報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「民宿に到着」

2023-08-23 11:20:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月8日15時56分 天候:曇 静岡県富士宮市下条 富士急静岡バス『大石寺入口』停留所→民宿さのや]

〔「大石寺入口です」〕

 バスは民宿の最寄りのバス停に到着した。
 あとは、民宿まで徒歩で向かうだけ。

 高橋「バスで通ると、狭く感じますね」

 高橋は県道を見て言った。
 バスは県道184号線を北上したが、郊外に入ると、その道幅は狭い。
 1車線~1.5車線の幅しか無い所が殆ど。

 愛原「そうだな。だから、中型バスなんだろう」

 輸送量は中型バスで十分なほど。
 それ以前に、道が狭いので、大型車は走れないのだろう。
 バス停も私達が降りた下り線側にはポールが設置されておらず、上り線側に錆び付いたのがポツンと立っているだけ。
 帰りはそこからまたバスに乗るというわけだ。

 愛原「それじゃ行こうか」
 リサ「先生、待って。その前に、コンビニに寄ろうよ」

 リサはバス停の目の前にあるコンビニを指さした。
 県道と国道469号線との交差点にあるコンビニ。
 国道沿いにあるということもあり、駐車場付きである。
 町の中心部からだいぶ離れ、高台にある場所のせいか、雪がだいぶ積もっていた。
 もちろん、除雪はされている。
 尚、バスはチェーンを巻いていた。
 まあ、途中通った青木平団地辺りは結構坂が急だったから、そういう所で必要だったのだろう。
 実際、日陰の部分など、凍結していそうな所もあったし。

 愛原「ああ、分かったよ」

 私達はコンビニに立ち寄った。
 そこでリサは、お菓子やらジュースやらを買い込んでいた。
 民宿にはビジネスホテルと違い、客が自由に使える冷蔵庫や自販機は無い。
 自販機自体は建物の外にはあるのだが……。
 私もおつまみくらいは買って、それから改めて民宿に向かった。

 伯母「あらぁ~、いらっしゃい」
 愛原学「伯母さん、こんにちは。今日だけお世話になります」
 伯母「いいのよ。そんな遠慮しなくても……」

 私はフロントで宿帳を記入した。

 学「料金は前払いだったね」

 というか、どの宿泊施設も同じか。

 伯母「そうよ。それじゃ、これが鍵ね」

 客室は基本、2階にしか無い。

 愛原「じゃあ、こっちの部屋は高橋とパールで」
 高橋「あざっス!」
 愛原「こっちは、俺とリサにしよう」
 リサ「わぁー!」
 伯母「夕食は夕方6時からだからね?」
 愛原「あいよ。……伯父さんはいる?」
 伯母「いるけど、なーんかね、地下室に閉じ籠って、変な研究をしているのよ。これからお客様が来るってのに、とんだ役立たずだよ」
 愛原公一「そう言いなさんな。飯炊きなら、ワシも手伝っておろうが」

 すると、奥の厨房から公一伯父さん登場。

 公一「ずっと独り暮らしが長かったで、飯炊きくらいは任せておけ」

 確かにこの伯父さん、小牛田に住んでいた時は、私達にすき焼きを振る舞ってくれたっけなぁ……。
 で、確かに美味かった。

 伯母「そりゃ、アタシと離婚してから、もう何年経つのよ?」
 公一「いい加減、ワシとヨリを戻してくれよぉ~。ほれ、ここに婚姻届」
 高橋「あっ、俺達のもお願いできますか?先生には保証人の所にサインしてくれたんスけど、もう1人の斉藤社長が国外逃亡中なもんで……。何かの犯罪の容疑者は、保証人として成り立たないとか聞いたんで」
 公一「おー、いいとも。ワシがサインしたる」
 伯母「ちょっと、アンタ!そんな軽々しく……」
 リサ「わたしと先生の婚姻届にも、サインお願いします!」
 学「オマエはまだ17だろうが!」
 リサ「来年の分……」
 公一「いいともいいとも!どんどんサインしたる!」
 伯母「アンタ!そんなんだから、悪い組織に唆されるんじゃないの!……とにかく、早いとこ部屋に行って!」
 学「はーい」
 公一「話は夜にでもしようの」
 学「よろしくお願いします」

 私達は階段を上がって、2階に向かった。
 やや急な階段である為、リサが先に向かうと、スカートの中が見えそうになった。

 学「もう、風呂には入れるみたいだな」
 高橋「入って来ますか」
 学「こういう時は、旅行気分でもいいよな」

 民宿である為、風呂はいつでも入れるわけではない。
 チェックインの15時から深夜までは入れるようだ。
 人工鉱石温泉とか謳っているのだが、本当だろうか。
 尚、大浴場は男女入替制である。
 一部のホテルにも、そういう大浴場はあるのだが、24時間体制で、何時間かおきに入れ替わるのに対し、こっちはそんなに大人数が泊まるホテルではない為、入浴状況に応じて変わるようである。
 部屋に入ると、8畳間になっていた。
 2人で泊まるには、十分な広さである。
 隣の高橋達の部屋も同じだろう。
 ホテルと違って、ユニットバスは付いておらず、トイレも共同である。
 室内に付いている水回りは、洗面台しか無い。
 コップも付いていて、この洗面台の水は飲めるようである。
 あとはエアコンが付いていて、暖房を入れておく。
 他にもテレビやWi-Fiがあった。

 学「ん?」

 その時、室内の電話が掛かって来た。
 内線電話なのか、それとも別料金で外線も掛けられるものなのかは分からない。
 古式ゆかしい黒電話だった。

 学「もしもし?」
 公一「おー、学。わしぢゃ」
 学「伯父さん、どうしたの?」
 公一「これから風呂に入るんじゃろ?ところがどっこい。今は既に女性のお客さんが入っているので、今は女湯ぢゃ」
 学「何だ、そうなのか。じゃあ、リサ達を先に入らせよう。教えてくれてありがとう」

 私は電話を切った。
 しかし、古式ゆかしい黒電話というのは、いきなりジリジリベルが鳴るからビックリするもんだな。

 学「リサ、今、1階の大浴場は女湯らしいから、先にお前達が入ってこいよ」
 リサ「分かった。ちょっと浴衣に着替えるね」

 リサはそう言って、私の前で何の恥じらいも無く、服を脱いだ。
 私はあまり見ないように、同じ電話で、隣の客室に内線電話を掛けた。
 ダイヤルをジーコジーコ回すのは、一体何年ぶりだろう?

 学「あー、もしもし?俺だけど、これから風呂入るだろ?でさ、さっき伯父さんから電話が掛かって来たんだけど、今は別の女性客が入ってるから女湯なんだってさ。……そう。だから、先にリサとパールに入ってもらおうと思うんだが、それでいいな?……ああ。パールにもそう伝えておいてくれ。それじゃ」

 私は電話を切った。

 リサ「ねえ、先生。わたしのバッグの中から、わたしの着て欲しい下着、取ってきて?」
 愛原「自分で取って来い!てか、全部脱ぐな!」
 リサ「サツキがね、こうやって、『人間の男を誘き寄せて食べる』って言ってた」
 愛原「本当かぁ?いいから、さっさと着ろ!」
 リサ「だから、わたしの下着、取ってきて?」
 愛原「ったくもう!」

 私はリサのバッグを開けると、そこから白いスポプラとショーツを取り出した。

 愛原「どうせ寝る時は、スポブラと、同じメーカーのパンツだろ?」
 リサ「さすが先生、分かってるねぇ……」

 リサは牙を剥き出してニッと笑った。
 ……今晩、食い散らかされないようにしないと。
 “鬼ころし”のストックは、もちろんある。

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