報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「財団の反撃」

2014-09-20 15:18:35 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月20日07:00.JR仙台駅・東北新幹線ホーム 敷島孝夫&シンディ]

〔11番線に停車中の電車は、7時6分発、“やまびこ”97号、盛岡行きです。この電車は、各駅に止まります。自由席は1号車から7号車、グリーン車は9号車です。……〕

 どういうわけだか朝早く、新幹線ホームにいる敷島とシンディ。
「えーと……6Eと6Dだな」
 10号車に乗り込むと、敷島は新幹線指定席特急券を片手に、指定された2人席に座った。
「一体、どこへ行くの?」
「まあ、この列車の行き先の通りだ」

〔「ご案内致します。この電車は7時6分発、東北新幹線下り、“やまびこ”97号、盛岡行きです。終点の盛岡まで、新幹線各駅に止まります。……」〕

「盛岡?」
 一瞬、シンディの頭から電子機器の作動する音がしたので、おおかたナビに登録でもしたか。
「ああ」
 敷島は前の座席からテーブルを出すと、その上に朝食の駅弁とお茶を置いた。
 黄色い紐を引っ張ると、早速中からシューシューと弁当が温まる音が聞こえる。
「幸いこの車両、後期タイプだ。充電コンセント、付いてるだろ?俺の足元通していいから、充電器とか使っていいぞ」
「まだ95パーセントもバッテリーあるからね。大丈夫だと思うよ。予備のバッテリーパックもあるんでしょう?」
「まあ、そりゃそうだけど……」
 本当は敷島が単独で行きたかったのだが、森須に待ったを掛けられた。
 ただでさえテロ組織はまだ活動を停止しておらず、いつ財団関係者が狙われるか分からないのと、シンディのフィールドテストはまだ終了していないという理由だった。
「2人分の交通費、大変っスよぉ……って言ってみたら、あっさり新幹線代請求できるってなったな」
「言ったもん勝ちね」
「言ったもん勝ちって言うな」
 敷島は苦笑いした。

[同日08:30.財団仙台支部・支部長室 森須]

 森須は執務机の椅子に座り、自分の携帯電話でどこかに電話していた。
「ああ。件のテロ組織が跋扈しているんだ。責任者の私が自宅で寛いでいるわけにもいかんだろう。今、私の優秀な部下が現地に向かった。キミは引き続き、指示書通りに動いてくれ」
 ピッと電話を切る森須。
 左手でリモコンを手に取ると、それで室内のテレビを点けた。

〔「えー、たった今入ったニュースです。岩沼市民会館で、ライブ中のボーカロイドを襲った自称市民団体ですが、今度は全国の自動運転の地下鉄に犯行予告です。えー、声明文を読み上げます。『経費節減という名の人員削減。これに大きく加担しているのは、偏に鉄道の自動化・機械化であり、その為に夢を断たれた鉄道少年達を代表して復讐を行うものである。直ちに全国の鉄道事業者は、ATO運転並びにワンマン運転をやめ、従来のツーマンそしてATSまたはATCのみによる制御を行え』というものです」〕

「フフ……。また無茶な声明を出すものだ」

〔「……これを受けまして、事件現場のすぐ近くを走ります仙台空港アクセス線は犯行声明にありましたワンマン運転を行っているという理由で、並びに同じくワンマン運転を行っている仙台市地下鉄南北線も8時頃から運転を見合わせております。特にワンマンだけでなく、ATO運転を行っている仙台市地下鉄では、安全の確認が取れるまで、駅自体を封鎖しているもようです」〕

[同日同時刻 岩手県盛岡市東部 敷島&シンディ]

 敷島達は、駅から東の方にタクシーで20分ほど走った所にある一軒家に向かった。
「普通の家だね」
「まあ、そうだろう」
 庭先にいるのは敷島より10歳ほど年上の男。
「おはようございます。朝早くから、すいません。明本課長……あ、いや、先生とお呼びした方がよろしいですかね?」
「いやあ、好きな呼び方でいいですよ。どうぞどうぞ」
「課長?先生?」
 シンディは首を傾げた。
 と、同時に、周辺をスキャンすることは忘れない。
「……!?」
 シンディは何か気になるものを発見した。
 が、敷島は意に介さず、そのまま明本の後ろをついて中に入る。
「これ、お土産です。どうぞ」
「いや、そんな気を使わなくても……」
「いえいえ。この人は昔、大日本電機で俺の上司だった明本さんだよ」
「スパイを命令していた人?」
「ははは。もうばれてるか」
「今のところ、財団にはまだです。会社が無くなったもんで、当時課長だったこの人は実家の盛岡に帰って、兼業農家をやりながら地元の高校の講師をやってるわけだ」
「大学出てて良かったよ。教員免許はあったからね。あれ?確か、敷島君も持っていたでしょ?」
「いやあ、私に学校の先生なんて向かないんで。ボーカロイドの芸能活動の売り込みでもやってる方が向いてますよ」
「大変だったねぇ。あの時は……」
「こっちでもニュースになりました?」
「なったよ」
 茶の間に通された。
「今、カミさん、旅行にしてて留守なんだ。で、息子は息子で修学旅行だし」
「あ、そうか。そう言えば、仙台駅にも修学旅行生、集合してましたね」
 因みにシンディくらいのアンドロイドになると、正座もちゃんとできるという……。
「森須さんから話は聞いてるよ」
「森須支部長も、大日本グループからの転向者だったとは……」
「大日本重工ね。私もそこへ出入りしていたことがあって、そこで知り合ったんだ」
「明本さんも財団に来れば良かったのに……」
「いやいや、ちょうど父親の具合も悪くなったことだし、長男として家を継がなきゃいけなかったからね。ま、ちょうど良かったよ」
「まさか私もスパイとして潜入していた先で、会社が無くなるとは……」
「潜入先で、そのまま拾ってくれて良かったじゃないか」
「ええ。それで早速、本題に入りたいのですが……」
「ちょっと待って。今、お茶でも入れよう」
「お構いなく」
 明本が席を立った後、シンディが言った。
「さっき庭をスキャンしたら、バージョン3.0の残骸を検出したんたけど、どういうことなの?」
「部品取り用に引き取った後、そのまま庭に放置しているだけじゃない?」
「部品取り???」
「敷島君はコーヒーが好きだったな。えーと、キミの場合は……エネオスのサスティナ(エンジンオイル)でいいかな?」
「ありがとうございます。(何でこの人間は、随分と扱い慣れてるの?)」
「さてと、本題だが……。またあいつら、世間をお騒がせしてるみたいだよ」
「え?」
「今度は電車の自動運転をやめろだってさ」
「はあ!?」
「電車が自動運転しているせいで、鉄道会社の採用人数が減っている。だから、そこに採用されず、夢破れた青年達の為に機械化と自動化に強く反対するというものだ」
「自動改札機や券売機も、その中に入ってるんですかね?」
「盛岡周辺はそんな御大層な電車は走っていないから大丈夫だと思ったが、どうやらワンマン運転というのも怪しいらしく、ワンマン運転が当たり前の在来線とかは止まってるみたいだよ」
「何つー奴らだ。いや、手動運転のワンマンだったら関係無いと思いますけど……」
「赤字路線だからこその苦肉の策なのにね。人件費が嵩んだら、路線そのものが廃止になってしまう。本当にテロリストの考えることは理解できないね」
「“ゆりかもめ”とかだったらまだ分かるけどなぁ……。あれ、電車自体がロボットみたいなもんだし……」
 その“ゆりかもめ”も運転を見合わせているという。
 週末、行楽客で賑わうお台場へのアクセス鉄道なだけに、打撃は大きい。
「AR団のリーダーに自首するよう、伝えておくよ」
「!」
 明本のさらっとした言い方に、シンディは目を丸くした。
「リーダーを知っている?」
「ああ。詳しい話は明かせないが、ちょっとね。ただ、それには1つ条件がある。それを飲んでもらいたいが、いいかな?」
「いいでしょう」
 敷島は大きく頷いた。

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6 コメント

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つぶやき (作者)
2014-09-20 21:00:40
 近所で火事があったもよう。
 火災現場の道路が封鎖されています。
 詳細は翌日の埼玉新聞で。
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Unknown (ANP)
2014-09-20 21:08:49
反乱してるのは国労関係者かな?

それはさておき地方都市でも大分自動改札機、自動券売機が普及しましたね。山陽本線岡山地区でも岡山駅みたいな大きな駅はもとよりその他小さい駅でも自動改札機ですからね。
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ANPさんへ (作者)
2014-09-20 22:14:54
 こんばんは。

 テロ組織の正体は、まだまだ不明ですよ(笑)
 自動改札機が普及しなくて、ICカードの普及は無かったわけですからね。
 実はこれ、プロ市民達もまた立場が違えばテロ組織みたいなものだろうというオマージュも込もっています。
 反原発団体を見て、且つ頑なに反原発を訴える沖浦さんを見て思いついたアイディアです。

 旧・妙信講が市民団体のような街宣活動のみならず、創価学会の本部に乗り込んだ時、もはやそれはテロ組織と何ら変わらないのと同じことではありませんか。
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Unknown (本堂)
2014-09-21 07:06:41
管理人さん、お早うございます。

その創価学会の本部襲撃事件の功労者?村岡総務や長岡氏らは今や会内で名前すら登りませんね?
妙観講に自ら先頭に立ち、大立ち回り?したご長男の克衛氏も会内から忘れ去られ? 総会登壇者も業績?は全て「浅井先生お一人」ですものね?
言葉は乱暴ですが、村岡総務や克衛氏らはアクア業界で言う「パイロットフィッシュ」だったのですかね?
(パイロットフィッシュとは目的の魚を水槽に入れる前に水槽の水を慣らしたり、適した水かどうか確認するために仮に入れるメダカなどの小魚、云わば下地作りの役目)

しかも(某学校長謝罪の件が想定外?に世から反発されたのが影響したのか?) 職場などでの勧誘を緩めたり? 他宗での葬儀の参加も認めたり? 今まで職場や学校での勧誘を軋轢を物のせずに厳格に?行ってきた会員を「じゃあ、自分らに今まで何やらせて来たの?」と白けさせるのに十分ですよね?




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本堂さんへ (作者)
2014-09-21 08:16:41
おはようございます。

パイロットフィッシュとは初めて聞きました。
私は村岡さんって方は知らないんですが、克衛さんには期待していたのに残念でした。
いずれはクーデターを起こし、「流血の惨」を見せてくれることを期待しております。
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Unknown (本堂)
2014-09-21 09:36:50
管理人さん、お返事ありがとうございます。

失礼ですが、浅井さんや克衛さんや城衛さんは何か
徳川三代記に見えてきました。
浅井さんは家康で、果たして家光、忠長は
克衛さん、城衛さんどっちでしょうね?

歴史上では弟の忠長が利発で賢く、父親の秀忠も後継と考え、家光の乳母、春日野局は焦って家康に直訴、家康の長男家光指名で事なきを得たとか。

確かに本部に引っ込んでる?弟さんよりも、自ら先頭に立ち、突っ込んで行く義経型の克衛氏が直線的性格はともかく、会員に取っては頼もしいのじゃないですかね? 青年部においても受けがよく、次期会長の期待が高かったのもわかります。

ただ、克衛氏が活躍時期は妙観講や小野寺教団との対立激化、世間的に見ても会員の強引勧誘が度々社会問題マスコミに取り上げられてる時期でもあるのですよね。
噂では克衛氏が浅井会長が大嫌いな?犀角独歩に会おうとしたのが逆鱗に触れ、期待のご子息でも降格させた、らしいですね。

しかし、組織的には、顕正会は家光時代の由比正雪の乱、忠長との内紛、島原の乱の動乱時期を抜け、もはや元禄の安定期に入ってるのじゃないでしょうか?
だからあの総会でも勧誘目標を引き下げたのでは?
徳川幕府も、動乱期には重宝していた知恵伊豆、本多正純などもう必要なく、官僚型の柳沢吉保、荒井白石、田沼意次、松平定信などに移行して来たと思います。

私も義経のように、克衛氏の先頭に立つ型は好きですが、組織的には余計な波乱を起こすだけの厄介者になってしまったのかも知れません。
真に生まれ付きセンスもカリスマも有る方なので大変残念だと思います。



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