報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「斉藤絵恋の暴走」

2021-09-12 15:59:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日12:15.天候:晴 東京都千代田区神田和泉町 三井記念病院]

 斉藤絵恋さんの入院先に到着した私は、まず電話で斉藤社長に連絡を取った。
 院内にいると思われるので、通話ではなく、メールにしておく。
 するとすぐに返信があり、院内のレストランで待機しているように言われた。
 そこで私達は院内にあるレストランに向かった。
 お昼時で賑わっていたが、すぐにテーブル席に着くことができた。

 愛原:「先に昼食を食べてていいらしい」
 高橋:「そうですか。じゃあ、注文しちゃいましょう。親友の見舞いより、昼飯が優先の『歩くウィルス兵器』がここにいますから」
 リサ:「煮込みハンバーグ……」
 高橋:「先生は何にしますか?」
 愛原:「俺はカレーでいいよ」
 高橋:「でも今日の夕飯、カレーっスよ?」
 愛原:「マジか。じゃあ、天ぷらそばだ」
 高橋:「じゃあ、俺も」

 料理を注文して待っていると、斉藤社長がやってきた。

 斉藤秀樹:「やあ皆さん、お揃いですな?」

 仕事を抜け出して来たのか、私のよりもずっと高級そうなスーツを着ていた。

 愛原:「社長、お疲れ様です」
 リサ:「サイトーのお父さん、これ、手紙……」
 秀樹:「おー、ありがとう。後で渡しておく。絵恋もきっと喜ぶよ」

 私の向かいに座った社長は、カツサンドとコーヒーを注文した。
 で、先に注文した私達の料理が来る。

 秀樹:「どうぞ、先に食べてください。食べながらでいいので、聞いてください」
 愛原:「お先に失礼致します」
 リサ:「サイトーのお父さん、サイトーの様子はどう?」
 秀樹:「症状自体は落ち着いています。ただ、眠る度に死体が襲ってくるという悪夢に魘されるのと、時折フラッシュバックが襲うというものがありますが」
 愛原:「まるで、霧生市のバイオハザードから生還した人達のようですね」
 秀樹:「それに似ています」
 愛原:「しばらくはカウンセリングを受けることになるわけですか」
 秀樹:「はい。入院そのものは今日までです。明日には退院して、あとは通院ということになりそうです」
 愛原:「そうでしたか」
 リサ:「今、サイトーはどうしてます?」
 秀樹:「ベッドに繋いでおいたよ」
 リサ:「ん?」
 秀樹:「どうやって知ったのか、キミが来ると分かったら、『すぐに会いたい!』と喚いてねぇ……」
 リサ:「会いに行きましょう!」
 愛原:「だからリサ、面会はコロナ禍で禁止なんだって」
 リサ:「わたしなら大丈夫!」
 愛原:「それは分かってる」
 秀樹:「だから、キミの手紙だ。これを渡せば、少しは大人しくしてくれるだろう」
 高橋:「いや、そりゃ甘いっスよ、社長」
 秀樹:「え?」
 高橋:「人間の下半身を甘く見ちゃダメっス」

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「院内の御呼び出しを申し上げます。斉藤秀樹様、斉藤秀樹様。至急、精神科病棟までお戻りください。お言付けがございます。繰り返し、院内の御呼び出しを申し上げ……ああっ!?ちょっと!」「リサさーん!病院にいたら、すぐに来てーっ!会いたいーっ!」「キミっ、やめなさい!すぐに病室に戻って!」「ちょっと!何すんのよ!?放しなさいよ!」「こら、暴れるな!!」ドシン!バタン!……プッ〕

 秀樹:("゚д゚)
 高橋:「ね?LGBTのLとGの下半身の力、凄まじいものがあるっス!」
 愛原:「うん、オマエがBでまだ良かったよ」
 高橋:「いやァ、そんなぁ……」(´∀`*)ポッ
 愛原:「いや、褒めてねーし!」
 秀樹:「ちょ、ちょっとすいません!席を外します!」
 愛原:「お、お疲れさまです……」
 リサ:「サイトー、どうして放送室の場所分かったんだろう?」
 秀樹:「だから言ったろ?ビアンは全身性感帯だから、その力は凄まじいものがあるってな」
 愛原:「読者の皆さん、これはノーマルの私や作者じゃなくて、同じLGBTの人が言ってたことですからね?別に勝手に差別発言してるわけじゃないですからねー?」
 リサ:「先生、誰に向かって言ってる?……ていうか、何かサイトーか怖い」
 高橋:「オメェ、あいつにウィルス送り込んで、操れるようにしたって言ってたじゃねーか?制御不能になってんじゃねーか?」
 リサ:「ウィルスからは何の反応も無いけど……」
 愛原:「何さらっと後でBSAAが掃討しに来るかもしれない発言してんだよ?とにかく、さっさと昼食食べたらズラかるぞ。絵恋さんという中身BOWが襲撃してくるかもしれん」
 高橋:「了解っス」
 リサ:「りょ、りょ!何か私も、今のサイトーには勝てる気がしない……」

 ゲームのシリーズによっては、ラスボスを張ってたオリジナルのリサ・トレヴァー。
 その改良型亜種が怯える瞬間であった。

 高橋:「精神病棟ですから、完全に拘束ですかね?」
 愛原:「……かもな。だけど、今の絵恋さんだったら……」
 リサ:「オリジナルの大先輩みたいに、きっとわたしを探して追ってくるよ……」
 高橋:「俺は一瞬、ターミネーターをイメージした……」
 愛原:「ま、まあ、その……何だ。早く事務所に戻りたいし、帰りはタクシーに乗ろうか」
 高橋:「それはいいアイディアっスね」

 それから私達は昼食をかき込むようにして食べた。
 食後のコーヒーを注文しなかったのは幸いだ。
 会計を済ませて出ようとすると、何故か伝票が無い。
 確認すると、いつの間にか斉藤社長が支払を済ませてくれたのだという。
 御礼は後でするとして、私達は病院の外に出ようとした。

 秘書:「あっ、愛原様でいらっしゃいますか?」
 愛原:「あっ、あなたは確か……斉藤社長の秘書さん?」
 秘書:「さようでございます」

 私と同じくらいの歳の男性秘書がやってきた。

 秘書:「社長をお見かけしなかったでしょうか?そろそろ会社に戻る時間なのですが、連絡が取れませんで……」
 愛原:「あー……それなんですけど、ちょっと……御嬢様にトラブルが発生して、その対応に当たられております」
 秘書:「御嬢様に何かあったのですか?」
 愛原:「まだ精神的ショックが大きいのでしょうな。ちょっと……錯乱されてしまったみたいで……」

 ある意味ではリサのせいでもあるが、ここでそんなことを言う必要はあるまい。

 秘書:「そうだったのですか」
 愛原:「申し訳ありませんが、これはあくまで医療上の問題ですので、私共、民間の探偵業者が入れるところではございません。ここにいてもお役に立てそうにないので、お先に失礼させて頂きます」
 秘書:「お疲れ様でございます」
 愛原:「あっ、あの……よろしければ、社長に言付け願いたいのですが……」
 秘書:「あ、はい。何でございましょう?」
 愛原:「先ほど、この病院のレストランで昼食を御馳走になったのです。その御礼を申し上げたかったのですが、その前にトラブルが発生してしまいましたので……」
 秘書:「かしこまりました。社長に伝えておきます」
 愛原:「お手数お掛け致します。どうか、よろしくお願い致します」

 私は秘書さんに挨拶して、それから病院をあとにした。

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