報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「藤野での一夜」

2023-06-03 11:50:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月25日18時30分 天候:曇 神奈川県相模原市緑区小渕 焼肉のいちばん]

 藤野駅を出た私達は、駅前の通りを甲州街道に向かって進んだ。
 国道20号線という幹線道路だが、都内の同じ道路かと思うほど、その道路状態は貧弱である。
 もちろん舗装されているのだが、オレンジ色のセンターラインが引かれているだけの片側1車線しかなく、その1車線の幅が狭い。
 大型車同士がすれ違おうとする際は、減速または徐行しないといけないだろう。
 それくらい狭い。
 もちろん国道だから、大型トラックはバンバン通る。
 そこに面した焼肉屋に入り、そこで夕食にする。
 テーブル席に案内され、早速注文。
 さすがにビールは飲むことができないので、私もウーロン茶にしておく。
 どうして、この店なのかというと……。
 実は、ジャンルに拘りがあってのこと。
 焼肉店で斉藤早苗の動向を観察し、おかしなことがあったら、すぐに善場主任に報告するように言われていた。

 リサ「食べ放題は無いのか……」
 愛原「チェーン店じゃないからな」
 絵恋「こういうお店に来たら、チョレギサラダでしょう」

 リサみたいな人食い鬼型BOWは、肉なら何でも良い派である。
 つまり、安い肉でもバンバン食べてしまうのだ。
 御嬢様の絵恋さんの方は、そんなに食べないとはいえ、やはり高い肉(上カルビとか、上ロースとか)を注文したがるのだった。
 まあ、ここの食事に関しては、デイライトさんが出してくれるからなぁ……。
 というか、明日以降の食事代もなんだけど。

 店員「お待たせしましたー」
 リサ「おー!」

 それにしても、あれだけLサイズのピザがっつり食っていた癖に、今は肉をガッツリ食おうとしているわけだからな……。

 愛原「リサ、何度も言うが、肉はちゃんと焼いて食えよ」
 リサ「いただきまーす!」
 愛原「だから、生で食うなっつの。また、人間に戻れなくなるぞ」
 絵恋「お肉を生で食べるリサさんも、ワイルドで素敵ですぅ~
 愛原「ワイルドじゃなくて、鬼だっての」
 早苗「そうですよ」
 愛原「……!」

 これは……変な所と言っていいのだろうか?
 早苗のヤツ、確かに肉を火に通した。
 だが、文字通り、火に通しただけだ。
 ロースターの上で炙っただけ。
 ステーキの焼き方で言えば、『ブルーレア』(レアよりも更に生っぽい焼き方)の状態で食べた。
 リサが『ブルー』(完全に生)の状態で食べようとするのを阻止している間、早苗はそういう食べ方をしていたのだ。

 早苗「どうしました、先生?」
 愛原「さ、早苗さん、もう少し焼いてから食べた方がいいんじゃないかなぁ……と」
 早苗「血が滴るくらいがちょうどいいんです」
 リサ「だよね!サナエ、冴えてる~!」
 早苗「どうも」
 愛原「いや、キミ達ねぇ……」

 う、うん。
 一応、善場主任には報告しておこう。
 リサが好きな食べ方ってのは、だいたい人外だから。

 早苗「火で少し炙ると、中に閉じ込められて固まっていた血が滴り落ちるんですね。それがまた美味しいんです」
 リサ「なるほど。それは気づかなかった。わたしは中に閉じ込められている血ごと食べるものだと思っていた」
 早苗「それもいいんですけど、愛原先生がダメって仰るので」
 リサ「うむ。先生の命令は絶対」
 愛原「いや、キミ達ねぇ……」

 やはり早苗は、BOWか?
 私は善場主任にLINEを送った。

 善場「かしこまりました。引き続き、動向監視をお願いします。また変な所を見つけましたら、報告をお願いします」

 との返信だった。

[同日19時45分 天候:曇 同店→藤野交通]

 食事が終わり、私達は退店した。
 基本的に立替払いなので、ここでの支払いは私のカードを使う。
 領収証を取っておき、後でデイライトさんに請求するといった形だ。
 で、カードのポイントは私のものw
 尚、肉の食べ方以外に2人に変な所は見つからなかった。

 リサ「あー、美味しかった!ごちそうさま!」
 愛原「そりゃあ、良かった」
 絵恋「ここから、どうやって行くんですか?」
 愛原「近所にタクシー会社がある。そこでタクシーを予約しているから、そこからタクシーで向かうよ」
 絵恋「分かりました」

 タクシー会社は徒歩数分なのであるが、先述したように、上級国道の割には道幅が狭い。
 歩道もろくに無かったりするから、車、特に大型車が来た時はスリリングだ。
 通学路にもなっているだろうに、平場の少ない地域は大変だ。
 本来なら、もっと離れた所に高規格バイパスでも作って、この道路は県道に格下げというのが現代の感覚なのではないかな。

 愛原「ここだよ」

 タクシー会社に到着する。
 プレハブの平屋建てだが、事務所内には照明が点灯している。
 私が中に入って、予約している旨を伝えると、すぐに運転手が出て来て、車庫に止まっているタクシーを出して来た。
 車種は都内でも普通に走っているトールワゴンタイプ。
 ハッチを開けてもらい、そこに荷物を乗せる。
 そして少女3人には後ろに乗ってもらい、私は助手席に乗った。
 行先を告げると運転手は意外そうな顔をしたが、すぐに頷いて、車をまずは甲州街道に出してくれた。
 まあ、こんな時期のこんな時間に、国家公務員特別研修センターに行く酔狂な客などいないに決まっているだろう。
 実際にはここにいるのだが。

[同日20時00分 天候:曇 同市同区内某所 国家公務員特別研修センター]

 正面入り口の門は、鉄扉が堅く閉ざされており、車は許可車両でしか入ることができない。
 その為、私達はその正門前でタクシーを降りることになる。
 ここも一応、カードで支払った。
 もちろん、領収証は取っておく。

 リサ「サナエはここに来るの、初めてでしょ?」
 早苗「もちろんです」
 絵恋「わ、私は何回目でしょう……?」

 タクシーから荷物を降ろしながら、少女達は話す。
 料金の支払いが終わった私もタクシーから降りて、自分の荷物を降ろした。

 愛原「忘れ物は無いな?それじゃ、行こう」

 私は先に立って、正門横の通用口のインターホンを押した。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「クリ... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「藤野... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事