報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「静岡出張」

2023-12-27 20:34:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月8日18時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 リサ「えっ!?先生達、明日からいないの!?」
 愛原「民宿さのやに行ってくる。公一伯父さんが逃亡したらしくてな、その調査だ」

 私達は夕食を取っていた。
 夕食はパールがトンカツとカキフライを揚げた。

 リサ「わたしも行きたーい」
 愛原「連れて行きたいのは山々だけど、まだド平日だからな。オマエは学校があるし……」

 はは……この辺、私も覚えがあるな。
 学校を休めぬが故の悔しさは、私も覚えがある。
 巷では、そんな悔しさを経験した人がお偉いさんになってくれたのだろう。
 そんな学生にも有給休暇を、なんて声が出てたな。

 愛原「今度、学校が休みの時にでも連れてってあげるからさ」

 しかし、言っている自分の心は晴れなかった。
 私が、である。
 何があったかというと、あれは遡ること、30年くらい前のことである。
 まだ小学生だった頃の私にも、当然夏休みはあった。
 で、首都圏や他の地方に在住する従兄弟達が遊びに来るのが楽しみだった。
 しかし、これは親達を恨むべきだろう。
 仙台市の小中学校の夏休みは基本、8月25日まで。
 東京などでは8月31日までだろう?
 市内の遊園地とか、県内の水族館とか行く日取りを、8月25日以降に指定してきたんだな。
 もう、お分かりだろう。
 父親に、『お前は学校があるだろう!』と言われ、従兄弟達が遊びに行くのに連れて行ってもらえなかったという悔しさがある。
 だから、リサの今の気持ちは凄く分かる。
 尚、『今度、学校が休みの時に一緒に行けばいいだろう!』と言われたが、結局その約束事が実行されることはなかった。
 だからこれを見ている子供達は大人の事情など気にせず、食い下がれ!
 あんな思い出作りのチャンス、2度と無いぞ!
 学校こそ、むしろいつでも行ける!
 皆勤賞なんか取ったところで、就活には何の意味も成さない!
 あのゆたぼんだって、結局は後になってちゃんと学校に行ってるではないか!!

 愛原「そうなんだよ……。何であの時、もっと食い下がらなかったのか……もっと駄々を捏ねなかったのか……俺のアホ……」
 高橋「せ、先生!?どうしました!?」
 愛原「ホントはな……学校なんていつでも行けるんだよ……特に義務教育なんかは……だから、1日、2日サボったところで、何がどうなるわけでもないんだよ……このゴリゴリ頭の固まった団塊世代共が……氷河期世代ナメんなよ……バカヤロウ……コンチクョウ……」
 リサ「先生!?ゴメン!わたしが悪かった!ワガママ言わないから正気に戻って!」
 高橋「バカ野郎!リサぁ、テメェのせいだぞ!!」
 パール「ちょっと、マサ!大声出さないで!……先生、それでしたら、リサさんを連れて行っても良いのでは?」
 愛原「高校はな……義務教育じゃないんだよ……」
 パール「し、失礼しました!」
 リサ「出席日数は足りてると思うけどね。で、でも、いいよ。わたしのせいで、先生が苦しむのはイヤだ」
 高橋「先生!今夜はガンガン飲みましょう!」
 パール「出張前にガンガン飲むとか……」
 高橋「うるせっ!もっと先生にビール持ってこい!」
 リサ「わたしの“鬼ころし”もあげようか?」
 愛原「それはオマエの暴走防止の為の薬だから、俺が飲んで切らすわけにはいかん」
 リサ「そ、そうだよね。何か、ゴメン……」
 愛原「いやいや。と、とにかく、学校のせいで除け者にされる気持ちは痛いほど分かる。俺はうちの毒親と違って、約束はちゃんと守るよ」
 リサ「うん、ありがとう」
 愛原「デイライトから旅行券は返してもらえるらしいからな」
 リサ「ホント!?」
 愛原「ほんとほんと」
 リサ「おー!」

 尚、私が除け者にされた理由は、親戚側に問題があったようだ。
 当時、まだ祖父母が生きていて、祖父母達からは親戚達に対するイメージが悪く、なるべくなら私を彼らと一緒に行動させないよう、圧を掛けていたという。
 約束事が守られなかったのも、祖父母達の方で断っていたかららしい。
 だからなのか、私が他の親戚の子の家に遊びに行く際は、祖父母達はこぞって私に交通費だの小遣いだのを奮発してくれた。
 とはいうものの、やはり大人の事情は子供には理解できないもので、やはりそこは一緒に遊ばせて欲しかったと思う所はある。
 大人の今になってからは、まあ、そういう事情かと理解はできるのだが……。

[2月9日11時00分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東海)東京駅→東海道新幹線ホーム]

 翌日になり、私と高橋はタクシーで東京駅に到着した。
 リサは元気よく学校に行ったし、パールには事務所で留守番してもらっている。

 高橋「また先生の御実家にお邪魔したいですね」
 愛原「俺の実家に行っても、何も無いぞ」
 高橋「いえいえ。まるで本当の実家に帰ってきたかのような安心感があるんです。多分それは、リサも同じだと思います」
 愛原「そうなのか?それじゃまあ、旅行券の使い道は仙台方面に絞ってみるか……」
 高橋「いいっスね!」
 愛原「取りあえず今日の所は、静岡方面だがな」
 高橋「今日は仕事だからしょうがないっス」

 私達は多くの人が行き交う東京駅にの中に入った。
 タクシーは日本橋口のロータリーに着けてくれて、ここから東海道新幹線へは日本橋口改札が最も近い。
 ただ、ここから入ってしまうと、駅弁が買えないのである。
 ホームに行けば売店があるのだろうが、コンコースで買いたい場合はオススメできない。
 JR東日本の新幹線ホームだと、ホームでもそれなりの種類の駅弁が売られているのだが、東海だとコンコース内に集約されている感がある。
 その為、私達は日本橋口改札は通り過ぎて、八重洲北口から入ることにした。
 ここから新富士駅までのキップは1枚に集約されているので、これを青い改札機に通す。
 JRが違う為、駅員の制服も東日本の物とは全く異なっている。

 愛原「11時27分発、“こだま”721号、名古屋行き。あれに乗るぞ」
 高橋「分かりました」
 愛原「その前に、少し早いが、駅弁を買って行こう。多分、向こうでは乗り換え乗り換えで、ゆっくり昼食を食べる暇が無いかもしれないからだ」
 高橋「了解です」

 私達はホームに上がる前に、コンコース内にある駅弁売り場に行って、駅弁を買うことにした。

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