報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「愛原家の片付け」

2020-08-29 19:55:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月23日07:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 ホテル東横イン仙台駅西口中央]

 高橋:「先生、先生。起きてください。7時ですよ」

 私は珍しく高橋に起こされて目が覚めた。

 愛原:「あれ?目覚まし鳴らなかったか?」
 高橋:「バイブになってましたよ。俺はそれでも起きれましたけど」
 愛原:「そりゃ偉い」
 高橋:「少年刑務所じゃ、6時半が起床時刻でしたが」
 愛原:「なるほど」

 私はベッドから起き上がった。

 高橋:「それにしても先生、変な夢でも見たんですか?起こす直前、うなされてましたよ?」
 愛原:「マジか。いや、実はな、リサに襲われる夢を見たんだ」
 高橋:「ほお。夢の中で先生を襲うとは、とんでもないヤツですね。お任せください、先生。そのようなナマなヤツぁ、俺がその頭にマグナム撃ち込んでみせましょう!」
 愛原:「だからリサには効かないって。あ、いや、リサって言っても、うちのリサじゃないんだ」
 高橋:「は?」
 愛原:「多分、あれがアメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーだったんだろうな。いやな、俺が子供の頃の夢を見たんだよ。で、あの『お化け屋敷』を探検してた。現実は呻き声を聞きながら屋敷を脱出したわけだけど、夢の中ではその呻き声の主はオリジナル版リサ・トレヴァーで、俺達は逃げ切れずに襲われるというものだ」
 高橋:「そうなんですか。あの、変な被り物をして、手枷と足枷を付けた化け物のことですよね?」
 愛原:「そうだ。タイラントと同様、マグナムを何発も撃ち込んでも倒れず、ようやく舞台となった屋敷の自爆装置に巻き込まれて、そこでやっと非業の死を遂げたという……ん?」
 高橋:「何ですか?」
 愛原:「何か、あの屋敷に似てないか?もしも爆発の原因が自爆装置によるものなんだとしたら……」
 高橋:「さすが先生!名推理です!」
 愛原:「いや、分かんないよ。とにかく、ちょっと顔を洗ってくる」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「せんでいい」

[同日09:01.天候:晴 同地区内 仙台市地下鉄仙台駅・東西線ホーム]

 ホテルの朝食会場で朝食を食べた後、私達はホテルをチェックアウトして地下鉄の駅に向かった。
 尚、リサが1番朝食をバクバク食べていた。
 BOWで人肉食優先ではなく、普通の食事で栄養補給可というのは珍しいことなのだそうだ。
 それもまた、ここにいるリサが完成版と称される所以である。
 が、しかしそれでも人肉食への欲望は強い為、あまり空腹になると理性が切れて人を襲う恐れは十分にある。

〔3番線に、荒井行き電車が到着します〕

 今日は家の片付けを手伝うので、さすがに高橋はスーツではなくラフなTシャツ姿だったし、リサも同じようにTシャツに黒いミニスカートを穿いていた。
 多分その下にはちゃんとオーバーパンツを穿いていることを信じたい。

 やってきた電車には、一応そこそこに乗客がいる感じがしたが……。

〔仙台、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 

 ぞろぞろと降りて行き、車内はガラ空きになった。
 日曜日の朝だからしょうがないが。
 ブルーの座席に腰かける。

〔3番線から、荒井行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 短い発車サイン音が鳴る。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 2点チャイムが4回鳴ってドアが閉まった。
 もちろん、外側のホームドアが閉まってから電車が走り出す。
 4両編成という短さ、そして全駅にホームドアが設置されていることもあり、仙台市地下鉄は全列車においてワンマン運転が行われている。

〔次は宮城野通、宮城野通。ユアテック本社前です〕

 愛原薫:「停電も復旧したみたいだし、あとは家の片付けをするだけだな」
 愛原節子:「1日で終わるといいけどねぇ……」
 愛原学:「被害はそんなにヒドいわけじゃないんでしょ?」
 薫:「ざっと見た限り、雨戸が壊れていたり、外壁に傷が付いたりしてたくらいだな。ああ、あと、あれだ。駐車場に瓦礫が飛んで来たもんで、車は修理に出さないとダメだな」
 学:「マジか」

[同日09:15.仙台市若林区某所 愛原家]

 最寄りの地下鉄駅で電車を降り、その足で家に向かった。
 昨日来た時は警察による交通規制が敷かれていた場所も、今は簡単に入ることができた。

 学:「ちょっと待って!」

 私は途中にあったコンビニに立ち寄り、そこでスポーツドリンクやノンカフェインのお茶などを買い求めた。

 学:「今日も暑くなるから、水分補給はこまめにね」
 薫:「さすが学だ」
 高橋:「メモっておきます!これも名探偵の心得ですね!」
 学:「いや、基本中の基本なんだが……」

 家に着いて、まずは被害状況を確認する。

 学:「高橋、被害が出ている所は写真撮っていてくれ。保険なり補償なり、もらう時の証明になるから」
 高橋:「了解っス!」
 薫:「まずは車だな。ダメだ。爆風で飛んで来た色々な物が当たって傷だらけだ」

 屋根やボンネットはボコッと凹んでおり、窓ガラスも何枚か割れて、ヒビが入っている窓もあった。

 高橋:「写真撮っときますね」
 学:「頼む」

 家の被害としては、『お化け屋敷』の方を向いている窓のシャッター式の雨戸が歪んで壊れていた。
 爆発発生時刻が早朝だったということもあり、我が家ではまだシャッター式の雨戸を閉めていたのだ。
 それもまた被害が少なく済んだ理由でもあった。
 ただ、歪んだシャッターが内側に押されたこともあって、外側の窓ガラスにヒビが入ったり、最悪割れている窓もあった。
 我が家は冬季の寒さ対策と騒音対策の為、二重サッシになっている。
 その外側のサッシが壊れていた。
 一応、見た限りでは窓の被害はそんな感じ。
 あとは1階の窓の外にある防犯用の鉄格子が外れて下に落ちていたとか、外壁が爆風で飛んで来た物が当たって傷ついたりとかであった。

 リサ:「これならゾンビが来ても、侵入できないね」

 リサは壊れずに済んだ鉄格子を見て言った。

 薫:「ゾンビ?」
 学:「な、何でも無い!何でもないんだ!」

 幸い停電は復旧していたので、家の中はエアコンを点けて暑さ防止を図った。

 節子:「でも冷蔵庫の中は換えた方がいいわよね?」
 薫:「そうだな。冬だったらまだ良かったんだが……。後で買い物に行くか」

 真空パックで保存の利く食料品とか以外の生鮮食品は廃棄しないといけなくなった。
 こういうのも補償されるのだろうか。

 高橋:「先生、ちょっといいっスか?」
 学:「何だ?」

 高橋が手招きしてくる。
 私が彼に付いて行くと、そこは裏庭だった。
 裏庭にも爆風で飛んで来た物が散乱している。
 これも片付けないといけない。

 高橋:「これなんですけど……」
 学:「ん!?」

 高橋が指さした先には穴があった。
 確かここには大きな庭石があったはずだが、それが転がってどこかに行ってしまったようである。
 で、代わりにそれと同じ大きさの穴が開いていた。
 庭石は転がったのではなく、ここに落ちたのかもしれない。

 学:「何だこれ?」

 私は穴を覗き込んだ。
 昼間の日差しが差し込んでいるにも関わらず、穴の下は真っ暗で何も見えなかった。

 学:「んん!?」

 私は探偵の7つ道具の1つであるマグライトを持ってくると、それで穴に向かって照らした。

 学:「何かあるな……」
 薫:「なに?どうしたの?」
 学:「いや、お父さん、実はね……」

 私は父に穴を見せた。

 薫:「下水管に穴でも開いたんか?」
 学:「下水道?でも、下水の臭いなんてしないけど……」
 薫:「これも被害の1つだな。爆発の時、すんごい揺れたから、それで開いた下水道の穴かもしれない。高橋君、これも写真に撮っておいてくれないか」
 高橋:「わ、分かりました」

 いやー、下水道の穴には見えないんだが……。
 よし、後で探検してみよう。
 確か物置に縄梯子があったはずだ。

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1 コメント

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あとがき (雲羽百三)
2020-08-29 21:56:37
 写真では分かりにくいかもしれませんが、仙台市交通局2000系電車は窓が開きません。

 裏庭の庭石があった所に穴が開いていたというくだりは、実際に私が帰省した際に実家であったことです。
 どうも使われなくなった下水道管が腐食して穴が開いたということらしいのですが、これが公道だったら道路陥没の原因になっていたわけですな。
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