報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「館の主人の正体」

2015-10-24 15:26:54 | アンドロイドマスターシリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:晴 洋館(新館)3F 展望台→屋上 井辺正体&シー]

 図書室の仕掛けを問いて、何とか展望台に辿り着いた井辺達。
「やっと展望台に着いたね」
「ええ。本当は眺めがいいんでしょうに、夜なのが残念です」
 外は相変わらず真っ暗で何も見えなかった。
 展望台にはソファなどが置かれているだけで、特段何か置いているわけではない。
 だが、よく見るとハンドガンのマガジンが置いてあったり、バッテリーパックが置いてあったりした。
 もちろん、残らずそれを拾う。
 屋上へは更にこの展望台から上に上がる必要があるが、すぐに梯子を見つけた。
 井辺はそれを登り、シーは羽を羽ばたかせて上昇した。
 上がると、色々と資材が置かれていて、その上に何かがあった。
 それはカードキー。
「これで、旧館でも開かなかった場所が開けそうですね」
「うん」
 しかし、何故こんな所にカードキーが?
 誰かが意図的に置いたことは明らかだった。
 何故なら、そのカードキーの横には、井辺宛の手紙が置かれていたからだ。

『井辺君へ

 展望台へようこそ。しかし、ここに長居は禁物である。ここは言わば、縦方向の袋小路。逃げ場は無い。カードキーを手に入れたなら、すぐに下階へ逃げなさい。ダニエラは暴走したか?エリオットは暴走したか?2人一気に暴走して襲い掛かってくると厄介だ。私のいる場所は、そのカードキーが無いと開かない場所だ。しかし残り1枚しか無い上、エリオットが回収したがっているので、あえて危険を承知でここに置かせて頂いた次第だ。これを持って、旧館の地下へ来なさい。そこで全てが明らかになるだろう。尚、旧館地下へはそのカードキーだけで行けるものではない。鍵は別に用意してある。取り急ぎ、まずは連絡まで。

 ケイン・ローズウェル』

「一体、この人は……?」
「翔太さん、アンテナはこっちみたいだよ。だけど、鍵が掛かってる」
「何ですって?」
 資材置き場の奥に、ドアがもう1つあった。
 しかし、それは電子ロックになっていた。
 カードを読み取る部分には、赤いランプが点灯している。
「カードキーで開けるタイプのようですね」
 井辺はカードキーを読取機に当てた。
 すると、ピーという音がしてランプが緑に変わり、ロックが外れた。
「大丈夫です。これで」
 ドアを開けると外に出た。
 そして、また上に上がる階段がある。
「久方ぶりの外の空気です。夜風が気持ちいいですね」
「まさか、新館の屋上まで来るとは思わなかったよ」
「私もです」
 展望台の屋上に、アンテナがあった。
 見た感じは折れていたりとか、損傷は無いようだが……。
 分電盤を開けて見てみることにした。
 四隅をプラスネジで固定された鉄板に覆い隠されていたが、ドライバーは資材置き場にあった。
 それで鉄板を開けてみると、中にスイッチレバーがあった。
 それをONの位置に下げてみる。
「これで繋がるかもしれません」
 井辺は通信機械室で手に入れた小型通信機のスイッチを入れた。
「こちら、井辺です。どなたか、応答できますか?」
{「井辺君か!?無事なのか!?今どこだ!?」}
 スピーカーから敷島の声がした。
「繋がった!」
「やった!」
 すぐに井辺が送話マイクに向かって口を開く。
「場所は全く分かりませんが、今のところ無事です。ただ、敵に追跡されているのと、その施設に監禁されている状態です」
{「何とかGPSを動かすことはできないか?それで一発、キミの居場所が分かるというものだが……」}
「申し訳ありませんが、手荷物を全て敵に奪われてしまいました。何とか、施設内にある無線通信を使えるようになったのが精一杯でして……」
{「今の天候は?」}
「晴です。大自然の中なのか、月や星がよく見えます」
{「月の状態は?」}
「半月です」
{「……どうやらキミは、東北地方のどこかにいるみたいだな」}
「東北地方ですか!?」
{「ああ。実は今、こっち……東京は雨なんだ。大気の状態が不安定で、関東から西と北海道は雨だったり曇だったりする。東北だけが晴マークだ」}
「そうなんですか」
 それで井辺は気付いた。
 通信機械室で無線を送った時、何故エミリーが応答したのかを。
 もし今、敷島の予想通り、井辺達が東北地方にいるのであれば、東京にいるシンディよりも仙台にいるエミリーの方が近いから、より電波を受信しやすかったのだろう。
{「おおよその場所は搾り込めた。幸い、今日は宮城県で『ボカロ・フェス』が行われる。俺達も向かうから、キミは無理せず、何とか脱出を図ってくれ。鷲田警視達には連絡しておく」}
「鷲田警視が?」
{「ああ。例のメモリースティックの件なんだけども、向こうが持っていたのとこちらが押さえているのと照合したら、まだまだKR団は潰れていないみたいだ。ケイン・ローズウェル。その頭文字を取って、KRだよ。ケンショー・レンジャーのKRではなかった」}
「何ですって!?」
{「それが大ボスの名前みたいだけど、どうしたんだ?」}
「私は今、洋館のような建物に監禁されているんですが、その館の主人の名前がケイン・ローズウェルという名前のようです」
{「何だって!?」}
「このケイン・ローズウェル氏とは、一体どういった方なんですか?私はまだ会ったことが無いんですが……」
{「正直なところ、俺達も分かっていない。メモリーの中に、所々その名前が出て来るだけなんだ。こんな時間だが、海外の研究者とかに、その名前に心当たりが無いか調査している所だよ」}
「分かりました」
{「もしキミの監禁されている場所がKR団の施設と関係がありそうなら、悪いロイドやロボットに襲われそうだな」}
「はい。正しく、仰る通りです」
{「ロイドの中にはGPS機能を持っているヤツがいる。それを使って、何とか俺達に居場所を教えてくれないか?」}
「わ、分かりました!」
 そこで一旦、通信は終わった。
「シー君、キミはGPS機能を搭載していないかい?」
「! ご、ゴメン。あるんだけど、どうも故障してるみたいなんだ」
「ええっ?」
「きっと、蜘蛛型ロボットに捕まった時に……」
「そうか……」
「ゴメンね」
「それなら、仕方がありません。取りあえず一旦、館内に戻りましょう」
「うん」
 井辺とシーは足取り軽く展望台に向かった。
 外部と連絡手段を確保できたことが、こんなにも安心感に繋がるとは……。
 しかし、だからといって試練が全て無くなったわけでもなく……。

「ああっ!?」
「あ、うあっ!?」
 展望台に戻ると、待ち構えている者がいた。
「ふふふふふふふふ……きゃははははははははははははははははは!!」
 狂ったメイド、ダニエラである。
 しかも階段掃除を終えた後なのか、すっかり今は井辺を襲う気満々である。
「くっ、ここへ来て……」
「しょ、翔太さん!エレベーターの電源が切られてるよォ……!」
「階段のシャッターも下ろされている。逃げきれ無さそうですね……」
 ここでどうやら戦うしか無いようだ。
 だが、ハンドガンを構えた井辺を絶望させるものをダニエラは持っていた。

 それは……。

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