報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰京の旅」

2023-08-14 20:24:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月7日12時00分 天候:晴 埼玉県羽生市弥勒 東北自動車道・羽生パーキングエリア]

 

 高速道路上で1回のトイレ休憩を取る。
 その後は、ずっと東北自動車道を南下した。
 冬休み最後の3連休ということもあり、下り線は行楽地に向かう車で混雑していたが、上り線は比較的空いていた。
 そしてお昼時になり、埼玉県に入ってすぐの所にある羽生パーキングエリアで昼食を取ることにした。

 リサ「何か、時代劇みたい!」
 愛原「確か、羽生パーキングエリアの上り線は“鬼平犯科帳”をイメージした造りになってるんだよ」
 善場「よく御存知ですね」
 リサ「鬼が出てくる物語?」
 愛原「いや、違うな。主人公が長谷川平蔵という人物で、『鬼の平蔵』と呼ばれたことから、『鬼平』となった……んじゃないかな」
 リサ「なーんだ」
 部下「ここでよろしいですか?」
 善場「いいわ」

 車が駐車スペースに止まる。

 善場「それじゃ、13時に出発しましょう。それまで、昼食を取ってきてください」
 愛原「分かりました」

 私達は車から降りた。
 善場主任達は車から降りなかったが、昼食はどうするのだろうか?

 リサ「提灯がある!」
 愛原「『羽生』か。リサ、写真撮ってやるよ」
 リサ「ほんと!?」
 愛原「そこに立ってくれ。はい、笑ってー」
 高橋「いや、鬼の笑いをするんじゃねぇよ。不気味だな」
 愛原「今度は高橋、俺がリサと写るから取ってくれ」
 高橋「分かりました」
 リサ「キャハッ!」

 私がリサの横に立つと、リサは今度は普通に笑って私に抱き着いた。

 高橋「くぉらっ!」
 愛原「オイオイ……」
 リサ「フン……!他の鬼に、『所有の証』なんて付けさせないからっ……!」
 愛原「な、なに!?」
 高橋「はい、先生。撮りましたよ。心霊写真付きで」
 愛原「オマエ、余計なことすんなよ」
 善場「私が皆さんを撮りますから、どうぞ並んで」
 愛原「あ、こりゃスイマセン」

 いつの間にか善場主任が降りてきて、私達の記念撮影をしてくれた。

 リサ「本当はあの兄妹の首無し死体を前に、ガッツポーズしてやって写真撮りたかった」
 善場「あの兄妹の死体は、研究サンプルとして押収です」

 因みに首を欲しがった栗原家と、何が何でもサンプルとして欲しいBSAAが揉めたらしい。
 尚、“青いアンブレラ”が漁夫の利を持って行ったそうな。

 愛原「善場主任も御一緒しますか?」
 善場「あいにくですが、連絡係としていないといけないので、あまり車から離れられないのです。お気になさらず、食べてきてください」

 主任はそう言って、『屋台連』の方に歩いていった。
 気軽にテイクアウトして、車の中で食べるつもりだろうか。
 仕方なく私達は、お言葉に甘えて別の店に行くことにした。

 愛原「何が食べたい?」
 高橋「先生に合わせます」
 リサ「肉!」
 愛原「そうなると、“五鉄”って所かな」
 リサ「何の肉?」
 愛原「鶏肉らしい」
 リサ「鶏肉かぁ……」
 愛原「親子丼とか、軍鶏鍋定食とかあるぞ」
 リサ「いいね!」
 愛原「冬には鍋だもんな」
 リサ「うん!」

 私達は『五鉄』に入った。
 本格的な食事処ではあるが、食券制になっている。

 愛原「今日は俺が奢ってやるよ」
 高橋「マジっスか!?ありがとうございます!」
 愛原「まあ、日光ではよく頑張ってくれたみたいだし。リサも」
 リサ「プラス、この『手羽先からあげ』もいい?」
 高橋「くぉらっ!」
 愛原「いいよいいよ」

 私は食券を買うと、ボックス席に向かい合って座った。

 愛原「リサ、さっきの、『所有の証』って何だ?」
 リサ「あれ?リエとかから聞いてない?」
 愛原「あー……聞いたことあるかもしれないが、忘れたな。何だっけ?」
 リサ「『獲物』に傷を付ければ付けるほど、鬼にとってはその人間は自分の物だって主張できるの。具体的にはキスマーク、噛み跡、引っ掻き傷、あと最後にオシッコかけてマーキング」
 愛原「犬かよw……あー、猫もやるか?」
 リサ「鬼だよ!」
 愛原「でも、それが何だってんだ?上野利恵と『1番』以外にはやられてないぞ?……あと、リサ。オマエな」

 リサに殆ど上書きされているようなものだ。

 リサ「あの女……サツキって言ったっけ?『オマエの先生、私が取ってやる』なんて言いやがったんだ。だから……!」
 愛原「その心配なら、もう無いだろう。もうこの世にいないんだから」
 リサ「そうなんだけど、まだ、わたしの上書きは終わってない!」
 愛原「分かった分かった」

 鬼というのは、本当に人間とは感覚が狂っていやがる。
 とにかく、暴走させない為には、適度に肉を食わせて、適度に酒(ここでは“鬼ころし”)を飲ませることだ。
 しばらくして、注文した料理ができた。
 1人鍋に鶏肉やキノコ、しらたきやネギが入った鍋だ。

 愛原「俺は玉子を溶いて、付けて食べるんだけど、あれだな……。溶いた後に鍋に掛けて食べるというやり方もあるみたいだな」
 高橋「俺は後者でしたね」
 リサ「私はどっちでも」
 愛原「まあ、そうなんだけどな。それじゃ、いただきまーす」
 リサ「いただきまーす」
 愛原「鍋は温かいうちが美味いからな」
 高橋「全くっス。腹ごしらえは、今のうちっスね」
 愛原「ん?どういうことだ?」
 高橋「ねーちゃん達の車に乗せられているってことは、デイライトの事務所に向かうってことでしょう?」
 愛原「主任、そう言ってたじゃないか。あれだろ?日光であったことを、詳しく教えてくれってことだろ?」
 高橋「現場検証なら、もうやったんスよ。先生が病院に運ばれてる間に」
 愛原「そうなのか。……オマエ達、それもやってくれたのか」
 高橋「一応そうです。栗原のじっちゃん達は、BSAAとケンカしてたし、高野のアネゴはスタコラ逃げて行ったし、あとは俺とリサでやるしか無かったんス」
 愛原「それは大変だったなぁ。後でまた御褒美やるからな」
 リサ「やった!」
 愛原「……で?」
 高橋「いや、ある程度の話は終わってるのに、まだ何かあるってことは、嫌な予感しかしないってことっス」
 愛原「まあ、しょうがないさ。これが新たな仕事に繋がるのなら、探偵としてありがたい限りだよ」
 高橋「また、ドンパチすることになったとしても、ですか?」
 愛原「高橋。俺達は、霧生市の件以降、もう普通の探偵の仕事はできなくなったんだよ。覚悟しとけ」
 高橋「さ、サーセン!」

 白井の真意に近づけるのなら、それでも構わない。
 私はそう思いながら、軍鶏肉を口に運んだ。

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