報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

どこまで続くの~♪この線路~♪

2013-07-09 19:35:21 | 日記
 “新人魔王の奮闘記”より。まだまだ【以下略】

[翌08:00.闇の森“中央の村・囚人の洞窟” 横田高明]

 先般の党大会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります。しかし!今私は理不尽にも囚人扱いされ、村外れの洞窟に監禁されているのです!その際、外で監視している看守役のエルフ男が言いました。
「シルカが目を覚ますまで、ここで暮らしてもらう。もし死んだりしたら……死刑だ」
 シルカだけに、そんなこと知るか!であります!……おっと、いけません。人間界で崇拝する、コードネーム“ケンショー・イエロー”のお家芸が出てしまいました。何とも恐れ多いことです。
 とにかく、村の女の子に好意でキャンディーをあげただけで無期禁固、もしくは死刑とは余りにも酷すぎます!このような蛮族行為、けして許されるものではありません。共和党のメンバーは薄情にも、私を生贄にするようですし……。
 ここは一刻も早く、この森から脱出しなくてはなりません。でもどうやって?グフフフ……案ずるなかれ、私にも秘密兵器があるのです。幸いにもあいつらは私を監禁するに当たり、所持品検査はしませんでした。所詮、そこは蛮族ですねー。
 これです!とくとご覧あれ!……え?挿絵が無いと分からないって?しょうがないですねー。これは以前、人間界で“ケンショーレンジャー”という別の顔で仕事をしていた時、手に入れたものです。仲間の“ブルー”からもらったものですが、アイドルの生パンティですよ。ええ、見た目はね。人間界では使用済みパンティ止まりですが、ここは剣と魔法のファンタジーの世界です。魔術師が目を剥くほどの強力な魔力が秘められているのですよ、クフフフフ……。
 では早速、使用しましょう!!

[08:15.闇の森“中央の村・村長公邸” 安倍春明]

 取りあえず容疑者が捕まったことで、私達は解放されることになった。その前に村長公邸に入る。この村では村長を務める者には、一際大きい家が与えられ、そこに住むらしい。だからかつて、サイラスもこの家に住んでいた。
「本当に御迷惑をお掛けしてしまい、真に申し訳ない」
 私は村長に陳謝した。シルカはまだ昏睡状態から目を覚ましていないらしい。
「一刻も早く王宮に戻って、名医を連れてきます」
 するとレニフィールは迷惑そうな顔をした。
「名医といっても、人間の医者ではどうしようもないですよ」
「いや、彼女は人間の食べ物を口にして倒れたわけですから……」
「とにかく、あとは村の者だけで何とかしますから、皆さんはお引き取りください」
「名案が出ましたら、すぐにまたお伺い致します」
 私は何度も頭を下げた。そして、皆に退出を促したその時、
「た、大変です!!」
 武装したエルフの男性が1人、家に飛び込んできた。
「しゅ、囚人が脱走したっ!!」
「ええーっ!?」
 サイラスが数十年ぶりだという苦悩の表情を浮かべ、右のこめかみに指を当てながら、左手で私の肩をポンと叩いた。
「アベさん、申し訳ないが、もう少し村に滞在してもらおう」
「マジっすか!?」
「横田の大バカ野郎!」
「とっとと死刑になりやがれい!!」
 皆、ひどい言いようだが、この時ばかりは私も一言言いたくなった。
「クソ野郎」
 と。

[08:30.闇の森“南の村” 横田高明]

 先般の【以下略】。おおっ、速い速い!実はこのパンティ、この世界で使用すると、足がとてつもなく速くなるのです。しかも、疲れなど知ることはありません。すばしっこいエルフ達が息を切らせるほどの速さであります!正に、功徳ですね~。南隣の村の住民達が呆気に取られています。
「中央の者だ!南の皆!あ、あの人間を……つ、捕まえてくれ!」
「待ちやがれーっ!」
 グフフフフ……。人間をナメてもらっては困ります。私はこう見えましても、人間界では……おっと!これ以上は秘密です。このまま森を脱出してしまえば、こっちのものです。ええ。デビル・ピーターズ・バーグの町には魔族の衛兵も詰めていますからね。共和党理事の権限で、彼らを自由に動かすことができます。グフフフフ……。

[09:00.魔界高速電鉄 魔の森線“魔の森駅” 赤い鎧の女剣士]

 線路の状態が悪いのか、それとも旅客輸送に向かない荷物電車だからなのか、ひどく揺れる電車に便乗し、私はここまで乗ってきた。もともと乗り物は好きではない私は、軽い乗り物酔いを覚えながら、電車が止まるのを待った。
「はい、着きましたよ、お客さん」
 運転室から年配の運転士が声を掛けた。
「ああ。ありがとう」
「本当に大丈夫なの?あの森に入ったら、たちまち行方不明になるって話だよ?」
「でも、何日も前にその森に人間の一団が入って行ったんでしょう?」
「らしいね。でも、それはエルフのガイド付きだっていうからねぇ……。ガイドも無しに……」
「大丈夫だって」
「でもチョーさん、その視察団の人達だって、予定日になっても戻ってこないってんで、大騒ぎらしいですよ?」
 後ろの運転室に乗っていた若い車掌がそう言ってきた。
「余計なこと言うんじゃない」
 チョーさんと呼ばれた年配の運転士は、若い車掌をたしなめた。多分、私より年下だろう。魔界高速電鉄の職員の中にはたまに、人間界で死んで“地獄送り”にされた者が含まれていると聞いたことがある。この2人はどうなのか分からないし、興味もない。
「とにかく、気をつけなさいよ」
「分かったわ。ありがとう」
 私は2人の乗務員に礼を言うと、何も無いホームをあとにし、威圧感たっぷりの森に近づいていった。
 かつてのパーティのリーダー、ハルこと、安倍春明が視察団を結成してこの森の中に入っていったという情報を得たのが、数日前。そして、その視察団がいっこうに戻ってこないことで大騒ぎになっているのを知ったのが昨日のことだ。
 ハルはエルフに身辺警備をさせているとのことだが、諸刃の剣だ。信頼関係が成立しているうちは、どんな暗殺者からも守ってくれる頼もしい護衛だろう。だがそれだけに、その関係が瓦解すると、一気に暗殺者に変わることを知らないでもあるまいに。
 私は森へと急いだ。かつての仲間に会うために。森の中で起きている事態を知らずに……。

[09:30.“闇の森南部” 赤い鎧の女剣士]

 駅から続く小道を辿ると、森の中にも獣道が続いている。この森に住むエルフ達は他の町や村とは違う強大な自治権をもらう代わりに、王国へ税を払うこととなった。その税を納める為に、自然と駅へと続く小道ができたのだろう。
 その時、私は気配を感じた。エルフでも人間でもない。これは魔族の気配。それも、邪気のある……。
「クフフフフ……」
「そこかっ!」
 私は一気にレイピアを抜くと、邪気を持つ魔族に向かって突き刺した。
「まさかまた人間が現れるとは、とんだ大誤算でしたよ……」
 その魔族は人間の姿をしていた。50代くらいの中年の男で、眼鏡を掛けている。いかにもエロそうな目つきをしているねぇ。確か、この魔族は人間の……。
「ブボッ!」
 魔族は私にレイピアを突き刺されたことで、血反吐を吐き、その場に倒れた。確かこいつは幻魔獣とかいう、下級のモンスターだ。何故こいつがここにいるのだろう?そして、どんな人間の姿形をマネたのだろう?
「森の奥で、何かが起きている……?」
 私は先を急ぐことにした。いくら迷いの森といったって、少なくとも小道を辿ればエルフの村に着くことはできる。ただの人間なら侵入者扱いされて拘束されるのだろうが、ハルの名前を出せば、違う反応をしてくれるはずだ。

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