報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「暴れる鬼」 2

2023-07-17 11:21:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日13時00分 天候:曇 栃木県宇都宮市某所 東北新幹線線路内]

 高速走行中の東北新幹線に跳ねられた鬼の男の肉片を集める警察官達。
 ところが……。

 警察官「うん?」

 その肉片が動き出した。

 警察官「な、何だ何だ?」

 その肉片は他の肉片と合わさって行き、そして段々と人の形を成して行く。

 警察官「えっ、ええーっ!?」

 そして最後には、あの鬼の男の姿に戻った。

 警察官「ばっ、化け物だーっ!!」
 鬼の男「さっきはよくも轢いてくれたなァ……?歩行者優先だろうがぁぁぁぁぁっ!!」

[同日13時05分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR東北新幹線274B列車8号車内→JR大宮駅]

 都内はカラッと晴れている。
 だが、車内には不穏な情報が流れていた。
 それは東北新幹線の事故処理が大幅に遅れるというものであった。
 宇都宮~那須塩原間で起きた人身事故。
 リサを追い掛けて東北新幹線の軌道内に入り、そこで下り列車に跳ねられて肉塊となった鬼の男。
 当初の予定より、大幅に運転再開が遅れるということは……。

 愛原「もしかしたら、本当に復活したのかもしれないな」
 リサ「新幹線に轢かれても大丈夫なのか……」

 リサの心配は更に増した。

 リサ(本当に、わたしが相手で勝てるんだろうか……?)

[同日13時25分 天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅・新幹線乗り場]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、上野です。山手線、京浜東北線、常磐線、東京メトロ銀座線、東京メトロ日比谷線と京成線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。上野の次は、終点、東京です〕

 愛原は大宮駅まで運転できれば御の字だと言っていたが、その予想に反して、大宮駅はすんなり発車した。
 その代わり……。

〔「まもなく上野、上野です。お出口は、左側です。お客様にお知らせ致します。東北新幹線、宇都宮~那須塩原間で発生した人身事故につきましては現在、運転再開の見込みが立っておりません。また、この先、東京駅のホームに列車が全て停車している状態でございます。その為この電車、上野駅で運転を見合わせます。お急ぎのところ、大変ご迷惑をお掛け致します。申し訳ございません。新しい情報が入り次第、お伝え致します。まもなく、上野です」〕

 愛原「上野か……。まあ、ここまで運転できただけでも御の字だ」
 絵恋「ホームが埋まってるって?」
 愛原「らしいな。上越新幹線や北陸新幹線はダイヤ通りに運転しているんだろう。それらの列車には、なるべく影響を出したくない。となると、どうしても事故中の東北新幹線は干される形になるんだな。東京駅に先に到着した列車は、良くて大宮までしか運転できない。折り返しが効かない状態で、よくまあ、上野駅までは運転できたと思うよ」

 愛原がそんなことを話しているうちに、列車は地下ホームに滑り込んだ。
 上野駅の新幹線ホームは2面2線。
 下りホームには、同じく運転再開を待つ東北新幹線下り列車が停車していた。
 外側のホームには列車は停車していないが、これは上越・北陸新幹線用のホームである。
 こうやってホームを分けることにより、このように東北新幹線が運転を見合わせても、他の新幹線になるべく影響は出ないようにしているのだ。

 リサ「どうするの?」
 愛原「ここで降りるさ。腹減っただろ?ここで食べて行こう。さすがに上野駅なら、店も一杯あるだろ?」
 リサ「確かに!」

〔「ご乗車ありがとうございました。うえの~、上野です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。……」〕

 半数以上の乗客がここで降りた。
 いつ運転再開できるか分からない新幹線に、これ以上付き合えないということだろう。
 リサ達もそうである。
 それでも少数、列車内に残っている乗客がいるのは、気長に運転再開を待つのか、或いは東海道新幹線に乗り換えるなどする為、新幹線から降りるに降りれないかといったところだろう(通しの新幹線特急券を持ってしまっていると、新幹線改札口から外には出られない為)。

 愛原「……はい。今、上野駅です」

 移動しながら愛原は、善場に電話していた。

 愛原「……はい。新幹線が、また上野駅で運転見合わせになってしまって。いつ運転再開できるか分からないので、ここで降りることにしました。……そうですね。で、リサがお腹を空かせているので、お昼を食べてからお伺いしたいのですが……。は?はあ……」

 何かあったのだろうか?
 リサが不審そうな顔をしていると、愛原が電話を切った。
 そして、後ろを振り向く。

 愛原「リサ、腹が減ってるところ悪いが、善場主任が急いでデイライトの事務所に来て欲しいらしいんだ。だから、昼食はもう少し待ってくれないかな?」
 リサ「はあっ!?何それ!?」

 リサの目が赤く光り、右手の爪が鋭く長く伸びる。
 フードを被っているので見えないが、耳が尖り、マスクで隠れているが、牙も鋭くなっただろう。

 愛原「落ち着け落ち着け。その代わり、デイライトの事務所でお弁当を用意しているそうだ」
 リサ「お弁当!?」

 シュルッとリサ、人間の姿に戻る。

 愛原「それで何とか頼む!善場主任のことだから、リサの好みの弁当は知ってるだろうしな」
 リサ「う、うーん……分かったよ。先生の命令だしね」
 愛原「そうか、ありがとう」
 絵恋「それなら、なるべく早く新橋に行く電車に乗りませんと」
 愛原「そうだな。京浜東北線の快速は新橋には止まらないから、上野東京ラインで行こう」

[同日13時44分 天候:晴 JR上野駅・上野東京ラインホーム→上野東京ライン1174M列車1号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。9番線に、停車中の列車は、13時44分発、上野東京ライン、普通、品川行きです。次は、東京に停車します〕

 上野東京ラインのホームに行くと、常磐線からやってきた中距離電車が停車していた。
 正月でも中間車はそれなりの乗客が乗っていたが、先頭車まで行くと、そうでもなかった。
 先頭車にはボックスシートがあるが、そこが1ヶ所まるっと空いていたくらいである。
 普段の日なら、ここまで空いてはいないだろう。
 また、品川止まりだからというのもあるか。
 ホームには、次の東海道線直通電車を待つ乗客達が待っているくらいだ。

 リサ「旅の続きだね」
 愛原「まあな」

 ホームから発車メロディが聞こえて来る。
 さすがにこちらはダイヤ通りのようである。

〔9番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 電車のドアが閉まって、すぐに走り出した。

〔この電車は、上野東京ライン、普通電車、品川行きです。【中略】次は、東京です〕

 リサ「善場さん、どうして急いで来いって?」
 愛原「俺の報告が聞きたいんだってよ。俺の報告を持って、腰の重いBSAAを動かしたいらしい。BSAAは、今回の出来事がバイオテロの1つだと見なす要素が無かったら動かないから。『他の犯罪やテロだったら、地元の警察や軍隊が動けばいい』って考えだから」
 リサ「なるほど」

 この電車内でも、何度も運行情報のチャイムが鳴って、ドア上の表示板に東北新幹線運転見合わせについての情報が流れている。

 愛原「鬼狩り隊でも、太刀打ちできないようなら、やっぱり軍隊の出番かな」

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