報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「民宿さのや」

2023-08-23 15:59:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月8日18時00分 天候:雪 静岡県富士宮市下条 民宿さのや]

 リサ「雪が降って来たよ」

 私達の部屋は県道に面した部屋である。
 そこからリサは顔を覗かせていた。

 愛原「ああ。今夜は雪が降るらしいからな。また積もるらしい。……帰りの交通機関に、影響が無いといいがな……」

 私達は風呂に入り、既に浴衣に着替えていた。
 また高橋のヤツ、私の背中を流すことに躍起になり、他の宿泊客から奇異の目で見られてしまったが……。
 高橋と一緒の時は、なるべくビジホにしようと思う。

 リサ「そろそろ夕食の時間だよ。食堂行こう!」
 愛原「ああ、そうだな」

 私は隣の部屋の高橋とパールにも声を掛け、食堂に向かうことにした。
 食堂というか、大広間だな。
 団体客が宿泊する時は、宴会場としても使えるタイプだ。
 しかしながら、今回は団体客は無かった。
 まあ、この時期ではさすがにいないか。

 愛原「ビール1瓶くらい、飲んじゃってもいいかな……」
 高橋「お注ぎします!」
 リサ「わたしも!」
 愛原「ああ、それはありがとう」

 食堂兼大広間に行くと、既に食事は用意されていた。
 メインディッシュは豚肉ロースのしょうがやき。
 それと、マグロやサーモンの刺身や煮物があった。
 どれも、民宿ならではの素朴な料理だろう。
 あとこれに、漬物とサラダ、御飯と吸い物がついた。

 スタッフ「お飲み物は何になさいますか?」

 アルバイトの兄ちゃんが飲み物を聞いてくる。

 愛原「ビール中瓶を」
 高橋「同じく」
 パール「同じく」
 リサ「同じく」
 愛原&高橋「くぉら!」
 リサ「……ウーロン茶で」
 スタッフ「分かりました」

 それからビールとウーロン茶が運ばれてくる。

 高橋「先生、どうぞ」
 リサ「先生、どうぞ」
 パール「先生、どうぞ」
 愛原「お前らなァ……w」

 私はリサのウーロン茶の瓶を持った。

 愛原「ほら、リサ」
 リサ「わぁ!」
 高橋「愛原先生の計らいだ。感謝の気持ちを忘れんなよ?」
 愛原「何でオマエが偉そうに言うんだよ?」
 パール「先生、この飲み物代は……」
 愛原「さすがにこれはデイライトさんには請求できないだろうから、俺の奢りでいいよ」
 パール「ありがとうございます」
 愛原「あとはお茶にしてくれな」

 乾杯をした後で、ビールを口に運ぶ。

 愛原「長旅の後はこれだな!」
 リサ「わたしは、あと1年だっけ?」
 愛原「3年だよ」
 リサ「結婚は?」
 愛原「あと1年……」
 リサ「おー!」
 愛原「大学行かねーのかよ?」
 リサ「大学は……行く。東京中央学園大」
 高橋「エスカレーターで上がるタイプですか?」
 愛原「いや、そりゃもちろん、高校での成績がモノを言うだろう」
 高橋「何だぁ?東大いかねーのか?」
 愛原「東大卒は、エージェントを動かす側だろう。リサにはエージェントになってもらいたいというのが政府の考えだから、むしろ高卒でもいいくらいに思ってるんじゃないか?」

 リサの希望を聞いてくれるそうなので、リサが大学に行きたいとなったら、叶えてくれるだろう。
 だが、もう1度言うように、東大卒のエリートにまでなってほしいとは思っていないようだ。
 そもそも、善場主任だって、そんなに有名な大学を出ているわけではない。
 だからこそ、白井のような奴でも、客員教授として潜り込めたのだろう。

 リサ「……エレンと約束したもん。あと、鬼斬りセンパイ」
 愛原「幸い、栗原蓮華の意識は戻ったそうだ。だけど、全身火傷だから、これから厳しいぞ」
 リサ「うん」
 愛原公一「そこで、ワシの研究が役に立ちそうなんじゃがね……」
 愛原学「伯父さん」
 公一「ワシの逮捕と引き換えに、研究成果を渡せと政府が言ってきた。全く。ごうつくな連中ぢゃ」

 公一は、リサの茶碗にご飯のおかわりをよそおいながら言った。

 リサ「おー、山盛り。ありがとう」
 公一「何の何の……」

 一応はスタッフとして働いているからか、『民宿さのや』と書かれた紺色の法被を着ている。

 学「一体、何の話?」
 公一「Tウィルスはな、本来、バイオテロ目的に研究されたのではない。アメリカのアンブレラの研究者、アッシュフォード博士は本来、筋ジストロフィーの治療薬として研究しておったのじゃ。それを、会社幹部が悪用しただけのことじゃ。実際、筋ジストロフィーが遺伝してしまった博士の娘、アンジェラ・アッシュフォードを治験者にしたところ、見事症状を抑え込むことに成功した」
 学「伯父さん、筋ジストロフィーと火傷と、どう違うの?」
 公一「Tウィルスとは本来、細胞を活性化させるもの。制御せんと、それこそ死滅した細胞まで復活させるほどである」
 リサ「わたしのTウィルスもそうだったね。でも、その細胞を結局Gウィルスが食べちゃうんだけど……」
 公一「さすがにGウィルスは危険過ぎるので、アンブレラからは見放されてしまったが、Tウィルスは細胞の治療薬としても研究価値はある。火傷によって焼失してしまった細胞を復活させるのじゃ」
 学「つまり、筋ジストロフィーだけじゃなく、火傷の治療薬としても効果があるというわけか……」
 公一「うむ。その通りじゃ。何せ、アメリカのアンブレラ本社は、ラクーンシティが崩壊する前、Tウィルスを材料にした『皺取りクリーム』を販売しておったくらいじゃからな。で、別にそれはゾンビ化の原因には当然なっとらん。老化した細胞を若返らせる効果があったということじゃ」
 学「で、蓮華さんには治験者になってもらうと」
 公一「ワシが決めたのではないぞ。政府の関係者がそう言っとった。そして、エージェントとして来たのが学達じゃったというわけじゃ」
 学「そういうことか……」
 公一「どうせエージェント、つまり『代理人』じゃな。その分際では、詳しいことは何も聞かされておらんのじゃろう」
 学「仰る通りで……」
 公一「学。夕食が終わったら、ワシの部屋まで来い。話を聞かせてやる。そこのお嬢ちゃんも一緒に来い」
 リサ「は、はい」
 公一「そこの若者達は……」
 高橋「【イチャイチャ】【ラブラブ】」
 パール「【イチャイチャ】【ラブラブ】」
 公一「あー……うむ。部屋でゆっくり過ごすと良い。夜は長いでな」
 愛原「お前らなぁ……」

 私は呆れた。
 まあ、表向きは慰安旅行ではあるのだが……。

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