報恩坊の怪しい偽作家!

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“ユタと愉快な仲間たち” 「ホリデー快速」 

2014-08-05 15:09:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月10日06:15.埼玉県さいたま市中央区 ユタの家 稲生ユウタ]

「……南ー無ーっ!妙ー法ー蓮ー華ー経ー南ー無ーっ!妙ー法ー蓮ー華ー経ー南ー無ーっ!妙ー法ー蓮ー華ー経……」
 海への出発の日、ユタはいつも通り仏間で朝の勤行をし……。
「…………」
 カンジは朝食作り、残りのメンバーは……。

〔「ラジオ体操第2〜!……1、2、3、4……」〕

「第2って、いつまでやるんだよ、これ!」
「いいじゃないの。昔は第3まであったのよ」
「知るか!」
 何故かラジオ体操。
 第1よりも軽快なリズムで、何だかんだいいながらやる威吹。
 てか、振り知ってるんかい。
「海に入る前に、しっかり体をほぐしておかないとね」
「今からやってどうすんだよ!」
「1、2、3、4……」
 因みに体操している中に、マリアの人形、ミク人形とフランス人形がいたような気がするが、恐らく気のせいだと威吹は後にユタに説明している。

[同日07:35.JR大宮駅・京浜東北線ホーム ユタと愉快な仲間たち]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の電車は7時39分発、各駅停車、磯子行きです〕

「おーい、来たぞー」
 階段を降りながら、大宮区在住のキノ兄妹と栗原江蓮がやってきた。
「おはようございまーっす!」
「ういっス」
 鷹揚に手を振るキノ、元気いっぱいの挨拶をする魔鬼、カジュアルな挨拶の江蓮。
 挨拶で性格が分かるとはこのことだ。
「藤谷は?いねーのか?」
「班長も誘ったんだけど、連合会への顔出しがあるからって、断られたんですよ」
 ユタは残念そうな顔をした。
「はあ、何だそりゃ?」

〔まもなく2番線に、当駅止まりの電車が参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この電車は折り返し、7時39分発、各駅停車、磯子行きとなります。……〕

 因みに京浜東北線ホームだけ、自動放送が言い終わらないうちに電車が入線してしまうという現象が見られる。
 さいたま新都心駅の第一出発信号を通過した時点で、放送を流さないと間に合わないのではとは大宮レイプ軍団地元鉄ヲタの見解。

「連合会?何かあったっけ?御報恩御講は関係無いよなぁ……」
 江蓮は首を傾げた。
「ううん。法華講連合会じゃなくて、雪女郎連合会」
「ああ……」
「海よりも涼しい場所らしいよ」
「つーか、寒そう」

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕

「藤谷班長を連合会の会合で仲間達に引き合わせるんだって」
「雪女10人に取り囲まれて泣く泣く盟約書にサインしたって話だからねぇ……」
「そこ、何気なく怖い話しないの」
 イリーナは呆れた様子で言った。
 取りあえず、折り返し先頭車に乗る。

〔この電車は京浜東北線、各駅停車、蒲田行きです〕

「ユタの趣味に付き合ってたら、いつも電車は先頭車だな」
 キノが皮肉るように言った。
「いいじゃねーかよ」
 威吹が代わりに言い返す。
「いや、そうでもないんだけどなぁ……」
 ユタは頭をかいた。
「何が?」
「南浦和で乗り換えるから、先頭車の方がいいし(※1)。乗り換え先、指定席がたまたまクハ車(※2)なだけだし。その先の乗り換え先なんて、そもそも中間車が無いし。だから、僕の100パー趣味ってわけでもないよ」
「ルート自体が趣味みてーなモンだろー」
「う……それは……」
 反論不能のユタだった。

(※1:南浦和駅の駅舎……というか改札口やら武蔵野線ホームやらは京浜東北線ホームの南寄りにある。※2:鉄道車両で運転台付き普通車のこと。構造上、先頭車か最後尾が多い)

 電車は定刻通りに大宮駅を発車した。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は京浜東北線、各駅停車、蒲田行きです。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

「連合会の会合に行くのに、どこまで行ってんだ、ヤツぁ?」
「相手が東海支部富士宮地区の人だから、大石寺の近くまで行ってんじゃない?」
「いや……きっと、もっと富士山の山寄りだと思うなぁ……」
「要は“獲物”の品評会みてーなモンだろ。オレんとこもやってみっかなぁ……」
「アホか!絶対行かねーぞ、アタシゃ!」
「威吹先生。うちの里も流行に従い、行う方向で話が進んでいるとのことです」
「流行に従うという理由は引っ掛かるが、そういうことなら考えよう。いいかな、ユタ?」
 チーン!
「信号75。今の鈴(りん)みたいな音はチンベルとも言いまして、ATCの車上信号機が変わる際、運転士にそれを伝える為の……」
「は、はあ……」
 ユタの説明に首を傾げるマリアだった。
「魔法を覚えるより難しそうだな……」
(聞いちゃいねー……)
 運転室の窓の後ろに陣取るユタ達を見て、威吹は苦笑を浮かべるしかなかったという。
「100パー、稲生さんの趣味ですな」
 カンジはポーカーフェイスを崩さずに言った。

[同日07:50.JR南浦和駅 ユタと愉快な仲間たち]

〔「まもなく南浦和、南浦和です。武蔵野線はお乗り換えです」〕

 ここで先頭車を中心に、武蔵野線に乗り換える客多数。
 ここから東京行きの電車が武蔵野線からも出ているが、東京駅に行くのなら、無論このまま京浜東北線に乗り続けた方が早い。
 ディズニーリゾートの最寄り駅である舞浜へ行くのなら、却ってここで乗り換えた方がいいかも(北有楽町駅……もとい、東京駅京葉線ホームの乗り換えを考えるなら、の話だ)。
「しっかし、最近の人間界は暑いなぁ……」
 威吹はパタパタと扇子で扇いでいた。
「さいたま市の最高気温は、今日も36度だそうです」
 カンジはポーカーフェイスのまま答えた。
「36度はさすがに我慢の限界だねぇ……」
 このメンバーの中で1番暑苦しそうな恰好をしているイリーナは、何故か涼し気だ。
 何か、魔法で涼しくなるようにしているのか。
「停車時間僅かだと思うんで、ジュースとか何か買っておきたい人は今のうちに買っといてください」
 ユタが言った。
「台車でジュースとか持ってきてくれないん?」
 魔鬼が疑問を投げた。
「特急用車両使うと言っても、臨時快速じゃ、多分無いだろうなぁ……」
 ユタは苦笑いし、首を傾げて答えた。
「ほらよ。魔鬼。これでジュースでも買ってこい」
 キノは妹に1000円札を渡した。
「ありがとなん〜!ゴロゴロ〜、ゴロゴロ〜。おジュースいりませんか〜?ピーマン汁、小松菜汁、ほうれん草汁〜」
「全部青い汁じゃねーか」
「たははは……」

[同日08:10.南浦和駅武蔵野線ホーム→ホリデー快速鎌倉号車内]

〔「5番線、ご注意ください。今度の5番線は8時10分発、臨時快速“ホリデー快速鎌倉”号、鎌倉行きです。2つドア、6両編成で参ります。停車駅は武蔵浦和、北朝霞、新座、東所沢、新秋津、西国分寺、北府中、横浜、大船、北鎌倉、終点鎌倉の順に止まります。……」〕

 いつもなら通勤電車が止まるホームに、特急用の電車が入線してきた。
 せっかくヘッドマークが付いているのに、無機質に『臨時快速』としか書いていない。
 側面の行き先表示にも、鎌倉の表記が無く、こちらも『臨時快速』としか書かれていなかった。
 かつて高崎線の特急として運行されていた185系と呼ばれる車両である。
 南越谷駅始発のため、既に車内には乗客がいた。

 ドアが開くと指定席車両の方は、比較的穏やかな様子で乗り込む風景が広がる。
「ここですね」
 ユタが指定席券を見ながら言った。
 どちらかというと古い車両のため、普通車のシートピッチは狭い。
 向い合せにすると、膝が当たるくらいの狭さだ。
 まあ、気心知れたメンバー達だけだからいいようなものの……。
 ユタの言う通り、電車はすぐに発車した。

〔「臨時快速“ホリデー快速鎌倉”号、鎌倉行きです。次は武蔵浦和、武蔵浦和です」〕

「お、ちょうど8人か」
「そうですね」
 イリーナは周りを見渡した。
 それに頷くユタ。
 向い合せにして4人用にすると、2ボックスで8人だ。
「鎌倉到着時間、9時52分です」
「うんうん。じゃあ、ちょっとした旅行だ」

 臨時列車は、まず西に進路を取る。

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2 コメント

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Unknown (ANP)
2014-08-05 22:01:37
北陸新幹線の金沢駅の映像を見ました。
なんとホームドアがあるではありませんか!
岡山駅にもないのに…
まぁじきにできましょうけど
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ANPさんへ (作者)
2014-08-05 22:15:29
 確か、今日がそうでしたね。
 東海道新幹線にもホームドアがあることですし、この流れで山陽新幹線にも全線できるでしょう。
返信する

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