報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤絵恋の入院先へ向かう」

2021-09-09 19:44:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日11:51.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1179K電車最後尾車内]

〔まもなく1番線に、各駅停車、京王多摩センター行きが10両編成で到着します。黄色い点字ブロックの内側で、お待ちください。この電車は、馬喰横山で急行、笹塚行きにお乗り換えができます〕

 朝食の後に事務所に向かった私達。
 善場主任に連絡すると、特に事務所に行くなとは言われなかった。
 但し、リサを1人にしないようにとは言われた。
 斉藤絵恋さんの病院に行くことについても、特に制限を受けることはなかった。
 むしろ、都合良くリサの関係先が狙われたとして、行った方が良いとも言われた。
 要人テロの場合、要人本人ではなく、関係者から攻撃することが多々あるからだ。

〔1番線の電車は、各駅停車、京王多摩センター行きです。きくかわ~、菊川~〕

 京王線に乗り入れる電車だからか、京王線の車両がやってきた。
 平日の昼間、急行電車に抜かれる各駅停車ということもあって、車内は空いていた。
 JR701系よりは濃いローズピンクの座席に腰かける。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 短い発車メロディの後で、電車のドアが閉まる。
 ホームドアが閉まったところで、乗務員室から発車合図のブザーの音が聞こえて来る。
 都営新宿線ではワンマン運転は行われていない為、車掌が乗務しているからだ。
 それからエアーの抜ける音がして、電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S-11.Please change here for the Toei Oedo line.〕

 愛原:「手紙は書いたのか?」
 リサ:「書いた」
 愛原:「そうか。絵恋さん、きっと喜ぶよ」
 リサ:「むふー」
 高橋:「萌え死にするかもな」
 リサ:「それはダメ。わたしのデザート……」
 愛原:「今サラッと人喰い前提で言わなかったか?」

 おかしいな?
 今のリサは第0形態のはずなのだが。
 一応、顔を隠す為にパーカーのフードを被らせている。

 愛原:「善場主任の話によると、絵恋さんのマンションで射殺体で見つかった男はテロ組織のメンバーで、善場主任の部下の1人を撃ったヤツの可能性が高い。マンションの防犯カメラによると、裏の非常階段から侵入し、そこから階段をひたすら昇って屋上に出たらしい」
 高橋:「そのテロリストを撃った奴は?」
 愛原:「どうも防犯カメラにも、侵入した形跡も無かったことから、男が自殺したんだと警察は見ているらしいぞ」
 高橋:「わざわざマンションの屋上で、ですか?」
 愛原:「絵恋さんのマンションというのが引っ掛かるな。ただの偶然には思えない」
 高橋:「確かに、わざとそうしたって感じですね」
 愛原:「だしたら何で?と思う。まあ、何かしらの警告なのかもしれないが」
 高橋:「警告?」
 愛原:「テロ組織は、あのマンションがリサの親友のだと知っていた。だけど、親友というだけで、それ以上は関係無い人物を襲うのはリスクが高い。そこであのテロリストに、俺達への襲撃に失敗したら、警告の意味を兼ねて、あそこで自殺しろとでも指令していたかもなぁ……」
 リサ:「それって、サイトーも危ないってこと?」
 愛原:「俺達ほどじゃないさ。ただ、あの大日本製薬の社長の御嬢様という意味で、別の理由で狙われる恐れはあるかもな」
 高橋:「そこで、社長はあのパールを専属メイドにしたってわけですね。あいつなら、手持ちのジャックナイフでテロリストなんざ、『流血の惨を見る事、必至であります』」
 愛原:「凄いメイドさんだ」
 高橋:「『日本のロベルタ』と呼ばれています」
 愛原:「眼鏡は掛けてないし、ゲリラ部隊に所属していたわけでもないだろう?」
 リサ:(何かまた難しい話してる……)

 で、パチンカスの哀しい性で……。

 愛原:「あれ、ロベルタが出て来たからって安心できないよな?当たりキターッと思ったら、思わぬ肩透かしだよ」
 高橋:「“海”だって、サムが来たから安心ってわけでもないのと同じっス。それより、スロットの方が……」
 愛原:「いや、だから、俺は目押しできないって」
 高橋:「今は目押しとか関係無いっスよ」
 愛原:「でも、できないよりできた方が有利なんだろ?」
 高橋:「それは機種によりますね。スロットのブラックラグーンの方は、特に目押しはできなくても大丈夫でしたよ」
 愛原:「そりゃスロットの方が得意なオマエにとっては大丈夫だろうけどさ……」
 高橋:「いえいえ、先生でも大丈夫ですよ」
 愛原:「『でも』って何だ?『でも』って」
 高橋:「あっ……サーセン!」

[同日11:48.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]

〔この先、電車が大きく揺れることがあります。お立ちのお客様は、ご注意ください。岩本町、岩本町、秋葉原。お出口は、左側です〕

 この駅で私達を乗せた電車は、後続の急行電車に抜かれる。
 そこで副線ホームに入る為、ポイントを通過するのだ。
 ガクンと電車が大きく揺れて、電車は副線ホームに入った。
 両側にホームがあるが、ドアが開くのは上り線ホーム側だけである。

〔2番線の電車は、各駅停車、京王多摩センター行きです。岩本町、岩本町、秋葉原〕

 JRの駅だと、本線ホームにはホームドアがあるのに、副線ホームにはホームドアが設置されていないことが多々ある。
 だが、この駅ではちゃんと副線ホームにもホームドアが付いていた。

〔「当駅で急行電車の通過待ちを致します。4分停車致します。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 私達は電車を降りて、エスカレーターに乗った。
 電車が接近しているのか、風が強い。
 リサはプリーツの付いた黒いスカートを穿いている。
 多分、中にスパッツくらい穿いていると思われるが、それでも裾を気にする年頃にはなったということだ。

 高橋:「先生、ここから病院は近いんですか?」
 愛原:「グーグルマップによると、歩いて10分くらいらしい」
 高橋:「まあまあの距離っスね」
 愛原:「それでも真夏では、油断のできない距離だ。水分補給はこまめにな」
 リサ:「うん」

 リサはパーカーの袖を捲くった。
 パーカーの下には“バイオハザード”の白いTシャツを着ていた。
 ロゴマークの下には、後ろを振り向こうとするゾンビの絵。
 最後にはラスボスとして主人公の前に立ちはだかるタイラントは追跡中、邪魔なゾンビがいると、平気で殴り飛ばす。
 そしてリサは、そんなタイラントを従える力を持っているのである。
 

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