報恩坊の怪しい偽作家!

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“新アンドロイドマスター” 「動き出す謀略」

2015-03-05 15:16:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月5日深夜帯 シカゴ発成田行きFedex貨物機・貨物室内 ???]

 機内に響くは飛行機のエンジン音。
 当たり前だ。
 様々な荷物を運ぶ貨物機内。
 その中に、1つの箱からモーターの駆動音が鳴ったのを乗員達は知らなかった。
「ううーん……」
 緩衝材が積まれた箱の中から出て来たのは、どういうわけだか1人の女性。
 焦げ茶色の髪を後ろで束ねている。
「こちら、コードネーム“ゼルダ”。ボス、応答願います」
{「あー、こちら“レッドボードb”。起動は完了したか?」}
「はい。アンチウィルス、ソフトウェア共に異常ありません」
{「了解だ。では準備ができたら、すぐに始めてくれ。対象物は分かるな?」}
「はい。タグ番号は【中略】……ボーカロイド“結月ゆかり”ですね」
{「その通りだ。上手い事キミも輸送機に“輸送”させているからな、上手くやれよ」}
「了解しました」
 コードネーム“ゼルダ”は右目を光らせ、対象物となっている荷物を検索した。
「……発見」
 それは大きな段ボールだった。
 それこそ、体育座りさせれば人間1人が入れるくらいの。
 “ゼルダ”はその段ボール箱を開けた。
 自分と同じように緩衝材に包まれ、座り込んで眠る少女がそこにいた。
(これから日本で活躍するだろうけど、申し訳無いね。これも任務だからね)
 “ゼルダ”は結月ゆかりの体のどこかに何かを取り付けた。
 そして、開梱した段ボールを元の状態に梱包し直した。
「こちら“ゼルダ”。ボス、応答願います」
{「あー、“レッドボードb”。状況を報告を」}
「はっ。ボーカロイド・結月ゆかりへの機器取付を完了。起動はさせていません」
{「ご苦労さん。あとはこちらで行う。キミは再び“輸送物”となり、日本国内へ潜入せよ」}
「了解しました」
 通信を切ると“ゼルダ”は自分が梱包されていた箱に戻り、自分でシャットダウンを行った。
(“ショーン”は元気にしているかしら……。まあ、どうせ覚えていないだろうけど……)

[3月6日10:00.東京都墨田区菊川 敷島エージェンシー 井辺翔太&敷島孝夫]

「えー、ここがうちの事務所です。小さい所ですけど」
 井辺は敷島に連れられて、事務所に向かった。
 ついでに言うと、ほぼ内定に近い内々定である。
 井辺は敷島に誘われて、見学に来た。
「いえ、そんな……。きれいなビルですね」
「幸い築浅のビルが空いてましてね、そこはラッキーでした」
 エレベーターで上に上がる。
「今日はうちのボカロが何体かいるので、紹介しましょう」
「ありがとうございます」

 ピンポーン♪
〔5階です〕

 エレベーターを降りると、当たり前だが、すぐに目の前が事務所入り口である。
「えーと、今日残っているのは……」
 敷島が事務所のドアを開ける。
「ただいまぁ」
 事務所の奥の机の方から話し声が聞こえる。
「……はい……はい。申し訳ありません。鏡音レンは現在、修理中でして……。……はい。リンの方もソフトウェア異常で現在も調整中で……」
 井辺は女性事務員の後ろ姿を見た。
 どうやら、電話対応をしているようだ。
 するとそこへ、また電話が掛かって来る。
「はーい」
 電話に出たのは、また別の女性……事務員?
「敷島エージェンシーです。……あ、はい。いつもお世話になっております。……はい。それでしたら、来週の水曜日に敷島が打ち合わせを行うことになっておりますが……はい」
「まだユニット始動前とはいえ、すっかり電話対応ロボットになっちゃったな……」
 敷島が頭をかく様子を見て、
「えっ?」
 と、井辺は首を傾げた。
「……はい。では後ほど、敷島の方から連絡させて頂きますので……はい。よろしくお願い致します」
 先に電話を切ったのは、背中を見せていた事務服を着た女性の方。
「……あ、社長。お帰りなさい」
「おう。来訪者だ。お茶出して」
「はい。いらっしゃいませ」
「こ、こんにちは……」
「彼女は一海(かずみ)。この事務所の事務作業を一手に引き受けてくれる、事務作業ロボットだ」
「ええっ!?……人間ではないんですか?」
「そうだよ。元はメイドロボットなんだけどね、用途変更で今は事務作業用だ」
「あー……メイド服着ている姿が、何だか目に映ります……」
「でしょ」
「……失礼致します」
 もう1人の方も電話を切る。
「社長、お帰りなさい。……お客様ですか?」
「おう。新しくここのプロデューサーになる予定の井辺翔太君だ」
「井辺です。よろしくお願いします」
「未夢です。よろしくお願い致します」
「えーと、今事務所にボーロカイドは他に何人いる?」
「奥にLilyがいますよ。音感の調整をしています」
「そうか。じゃあ、ちょっと行ってみよう」
 奥の休憩室みたいな所、そこに長い金髪の上からヘッドホンを着けたハイティーンの少女がいた。
「外国人ですか、社長?」
「あー、大丈夫。言語機能は日本語にしてあるから。Lily」
「あ、社長」
 Lilyは社長と井辺を一瞥した後、またPCの方に向き直った。
「彼女はLily。元は秋葉原のボーカロイド劇場にいたんだけど、今月末で閉鎖されることになって、先にうちの事務所で引き取ったんだ。予定としては彼女とさっきの未夢、それからもうすぐ日本に到着する新型ボーカロイドとセットで井辺君に担当してもらおうと思っている」
「ええっ!?」
 敷島の言葉に井辺とLilyは同時に驚いた。
 Lilyはヘッドホンを外した。
 しかし、2人の驚きの内容は違った。
「私、やっとデビューできるんですか!?」(Lily)
「さっきの人、ボーカロイドだったんですか!?」(井辺)
「……うん。キミ達、きっと上手くやれるよ」

[同日10:30.同場所・応接室 井辺、敷島、Lily、未夢]

「……というわけで、後日到着する結月ゆかりとキミ達は3人ユニットでデビューを考えている。だから、それまでは調整を続けてほしい。人間のアイドルで言うなら、レッスンを受けてくれといったところかな」
「はい」
「分かりました」
「ここにいる井辺君は、キミ達のプロデューサーとして色々売り込んでくれる予定だ」
「でも社長、自分に営業の経験は……」
「大丈夫。しばらくは私が一緒につくから」
「はあ……」
 と、そこへ、
「失礼します、社長」
 一海が入ってきた。
 肩までのショートヘアで、頭には黄色いカチューシャを着けている。
「グレン・プランニング様から、『鏡音リン・レンの修理はいつ終わるのか?』と矢のような催促で、予定を申し上げているのですが……。あと、マスコミ関係の方からも同じような質問が……」
「分かった。後で俺が電話しておくよ」
 一海が出て行くと、
「あの双子ボーロカイドですね。今や有名ですね」
 と、井辺は笑みを浮かべて言った。
「そうだな。初音ミクをトップに、あの2人もそれに追走しているって感じだ。あそこまでメジャーにするまで、大変だったんだ」
「はい。……今、修理って……」
「井辺君は新聞とかテレビは見ないのかい?」
「あっ、そう言えば、何か故障したと……」
「故障!?」
 向かいに座る2人のボーカロイドも驚いた顔をした。
「ま、まあ……。そこは……ほら、機械の塊だからさ、故障する時もあるんだよ。そうならないように、整備や点検は密に行ってはいるんだけどね……」
 何故か敷島が歯切れ悪く言うのを、残りの3人は疑問に思った。
「とにかく、あと1人のメンバーが到着するまで、もう少し待ってほしい。それまでLilyと未夢は調整、井辺君には事前研修を受けてもらいたい」
「分かりました」
「結月ゆかりが到着しても、電源入れたり起動テストとかしなきゃいけないから、まあ……やっぱり、キリのいい所で4月1日からのスタートってことで考えてるよ」
 そこでやっと敷島は笑顔になったのだった。

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1 コメント

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今回のNG (作者)
2015-03-05 19:28:26
 貨物機内でガイノイド“ゼルダ”が、結月ゆかりの入った箱を検索、開けるシーンから……。

「……発見」(“ゼルダ”)

 ギギギ……!(←思いっ切り蓋を引くが開かない)

「ん……?」(←首を傾げる“ゼルダ”)

 バッ!(←勢いよく開いた)

「ぎゃっ!?」(勢いよく開いた蓋が“ゼルダ”の顔に直撃)
「……天海春香かよw」(作者)
「はい、そこ。アニマスネタ使わない」(多摩準急)
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