報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「静岡出張」 2

2023-12-29 16:23:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月9日11時12分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR(東海)東京駅→東海道新幹線721A列車14号車内]

 

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ まもなく17番線に、“ひかり”642号が入線致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この後、11時27分発、“こだま”721号、名古屋行きとなります。車内の整備が終わるまで、お待ちください〕

 高橋がホームの喫煙所で、煙草を吸い溜めしている間、私は乗車口で列車を待っていた。
 今回はリサがいない為、特に先頭車や最後尾という乗車車両指定は無い。
 なので今回は、あえて中間車に乗ることにした。

〔「17番線、お下がりください。“ひかり”642号が入ります。折り返しは11時27分発、“こだま”721号、名古屋行きです。到着後、車内整備・清掃の為、お客様のすぐの御乗車はできません。しばらくの間、ホームでお待ちください」〕

 N700Aと呼ばれる車両が入線してきた。
 フルカラーLEDの表示器には、赤地に白抜きで“ひかり”と書かれている。
 東海道新幹線ではどの種別の列車でも、車両は共通運用となっている。
 だから、この車両も“のぞみ”としての運用に就くことも当たり前にあるわけだ。

〔とうきょう、東京です。とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました。……〕

 ホームドア(JR東海では可動式安全柵と言う)が開く時、“乙女の祈り”のメロディが流れる。
 ドアが開くと、そこから大量の乗客達が吐き出された。
 “のぞみ”より空いているとはいえ、これも優等列車。
 利用客は多い。
 表示が“ひかり”から、青地に白抜きの“こだま”の表示に変わる。
 乗客達が降りると、JR東海関連会社の清掃員達が「ヨシ!」と指さし確認して、車内に入って行った。
 それにしても、東海道新幹線ホームはJR東日本新幹線のホームよりもやかましいような気がする。
 それは列車本数がずば抜けて多い上、全ての列車がフル編成の16両というのも去ることながら……。

〔「6号車付近のお客様!まだご乗車になれません!ホームでお待ちください!ホームでお待ちください!まだご乗車になれません!」〕

 ずば抜けて新幹線利用に不慣れな外国人旅行客も多いからだろう。

 外国人「For Kyoto?」
 愛原「No.That train.」

 迷ったら、並んでいる先客に聞くというのも1つの手という法則通りだな。
 私も聞かれた。
 私が乗ろうとしている列車が京都まで行くか白人観光客に聞かれたので、違うと否定した上、隣の16番線を指さした。
 16番線から発車するのは“のぞみ”29号、博多行きであり、こちらは余裕で京都に停車する。

 愛原「ふーむ……」

 私よりもずば抜けて背の高い白人のカップルだったが、女性の方が、留学生のレイチェルと同様、金髪をポニーテールにした髪型をしていた。
 最近は見かけないが、特にリサと絡むことは無いのだろうか?

[同日11時27分 天候:晴 JR東海道新幹線721A列車14号車内]

〔「お待たせ致しました。11時27分発、“こだま”721号、名古屋行き、まもなく発車致します」〕

 私と高橋は列車に乗り込み、進行方向右側の2人席に座っていた。
 暖房がよく効いているので、コートは脱いで畳み、網棚の上に置いている。
 そして、早めの昼食を取る為、駅弁に箸を付けていた。
 私は“深川めし”である。
 JR東日本側にも同じ名前の駅弁があるが、内容が多少異なる。

 
(JR東海パッセンジャーズが出している“深川めし”)

 ただ、私の記憶が定かなら、こちらの内容の駅弁、かつてはJR東日本側で出されていたような気がするのだが……。
 箸を付けていると、ホームから発車メロディが聞こえて来た。
 JR東日本のホームだとベルだが、東海ではかつて“のぞみ”の車内チャイムで使用されていた発車メロディが流れる。

〔17番線、“こだま”721号、名古屋行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側まで、お下がりください〕
〔「17番線、お下がりください。“こだま”721号、名古屋行きが発車致しまーす。ITVよーし!……乗降……終了!ドアが閉まりまーす!ご注意ください!」〕

 在来線よりは落ち着いた感じのドアチャイムが微かに聞こえ、ドアが閉まる。
 そして、列車はスーッと走り出した。
 “のぞみ”や“ひかり”と比べ、“こだま”は空いていると言われているが、東京発車の時点では、実は大差無い。
 もちろん、1号車とか2号車とか、先頭車付近まで行けば空いているのかもしれない。
 だが、中間車など、階段付近の車両はそれなりの乗車率であった。

〔♪♪(車内チャイム“AMBITIOUS JAPAN!”♪♪。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に停車致します。次は、品川です〕

 私は食べる前に駅弁の写真を撮り、それをリサのLINEに送信していた。
 肉が好きなリサにとって、魚系はそんなに魅力的ではないかなと思っていたが、休み時間になって、スマホが弄れるようになったのだろう。
 返信が来た。
 その内容は、『わたしも食べたーい!』であった。
 栗原家から入手した旅行券で東北方面へ行こうなんて言ったが、それとは別に温泉旅行券があるので、それはそれで……という気はする。
 あとはメールで善場主任に、予定の新幹線に乗ったという報告。
 その返信は、『未だに“青いアンブレラ”が沈黙しています。けして、油断されぬよう、どうかお気をつけて』というものだった。
 デイライトは“青いアンブレラ”を敵視しているようだが、どうも高野君がいるせいか、私は敵には見えない。
 サスペンスものでよくいる、敵か味方か分からないキャラクターや組織。
 私にとっては、正にそれであった。
 私達を都合良く利用しようとしているのは分かるが、それはデイライトも同じこと。
 ただ、デイライトはちゃんと報酬を払ってくれるからなぁ……。

 高橋「今のところは順調な滑り出しですね?」
 愛原「今のところはな」
 高橋「……何かありますかね?」
 愛原「東北新幹線とかと違って、事件発生率がそれより高い東海道新幹線だ。まずは、そういうのに注意しろ」
 高橋「わ、分かりました。それじゃあ、煙草は控えといた方がいいっスね」
 愛原「……オマエ、さっきホームで吸ってなかったか?」

 高橋のヘビースモーカーぶりには困ったものだ。
 ……と、パールもか。
 ただ、パールは電子タバコに切り替えたみたいだからなぁ……って、そういう問題ではないか。

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