報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「クリスマスの藤野行」 2

2023-06-02 20:19:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月25日17時58分 天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅→中央本線1651M列車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。4番線に停車中の列車は、17時58分発、普通、大月行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、相模湖に、停車致します〕

 私達を乗せた中央特快電車は、ダイヤ通りに高尾駅に到着した。
 ここで乗務員交替が行われる関係で、3分ほど停車する。
 『中央快速線』と呼ばれる区間は、ここで終了。
 ここから先は、『中央本線』となる。
 中央快速線内では、『電車』であった中央特快も、高尾以西は『列車』となる。
 また、中央特快の種別も、普通列車となる。
 車両そのものが変わるわけではなく、運転取扱規則が変わるのだが、乗客達には関係の無い話だろう。

〔この列車は、中央本線、普通、大月行きです〕
〔「お待たせ致しました。中央本線、普通列車、大月行き、まもなく発車致します」〕

 発車の時間になり、ホームから発車メロディが聞こえてくる。
 高尾駅まで賑わっていた電車も、今は座席に半分くらいの乗客しか乗っていない。
 6両編成3ドアの電車が走行するような区間なので、10両編成だと空くのかもしれない。

〔4番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 車両のドアが閉まり、列車はゆっくりと動き出した。
 都心から離れたせいか、少し寒く感じる。
 暖房は入っており、座席の下からジンジンと熱が来るのが分かる。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は、中央本線、普通、大月行きです。次は、相模湖です。……〕

 高尾駅まではちょっとした郊外の町といった感じの車窓が広がるが、高尾駅を過ぎると、様相は一変する。
 一気に山間のローカル線といった感じになり、トンネルが断続的に続く。
 その為、電車がよく電子警笛を鳴らす。
 リサはパーカーのフードを被っているが、少しウトウトと居眠りをしている。
 しかし目を開けると、誰も座っていない向かい側の座席の窓ガラスに、変化している目が映ってしまう。
 白目が赤黒く濁り、黒目が銀白色に変わる。
 私は『鬼の目』と呼んでいるが……。
 もうすっかり夜の帳が下りているのと、トンネルの中ということもあり、窓ガラスに私達の姿が映る。

 愛原「リサ、変化してる」
 リサ「おっと……」

 基本的に『魔王軍』は、リサの正体を知っているので、ここでは今更だ。
 だが、他の乗客達に見られるわけにはいかない。

 愛原「ん!?」
 リサ「!?」

 だがもう1つ、窓ガラスには人外の目が映っていた。
 それに気づいたのは、私とリサだった。
 窓ガラスに映る、赤色の瞳……。

 愛原「早苗さん?」
 リサ「サナエ!」
 早苗「はい?」

 私達が声を掛けると、早苗はこちらを向いた。
 しかし、その時には元の目に戻っている。

 早苗「何ですか?」
 愛原「い、いや、何でもない……」

 だが、リサは収めようとしない。

 リサ「サナエの目、赤くなってたよ?」
 早苗「長い検査だったもので、少し疲れてるんです。向こうに着いたら、早めに休みたいですね」
 愛原「そ、そうだな」
 リサ「その前に夕ご飯。先生、向こうの食堂で出るの?」
 愛原「いや、残念ながら、食事は明日の朝からだそうだ」
 リサ「じゃあ……」
 愛原「駅前の焼肉屋で食べてから行くことになっているんだ」
 リサ「! おー!食べ放題!」
 早苗「いいんですか?!」
 愛原「残念ながら、個人の店ということもあって、食べ放題ではないんだ。でも、沢山食べていいってさ。善場主任が」
 絵恋「善場さんが、リサさんに気を使ってくれたのかしら?」
 リサ「そうかも。今回に限っては、エレンとサナエに巻き込まれたようなものだから」
 絵恋「ご、ゴメンナサイ!」
 サナエ「それはどうも、申し訳ないです」
 愛原「リサ、その言い方、内容は正しいけど、酷いよ」

 早苗の赤い瞳については、気のせいということになった。

[同日18時12分 天候:曇 神奈川県相模原市緑区小渕 JR藤野駅]

〔まもなく藤野、藤野。お出口は、右側です〕
〔「電車のドアは自動で開きます。ドア付近にお立ちのお客様、開くドアにご注意ください」〕

 高尾以西は半自動ドアとなる。
 高尾以東では用途不明の半自動ドアボタンは、高尾以西で使用するのである。
 ところが今は、コロナ禍の最中。
 車内保温を目的とした半自動ドアは、言い換えれば、換気が悪い状態を保つということでもある。
 その為、しばらくは半自動ドアを休止し、普通の自動ドアでの運用にするとのことだった。
 こういう通勤電車では、それが当たり前のように感じてしまうのだが……。
 電車はトンネルを抜けると、1面2線の島式ホームに滑り込んだ。
 平地の少ない旧・藤野町域は、その中心部である藤野駅とて例外ではない。
 ホームが狭い為、上り線と下り線を互い違いにしているのである。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野原に、停車致します〕

 下車駅に到着して、電車を降りる。
 東京都外に出たからか、或いは山間だからか、いつもより寒く感じた。
 寒風が私達を歓迎してくれる。
 もしも雪が降っていたら、吹雪になっていただろう。
 さすがにまだ、この辺りでも雪は積もっていなかった。

 愛原「うー……さすがに夜は寒い。早く、店に行こう」
 リサ「おー!」

〔1番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 電車は汎用の発車メロディを流した後、すぐにドアを閉めて発車していった。
 中央快速線より列車本数は減るとはいえ、普通列車以外にも特急は走っているし、貨物列車も走っているから、けして寂しい他方ローカル線というわけではない。
 階段を上り下りして、改札口に向かう。

 リサ「ねえ、先生。トイレ行っていい?」
 愛原「そうだな。電車の中にはトイレは無かったし。改札の外にトイレがあるから、そこに行こう」
 リサ「分かった」

 改札口を出て、右方向にあるトイレに向かう。

 リサ「それじゃ、ここのベンチで待ち合わせ」
 愛原「ああ、分かった」

 1度私達は、トイレ休憩を挟むことにした。

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