報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「都内へ戻る」

2023-12-27 14:51:03 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月8日12時12分 天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅→高崎線1869E列車5号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうごさいます。今度の6番線の列車は、12時13分発、上野東京ライン、東海道線直通、普通、小田原行きです。この列車は、10両です。グリーン車が付いております〕

 私と高橋はグリーン券と駅弁を買うと、ホームで列車を待った。
 グリーン券と駅弁は蛇足かもしれないが、仕事の中にこういう楽しみを入れるというのが私のやり方だ。
 この電車で行けば、13時にはデイライトの事務所に到着できるし、昼食も車内で取る事ができる。

〔まもなく6番線に、上野東京ライン、東海道線直通、普通、小田原行きが参ります。危ないですかすら、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、10両です。グリーン車が付いております。……〕

 高橋「先生と、こうして2人旅気分を味わうのも、久しぶりっスね」
 愛原「まあ、そうだな」
 高橋「本来は、先生と不肖の弟子の俺の2人で仕事してたわけっスからね」
 愛原「ああ。霧生市を思い出すよ」

〔「6番線、ご注意ください。高崎線からの上野東京ライン、東海道本線直通、普通列車の小田原行き、短い10両編成で到着します。ホームの中ほどでお待ちください。終点、小田原までの各駅に停車致します」〕

 電車がやってくる。
 私達の前に、2階建てグリーン車が止まった。

〔おおみや、大宮。ご乗車、ありがとうございます。次は、さいたま新都心に、停車します〕

 平日の真っ昼間だからか、グリーン車は空いていたが、編成が短い為か、普通車はそこまで空いているわけではない。
 多分、ここからだと座れないだろう。
 その為、中距離電車の利用者の多くは、全列車15両編成化を望んでいるという。
 私達は階段を上がって、2階席に乗り込んだ。

 高橋「先生、ここはどうでしょう?」
 愛原「そうだな。ここにしよう」

 私はコートを脱いで、テーブル横のフックに掛けた。
 駅弁とお茶はテーブルを出して、そこに置く。
 停車時間1分だけということもあり、その頃には、ホームから発車メロディが鳴り響いている。

〔6番線の、上野東京ライン、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 ピンポーンピンポーンとドアチャイムが3回鳴って、ドアが閉まる。
 同じ型式でも、通勤電車のドアとロック機構が異なるのか、こちらの中距離電車では閉まり切る際にガチャンと派手な音を立てる。
 そして、電車がスーッと走り出した。
 その頃には、私も高橋も駅弁に箸を付けている。

〔この電車は高崎線、上野東京ライン、東海道線直通、普通電車、小田原行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 愛原「この分だと、上野駅には40分頃に到着するな」
 高橋「そうなんスか?」
 愛原「リサはちょうど昼休み中だ」
 高橋「まさか、学校抜け出して見送りに来させるんスか?」
 愛原「まさか。学校の屋上からなら、上野駅が見えるんだ。それで十分さ」
 高橋「なるほど。俺達からは見えない所にあるわけですね」
 愛原「そういうこと」

 私は駅弁を食べ終わると、リサに今この電車に乗っていることをLINEで教えてあげた。
 さすがに授業中だったのか、すぐには既読と返信は来なかったが。

[同日12時50分 天候:晴 東京都港区新橋 JR新橋駅]

 グリーン車と言えば、グリーンアテンダントによる車内販売である。
 私は若くて綺麗な女性を期待していたのだが、残念ながら担当していたのは、高橋と大して歳の変わらぬ男性スタッフであった。
 それならそれで何も問題は発生しないわけだが、LGBTのBである高橋は何を気にしているのか、私が変な気を起こさぬよう、緊張した面持ちであった。
 念の為に言うが、私はノーマルであり、LGBTのどれにも属していない。
 だから、何も心配は無いはずなのだが。
 しかし、高橋曰く……。

 高橋「あいつからはゲイの臭いがしました。先生に変な気でも起こしやがったら、ボコすつもりでした」

 とのこと。

 愛原「い、いや、それはそれで俺の方が断ればいいんだから!暴力沙汰はダメだよ!」

 と、釘を刺しておいた。
 LGBT同士が仲が良いとは限らない。
 また、上野駅付近ではリサが学校の屋上から手を振ってくれたらしいが、あいにくと電車側からは東京中央学園が見えなかったので、残念だった。

 愛原「さあ、着いた。降りよう」
 高橋「はい」

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、品川に、停車します〕

 私と高橋は、ここで電車を降りた。
 棒線駅ということもあり、すぐに発車メロディがホームに鳴り響く。
 そして電車は、ドアを閉めて、すぐに発車して行った。
 駅弁や飲み物の空き容器は、デッキのゴミ箱に捨てておいた。

 愛原「それじゃ、トイレ休憩でも挟んで、デイライトさんの所に行こうかね」
 高橋「はい!」

[同日13時00分 天候:晴 同地区内 NPO法人デイライト東京事務所]

 

 愛原「……というわけでありまして、明日にでも民宿さのやに足を運ぶ所存です」
 善場「かしこまりました。御足労ありがとうございます。どうか、お気をつけて」
 愛原「ありがとうございます。……因みに、何か新しい情報はありましたか?」
 善場「今のところはまだです。栗原蓮華も、まだ警察やBSAAの捜索で発見されておりません」
 愛原「そうですか。“青いアンブレラ”はどうですか?」
 善場「こちらもまだですね。高野芽衣子こと、エイダ・ウォン・コピーもまた発見されておりません」
 愛原「そうですか。さすがは、高野君です」
 善場「……こちらとしては、警戒対象の人物ですので、あまり持ち上げないで頂きたいのですが」
 愛原「あっ、申し訳ありません!」
 善場「まあ、いいでしょう。それで明日、現地に向かわれるのですね?」
 愛原「はい。善場主任としては、今すぐに現地に向かって欲しいと思っておられる事は、推察しております。ただ……」
 善場「もちろん、承知しておりますよ。幸か不幸か、現地の民宿は所長の御親族が経営されております。怪しまれぬように潜入する為には、宿泊客になることが1番無難だということも理解できます」
 愛原「伯母……女将の伯母が言うには、明日でないと予約を受け付けないそうで……」
 善場「致し方ありませんね。こちらは民間探偵業者たる愛原さんに委託している身ですし、捜査令状も無いのに、強制的に屋内を捜索なんてできませんから」
 愛原「はい。仰る通りです」
 善場「どうか無理はなさらず、安全第一で業務遂行をお願いします」
 愛原「かしこまりました」

 この後、私達は再びJR新橋駅に向かった。
 あとはもう帰るだけなので、また乗り換え無しの都営バスで、ゆっくり楽に帰っても良いのだが、今回は電車で帰ることにした。
 そもそも新橋駅に行ったのは、明日乗る新幹線のキップを買う為だ。
 別に自由席で良いのだから当日でも良いのだが、少しでも時間に余裕を持たせる為だ。
 新橋駅に新幹線は止まらないが、もちろんキップ売り場に設置されている指定席券売機で事前購入が可能である。
 先に東海道新幹線のキップを2人分購入すると、私達は山手線のホームに向かった。

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