報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「事件の後の東京都内」

2019-05-31 12:56:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月13日21:30.天候:晴 東京都豊島区 日蓮正宗・正証寺]

 住職:「おお、稲生さん。もうお帰りになったんですか?」
 稲生:「あっ、御住職様!は、はい。おかげさまで……」
 住職:「お怪我は無かったですか?」
 稲生:「は、はい。おかげさまで……」
 住職:「そうですか。鈴木さんも稲生さんのおかげで助かったと、泣いて喜んでおりました」
 稲生:「無事で何よりです。あの、夕方の勤行がまだなので……」
 住職:「ああ、どうぞ。本堂には他の御信徒さんもおられますから」

 そこはさすが東京23区内の寺院である。

 稲生:「すいません」

 稲生は本堂へ向かった。
 と、そこから出て来る者がいた。

 稲生:「登山部長!」
 藤谷秋彦:「おう、稲生君」

 稲生の所属班の班長を務める藤谷春人の父親で、正証寺登山部長の藤谷秋彦である。
 登山部長を務める傍ら、壮年部の地区長も務める。

 藤谷:「本当に無傷だったんだな。直接弾雨を受けたというのに、本当に素晴らしい……」
 稲生:「登山部長、それより藤谷班長は……?」
 藤谷:「春人か。あいつは今日から富士宮に行ったよ」
 稲生:「えっ?もしかして、あの銃撃事件の絡みで?」
 藤谷:「いやいや。向こうにはうちの会社の営業所があるんだが、向こうで大口の契約を取ってね。春人が現場責任者として向かったんだ。要は現場監督に、更に指導する役だな。『“釣りバカ日誌”のハマちゃんみたいな役だ!』なんて行きやがったけど……」
 稲生:「そうなんですか」
 藤谷:「富士宮市内の学会の会館を妙観講さんが分捕ってくれてね、その改修工事だよ。よくやったなぁ(※)」

 ※フィクションです。

 稲生:「今、班長はホテルに?」
 藤谷:「そうだな。ビジネスホテルに長期滞在プランで泊まってるよ。後で聞いてみるといい」
 稲生:「はい。ありがとうございます」

 稲生はそこで藤谷秋彦と別れ、自分は本堂に入った。
 そこで勤行している時に気づいたものがある。
 それは後述する。

[5月14日07:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 魔道士2人が宿泊しているツインルーム。
 エキストラベッドは片付けられ、本当の2人部屋になった。

 マリア:「ん……」

 マリアが目を覚ました。
 ライティングデスクの上の時計はチッチッと秒針を刻んでいる。
 隣のベッドを見ると、ルーシーの姿は無かった。
 だが、すぐにどこにいるかは分かった。
 バスルームの中からシャワーの音が聞こえたからである。

 マリア:(あんなに泣いたの久しぶりだ……)

 マリアが上半身を起こすと、ルーシーがバスルームから出て来た。
 黒いストレートの長い髪は濡れてキラキラ光り、バスタオルだけ巻いた姿である。

 マリア:「ルーシー、シャワー浴びてたの?」
 ルーシー:「昨日は……それどころじゃなかったから」
 マリア:「少しは落ち着いた?」
 ルーシー:「マリアンナは落ち着いたの?」
 マリア:「少しだけしか眠れなかった。私の頭を銃弾がスレスレに通った夢は見たけど……」
 ルーシー:「稲生君に守られて良かったね。私には守ってくれる人なんていないもの……」
 マリア:「私にはたまたま弟弟子がいただけで……」
 ルーシー:「でもそれが必ず助けてくれるとは限らないじゃない。マリアンナは幸せ者ね」
 マリア:「私が……幸せ者……?」
 ルーシー:「マリアンナもシャワー使ったら?日本は湿度が高いから、すぐに汗かく」
 マリア:「う、うん……。勇太はどうしたんだろう?」
 ルーシー:「聞いてみたら?」

 ルーシーは部屋の電話を指さした。
 マリアは受話器を取ってフロントに電話してみた。

 エレーナ:「はい、フロントです」
 マリア:「エレーナ。私だ」
 エレーナ:「おー、もう起きたのか。さすが先生と違って早起きだぜ」
 マリア:「いや、いつもこれくらいに起きてるんだが。それより勇太はどこの部屋で寝てるの?」
 エレーナ:「稲生氏なら帰ったぜ」
 マリア:「えっ!?」
 エレーナ:「こっちの寺にお祈りをしてから帰るって言ってたな。ま、その方がいいだろうさ。どうせマリアンナ達、稲生氏がいたところでどうしようも無いわけだし。私達と違って、ちゃんと親が健在なんだから、無事な姿を見せた方がいいだろ」
 マリア:「そうか……」
 エレーナ:「ま、今日も来るって行ってたから心配すんな。稲生氏のことだから、今度は朝の御祈りを捧げてからこっち来るってパティーンだろ。確か朝7時からだから……あ、もう始まってんな。それからここに来る時間を考えると……」
 マリア:「……何でオマエ、勇太の寺の祈りの時間を知ってるんだよ?」
 エレーナ:「鈴木に吐かせ……もとい、鈴木が教えてくれたぜ」
 マリア:「あ、そう。私はもう少し寝てるから、勇太が来たら教えて」
 エレーナ:「OK」

 マリアは電話を切った。

 ルーシー:「マリアンナ、シャワー使わないの?」
 マリア:「もう一眠りしてから使う。あまり眠れなかったから眠い……」

 マリアはそう言ってベッドに潜り込んだ。

 ルーシー:「ちっ……!」

 ルーシーは舌打ちするとバスタオルを取った。
 その肢体の形は美しいものだったが、常人には考えられないものが体中についていた。
 よく欧米人が入れているタトゥーとか、そういうものではない。
 それは体中のあちこちに付いている十字架型の火傷の痕だった。

 ルーシー:「マリアンナが、どうしてトラウマを克服したのか……それを知りたくて日本に来たのに……。“魔の者”に追いつかれるなんて……」
 マリア:「やはりイギリスから追い掛けて来たんだ」
 ルーシー:「この体の傷痕が消えないの!マリアンナは消えたのに!」
 マリア:「私だって不思議に思ってるよ。師匠は、『女の幸せ』がどうとか『女の悦び』がどうとか言ってたけど……」

 マリアは布団を頭から被って、少しでも早く眠りに就こうとした。

[同日07:47.天候:晴 東京都豊島区池袋 東京メトロ池袋駅・丸ノ内線ホーム]

〔「2番線から中野富士見町行き電車が発車します」〕

 朝のラッシュでメチャ混みの丸ノ内線電車。
 その先頭車に稲生は乗っていた。
 着席はできず、しかししっかり乗務員室ドアの後ろの場所は確保している。
 ホームから発車メロディが聞こえて来た。

〔「2番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ピンポーンピンポーンとチャイムが2回鳴ってドアが閉まる。

 稲生:(どうせなら新型車両に乗りたかったなぁ……)

 と、鉄ヲタ根性を出す稲生。
 現在丸ノ内線ではワンマン運転が行われている為、発車合図のブザーは鳴らない。
 運転士の歓呼は聞こえたが、マスコンハンドルをガチャッと操作する音は聞こえてこない。
 今や丸ノ内線もATOの時代だ。

〔東京メトロ丸ノ内線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は大手町、銀座、赤坂見附方面、中野富士見町行きです。次は新大塚、新大塚です。……〕

 稲生:(マリアさん、今行きますからね。もうちょっと待っててくださいねー)

 鉄ヲタ根性は半分出すものの、マリアに対する心配も忘れていない。

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2 コメント

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こんにちは! (んっ?)
2019-05-31 14:38:17
流石,埼玉!

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190528-00000104-kyodonews-soci

最近は○○の一つ覚えで人権人権と云い過ぎる。
必ず「行動に問題は無かったと考える」なんて
釈明しなければならない。

僕が子供の頃は「止まらんと撃つぞ!」と警告した後
本当に射撃してたもん。
しかも警告射撃したにも関わらず,
撃ってこないだろうとなめた行動を取る野郎は
撃ち殺してしまえ!
返信する
んっ?さんへ (雲羽百三)
2019-05-31 15:22:05
 コメントありがとうございます。

 死刑制度の無い国や州が存在しますが、これは逆に警察官の警告に従わない場合は射殺されるということでもあります。
 日本の警察官がなかなかそうしない理由は、死刑制度があるからだと私は考えます。
 日本の死刑制度廃止を訴える人達がいますが、ということはその代わり警察官による犯人射殺は容認することだな?ということになりますね。
 ついでに正当防衛成立の高い壁も低くしてもらわなければなりません。
 んっ?さんは御存知でしょうが、日本において「緊急避難」は比較的簡単に認めてもらえますが、「正当防衛」はなかなか認めてもらえないんですよ。
 死刑制度を廃止するのなら、「警察官による犯人射殺OK」と「緊急避難成立要件並みに緩い正当防衛の成立要件緩和」を求めるものであります。
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