報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤絵恋の入院」

2021-09-09 16:00:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日07:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今朝は変な夢を見て目が覚めた。
 どんな夢かと問われれば、なかなか口では説明できないようなものだ。
 まあ、うちの『2番』のリサを含む他の日本版リサ・トレヴァーに【あれ】や【これ】などをされている夢とだけ言っておこう。
 『0番』である善場主任は人間に戻れたということもあって、アラサーの良い大人の女性だが、他の日本版リサ・トレヴァー達は体を改造された歳で肉体の加齢が遅くなってしまっている。
 なのでJCからJDまでのローティーンからハイティーンまでの少女達があそこにはいた。
 体の成長が遅くなっているのは、そのエネルギーを肉体の成長ではなく、変化に使われているからだとされる。
 その為、リサも高校1年生なのだが、大食漢であるにも関わらず、体の大きさは中学生と大して変わらない。
 そんなことを寝惚けた頭でグルグル考えていると、パッと現在時刻が気になった。
 そういえば、枕元に置いたスマホのアラームが鳴った記憶が無い。
 私がそれを手に取り、画面の時計を見ると7時半になっていた。
 30分の寝坊!

 愛原:「あれ!?アラームセットするの忘れた?!」

 私は急いで飛び起きた。
 部屋の外からは、テレビの音が聞こえて来る。
 どうやらそれで起きたらしい。

 愛原:「高橋!」

 私が部屋の外に出ると、リビングには高橋だけでなく、リサもソファに座っていた。

 高橋:「あっ、先生。おはようございます」
 愛原:「何をやってるんだ?」
 高橋:「あっ、その……」

 高橋はテレビを指さした。

 リサ:「サイトーのマンションが大変なことになっちゃった」
 愛原:「大変なこと?」

 私が2人から聞いた説明によると、今朝方早く、斉藤絵恋さんのマンションで銃殺体が見つかったらしい。
 マンションの住人が何人も銃声を聞いている。
 そして、それがマンションの敷地内に転がっていたというのである。
 しかも、警察の調べでは、死体はマンションの屋上で射殺され、それが地面に落ちたものだということだった。

 高橋:「昨夜のテロリストじゃないっスかね?サツに取り囲まれたんで、やぶれかぶれで自殺したとか……」
 愛原:「テロ組織だろ?俺達の暗殺に失敗した責任を取らされて、別の殺し屋に殺されたって可能性もある」
 高橋:「おっ、そうっスね!さすが先生っス!」
 リサ:「でも、何でサイトーのマンション?」
 愛原:「そ、それは……」
 高橋:「それと、そのビアンガキですが……」

 高橋は斉藤絵恋さんのことを悪し様に言う。
 絵恋さんは先天的なのか後天的なのかは知らないが、LGBTのLだという。
 高橋だって結局LGBTのGだということが分かったが、Gから見てLは【お察しください】。
 LもLで、Gは【お察しください】。
 LGBTも一枚岩ではないということ。

 愛原:「絵恋さんがどうした?」
 高橋:「パールからのLINEで、どうも死体を間近に見ちゃったらしく、ションベン漏らして気絶したらしいです」
 愛原:「ええっ?!」
 高橋:「何でも死体が屋上から落ちて来る瞬間を見ちゃったらしいっス」
 愛原:「そりゃ災難だな!で、彼女は?」
 高橋:「病院に搬送されました。このコロナ禍、よく簡単に入院できたものっスよ。さすが金持ちは違いますね」
 愛原:「別にコロナに感染したわけじゃないんだから……」

 しかし、コロナ患者でなくても搬送困難に陥っているのが東京都だ。
 だから、医療崩壊が叫ばれているのである。

 リサ:「サイトーの病院、行きたい」
 愛原:「行きたいって言っても、今はコロナ禍で、病院によっては面会一切禁止って所もあるぞ?」
 高橋:「ですよね。空気読めや」
 リサ:「そんなこと言ったって!」
 愛原:「で、その絵恋さん、どこの病院に運ばれたんだ?病院によっては、『1人までならOK』という所もあるだろう」
 高橋:「あっ、そうっスね。パールに聞いてみます」
 愛原:「ああ、頼むよ。俺は顔を洗って来る」

 私は洗面所に行った。
 それからダイニングに行って、朝食に箸を付ける。

 高橋:「先生、あのガキの入院先が分かりました」
 愛原:「どこだ?」
 高橋:「三井記念病院です」
 愛原:「そこまで行ったのか。きっと、心療内科とか、そういう所だな?」
 高橋:「精神科らしいですね」
 愛原:「精神科。ま、まあ、死体を見たトラウマだから、そこか」
 リサ:「行く!」
 愛原:「行くっつったって、だから面会は禁止だって」
 高橋:「あいつんち金持ちでしょう?どうせ個室にでも入るでしょうから、それでもダメなんですか?」
 愛原:「ダメだろうな」
 リサ:「うぅ……サイトー……」
 愛原:「分かった分かった。ちょっと聞いてみるよ」

 泣きそうになっているリサを見て、私は肩を竦めた。

 高橋:「病院に面と向かって聞いても、ダメって言われるだけでしょう?」
 愛原:「誰が病院に聞くと言った?」
 高橋:「えっ?」
 愛原:「……あっ、もしもし。斉藤社長、おはようございます。こんな朝から申し訳ありません」
 高橋:「斉藤社長っスか!」
 斉藤秀樹:「ニュースを御覧になったのですね」
 愛原:「そうです。それと、メイドのパールさんから連絡があったと、うちの高橋から聞きまして……」
 秀樹:「娘は今、入院中です。惨殺死体を間近に見てしまったショックで今、意識が無い状態でして……」
 愛原:「大丈夫なんですか?」
 秀樹:「今は安静にしないといけないというのが主治医の見解です。まあ、そうでしょうね。無理やり起こすのも変ですから」
 愛原:「うちのリサが面会したいと言ってるんですが、無理ですよね?このコロナ禍で……」
 秀樹:「……ですね。いくら愛原さん達が特別な存在とはいえ、それを病院関係者に理解させるのは時間が掛かります」
 愛原:「ですよね」
 秀樹:「娘は未成年で、当然保護者である私に連絡が来ますから、私は特別に面会が許されました。まあ、入院の手続きや主治医の話を聞かないといけませんから」
 愛原:「ですよね」
 秀樹:「ただ、どうしてもというのであれば愛原さん、昼頃病院に来ませんか?」
 愛原:「えっ?」
 秀樹:「娘が意識を取り戻したら病院から連絡が来ることになってまして、再び主治医から今後の治療方針などを聴く必要があるので、また病院に行かないといけないんですよ。それでなくても、着の身着のまま病院に搬送されたわけですから、色々と入院に必要なものを揃えてやる必要があります」
 愛原:「なるほど」
 秀樹:「愛原さん達には院内で待機してもらって、私が父親として面会に行きます。その後で、その時の様子をお話ししますよ」
 愛原:「よろしいんですか?」
 秀樹:「リサさんには、うちの娘と1番に仲良くしてくれていますから」
 愛原:「ありがとうございます。お昼頃に行けばいいわけですか?」
 秀樹:「主治医の見解では、昼頃に意識が戻るだろうとのことですので……」
 愛原:「分かりました。では、そのタイミングで伺わせて頂きます」

 私は電話を切った。

 愛原:「直接的な面会は無理だが、代わりに斉藤社長が面会した時に、その様子を教えてくれるってさ」
 リサ:「おー!」
 高橋:「昼頃っスか。車、どうしましょう?」
 愛原:「電車で行けるからいいよ」
 高橋:「あ、そうっスか」
 リサ:「わたし、手紙書くー」
 高橋:「手紙……。思い出すなぁ……ネンショーや少刑では、面会以外は全部手紙……」
 愛原:「何を思い出してるのかな?」

 一応、後で善場主任と連絡を取って、それからまずは事務所に行くことにした。

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