報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「夜の帰京」

2024-02-15 15:07:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月26日22時24分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東北新幹線6158B列車1号車内→JR(東日本)東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央快速線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本もご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車は何事もなく、順調に走行を続けていた。
 さすがに今、栗原蓮華は襲ってこないようだ。
 人間だった頃、女剣士として厳格に育てられたからか、あまり卑怯な真似はしてこないようである。
 もう日本刀は捨て、大岩ぶん投げてヘリを墜落させたりと、本当に鬼のような戦い方になってしまっているが。
 彼女からの果たし状的には、藤野が決戦の舞台となっているようである。
 それまでは来ないのかもしれないし、そう油断させておいて、やっぱり来るのかもしれない。

〔「ご乗車お疲れ様でした。まもなく終点、東京、東京です。到着ホームは21番線、お出口は変わりまして右側です。東海道新幹線ご利用のお客様、最終列車の時刻にご注意ください。22時48分、“こだま”815号、三島行きは14番線からの発車です。……」〕

 新幹線は最終列車を気にするようになる時間帯である。

 愛原「リサ、そろそろ降りるぞ」
 リサ「ん……」

 リサは窓側の席で、ボーッとしていた。
 窓の外を覗き込む。
 窓の外には、東京都心の夜景が広がっていた。
 窓ガラスには、時折赤く光るリサの瞳が映る。
 棚に乗せた荷物を降ろしたりしているうちに、列車がホームへと進入する。

 高橋「先生、着いたらちょっと一服いいっスか?」
 愛原「分かったよ」

〔ドアが開きます〕

 そして列車は、東京駅21番線に到着した。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。21番線の電車は折り返し、22時44分発、“なすの”281号、那須塩原行きとなります。本日の東北新幹線、最終列車です。……」〕

 ここでも最終列車の案内が流れる。

 ホームに降りると、高橋とパールはすぐ近くの喫煙所に向かった。
 私とリサは、ホームで待つ。

 愛原「こっちも少し冷えるなぁ……」
 リサ「仙台ほどじゃないけどね」

 ヒュウッと一陣の風が吹いてくる。
 明日は春一番が吹くかもしれないということだ。
 地下鉄は大丈夫だと思うが、地上の電車はもしかしたら、風でダイヤに影響が出るかもしれない。
 特に、京葉線や武蔵野線、川越線はその影響を受けやすい。
 しばらくして、高橋達が戻ってきたので、私達は改札口に向かった。

 高橋「ここから、どうされますか?」
 愛原「タクシーで直帰だよ」
 高橋「その方がいいっスね」

 と、八重洲中央口付近のタクシー乗り場に向かう。
 曜日や時間帯によっては長蛇の列ができることもあるタクシー乗り場だか、日曜日の深夜は空いていた。
 やはりここは直帰の方がいい。
 既に時間帯は深夜帯。
 大の大人の私達が一緒だからまだいいものの、制服姿のリサだけなら補導されるだろう。

 愛原「俺が前に乗るから、お前達は後ろで」
 高橋「ハイ」

 今ではもう一般的になりつつある、トールワゴンタイプのタクシーに乗り込む。
 リアシートが広く、真ん中席だと足元の出っ張りが無いので座りやすくなっている。

 愛原「菊川2丁目○-×までお願いします」
 運転手「はい、ありがとうございます」

 運転手は私が言った住所をナビに入力した。
 あとは、ナビ通りに行ってもらう。
 今ではカーナビも、殆ど標準装備となった。
 幸い、タクシー配車アプリに対応しているタクシー会社だったので、支払い方法もそのアプリ決済にしておく。
 この場合、領収書はアプリ画面に表示される形となる為、紙の領収書は発行されない。
 タクシーは、同じ場所を発車する高速バスを交わし、交差点に向かった。
 その高速バスも、窓には全てカーテンが引かれているものもある。
 それは夜行バスだ。
 夜行バスも発車する時間帯に、今はなっている。
 もう少し早い時間に帰京する新幹線でも良かったかなと、今更ながらに思った。

[同日23時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 タクシーが新大橋通りから外れ、路地を走行する。
 住宅地の中は、殆ど人けが無かった。

 愛原「あ、そこで止めてください」
 運転手「こちらで宜しいですか?」
 愛原「はい」

 運転手がハザードランプを点けて、料金メーターを止める。
 既にアプリで支払いを済ませているので、車内で決済のやり取りは無い。
 ハッチを開けてもらい、そこから荷物を降ろす。
 その間に私は、助手席後ろにあるタブレットを使って、アプリ決済。
 これだけで、もう支払いは終わり。

 愛原「忘れ物無い?」
 高橋「大丈夫です」
 愛原「よし。じゃあ、入るか」

 私は持っていたカードキーで、玄関の鍵を解錠した。
 因みに鍵などで、普通に鍵を開けることを『解錠』という。
 もう1つ似たような意味に『開錠』というのがあるが、これは鍵を壊して強引に開けることを言う。
 バイオハザードの資料映像にも、2つの単語が出て来るので要注意だった。
 一応私は警備員の仕事をしていたことがあったので、2つの単語の意味の違いは知っていたが、この3人は首を傾げていた。
 資料映像でも、猛者が鍵を見つけて普通に解錠することもあるし、古い鍵なら壊して開錠するることもあった。
 玄関から中に入ると、すぐ目の前に2階に上がる階段がある。
 しかし、大きな荷物があったので、すぐ横のガレージに入るドアを開けた。
 こちらもカードキーで開ける。
 ガレージは真っ暗なので、一旦照明を点ける。
 それからエレベーターを起動させて、上に向かうことにした。

 愛原「すぐに風呂を沸かしてくれ。で、リサに先に入ってもらおう」
 リサ「わたし?」
 愛原「明日、普通に学校だろ?風呂入って、すぐ寝ろよ」
 高橋「お子様は寝る時間だぜ?」
 リサ「わたし、もう子供じゃないもん!」
 高橋「まだ17のガキが何言ってやがる」
 愛原「法律的にも、まだ成人年齢じゃないもんね」
 リサ「むー……」

 そして、3階でエレベーターを降りる。
 私とリサは、更にその上の4階まで向かった。

 愛原「明日はいよいよ大金が手に入るぞ?」
 リサ「えっ、そうなの?」
 愛原「奥日光で手に入れた札束を返してもらえることになっているんだ。その金で、4階にシャワールームを増設しよう。これなら、風呂の順番待ちもそんなにしなくて済む」
 リサ「いいね!どこに設置するの?」
 愛原「トイレと洗面所の横に、中途半端な3畳分くらいの納戸があるだろう?そこでいいな」
 リサ「ふんふん」

 元々は6畳間があったそうなのだが、この建物を建てたオーナーが、後ほど6畳間を半分潰し、トイレと洗面所を増設したのだそうだ。
 本当はシャワールームも造りたかったそうなのだが、予算が足らずに断念したのだとか。
 おかげで今、中途半端な3畳間は納戸として残っている。
 が、物置や収納は他にもあるので、殆ど使うことはない。

 愛原「荷物を整理する頃には風呂も沸くだろうから、そのタイミングで入ってくれ」
 リサ「分かった」

 私も自分の荷物を持って、自室に入った。

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