報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「夜間戦闘の状況」

2024-02-13 20:29:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日20時43分 天候:晴 福島県福島市栄町 JR東北新幹線6158B列車1号車内→JR福島駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、福島です。山形線、山形新幹線、阿武隈急行線と福島交通飯坂線はお乗り換えです。福島で後ろに7両、11号車から17号車を連結致します。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。福島の次は、郡山に止まります〕

 私達を乗せた列車は無事に仙台市、そして宮城県そのものを抜け、福島県へと入った。
 心なしか、福島駅周辺の方が、仙台駅周辺よりも雪が多いように思える。

〔「まもなく福島、福島です。14番線に入ります。お出口は、左側です。福島で、後から参ります山形新幹線“つばさ”158号を連結致します。6分停車致します。発車は20時49分です。発車まで、しばらくお待ち願います。福島からのお乗り換えのご案内です。……」〕

 実はこの時……具体的には1つ手前の白石蔵王駅を通過する時、善場主任からメールの着信があった。
 直接、通話がしたいという。
 幸い次の福島駅は停車時間が長めに取られているから、ホームに降りての通話が可能だろう。
 そして列車は、副線ホームの14番線に停車した。
 福島駅新幹線ホームは、基本12番線から14番線しか使われておらず、11番線は閉鎖されている。
 ホームには鉄柵がされ、線路の上には盛り土がされて車止めが設置されるなどしているという。
 但し、廃止されたわけではなく、あくまでも休止状態である。
 現状、山形新幹線は14番線からしか発着できず、これが冬期間の輸送障害に伴うダイヤ上のネックになっているという。
 そこで現在、休止中の11番線を活用し、14番線と同時に使えるようにする為、線路改良工事を行っているとのこと。

 愛原「リサ、ちょっと善場主任に電話してくるから」
 リサ「はいはい。他の女との楽しい電話ね」
 愛原「んなワケあるか!」

 時々リサもフザけたことを言うなぁ……。

〔「福島です。この駅で山形新幹線“つばさ”号の連結作業、並びに“はやぶさ”号の通過待ちの為、6分ほど停車致します。発車は20時49分です。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 私はホームに降りると、寒風に当たりながら、善場主任に電話を掛けた。

 善場「善場です」
 愛原「あっ、善場主任。愛原です。今、福島駅です」
 善場「お疲れさまです。順調のようですね」
 愛原「おかげさまで。それより、何かありましたか?」
 善場「明日、お預かりしていた現金をお返しに参りたいと思います」
 愛原「御足労して頂けるのですか?私共で取りに伺っても……」
 善場「いえ。お預かりしていたのは私共ですので、私共の責任で直接お返しに参りたいと思います」
 愛原「分かりました」
 善場「そしてそのついでに、お話しさせて頂きたいこともございます。今夜、仙台市内の青葉山付近で起きた事件のことです」
 愛原「や、やっぱり……。それで、詳細が分かりましたか?」
 善場「結論から申しますと、BSAAのヘリコプターが2機ほど現場に向かったそうですが、いずれも撃墜されました。今、現場はそれによる火災が発生して、大変なことになっています」
 愛原「ええっ!?」

 2回ほど見たオレンジ色の光は、2機のヘリが撃墜されて爆発する光だったのか。

 愛原「ということは、BSAAは全滅?」
 善場「そのようです」
 愛原「誰がそんなことを!?というか、伯父さんは?」
 善場「墜落が確認できたのはその2機だけですので、公一容疑者を乗せたと思われるヘリコプターは墜落しなかったと思われます」
 愛原「な、何だ……」
 善場「では誰が撃墜させたのかと言いますと、直前まで交信していたBSAAの報告からして、栗原蓮華だと思われます」
 愛原「やっぱり……」
 善場「では、どうしてそこに栗原蓮華が現れたのかということですが、愛原所長は心当たりがありますか?」
 愛原「いいえ、主任。全くありません。ただ、公一伯父さんも現場に向かったことから、ただの偶然とは思えませんが……」
 善場「そうですね。私もそう思います。何でも公一容疑者は、栗原蓮華を人間に戻す薬を持っているとか?」
 愛原「そんなことを言ってました。私はまだ現物を見ていませんが……」
 善場「栗原蓮華が何らかの方法でそれを知り、奪いに来たのかもしれませんね。彼女は鬼になったことを喜んでいたそうですね?」
 愛原「そ、そうですね……」

 無くした左足が生え、全身の火傷の痕は無くなり、体も軽くなった上、鬼狩りの家系の御嬢様としての抑圧も無くなったことを喜んでいた。

 善場「彼女からして見れば、そんな薬は余計な物でしょうね」
 高橋「そ、そうですね」

 そういえばエブリンも、特異菌を石灰化する薬を思いっ切り嫌がっていたそうな。
 そりゃそうだ。
 エブリン自身、特異菌の化け物であるのだから。

 愛原「ん?すると、BSAAを全滅させた彼女は、今どこに?」
 善場「鋭意捜索中です。まあ、薬を何とかする為に、公一容疑者を追っているのかもしれませんね」
 愛原「なるほど……」

 いくら鬼型BOWといっても、リサを参考にすれば、ここにはいないだろう。
 ナンボ何でも、新幹線に追い付けるはずがないからだ。

 善場「詳しい話は、また明日に。所長方も油断せず、気をつけてお帰りください」
 愛原「分かりました」

 私は電話を切った。
 寒風に当たっていたので、ホームの自販機で温かい缶コーヒーを買ってから車内に戻った。

 リサ「善場さん、何だって?」
 愛原「明日、事務所に来るってさ」
 リサ「わたし、明日学校だけど?」
 愛原「別に、リサに用事があって来るわけじゃないよ。仙台の青葉山で、BSAAが出動した件について話があるってさ」
 リサ「ふーん……。やっぱり、蓮華だった?」
 愛原「……らしいな」
 リサ「鬼狩りが鬼になるなんて、笑っちゃうよ」
 愛原「皮肉なもんだ」

 私は缶コーヒーをテーブルの上に置くと、プルタブを開けた。
 そうしているうちに発車時刻が迫り、ホームからは“栄冠は君に輝く”の発車メロディが流れて来た。
 これは作曲者の古関裕而氏が福島市出身に因んだものだという。
 高校野球はあまり強くなく、甲子園に出場したことの無い東京中央学園では、この歌を歌う機会は無いか。
 こうして、“やまびこ”158号は“つばさ”158号と共に福島駅を定刻に発車した。

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