報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「デイライトにて」

2023-07-17 14:54:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日14時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私達を乗せた上野東京ラインはダイヤ通りに運転し、デイライトの事務所に無事到着することができた。
 元日ということもあり、事務所内はガランと寂しいものになっている。

 善場「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原「善場主任、お疲れさまです。主任、確か京都の山奥に向かうという話でしたが……?」
 善場「急きょ延期になりました。栃木の方で事件が発生しましたので。約束通り、お弁当を用意しています。リサ達はあちらのリフレッシュルームで、食べててください」
 リサ「私のお弁当は!?」
 善場「肉増し牛肉弁当ですよ」
 リサ「おおー!」
 善場「所長は幕の内弁当がお好きでしたね?」
 愛原「ははは、お見通しのようで……」
 善場「我那覇さんも」
 絵恋「ありがとうございます」
 善場「飲み物はリフレッシュルームの自販機で、適当に買ってください」
 リサ「はーい」

 リサと絵恋は弁当を手に、リフレッシュルームに向かった。

 善場「それでは愛原所長、大変なところ申し訳ないですが、あちらで御報告を」
 愛原「あ、はい」

 私と善場主任は会議室に向かった。
 机を挟んで向かい合わせに座ると、私はホテル天長園での上野利恵との話の内容を報告した。

 善場「あの日光市の民泊施設が、かつて天長会の宗教施設だったと?」
 愛原「はい。どことなく、雰囲気が小牛田の……宮城県に住んでた伯父の愛原公一の家に似ているなとは思ったのですが……」

 宮城県・小牛田の公一伯父さんが住んでいた家は、かつては公民館だった建物だ。
 田舎の町の公民館だから、平屋建ての建物だった。
 それと比べて、日光の民泊施設は一軒家という触れ込みだったので、そういう先入観があったのだが、大広間があった所は、確かに集会所としての用途もあったのかもしれない。

 善場「新興宗教団体の場合、個人の家を集会所として利用することは、よくあることです。天長会もそうだったのでしょうね。恐らく信者か何かの家を集会所などに転用し、その後、民泊施設として売り払ったのでしょう。もちろん、かつては宗教施設だった名残はなるべく消した上で」

 上野利恵もそこで『鬼』となる儀式を受けたこと、そしてその前に、あの鬼の男もまたそこで儀式を受けて、鬼になった可能性があることも報告した。

 善場「ありがとうございます。やはり、天長会を家宅捜索する必要がありそうですね」
 愛原「白井はもうこの世からいなくなったはずなのに、まだまだその余波が残っているとは……」
 善場「特異菌自体は、既に半世紀以上も前から存在していました。アンブレラの創業者、オズウェル・スペンサーはウィルスより使い勝手が悪いと判断したようですが、そこに白井が目を付けたのでしょうね」
 愛原「白井が死んだ以上、結局あいつは何が目的だったのかが分からずじまいですね」
 善場「永遠の命とか、強さとか、そういうのに拘っていたようです。確かにGウィルスや特異菌には、その効果が期待できますから」
 愛原「なるほど……」
 善場「とにかく、『鬼』の製造に白井が関わっていることが分かれば、それでBSAAを動かせそうです。また、ただの宗教行事ならともかく、本当に『鬼』を製造してしまった天長会にも責任はありますからね。この辺の法的措置も合わせて、検討したいと思います」
 愛原「鬼の男はどうしますか?あいつは現在進行形で動いてますが……」
 善場「まずは地元の警察で対応してもらうしかありません。所長が報告して下さいましたから、この報告を取りまとめ、BSAAの地区本部に提出します」
 愛原「私達の今後の対応としましては、どのようにしたら良いですか?どうも鬼の男は、リサを狙っているようです」
 善場「鬼の男は、リサの居場所を知っているのですか?」
 愛原「知らないと思います。ただ、何かのきっかけでリサの気配を感じ取ることはできるようです。あいつが東北新幹線の線路で暴れたのも、それがきっかけではないかと」
 善場「……恐らく、リサが何か力を出したら、それで分かるのでしょうね。心当たりは?」
 愛原「電撃ですか」
 善場「こちらの作戦が決まるまで、リサには電撃を禁止しましょう。もちろん、期せずして鬼の男と遭遇してしまった場合は別ですが」
 愛原「はい」
 善場「因みに、我那覇さんはいつ東京を離れる予定ですか?」
 愛原「明後日の3日です。沖縄は冬休みが短く、1月は三が日までしか休みが無いそうです」
 善場「なるほど。しかし、夏休みはこちらよりも長く設定されていることが多いですね」
 愛原「はい」

 但し、台風直撃などで休校となった場合は、その穴埋めの為に夏休み期間が削られることもあるそうだ。

 善場「空港はどちらからですか?」
 愛原「成田です。LCCに乗るそうなので」
 善場「そうですか。電車で行かれると……」
 愛原「はい。京成上野駅から、“スカイライナー”で向かうつもりです」
 善場「お帰りもそれですか?」
 愛原「いや、帰りは普通の電車でゆっくり帰りますよ」
 善場「かしこまりました」
 愛原「鬼の男に見つかりませんかね?」
 善場「なんとも申し上げられませんね」

 と、そこへ善場主任のスマホの着信音が鳴った。

 善場「ちょっと失礼します。……もしもし?」

 電話に出た主任だったが、見る見るうちに顔が青ざめた。

 善場「ええっ!何ですって!?全滅!?」
 愛原「えっ!?」
 善場「……はい。……はい。……そうです。今、こちらの事務所にいる状態ですが……はい。……はい、分かりました。……はい。それでは、失礼します」

 主任は電話を切った。

 愛原「何かあったんですか?」
 善場「栃木の新幹線上で暴れていた鬼の男ですが、対応に当たっていた警察隊が全滅したそうです」
 愛原「ええっ!?」
 善場「どうして、今になってあんな化け物が野放しにされるようになったのでしょう?」
 愛原「えーと……」

 確かに、上野利恵も人食い鬼だ。
 満月の夜などは自重して、自ら地下室に閉じ籠るなどしているようだが、鬼の男は……。

 愛原「家族がいたはずですよ!多分、今までは家族が監視していたからなんじゃないですかね?それがどこへ行ったのやら……」
 善場「確か、埼玉の家を引っ越して以来、行方不明だそうですね?」
 愛原「そうです。全く手がかりはありません」
 善場「それこそ、京都の大江山かもしれませんよ。いや、実際の引っ越し先がそこである保証はありませんが、何らかの手掛かりはあるはずです」
 愛原「主任はどこまで掴んでおられるのですか?」
 善場「白井が生前、大江山を訪れたという情報を得ましたので、その確認です」
 愛原「そうだったのですか」
 善場「ですが、今は関東近辺に危険な鬼がいますので、そちらの対応が優先となりました。地元警察が全滅した今、一国の猶予もなりません。急いで所長の報告をまとめ、BSAAの出動を促します」
 愛原「分かりました」
 善場「なるべくリサは、外には出さないでください。本来なら、成田空港への見送りも控えて頂いた方がいいと思っております。……ああ、でも、逆に、成田空港は安全かもしれませんね」
 愛原「分かりました」

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