報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「戦いの終わり」

2023-08-14 16:05:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月6日22時00分 天候:晴 栃木県日光市清滝安良沢町 日光市民病院]

 愛原「……はっ!……ん?」

 目が覚めた時、私は自分がどこにいるのか分からなかった。
 ただ、少なくとも病院のような場所にいることだけは分かった。

 看護師「あっ、愛原さん?意識が戻られたんですね?すぐ、先生を呼んで来ます」
 愛原「あ、ああ……」

 頭に違和感を覚えた私は、頭に手をやった。
 頭にはネットが被せられ、その下には湿布というか、絆創膏のようなものが貼られていた。
 車が衝突した時、頭を打ってしまったらしい。
 しばらくして、当直医と思わしき男性医師が入って来た。
 そこで私は、やはり車の衝突事故で頭をケガしたことを知らされた。
 シートベルトは、先にしておくべきであった。
 3針縫うケガであったが、脳内出血は無かったという。
 頭のケガというのは、むしろ血が出た方が、脳に血液が溜まる心配が少なくなるのだという。

 医師「脳波にも異常はありませんし、明日には退院できるでしょう」

 とのことだった。

 医師「気になったのは、この時間まで意識不明であったことですが、Tウィルスに抗体のある人の特徴なんですね」
 愛原「そうなんですか?」
 医師「元・霧生市民の方のデータで、そのような研究結果が出ています。あと、傷の治りも早い。アンブレラも、ウィルス研究をもっと違う形で進めていれば、多くの人を救える正義の企業になれたでしょうに……」

 当直医は残念そうに言った。
 アンブレラの創業者、オズウェル・E・スペンサーはそんな正義感は持ち合わせていなかったと聞く。
 私利私欲の為というよりかは、違った方向の平和主義か。
 極左が掲げる世界平和に近いかもしれない。

 愛原「そうですか。まあ、これでも、あの地獄のような霧生市から生還しましたからね。それより、私の関係者はこの病院にいますか?」
 医師「いえ、市内に宿泊するとのことです。明日、また関係者が来ることになっています。今夜は安静にしていてください」
 愛原「分かりました」

 私が寝ていたのは、救急処置室だった。
 すぐにでも容体が急変した時に対応する為、病室には移さなかったのかもしれない。
 で、この後で、普通の病室に移った。
 当然とっくに消灯時間ということもあり、他の患者を起こさないようにする為、個室に入ることになった。
 まあ、どうせ明日には退院だ。
 こういう時、Tウィルスの抗体を持ってて良かった。
 というか……多分、リサにこっそりGウィルスとかも仕込まれてたりしてな。
 まあ、そんなことないか。
 もしそうなら、とっくにBSAAによる抗体検査に引っ掛かってる。
 とはいえ、リサにキスされたり、血液を吸われたりしているからなぁ……。
 それにしても、私が意識を失っている間、鬼の兄妹達はどうなったのだろう?
 それだけが気になった。

[1月7日06時00分 天候:晴 同病院・病室]

 看護師「おはようございます」

 どうやら、考えている間に眠ってしまったらしい。
 で、また看護師に起こされた。

 看護師「検温の時間です」
 愛原「はい」

 しかし、一体何があったんだろうなぁ……。
 私の体温は平熱。
 まあ、こんなものだろう。
 そういえば、室内にはテレビがある。
 これで、ニュースとか見られないだろうか?
 いや、それよりも……。

 愛原「私の私物は、どこにあるのでしょう?」
 看護師「そこのロッカーに入っています」
 愛原「そう、ですか……」

 看護師が退室した後で、私はロッカーの中を確認した。
 中には事故当時に着ていた服が入っていた。
 しかし、ポケットに入れていた財布とかは無事だったものの、肝心のスマホが入っていなかった。
 どうやら事故の時、車の中に落としてしまったらしい。
 参ったな……。
 これでは、外に連絡することはできない。
 今日で退院ということは、午前中だろう。
 幸い、現金などは入っているから、これで最悪、公衆電話から掛ければ良いだろう。
 こういう病院なら、数は少ないながらも、公衆電話くらいあるだろうからな。
 それと……退院のタイミングで、関係者が来てくれるとのことだった。
 それが誰かは不明だが、迎えに来てくれるということだろう。

[同日10時00分 天候:晴 同病院]

 抜糸した後、私は予定通り退院した。
 まだ傷跡は残るものの、たった1日で針が取れたことに、医師も驚愕していた。
 せいぜい今は、頭を保護する湿布……いや、絆創膏か?それを貼っているくらい。
 ネットは特に被ることはなかった。

 善場「お疲れ様です。愛原所長」

 やはりというか、予想通り、善場主任が迎えに来てくれた。

 善場「退院の手続きは済ませましたので、車に乗ってください」
 愛原「あ、ありがとうございます」

 病院の外に出て、駐車場に向かう。
 見覚えのある黒塗りのミニバンに近づくと、そこから高橋とリサが降りて来た。

 高橋「先生!よく御無事で!」
 リサ「先生、良かったーっ!」
 愛原「あ、ああ。心配掛けて悪かった」
 善場「急いで帰京しましょう。話は、車内で」
 愛原「あ、はい」

 私は助手席後ろのドアから、車内に乗り込んだ。
 運転席には、黒スーツの主任の部下がいた。
 主任は助手席に乗り込むと……。

 主任「それでは、事務所まで」
 部下「はっ」

 部下に命じて車を出させた。

 善場「今度は、ちゃんとシートベルトを締めてくださいね?」
 愛原「あ、はい。あの……あれから、どうなったのでしょう?」
 善場「あいにくながら、私も途中参加でしたので。私共が駆け付ける前のことでしたら、そちらの2人に聞いてください」
 愛原「あの、鬼の兄妹はどうなった?」
 高橋「地獄に叩き落としてやりましたよ!」
 愛原「マジで!?」
 リサ「正確には、トドメを刺したのは鬼狩り隊の人達でしょ」
 愛原「鬼狩り!?栗原さん達がここに来たの!?」
 高橋「あの爺さん、黒幕っスか?俺達があの民泊を調査すれば、鬼の兄妹達もそこに行くと見越してたらしいっスよ」
 愛原「! そういうことか……」

 要は、私達は囮だったということか。

 高橋「後で報酬はたんまり払ってくれるそうですがね。因みに、先生の治療費もあの爺さん持ちです」
 愛原「えっ、そうなの!?」
 善場「ですので、退院手続きは、私にとっては至極簡単なものでした」
 高橋「あと先生、これを」
 愛原「ん?」
 高橋「先生のスマホっス。フル充電しておきましたんで」
 愛原「あ、ああ、ありがとう。それじゃあ、鬼の兄妹はもうこの世にいないということだな?」
 高橋「そういうことです」
 愛原「それは良かった」
 善場「愛原所長方の御活躍、恐れ入ります」
 愛原「いや、私は大したことはしていませんよ」

 車の事故で、のんきに気絶していただけに過ぎない。

 善場「現場検証の結果、民泊の秘密地下施設においては、所長の的確な判断があったとのことです。そういうことも大事ですよ」
 愛原「はあ……ありがとうございます」

 車は日光インターから、日光宇都宮道路へと入った。
 取りあえず私達は、これから東京に戻る。

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