報恩坊の怪しい偽作家!

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“ユタと愉快な仲間たち” 「玉やだと 又またぬかすわ 鍵やと云ひ」 3

2014-07-29 02:16:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 ※ANPさんが仰っていたNEVADAって、10年前、長崎県で起きた女子小学生の同級生同士であった殺人事件の加害者のことね。すまん、ANPさん。今度から、もう少し分かりやすい表現でよろしく。

[7月26日18:50.東京都墨田区吾妻橋 ユタと愉快な仲間たち]

「何か、空が急に曇ってきたような……?」
 ユタが不審そうに空を見上げる。
「え?」
 それに反応する威吹だが、
「そんなことよりツマミが無いぞ、ツマミ!」
 と、雪のように白い肌を真っ赤にさせて、すっかり酔いの回っている状態だった。
 他にも、
「不肖、藤谷春人、歌います!“地涌讃徳・東方レボリューション”!Ah♪芙蓉Ho!厳かに♪Hey!」
「キノ兄ぃ、ウチにビールぅ……」
「あと5年待ちやがれ。江蓮、お前は飲め。んでもって、酔い潰れてオレに介抱されやがれ!」
「あと3年待たせやがれ」
「威吹先生、おツマミの油揚げです!」
「……気のせいか???」
 誰もユタの疑問など、聞いちゃいなかった。
 だが、
「師匠、さっきエレーナに連絡したんですけど、何か変なんです」
「え?何が?」
 魔道師達が、ユタの疑問に1番近い所にいた。
「エレーナのヤツ、『仕事が忙しいから来れない』って言うんですよ」
「まあ、あのコも働き者だからね。宅急便の仕事はできないだろうから、ホテルでのアルバイトが忙しいのかしら?」
「でも、普段でしたら、とっくに仕事は終わってるはずなんです」
「今日は花火大会だから、ホテルのお客さんもそれで賑わうんでしょう」
「そうじゃなくて……あいつのホテルから、ここの花火は見えないんですよ!」
「ええっ!?」
 その直後、突然の雷鳴と共に豪雨が降り出してきた。
「地湧6万のォォォォォォ♪広布なりぃぃぃぃッ♪」
「班長、早く中へ!」
「あのバカ!!」
 ユタはカラオケのマイクを放さない藤谷を引っ張って、階段室に避難した。
「な、何だこのゲリラ豪雨はよ!ああっ!?」
「いや、ゲリラ豪雨だろ。えーと、魔道師さんも、浴衣濡れちゃった?」
「少し……」
「いきなりだもんな……。てか、イリーナさんは?」
「『あのバカ』と言いながら、外階段を下りていきましたが……」
 と、カンジ。
 カンジはタブレットで、ワンセグテレビを点けた。
「突然のゲリラ豪雨で、打ち上げを30分遅らせるそうですね」
「マジかよ!」
「つまり、タイムリミットは19時半だってことだね?」
「それ以降、天候の回復の見込みが無い場合は、中止も有り得るとのことです」
「そんなぁ……」
 魔鬼は目に涙を浮かべた。

[同日同時刻 同区菊川 ワン・スター・ホテル エレーナ・マーロン]

 屋上を解放し、宿泊客におもちゃ花火を体験させていたホテル。
 しかし、それもゲリラ豪雨により、中止となった。
(残念だけど、ポーリン先生の御意向だからね……)
 エレーナは小さく、ため息を吐いた。
 宿泊客達が残念そうに部屋に戻って行く中、エレーナはそれまで彼らがたしなんでいた花火の燃えがらや水バケツを回収して1階に下りたのだが、
「!?」
 そこには険しい顔をしたイリーナが立っていた。
「エレーナ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
「な……何ですか?てか、私何も知りません!喋りません!」

 しかし……。
「きゃはははは!い、い、言います!言いますからぁ……はははははは!」
 イリーナに吊るされて、マリアから借りて来たミク人形とフランス人形にくすぐり拷問を受けたエレーナがいた!
「ポーリンせんせがぁ!ひあぁっ!」
「やっぱりポーリンのしわざだったか。ポーリンの居場所はどこ?」
「そ、それは……」
「言わないと、今度は外で逆さ吊りにしてオシッコ漏らすまでくすぐらせるわよ?」
「ひぃ……!」

[同日19:15.同区吾妻橋 ユタと愉快な仲間達(イリーナを除く)]

「おい、こりゃ冗談抜きで中止か?」
 藤谷、さすがにビールを飲むことは無くなった。
「ったく、冗談じゃねーぜ。高等部合宿登山、バックレたってのによォ……」
「オマエが言うセリフじゃねーだろ?あ?」
「てか、やっぱりバックレかよ……」
 鬼族の彼氏と元幽霊の彼女という異種カップルに呆れるユタ。
 そして、恨めしそうに、真っ暗で時折雷鳴や稲光を放つ空を見上げた。
「それにしても……。せっかくマリアさんに花火見てもらおうと思ってたのになぁ……」
「その気持ちがありがたい。それに、いま師匠が動いてくれている。あと15分あるなら、それまで待とう」
 マリアは前向きに言った。
「大丈夫ですかね?」
「ミカエラとクラリスが帰ってきたところを見ると、上手く行ってるらしい。やっぱりこの空模様は、ポーリン師が関わっているようだ」
「マジですか。ホント、懲りない魔女さんですな」
 ユタは憤慨した様子で言い放った。
「……夢の中で、ポーリン師がこんなことを言ってきた」
「え?」
「『復讐という愚かな手段で多くの人を不幸にしておきながら、自分だけ幸せになろうなどと言語道断!』ってね」
「それはポーリン師が決めることなんですか?」

[同日同時刻 世界某所 イリーナ・レヴィア・ブリジッド&ポーリン・ルシフェ・エルミラ]

「それはあなたが決めることじゃないでしょう!」
 イリーナは、かつて同じ師匠の元で修行を積んだ姉弟子のポーリンにくって掛かった。
「マリアは私の直弟子よ!余計な手出しと口出しはしないでちょうだい!」
「そのお前の弟子が魔界にいるか、100歩譲って人間界でも外界から断絶された場所に居続けるというのなら、そこまでしなかった。だけども、謹慎を解いた上に外界に出すというのはどういう了見だ?挙句の果てには、人間の男とうつつを抜かそうとしている」
「私には私のやり方、指導方法があるわ。あのコの罪の重さは知ってる。だけどあのコの場合、上から頭ごなしに向き合わせる方法は合わない。もっと自然に向き合わせる方法を……」
「日本の生ヌルい少年法みたいなこと言ってんじゃないよ。本来、魔道師というのは日陰者。それでも私達はともかく、犯罪者のあのコを日なたに出すのは間違ってる」
 するとイリーナはため息を吐いた。
 やはり弟子の育成方法からしてすれ違いが多くなったのは事実だが、ここまでこじれようとは……。
「……これ以上の話し合いは無理みたいね。分かったわ。こうなったら、最後の手段……」
(お、やるか?)
 ポーリンは魔道師の杖を出し、イリーナの攻撃に備えた。
 しかし、イリーナの最後の手段は魔法などではなかった。
「……と、いうわけで、お願いします!先生!」
「はあっ!?」
 イリーナの横に、黒いローブを羽織り、フードを目深に被った大師匠が現れた。
「これ、ポーリンや。……」

[同日19:25.東京都墨田区吾妻橋 ユタと愉快な仲間たち]

「おおっ!雨が止んだ!」
「晴れ間が見えて来たぞ!」
「威吹先生、どうやら打ち上げは5分後に開始するようです」
 カンジはワンセグを見ながら言った。
「よし!」
 藤谷がパンパンと手を叩く。
「さあ、皆さん!仏様の大慈大悲により、見事に晴れてくれました。屋上に行って続きをやりたいと思われまするが、皆さんどうでしょう?」

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……(一同、拍手)

「まるで顕正会みたい」
 ユタは苦笑いをした。
 屋上に再び出て盛り上がる頃、やっと待望の花火が打ち上がった。
「どうやら、間に合ったみたいね」
 そこへイリーナが戻って来た。
「師匠!」
「これでもうこの花火大会を邪魔する者はいなくなったわ。安心して、ユウタ君とゆっくり花火を楽しみなさい」
「はい!」

 終了もまた30分遅かったようだが、何はともあれ、めでたしめでたしのようである。

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3 コメント

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補足 (作者)
2014-07-29 07:57:03
ポーリン:「加害者への生ぬるい人権擁護をやめろ!」
イリーナ:「悪人でも弁護士を雇う権利はあるわ」

どちらが正しいのやら……。
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Unknown (ANP)
2014-07-29 11:09:51
サトーさま風

ああっ?オメーよーっ!田代時代から俺様はネットしてるからよーっ!オメーは俺様より年上だからネットスラングくらいわかっとんかと思ったんだよーっ!
返信する
ANPさんへ (作者)
2014-07-29 14:16:08
いや、こりゃどうも失礼。
実は意外と2ちゃんねるは見ないのです。
ニュースカフェやヤフコメは見ますけどね。
返信する

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