれがそもそもライフルかどうかも分からなかった。
 スコープが付いているので、狙撃銃としてのライフルかなと思っただけだ。
 しかし、例えどんな銃でも、弾には限りがある。
 弾切れになってリロードしている間がチャンスだと思うのだが。
 こっちにだってハンドガンくらいある。
「しまった!」
 井辺が逃げ込んだ先は、隠れる場所の少ない広々としたダンスホール。
「逃げても無駄ですよ!あなたには、これからもっと協力してもらう!」
「テロ組織の手先なんて勘弁です!」
「さすがはレイチェルが見込んだ男だ。私は……むっ!?」
「えっ?」
 リロードしながら近づくエリオット。
 しかし、彼の目線は井辺の頭上に向けられた。
 井辺がつられてその先に目を向ける。
 すると、ダンスホールの吹き抜け2階廊下の上に老人が立っていた。
「今頃のこのこ現れやがって!老害ジジィ!」
「……随分と騒がしいと思ったが、やはりエリオットだったか」
「あ、あなたは……!」
 その老人は旧館スイートルームの室内に掲げられていた肖像画の人物だった。
「ヤツはケイン・ローズウェル。この研究所の所長だった男だ」
 エリオットがしれっとこの建物の正体について語る。
「だったって?」
「エリオット。確かにワシは、お前に所長のイスを譲って引退した。じゃが、まだ顧問なんじゃろう?何故ワシに相談も無くこんなことをした?」
「…………」
「ダニエラの費用もタダではないのじゃぞ?」
「あなたがケインさんですか。あのお手紙……」
「いかにも。ワシの名はケイン・ローズウェル。KR団のリーダーじゃ。ま、世界からはテロ組織とされているがな」
「いや、テロ組織でしょ!?」
「御隠居は御隠居らしく、縁側でネコでも抱きながらお茶でも飲んでなさい!全く!老害博士達のせいで、組織をこんなガタガタにしやがって!」
「達って……まさか、十条博士もですか?」
「そうだよ!俺達はテロ組織じゃなく、純粋にサイボーグの研究がしたかっただけだ!」
「サイボーグ?」
 ケインが口を開いた。
「愚かな。人はいずれ老いて死ぬ。人間を機械化して、ムリに長命化するなど愚かの極み……」
「黙れ!テロ・ロボットしか作れない老害は、おとなしくそこで老いて死ね!」
「サイボーグ?……ああっ!?」
 ケンショー・レンジャーのサイボーグ化、そしてダニエラの正体……。
「イエローだけサイボーグ化に失敗したって……」
「年寄りは手術に耐えられないからな。しかし、あんたならそれが可能だ。世界一強いサイボーグ化への実現だ!」
「いや、カンベンしてくださいよ!」
「……最初はタカオ・シキシマという男が狙いだったのではないか?」
 ケインがまた口を開く。
「最初はそのつもりだったんだが、気が変わった。あんたも適性だ!」
「だから、お断わりだって!」
 直後、エリオットがライフルを発砲した。
 慌てて床に伏せる井辺。
「ぐおっ!?」
 しかし被弾したのは、井辺ではなかった。
 ケイン・ローズウェル。
 呆気ない死であった。
「さあ、来てもらおうか!ここで死にたくなかったらな!」
「くっ……!」
 ライフルの銃口は井辺に向けられている。
 逃げられはしないだろう。
「わ、分かったよ」
 井辺は両手を挙げて立ち上がった。
「では、向こうのドアを開けて進んでもらおうか。……逃げようしたらどうなるかは、言わなくても分かるな?」
「分かってるって」
 答えながら井辺は何となく周囲を見渡した。
 だが、シーの姿は無かった。
 エリオットに怯えて逃げてしまったのだろうか。
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“新アンドロイドマスター” 「第3の敵」

2015-10-24 19:23:27 | アンドロイドマスターシリーズ
[期日不明 時刻不明 洋館(新館)3F(いや、4F?)展望台 井辺翔太、シー、ダニエラ]

「翔太さん!何やってんの!?早く撃って!」
「む、無理です……」
 ついに第2の中ボス戦のゴングが鳴った!
 相手はメイドロイドのダニエラ。
 相変わらず、右目を前髪に隠しながら、狂った笑いを浮かべて井辺達に攻撃してくる。
 手にしてるのはショットガンである。
「社長、よくこんな中、相手に攻撃できるなぁ……」
 井辺は柱に隠れたりしながら、ダニエラの攻撃をかわす。
 ダニエラのショットガンはセミオートではないため、弾を撃ち尽くすと、リロードする際に大きな隙ができる。
 それを狙って攻撃する他は無いのだが、何故か井辺は撃てなかった。
「人間の女性を……撃つわけにはいきません!」
「いや、ロイドでしょ!?本人だって、そう言ってるんだし!」
 シーは妖精型ロイドながら、井辺の言動に顔を真っ青にしていた。
「あーっはっはっはっは!!」
 リロードを終えたダニエラは再び井辺に向かって乱射してきた。
 本当に乱射という言葉が相応しく、一応、井辺を狙って撃ってきてはいるのだが、照準が定まらない状態で撃っているので、伏せていたり、物陰に隠れていれば当たることはない。
 そして、当たらなければどうということはない。
「そ、そうだ!」
 井辺が打って出た作戦、それは……。

 ボンッ!
 ブシューッ!

「あっ!」
 展望台の所々に置いてある消火器。
 消火剤の粉が詰められた粉末消火器で、予めボンベ内にガスが充填された蓄圧式と呼ばれているものである(総坊の消火器を参照)。
 そこに弾を撃てば、消火器が破裂して辺りに粉が吹き飛ぶ。
 まるで、煙幕のように。
 井辺は消火器を拾い上げると、それをダニエラに投げつけた。
 ダニエラはそれにショットガンを放つが、却ってそれが爆発して粉を浴びることになる。
 あとは井辺が銃を放った。
「行きますよ!」
 井辺は資材置き場に置かれていた粉塵メガネとマスクを着けて、ダニエラがいる方向に走った。
 手にしているのは、スタンガン。
「失礼します!」
 井辺はダニエラがいると思われる方向に向かって走った。
 しかし、そこにダニエラはいなかった。
「!!!」
 背後に回っていたダニエラ。
 ニイッと歯を見せて井辺にショットガンを突き付けた。
「し、しまっ……!」
 次の瞬間、展望台内に銃声が響いた。
「翔太さん!」
 シーが叫ぶ。
「……!……あれ?!」
 しかし、井辺は無事だった。
「うわっ!?」
 無事でなかったのはダニエラの方。
 頭が無くなっていた。
 そして、手にショットガンを持ったまま床に倒れた。
 首からは血がドクドクと出ているが、しかし肩口からは火花が飛び散っている。
 これは、一体……。
「い、井辺様!御無事ですか!?」
「!?」
 声がする方を見ると、そこには手に狙撃用のライフルを持ったエリオットがいた。
「お怪我はありませんか!?」
「えっ、ええ……」
「申し訳ありません!うちの者が、とんだマネを!ちょっと私めが目を放した隙に、このようなことになってしまって!何とお詫びしてよろしいやら……」
 エリオットは井辺に対し、平身低頭、平謝りだった。
 これだけ見れば、とても危険人物には見えない。
 いや……。
 目深に被ったドゴール帽は取ろうとしないし、そもそもいくら緊急事態だからといって、同じ館の従業員の頭を簡単に撃ち抜くとは……。
 それに……。
「よくそんなライフルがありましたね?」
「ええ。この館は自然豊かな場所に建っておりまして、時々野生動物が侵入してきたりするのです。中には熊やイノシシなどの凶暴な動物が侵入したりすることがあるので、念の為に猟銃を備えてあるのです、もちろん、猟銃につきましては、ちゃんと許可を取ってあります」
(いや、そのライフル……。どう見ても、軍事用なんですが……)
 井辺自身、銃火器に詳しくはないのだが、どうしてもKR団絡みや、マルチタイプと関わっているせいで、一般人よりは知識が豊富になってしまった。
 シンディが搭載しているライフルも軍事用のもので、100メートル先の敵を狙撃することができる。
 100メートルというと、JR在来線電車5両分である。
 東京駅発着の中距離電車で、15両編成で運転される横須賀線・総武快速線以外の付属の11号車から15号車がちょうど5両編成である。
「ダニエラさんを殺してしまったのですか?」
「仕方がありません。あのままでは、井辺様のお命が危険なところでした。お部屋に戻りましょう。展望台のエレベーターで下階に下りられます」
 井辺達は図書室を経由してきたが、実はエレベーターもあったのだった。
 もっとも、見つけたところで、電源が入っていなければ意味が無い。
 そこは管理者たるエリオット。
 手持ちの起動キーでエレベーターを起動させた。
「ところで井辺様と同行している妖精ロイドはどこですか?」
「え?あれ?今まで、そこにいたのに……」
「まあいいでしょう。気をつけてください、井辺様」
「何がですか?」
「あれは館の主人のスパイでございます。隙あらば、主人の命により、井辺様に牙を剥く恐れがあります」
「ええっ?」
「ダニエラからようやく聞き出しました。ここの主人は乱心を起こし、井辺様を実験台に使うつもりでいたようです」
「それはエリオットさんも知っていたんでしょう?」
「私が伺っていたのは、『ダニエラがメイドロイドとして、いかにお客様相手ができるか?』という内容だけでした。井辺様に内緒にしていたのは、真に申し訳ありません。実験は失敗です。お客様を殺そうとするなんて、欠陥にもほどがあります」
「あれがロイドですって!?血を噴き出していたじゃありませんか!れっきとした人間でしょう!?」
「いえ、ロイドですよ。あれは血ではなく、オイルです」
「いや、血でしょ!?」
 エレベーターのドアが開く。
 どう見たって赤黒く、鉄の錆びた匂いのするあの液体は、人間の血液に他ならない。
 しかしエリオットは、頑なにオイルだと言い張った。
 ロイドが人間の血液代わりに使用するオイルだと……。
「では、参りましょう」
 エリオットは井辺の背中を押すようにしてエレベーターに乗り込んだ。
「……それと、エリオットさん」
「何でございますか?」
「旧館で最初に襲って来た46号機なんですけど……」
「2度とお客様の御迷惑にならないよう、処分致します」
「いや、そこまでしなくても大丈夫だと思いますけど、そうじゃなくて……。46号機ということは、1号機から45号機がこの洋館のどこかにいるということですか?」
「あれも実験体でして、ほとんどが実験に失敗して処分となりました。46号機に関しては保留だったのですが、井辺様にご迷惑をお掛けしたとあっては、あのままにしておくわけには参りませんね」
 エレベーターが1階に着く。
 そこはまだ探索していないエントランスホールの反対側の区画だった。
「……本当は殆ど処分されていないのではないですか?」
「は?」
「実は今、旧館に集結させて私が到着したら一斉攻撃をしてくるとか……」
「な、何を仰いますか!旧館は私が安全を確保しております。私が保証します」
「じゃあ、何故あなたはタイミング良くダニエラさんから私を助けてくれたのですか?」
「それはたまたま深夜の巡回を行っていた時に、銃声が聞こえたものですから……」
「どうやって入ってきたんですか?あの時、エレベーターも階段も封鎖されていたんですよ?」
「! それは……私は立場上、鍵を持っていまして、実はそこには他に非常ドアがあって……」
「先ほどエリオットさんは『実験は失敗だ』と仰っていましたが、実は成功だったのではないですか?」
「!」
「良い実験データが取れたものですから、用済みになったダニエラさんを殺処分した」
「ち、違います!ダニエラは人間ではありません!なので、殺処分ではなく破壊処分です!!」
 直後、エリオットはしまったという顔をした。
「なるほど。やはりあなたが来たのは、偶然ではなかったわけですね。私達を展望台に誘い込み、ある程度の戦闘を行わせ、そしてある程度のデータを取ったところで、偶然を装い、ダニエラさんを処分した。と」
「……!」
「ここはやはり研究所なんですね?KR団の!あなたは誰かの住む洋館の執事さんではなく、ここの研究員さんなんじゃありませんか?」
「ううっ……!」

「は、早く、翔太さんに教えなきゃ!」
 ダクトの中を飛ぶシー。
 実はシーはエリオットの正体を知っていた。
 エリオットこそ、シーの処分を決定した権限のある人間だったからだ。
 鉢合わせになると、何かされるかもしれないという“恐怖”から逃げてしまった。
 だが、井辺達がエレベーターに乗ってしまったので、はぐれる形となった。
 急いでシーは隠れていたダクトを通って、何とか下階へ向かおうとした。
 そしてようやく1階まで下りて来た時、エントランスホール内に銃声が響いた。
 井辺のハンドガンではない。
 ダニエラの頭を吹き飛ばしたライフルの発砲音だ。
「翔太さん!」
 ようやくダクトを抜けたシーが見たものは……!
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“新アンドロイドマスター” 「館の主人の正体」

2015-10-24 15:26:54 | アンドロイドマスターシリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:晴 洋館(新館)3F 展望台→屋上 井辺正体&シー]

 図書室の仕掛けを問いて、何とか展望台に辿り着いた井辺達。
「やっと展望台に着いたね」
「ええ。本当は眺めがいいんでしょうに、夜なのが残念です」
 外は相変わらず真っ暗で何も見えなかった。
 展望台にはソファなどが置かれているだけで、特段何か置いているわけではない。
 だが、よく見るとハンドガンのマガジンが置いてあったり、バッテリーパックが置いてあったりした。
 もちろん、残らずそれを拾う。
 屋上へは更にこの展望台から上に上がる必要があるが、すぐに梯子を見つけた。
 井辺はそれを登り、シーは羽を羽ばたかせて上昇した。
 上がると、色々と資材が置かれていて、その上に何かがあった。
 それはカードキー。
「これで、旧館でも開かなかった場所が開けそうですね」
「うん」
 しかし、何故こんな所にカードキーが?
 誰かが意図的に置いたことは明らかだった。
 何故なら、そのカードキーの横には、井辺宛の手紙が置かれていたからだ。

『井辺君へ

 展望台へようこそ。しかし、ここに長居は禁物である。ここは言わば、縦方向の袋小路。逃げ場は無い。カードキーを手に入れたなら、すぐに下階へ逃げなさい。ダニエラは暴走したか?エリオットは暴走したか?2人一気に暴走して襲い掛かってくると厄介だ。私のいる場所は、そのカードキーが無いと開かない場所だ。しかし残り1枚しか無い上、エリオットが回収したがっているので、あえて危険を承知でここに置かせて頂いた次第だ。これを持って、旧館の地下へ来なさい。そこで全てが明らかになるだろう。尚、旧館地下へはそのカードキーだけで行けるものではない。鍵は別に用意してある。取り急ぎ、まずは連絡まで。

 ケイン・ローズウェル』

「一体、この人は……?」
「翔太さん、アンテナはこっちみたいだよ。だけど、鍵が掛かってる」
「何ですって?」
 資材置き場の奥に、ドアがもう1つあった。
 しかし、それは電子ロックになっていた。
 カードを読み取る部分には、赤いランプが点灯している。
「カードキーで開けるタイプのようですね」
 井辺はカードキーを読取機に当てた。
 すると、ピーという音がしてランプが緑に変わり、ロックが外れた。
「大丈夫です。これで」
 ドアを開けると外に出た。
 そして、また上に上がる階段がある。
「久方ぶりの外の空気です。夜風が気持ちいいですね」
「まさか、新館の屋上まで来るとは思わなかったよ」
「私もです」
 展望台の屋上に、アンテナがあった。
 見た感じは折れていたりとか、損傷は無いようだが……。
 分電盤を開けて見てみることにした。
 四隅をプラスネジで固定された鉄板に覆い隠されていたが、ドライバーは資材置き場にあった。
 それで鉄板を開けてみると、中にスイッチレバーがあった。
 それをONの位置に下げてみる。
「これで繋がるかもしれません」
 井辺は通信機械室で手に入れた小型通信機のスイッチを入れた。
「こちら、井辺です。どなたか、応答できますか?」
{「井辺君か!?無事なのか!?今どこだ!?」}
 スピーカーから敷島の声がした。
「繋がった!」
「やった!」
 すぐに井辺が送話マイクに向かって口を開く。
「場所は全く分かりませんが、今のところ無事です。ただ、敵に追跡されているのと、その施設に監禁されている状態です」
{「何とかGPSを動かすことはできないか?それで一発、キミの居場所が分かるというものだが……」}
「申し訳ありませんが、手荷物を全て敵に奪われてしまいました。何とか、施設内にある無線通信を使えるようになったのが精一杯でして……」
{「今の天候は?」}
「晴です。大自然の中なのか、月や星がよく見えます」
{「月の状態は?」}
「半月です」
{「……どうやらキミは、東北地方のどこかにいるみたいだな」}
「東北地方ですか!?」
{「ああ。実は今、こっち……東京は雨なんだ。大気の状態が不安定で、関東から西と北海道は雨だったり曇だったりする。東北だけが晴マークだ」}
「そうなんですか」
 それで井辺は気付いた。
 通信機械室で無線を送った時、何故エミリーが応答したのかを。
 もし今、敷島の予想通り、井辺達が東北地方にいるのであれば、東京にいるシンディよりも仙台にいるエミリーの方が近いから、より電波を受信しやすかったのだろう。
{「おおよその場所は搾り込めた。幸い、今日は宮城県で『ボカロ・フェス』が行われる。俺達も向かうから、キミは無理せず、何とか脱出を図ってくれ。鷲田警視達には連絡しておく」}
「鷲田警視が?」
{「ああ。例のメモリースティックの件なんだけども、向こうが持っていたのとこちらが押さえているのと照合したら、まだまだKR団は潰れていないみたいだ。ケイン・ローズウェル。その頭文字を取って、KRだよ。ケンショー・レンジャーのKRではなかった」}
「何ですって!?」
{「それが大ボスの名前みたいだけど、どうしたんだ?」}
「私は今、洋館のような建物に監禁されているんですが、その館の主人の名前がケイン・ローズウェルという名前のようです」
{「何だって!?」}
「このケイン・ローズウェル氏とは、一体どういった方なんですか?私はまだ会ったことが無いんですが……」
{「正直なところ、俺達も分かっていない。メモリーの中に、所々その名前が出て来るだけなんだ。こんな時間だが、海外の研究者とかに、その名前に心当たりが無いか調査している所だよ」}
「分かりました」
{「もしキミの監禁されている場所がKR団の施設と関係がありそうなら、悪いロイドやロボットに襲われそうだな」}
「はい。正しく、仰る通りです」
{「ロイドの中にはGPS機能を持っているヤツがいる。それを使って、何とか俺達に居場所を教えてくれないか?」}
「わ、分かりました!」
 そこで一旦、通信は終わった。
「シー君、キミはGPS機能を搭載していないかい?」
「! ご、ゴメン。あるんだけど、どうも故障してるみたいなんだ」
「ええっ?」
「きっと、蜘蛛型ロボットに捕まった時に……」
「そうか……」
「ゴメンね」
「それなら、仕方がありません。取りあえず一旦、館内に戻りましょう」
「うん」
 井辺とシーは足取り軽く展望台に向かった。
 外部と連絡手段を確保できたことが、こんなにも安心感に繋がるとは……。
 しかし、だからといって試練が全て無くなったわけでもなく……。

「ああっ!?」
「あ、うあっ!?」
 展望台に戻ると、待ち構えている者がいた。
「ふふふふふふふふ……きゃははははははははははははははははは!!」
 狂ったメイド、ダニエラである。
 しかも階段掃除を終えた後なのか、すっかり今は井辺を襲う気満々である。
「くっ、ここへ来て……」
「しょ、翔太さん!エレベーターの電源が切られてるよォ……!」
「階段のシャッターも下ろされている。逃げきれ無さそうですね……」
 ここでどうやら戦うしか無いようだ。
 だが、ハンドガンを構えた井辺を絶望させるものをダニエラは持っていた。

 それは……。
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“新アンドロイドマスター” 「新館を駆け巡る」

2015-10-24 02:56:45 | アンドロイドマスターシリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:晴 洋館(新館)1F 井辺翔太&シー]

 何とかダニエラの追跡をかわした井辺とシー。
 その後、落ち着いて、改めて図面を見た。
「幸い、小型の通信機を持ち出すことはできました。しかし、電源は入るのに、全く送受信しませんね。周波数は合ってるはずなんですが……」
「確か、新館の屋上に、無線のアンテナがあるって聞いたことがある」
 シーは井辺の右肩に乗っかった。
「アンテナがあるのに、何故?」
「それは分からないよ。壊れてるのかもね」
「もしかしたら直せるかもしれません。見に行ってみましょう。屋上へ上がるには……」
 井辺は図面を上階のページに変える。
「3階の上に展望台があるんですか。そこが4階……?で、そこから屋上へ出れるのですね」
「うん、行ってみよう。取りあえず、3階までは階段で行けるはずだ」

 

 深夜の新館エントランスホール前を通る。
 外はまだ暗いので、真夜中であるのは確かであった。
 そこにある階段を上ろうとすると、
「うっ!」
 そこにダニエラがいた。
 しかし彼女は階段を一段ずつモップ掛けしている。
 井辺達の姿に気づくと、スッとこちらを見た。
「お客様、真に・申し訳・ありませんが、只今、清掃中ですので、エレベーターを・ご利用ください」
「えっ?ええっ!?」
 襲ってくるかと思いきや、至って普通のメイドだ。
「で、でも、エレベーターは電源が落ちていて……」
 井辺が言い終わらないうちに、ダニエラは白いエプロンのポケットから鍵を取り出す。
「この鍵で、エレベーターを・動かせます」
「い、いいんですか?」
 井辺は恐る恐る受け取った。
 受け取った瞬間!
「!!!」
 ……ということは無かった。
 ただ、ニィッと歯を見せるぎこちないスマイルをダニエラがしただけだった。
「ど、どうも」
 エレベーター起動キーを手に入れた井辺。
 ダニエラの気が変わらないうちに、急いでエレベーターへ向かった。
 途中で何度も振り返った井辺だったが、ダニエラは変わらず、階段のモップ掛けをしているだけだった。

 インジゲータの下にある鍵穴に起動キーを差し込み、エレベーターを起動させる。
 木製のドアの上には古めかしい針式のインジゲーター(明治生命館のエレベーターを参照。但し、稼動中のものは針式ではない)があったが、そちらは動いていなかった。
 後付けのランプ点灯式インジゲーターの方が稼動している。

 ガチャ、ガラガラガラ………。

「…………」
「どうしたの、翔太さん?」
 エレベーターのドアが開いて、井辺が中を覗き込む。
 殺風景なカゴだが、特段何も無かった。
「いえ、何でも……」
「早いとこ、これで3階まで行こうよ」
「そうですね」
 乗り込んで、3階のボタンを押す。
 ガラガラとローラーの転がる音を立てて、木製のドアが閉まった。
 ゆっくりと上昇するエレベーター。
 しかしその直前、階段の方から、若い女性の狂った笑い声が聞こえたような気がしたのは……気のせいだろうか。

 3階に到着する。
 意外なことに、3階の階段と踊り場の間には、防火シャッターが下ろされていた。
 階段で行っていたら、思わぬ“詰み”が発生していたかもしれない。
「あのー、シー君」
「なぁに?」
「ふと疑問に思ったのですが……。旧館にいた46号機……」
「ヨンロックがどうしたの?」
「46号機ということは、その前に1号機から45号機まで存在しているということではありませんか?」
「中には処分されちゃったのもあるけど、そうだね」
「もちろんこれで良いのですが、全く他の個体が見当たらないのですが……」
「あー、そういえばそうだねぇ……。でも、夜は本来、充電とか整備とかしているわけだからね」
「その場所に近づかなければ良いというわけですか……」
 展望台に上がる階段へ向かうには、ある部屋を通らなければならない。
 その部屋というのが、図書室。
「ふーむ……学校の図書室よりも、およそ立派な所ですね」
 入って正面には、大きな柱時計が大きな振り子を動かしている。
 但し、その時計は、いわゆる“天文時計”というもので、井辺には文字盤のある場所を見ても、今何時なのかは分からなかった。
「まあ、研究所だからね」
「で、展望台に上がる階段はどこですか?」
「えーっと……。あれみたい」
 シーが指差した所には、確かに更に上に上がる階段があった。
 この図書室、吹き抜けの2層構造になっており、上層部分に上がらなくてはならないようだ。
 しかし、パッと見、そこに上がる階段は見当たらない。
 図面を見ると、ちゃんとそれがあるような書き方をしているのだが……。
「あのドア、ですか……」
 階段室があると思われるドア。
 しかし、そのドアは宙に浮いていた。
 具体的に言うと、地上から2メートルぐらいの高さの場所にドアある。
 何でこんな造りなのだろうか?
 梯子でもないと、そのドアに上がれそうもない。
 本棚の高さもまた同じ高さであった。
 ということは、1番上の棚に上がる為の梯子だか脚立だかがあるかもしれない。
 探して見ると、本棚の横に立て掛けるようにして、梯子があった。
 しかし、それを外そうとするが外れない。
「!?」
 どうやら、本棚に固定されているらしい。
 本棚の上に何かあるのだろうか?
 上ってみたが、A3サイズの本が一冊置いてあるだけで、あとは特段何も無かった。
 しかしその赤い本が気になったので、本棚の上に上がってみると……。
「あれ?」
 本棚の天板の高さが、ちょうど件のドアの高さと同じであることに気づいた。
 その本棚は途中で切れていたりするが、これってもしかして……。
「本棚を上手くくっつけて、あの階段室への通路にせよ。ということでしょうか?」
「そうみたいだね、翔太さん」
 凄い苦労をさせられる所だと思った井辺だった。
 しかも、何やら本棚自体に仕掛けがあるようで、赤い本には、『展望台への扉』というタイトルが書かれていたが、正しくガチなのではなかろうかと。
(本当に、無事にこの屋敷から出られるのでしょうか……)
 不安に駆られる井辺だった。
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