[1月8日22時00分 天候:雪 静岡県富士宮市下条 民宿さのや地下室]
夕食が終わった後、私達は一旦部屋に戻った。
その後、高橋とパールはどうしたかは知らない。
部屋に戻ると、旅館の客室の如く、布団が2組敷かれていた。
リサは布団をくっつけることを強く望んだが、私は拒否した。
その為、しばらくリサは不機嫌になり、むくれ面してテレビを観ていた。
自分が寝る布団の上に寝転がり、私の方に足を向けて。
しかし、時折足を大きく広げたりして、浴衣の中が見えるようにしたりと、明らかに私を誘う動きはしていた。
その為、私はもう1度風呂に入ったりして時間を潰した。
私が上がる時、他には誰も入って来なかったので、女湯に切り替え、リサを誘導した。
リサは……。
リサ「私がもっと強い血気術が使えたらなぁ……」
なんてボヤいていた。
私がどんな術だ?と聞いたら、リサのヤツ、何て言ったと思う?
リサ「結界の術。このお風呂には、誰も入って来れないようにするの。わたしと先生の貸切風呂の出来上がり」
だってさ。
どれだけ人を食えば、それだけの血気術が使えるようになるのだろう……。
そんなこんなで、ようやく伯父さんから電話が掛かってきたのが、22時頃というわけだ。
私とリサは部屋を出た。
高橋とパールだが、隣の部屋の扉には既に鍵が掛かっており、中から僅かに声が聞こえて来たので、やっぱり誘うのはやめることにした。
尚、客室のドアは二重扉になっている。
廊下側の引き戸を開けると、スリッパを脱ぐ土間がある。
また、洗面台もそこにある。
因みに、靴は玄関で脱ぐようになっている。
スリッパを履いて、エレベーターに向かった。
この民宿の階段は少し急な為、車椅子はもちろん、足腰の弱い宿泊客は利用しにくい。
そこでそれを解消する為、この民宿ではエレベーターが付けられている。
但し、定員2~3人ほどのホームエレベーターである。
普段は1階と2階にしか止まらない設定になっているが、今回は公一伯父さんが特別に地下1階まで行けるように設定した。
それで地下1階に向かう。
愛原「地下階だ」
リサ「着いたね」
ドアが開くと……。
公一「いらっしゃい。待ってたよ。……おっと。ドアが閉まる前に、戸締りをせんとな」
伯父さんは私達とは入れ違いにエレベーターに乗り込むと、スイッチ鍵を持って、何か操作した。
再び、中から地下1階のボタンを押しても、行けないように設定したのだろう。
公一「これでよし。なぁに、心配いらん。こっち側からボタンを押せば、下りて来るようになっとるわい」
愛原学「確か、そうだったね」
リサ「何か、研究所の一室みたい……」
公一「みたい、ではなく、本当にワシのラボじゃよ。まあ、その辺に適当に座ってくれ。……ん?風呂から出たのか?コーヒーはどうだ?」
学「はあ……是非」
公一「安心せい。サンブラ茶などは持っとらんよ」
学「初めて聞くお茶だが、どんなお茶なのは聞きたいような聞きたくないような……」
リサ「コーヒーと比較してきたってことは、コーヒーそっくりのヤバいお茶じゃない?」
公一「まあ、人によってはヤバいと思うかもしれんな」
学「じゃあ、いいよ。普通のコーヒーで」
公一「何じゃい。冒険心が無いな」
学「そういう問題じゃないって……」
公一「まあ、良い」
科学者が飲むコーヒーあるある。
『案外、コーヒーの淹れ方にこだわる』というの。
公一伯父さんも例外ではなく、コーヒーマシンにカートリッジを投入し、一杯ずつドリップするという淹れ方だった。
公一「お嬢ちゃんはどうかね?」
リサ「頂きます」
公一「熱いから気を付けて。学は相変わらず、『ブラック加糖』の飲み方か」
学「まあね」
公一「お嬢ちゃんは、砂糖とミルクをたっぷり入れて飲むタイプか」
リサ「辛い物は好きですけど、苦い物は苦手なので」
公一「ふむ……」
学「それで伯父さん、本題なんだけど……」
公一「分かっておる。お前さん方に仕事の依頼をした組織が望む物は、これじゃな?」
公一伯父さんは冷蔵庫の中から、アンプルに入ったサンプルを取り出した。
学「これが……?」
公一「白井伝三郎が欲した、『人を鬼にする薬』じゃよ。名前は無いし、ワクチンも無い。……まだな」
学「ワクチン無いの!?」
公一「これから作るわい」
学「……そのワクチンって、リサに打ったりしたら、リサが人間に戻れるなんてことは……?」
公一「それは無いな」
学「無いか……」
公一「そもそも成り立ちが違うでな。そこのお嬢ちゃんは、たまたまGウィルスとTウィルスを保有していた偶然の産物であった。そのうちTウィルスが死滅し、新たに体の中に入った特異菌がTウィルスの代わりを果たすようになった。そうじゃな?」
リサ「私の特異菌をGウィルスが食べてるの。特異菌はカビの一種で、ウィルスより繁殖力は弱いけど、別にGウィルスはそれでお腹が空くわけじゃない。でも、私の中で明らかに変わりました。日本版リサ・トレヴァーだったのに、今は全く違う別の化け物です。それがたまたま、鬼の姿をしているだけに過ぎない……と、善場さんから言われました」
公一「ふむ。電撃を使えるようになったというのは、どういうことかな?」
リサ「まだ、原理は分かってないんです。ただ、鬼の姿をしていないと、電撃は使えないです。で、使う時に角が光るんです」
公一「なるほど。典型的なBOWじゃな」
学「どういうこと?」
公一「BOWというのは、何故か強くなればなるほど、弱点を曝け出す傾向があるのじゃ。まるで、敵に、『ここを攻撃しろ』と言わんばかりにな。このお嬢ちゃんの場合、角が弱点なのじゃろう」
リサ「確かに、タイラント君も心臓が光ったりしてたなぁ……」
学「それで、その薬品サンプルを渡してくれるんだね?」
公一「政府からの命令じゃ。拒否したら、逮捕されるだけでは済まんのじゃろう。ただ、これは要冷蔵じゃ。お前達がこの旅館を離れるギリギリの時刻まで、ここで預かっておく。クーラーボックスの類は持って来たか?」
学「うん。断熱バッグを持って来た。あと、保冷剤が何個か」
公一「よろしい。保冷材も、こちらで預かっておく。まあ、幸い今は真冬じゃ。外に出していたところで、悪くなるとは思えんがな」
学「ありがとう。……何か他にも、くれるようなことを言っていたけど?」
公一「ああ。火傷の治療薬のサンプルじゃろ?輸送中の扱い方は、『人を鬼にする薬』と同じじゃ。これも追って、明日に渡す。安心して、今夜は寝ると良い」
学「分かりました」
私とリサは、地下室をあとにし、エレベーターに乗り込んだ。
〔上へ参ります。ドアが閉まります〕
愛原「それじゃ、伯父さん。おやすみ」
リサ「おやすみなさい」
公一「うむ。良い夜を」
エレベーターのドアが閉まり、エレベーターはゆっくり上昇した。
リサ「上手く行ったね」
愛原「そうだな。一応、善場主任にも報告しておこう」
私は部屋に戻ったら、善場主任に報告しておくことにした。
夕食が終わった後、私達は一旦部屋に戻った。
その後、高橋とパールはどうしたかは知らない。
部屋に戻ると、旅館の客室の如く、布団が2組敷かれていた。
リサは布団をくっつけることを強く望んだが、私は拒否した。
その為、しばらくリサは不機嫌になり、むくれ面してテレビを観ていた。
自分が寝る布団の上に寝転がり、私の方に足を向けて。
しかし、時折足を大きく広げたりして、浴衣の中が見えるようにしたりと、明らかに私を誘う動きはしていた。
その為、私はもう1度風呂に入ったりして時間を潰した。
私が上がる時、他には誰も入って来なかったので、女湯に切り替え、リサを誘導した。
リサは……。
リサ「私がもっと強い血気術が使えたらなぁ……」
なんてボヤいていた。
私がどんな術だ?と聞いたら、リサのヤツ、何て言ったと思う?
リサ「結界の術。このお風呂には、誰も入って来れないようにするの。わたしと先生の貸切風呂の出来上がり」
だってさ。
どれだけ人を食えば、それだけの血気術が使えるようになるのだろう……。
そんなこんなで、ようやく伯父さんから電話が掛かってきたのが、22時頃というわけだ。
私とリサは部屋を出た。
高橋とパールだが、隣の部屋の扉には既に鍵が掛かっており、中から僅かに声が聞こえて来たので、やっぱり誘うのはやめることにした。
尚、客室のドアは二重扉になっている。
廊下側の引き戸を開けると、スリッパを脱ぐ土間がある。
また、洗面台もそこにある。
因みに、靴は玄関で脱ぐようになっている。
スリッパを履いて、エレベーターに向かった。
この民宿の階段は少し急な為、車椅子はもちろん、足腰の弱い宿泊客は利用しにくい。
そこでそれを解消する為、この民宿ではエレベーターが付けられている。
但し、定員2~3人ほどのホームエレベーターである。
普段は1階と2階にしか止まらない設定になっているが、今回は公一伯父さんが特別に地下1階まで行けるように設定した。
それで地下1階に向かう。
愛原「地下階だ」
リサ「着いたね」
ドアが開くと……。
公一「いらっしゃい。待ってたよ。……おっと。ドアが閉まる前に、戸締りをせんとな」
伯父さんは私達とは入れ違いにエレベーターに乗り込むと、スイッチ鍵を持って、何か操作した。
再び、中から地下1階のボタンを押しても、行けないように設定したのだろう。
公一「これでよし。なぁに、心配いらん。こっち側からボタンを押せば、下りて来るようになっとるわい」
愛原学「確か、そうだったね」
リサ「何か、研究所の一室みたい……」
公一「みたい、ではなく、本当にワシのラボじゃよ。まあ、その辺に適当に座ってくれ。……ん?風呂から出たのか?コーヒーはどうだ?」
学「はあ……是非」
公一「安心せい。サンブラ茶などは持っとらんよ」
学「初めて聞くお茶だが、どんなお茶なのは聞きたいような聞きたくないような……」
リサ「コーヒーと比較してきたってことは、コーヒーそっくりのヤバいお茶じゃない?」
公一「まあ、人によってはヤバいと思うかもしれんな」
学「じゃあ、いいよ。普通のコーヒーで」
公一「何じゃい。冒険心が無いな」
学「そういう問題じゃないって……」
公一「まあ、良い」
科学者が飲むコーヒーあるある。
『案外、コーヒーの淹れ方にこだわる』というの。
公一伯父さんも例外ではなく、コーヒーマシンにカートリッジを投入し、一杯ずつドリップするという淹れ方だった。
公一「お嬢ちゃんはどうかね?」
リサ「頂きます」
公一「熱いから気を付けて。学は相変わらず、『ブラック加糖』の飲み方か」
学「まあね」
公一「お嬢ちゃんは、砂糖とミルクをたっぷり入れて飲むタイプか」
リサ「辛い物は好きですけど、苦い物は苦手なので」
公一「ふむ……」
学「それで伯父さん、本題なんだけど……」
公一「分かっておる。お前さん方に仕事の依頼をした組織が望む物は、これじゃな?」
公一伯父さんは冷蔵庫の中から、アンプルに入ったサンプルを取り出した。
学「これが……?」
公一「白井伝三郎が欲した、『人を鬼にする薬』じゃよ。名前は無いし、ワクチンも無い。……まだな」
学「ワクチン無いの!?」
公一「これから作るわい」
学「……そのワクチンって、リサに打ったりしたら、リサが人間に戻れるなんてことは……?」
公一「それは無いな」
学「無いか……」
公一「そもそも成り立ちが違うでな。そこのお嬢ちゃんは、たまたまGウィルスとTウィルスを保有していた偶然の産物であった。そのうちTウィルスが死滅し、新たに体の中に入った特異菌がTウィルスの代わりを果たすようになった。そうじゃな?」
リサ「私の特異菌をGウィルスが食べてるの。特異菌はカビの一種で、ウィルスより繁殖力は弱いけど、別にGウィルスはそれでお腹が空くわけじゃない。でも、私の中で明らかに変わりました。日本版リサ・トレヴァーだったのに、今は全く違う別の化け物です。それがたまたま、鬼の姿をしているだけに過ぎない……と、善場さんから言われました」
公一「ふむ。電撃を使えるようになったというのは、どういうことかな?」
リサ「まだ、原理は分かってないんです。ただ、鬼の姿をしていないと、電撃は使えないです。で、使う時に角が光るんです」
公一「なるほど。典型的なBOWじゃな」
学「どういうこと?」
公一「BOWというのは、何故か強くなればなるほど、弱点を曝け出す傾向があるのじゃ。まるで、敵に、『ここを攻撃しろ』と言わんばかりにな。このお嬢ちゃんの場合、角が弱点なのじゃろう」
リサ「確かに、タイラント君も心臓が光ったりしてたなぁ……」
学「それで、その薬品サンプルを渡してくれるんだね?」
公一「政府からの命令じゃ。拒否したら、逮捕されるだけでは済まんのじゃろう。ただ、これは要冷蔵じゃ。お前達がこの旅館を離れるギリギリの時刻まで、ここで預かっておく。クーラーボックスの類は持って来たか?」
学「うん。断熱バッグを持って来た。あと、保冷剤が何個か」
公一「よろしい。保冷材も、こちらで預かっておく。まあ、幸い今は真冬じゃ。外に出していたところで、悪くなるとは思えんがな」
学「ありがとう。……何か他にも、くれるようなことを言っていたけど?」
公一「ああ。火傷の治療薬のサンプルじゃろ?輸送中の扱い方は、『人を鬼にする薬』と同じじゃ。これも追って、明日に渡す。安心して、今夜は寝ると良い」
学「分かりました」
私とリサは、地下室をあとにし、エレベーターに乗り込んだ。
〔上へ参ります。ドアが閉まります〕
愛原「それじゃ、伯父さん。おやすみ」
リサ「おやすみなさい」
公一「うむ。良い夜を」
エレベーターのドアが閉まり、エレベーターはゆっくり上昇した。
リサ「上手く行ったね」
愛原「そうだな。一応、善場主任にも報告しておこう」
私は部屋に戻ったら、善場主任に報告しておくことにした。
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