報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Sisters” 「夏のボカロライブ」

2017-08-20 12:40:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月11日08:10.天候:晴 仙台市地下鉄泉中央駅]

 駅前のバスプールに地元の路線バスが到着する。
 東京でも当たり前のノンステップバスで、前扉の大きなグライドスライドドアが両側に開いた。

〔「泉中央駅です。ご乗車ありがとうございました」〕

 運賃距離制なので、前扉から運賃を払って降りるタイプ。

 敷島:「大人4人で」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 バスを降りた後でエミリーが言った。

 エミリー:「これは経費で落としますか?」
 敷島:「いや、いいよ。路線バスの運賃くらい。領収証が出るタクシーだけにしといてくれ」
 MEIKO:「領収証切れるヤツは経費にするのね」
 敷島:「……っ、悪かったな」
 ミク:「電車代もですか?」
 敷島:「通勤電車の運賃くらい俺が出すよ」
 MEIKO:「領収書切れないから?」
 敷島:「そう。……って、コラっ!」
 MEIKO:「ハハハ、自白した。いいから行きましょう。KAITO達、もう仙台駅に着いたみたいよ」
 敷島:「おっ、さすが新幹線の始発は早いな」

 エミリーはそう話している間に、4人分の乗車券を購入していた。

 エミリー:「どうぞ」
 敷島:「おっ、ありがとう」

 乗車券を手に、来た道を引き返す。
 ホームに降りると、次の電車が発車を待っていた。

〔お知らせします。この電車は、富沢行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕

 エミリー:「井辺プロデューサーに連絡しておきました。レンタカーの手配があるので、ゆっくり来てくださいとのことです」
 敷島:「まあ、そうだろうな」

 こう聞くと、今からレンタカーの手配をしているように聞こえるが、実際はちゃんと予約している。
 要は先ほど新幹線で着いて、これからレンタカー屋に向かっているということだ。

〔「ご案内致します。この電車は8時18分発、各駅停車の富沢行きです。お待たせ致しました。まもなく発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
〔2番線から、富沢行きが発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ホームドアのチャイムが札幌市地下鉄と同じというトリビア。
 恐らく、メーカーが同じなのだろう。

 敷島:「あ、俺、朝飯食ってねぇ」
 エミリー:「支社長と面会まで少し時間がありますから、先に朝食を取っては?」
 敷島:「うん、そうするか。どうせ向こうも、先に朝礼するだろうし」

〔この先、ポイント通過の為、電車が大きく揺れますのでご注意ください。次は八乙女、八乙女です。バスご利用の方は、バスプール方面出口をご利用願います〕
〔The next stop is Yaotome station.〕
〔日蓮正宗妙遍寺へは、次でお降りください。また、日浄寺へは北仙台、仏眼寺へは愛宕橋、冨士大石寺顕正会仙台会館へは、終点富沢駅でお降りください〕

 ↑宗門や顕正会も、せめてこれくらいのPRやろうよ。街頭折伏よりもさ。法道院もせっかく三門前に都営バスと西武バスの停留所があるってのに、広告の1つも出さねーで……。広告費なら、全額はムリだが御供養するよ。因みに創価学会では、会館の名前をバス停名にしているくらいである。創価学会でもやってるんだから、これくらいやんないと。広宣流布なんか無理だよ。

[同日08:45.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 某レンタカーショップ]

 電車が到着して敷島達は急いでレンタカーショップに向かった。
 場所はエミリーが知っている。
 シンディがそこにいる為、互いの位置情報を把握している為だ。

 鏡音リン:「あっ、社長!遅いよ!」
 敷島:「悪い悪い!」
 井辺:「社長、おはようございます」

 井辺が挨拶すると、最初に文句を言っていたリンも含め、ピッと背筋を伸ばして、
「おはようございます!」
 と、挨拶した。

 敷島:「無事に仙台入りできたな。といっても、会場は市外なんだが。車は用意できた?」
 井辺:「はい。ハイエース1台で間に合いました」
 敷島:「ありがとう」

 一番定員の多いコミュータータイプだ。

 井辺:「衣装などは既に、業者委託で会場に送ってあります」
 敷島:「よし、分かった」
 井辺:「いつでも出発できますので、どうぞお乗りに……」
 敷島:「あ、いや。悪いが、先に出発しててくれ。俺は後で行く」
 井辺:「と、仰いますと?」
 敷島:「東北を拠点にしている四季エンタープライズの仙台支社長に挨拶してくるさ。同族企業とはいえ、下請けが仕事させてもらうんだからさ」
 井辺:「なるほど。そういうことですか。しかし、既に内野支社長とは話が付いているはずでは?」
 敷島:「だから、改めて挨拶に出向くんだよ。グループ内でも、ボーカロイドのライブに疑問を持つ人はいるからさ」
 井辺:「分かりました。どこかで待ち合わせしますか?」
 敷島:「いや、そのまま会場へ向かってくれ。俺も電車とタクシーで向かうからさ」
 井辺:「分かりました」
 敷島:「まあ、もうKR団もいなくなったことだから、後は事故にだけ気を付ければいいと思うけどな」
 シンディ:「私はこのまま一緒に乗って行けばいいですか?」
 敷島:「そうだな。……いや、ちょっと待て」

 敷島はニヤッと笑った。

 敷島:「ここでエミリーとチェンジだ。エミリー、お前は井辺君達に付いて行ってやってくれ」
 エミリー:「は?……はい、かしこまりました」
 敷島:「シンディ、お前は俺と来い。一緒に挨拶しに行くんだ」
 シンディ:「は?……はい、かしこまりました」
 敷島:「よし、これで準備OKだ!皆、俺も後から行くから気をつけて行けよ。くれぐれも関係者の人達に失礼なことするなよー?特に、リン!」
 リン:「ふぁい!?」
 鏡音レン:「だ、大丈夫です。リンのことは、ボクが見てますから!」
 井辺:「では、お先に失礼します」

 エミリーが助手席に乗り、運転手役の井辺が車を走らせた。

 シンディ:「社長?どういうことですか?」
 敷島:「リンに『イタズラはやめろ』と言っておきながら何なんだけど、ちょっとした悪さを思いついた」

 敷島は相変わらず笑みを浮かべたままだ。

 シンディ:「私に何かさせるつもりですか?……まあ、汚れ役ならいつでも引き受けますけど」
 敷島:「いや、そうじゃない。お前はあくまで、俺の秘書として振る舞ってくれればいい。いつも通りにな」
 シンディ:「はあ……」
 敷島:「よし。ちょっとまだ時間がある。俺はまだ朝飯食ってないから、先に食べてから行くぞ」
 シンディ:「はいはい。えー、この近くにモーニングの取れるお店は……」

 一体、敷島はシンディに何をさせるつもりなのだろうか。

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