報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「愛原公一との話」

2023-08-23 22:52:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月8日22時00分 天候:雪 静岡県富士宮市下条 民宿さのや地下室]

 夕食が終わった後、私達は一旦部屋に戻った。
 その後、高橋とパールはどうしたかは知らない。
 部屋に戻ると、旅館の客室の如く、布団が2組敷かれていた。
 リサは布団をくっつけることを強く望んだが、私は拒否した。
 その為、しばらくリサは不機嫌になり、むくれ面してテレビを観ていた。
 自分が寝る布団の上に寝転がり、私の方に足を向けて。
 しかし、時折足を大きく広げたりして、浴衣の中が見えるようにしたりと、明らかに私を誘う動きはしていた。
 その為、私はもう1度風呂に入ったりして時間を潰した。
 私が上がる時、他には誰も入って来なかったので、女湯に切り替え、リサを誘導した。
 リサは……。

 リサ「私がもっと強い血気術が使えたらなぁ……」

 なんてボヤいていた。
 私がどんな術だ?と聞いたら、リサのヤツ、何て言ったと思う?

 リサ「結界の術。このお風呂には、誰も入って来れないようにするの。わたしと先生の貸切風呂の出来上がり」

 だってさ。
 どれだけ人を食えば、それだけの血気術が使えるようになるのだろう……。
 そんなこんなで、ようやく伯父さんから電話が掛かってきたのが、22時頃というわけだ。
 私とリサは部屋を出た。
 高橋とパールだが、隣の部屋の扉には既に鍵が掛かっており、中から僅かに声が聞こえて来たので、やっぱり誘うのはやめることにした。
 尚、客室のドアは二重扉になっている。
 廊下側の引き戸を開けると、スリッパを脱ぐ土間がある。
 また、洗面台もそこにある。
 因みに、靴は玄関で脱ぐようになっている。
 スリッパを履いて、エレベーターに向かった。
 この民宿の階段は少し急な為、車椅子はもちろん、足腰の弱い宿泊客は利用しにくい。
 そこでそれを解消する為、この民宿ではエレベーターが付けられている。
 但し、定員2~3人ほどのホームエレベーターである。
 普段は1階と2階にしか止まらない設定になっているが、今回は公一伯父さんが特別に地下1階まで行けるように設定した。
 それで地下1階に向かう。

 愛原「地下階だ」
 リサ「着いたね」

 ドアが開くと……。

 公一「いらっしゃい。待ってたよ。……おっと。ドアが閉まる前に、戸締りをせんとな」

 伯父さんは私達とは入れ違いにエレベーターに乗り込むと、スイッチ鍵を持って、何か操作した。
 再び、中から地下1階のボタンを押しても、行けないように設定したのだろう。

 公一「これでよし。なぁに、心配いらん。こっち側からボタンを押せば、下りて来るようになっとるわい」
 愛原学「確か、そうだったね」
 リサ「何か、研究所の一室みたい……」
 公一「みたい、ではなく、本当にワシのラボじゃよ。まあ、その辺に適当に座ってくれ。……ん?風呂から出たのか?コーヒーはどうだ?」
 学「はあ……是非」
 公一「安心せい。サンブラ茶などは持っとらんよ」
 学「初めて聞くお茶だが、どんなお茶なのは聞きたいような聞きたくないような……」
 リサ「コーヒーと比較してきたってことは、コーヒーそっくりのヤバいお茶じゃない?」
 公一「まあ、人によってはヤバいと思うかもしれんな」
 学「じゃあ、いいよ。普通のコーヒーで」
 公一「何じゃい。冒険心が無いな」
 学「そういう問題じゃないって……」
 公一「まあ、良い」

 科学者が飲むコーヒーあるある。
 『案外、コーヒーの淹れ方にこだわる』というの。
 公一伯父さんも例外ではなく、コーヒーマシンにカートリッジを投入し、一杯ずつドリップするという淹れ方だった。

 公一「お嬢ちゃんはどうかね?」
 リサ「頂きます」
 公一「熱いから気を付けて。学は相変わらず、『ブラック加糖』の飲み方か」
 学「まあね」
 公一「お嬢ちゃんは、砂糖とミルクをたっぷり入れて飲むタイプか」
 リサ「辛い物は好きですけど、苦い物は苦手なので」
 公一「ふむ……」
 学「それで伯父さん、本題なんだけど……」
 公一「分かっておる。お前さん方に仕事の依頼をした組織が望む物は、これじゃな?」

 公一伯父さんは冷蔵庫の中から、アンプルに入ったサンプルを取り出した。

 学「これが……?」
 公一「白井伝三郎が欲した、『人を鬼にする薬』じゃよ。名前は無いし、ワクチンも無い。……まだな」
 学「ワクチン無いの!?」
 公一「これから作るわい」
 学「……そのワクチンって、リサに打ったりしたら、リサが人間に戻れるなんてことは……?」
 公一「それは無いな」
 学「無いか……」
 公一「そもそも成り立ちが違うでな。そこのお嬢ちゃんは、たまたまGウィルスとTウィルスを保有していた偶然の産物であった。そのうちTウィルスが死滅し、新たに体の中に入った特異菌がTウィルスの代わりを果たすようになった。そうじゃな?」
 リサ「私の特異菌をGウィルスが食べてるの。特異菌はカビの一種で、ウィルスより繁殖力は弱いけど、別にGウィルスはそれでお腹が空くわけじゃない。でも、私の中で明らかに変わりました。日本版リサ・トレヴァーだったのに、今は全く違う別の化け物です。それがたまたま、鬼の姿をしているだけに過ぎない……と、善場さんから言われました」
 公一「ふむ。電撃を使えるようになったというのは、どういうことかな?」
 リサ「まだ、原理は分かってないんです。ただ、鬼の姿をしていないと、電撃は使えないです。で、使う時に角が光るんです」
 公一「なるほど。典型的なBOWじゃな」
 学「どういうこと?」
 公一「BOWというのは、何故か強くなればなるほど、弱点を曝け出す傾向があるのじゃ。まるで、敵に、『ここを攻撃しろ』と言わんばかりにな。このお嬢ちゃんの場合、角が弱点なのじゃろう」
 リサ「確かに、タイラント君も心臓が光ったりしてたなぁ……」
 学「それで、その薬品サンプルを渡してくれるんだね?」
 公一「政府からの命令じゃ。拒否したら、逮捕されるだけでは済まんのじゃろう。ただ、これは要冷蔵じゃ。お前達がこの旅館を離れるギリギリの時刻まで、ここで預かっておく。クーラーボックスの類は持って来たか?」
 学「うん。断熱バッグを持って来た。あと、保冷剤が何個か」
 公一「よろしい。保冷材も、こちらで預かっておく。まあ、幸い今は真冬じゃ。外に出していたところで、悪くなるとは思えんがな」
 学「ありがとう。……何か他にも、くれるようなことを言っていたけど?」
 公一「ああ。火傷の治療薬のサンプルじゃろ?輸送中の扱い方は、『人を鬼にする薬』と同じじゃ。これも追って、明日に渡す。安心して、今夜は寝ると良い」
 学「分かりました」

 私とリサは、地下室をあとにし、エレベーターに乗り込んだ。

〔上へ参ります。ドアが閉まります〕

 愛原「それじゃ、伯父さん。おやすみ」
 リサ「おやすみなさい」
 公一「うむ。良い夜を」

 エレベーターのドアが閉まり、エレベーターはゆっくり上昇した。

 リサ「上手く行ったね」
 愛原「そうだな。一応、善場主任にも報告しておこう」

 私は部屋に戻ったら、善場主任に報告しておくことにした。

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