報恩坊の怪しい偽作家!

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“新アンドロイドマスター” 「ボーカロイドの取り扱い」

2015-03-07 02:23:30 | アンドロイドマスターシリーズ
[3月11日14:46.東京都江東区菊川 敷島エージェンシー 敷島孝夫&一海]

〔「黙祷!」〕

 今年も震災の日がやってきた。
 震災当時、仙台市内を活動拠点にしていたボカロ達も、この日は黙祷を捧げた。

〔「……黙祷、終わります」〕

 拠点を東京に移してからは、テレビ中継で黙祷をささげることになった敷島達。
「あれから4年経ったんだなぁ……」
 敷島が呟くように言うと、
「社長は震災当時、どこにいらしたのですか?」
 と、一海が聞いてきた。
「東京だよ。あの時はまだ大日本電機にいたからさ。あの時は、まさかここで社長やるとは思わなかったよ」
 その年の4月、敷島は南里研究所へ出向を命じられることになる。
「向こうの研究所は停電だった時は、発電機を稼動させて何とか凌いだそうだ」
「そうだったんですか」
「それに備え、うちも非常用備蓄として発電機を置いてある」
「私達、多くの電気を頂きますから……」
 と、そこへ、
「社長、ライブハウス行ってきます」
 巡音ルカが通り掛かった。
「ああ。行ってこい」
 仙台のライブハウスで、早くから定期的な仕事があったルカ。
 今ではそのライブハウスを運営していた東京本部が、拠点を東京に移したルカに東京側のライブハウスを提供している。
 そこでも客入りは大盛況だそうだ。
「ルカさん、まだ感情レイヤーが本調子ではないようです」
「この前の定期点検では異状が無かったんだが……」
「今日みたいな日はバラードやヒーリングでもいいんですが、普段の日は『もっとアップテンポな歌を』という声が多少あります」
あの時のメモリーを消去するなんて暴挙には出たくないんだよなぁ……」
 敷島は頭をかいた。
「新しいプロデューサーさん、いつからここへ?」
「彼の大学の卒業式が20日で、その後、週末挟むわけだから、事前研修を23日から始めたいとは伝えた。何とか興味を持ってくれたのか、資料を片手に勉強してくれているみたいだね」
「……ボカロの皆さん、受け入れてくれるといいんですけどね」
「だからまぁ……その……あの忌まわしい記憶の無い新人3人のプロデュースでもって、あまり彼女らと接しないようにしてみるさ。幸い、ミク達はもう俺がいなくたって大丈夫なくらいなんだからな」
「そんなことないですよ。社長がいるからこそ、みんな東京までついてきたんだと思いますよ」
「そうかな?……だといいけど……」

[同日15:00.同場所 敷島孝夫、Lily、未夢]

 敷島はその後、奥の休憩スペースに向かった。
「あっ、社長。お疲れ様です」
 未夢がにっこり笑った。
「おう、お疲れ。悪いな。調整や待機ばっかで……」
「いえ……」
「新しいプロデューサーが来るまで、待っていてくれ。Lliyにあっては、何とか今週末のイベントから仕事が再開できそうだ」
「本当ですか?」
 無表情のLilyが敷島の言葉に、やっと笑顔になった。
「Lliyの場合は劇場にいたこともあって、少しは知られてるからな。後で、仕事内容を入力しておく」
「はい。よろしくお願いします」
「あの、社長。それで、もう1人のメンバーはまだなんですか?」
 未夢が聞いてきた。
「ああ。もう日本に到着してるんだけども、どうもうちのアリスが多忙でね。リンとレンの修理が思いの外、手間が掛かって大変らしい。ボカロの取り扱いができるの、アリスしかいないし……。仙台にいた頃は、平賀先生にもやって頂いていたんだけど……」
 その平賀も、首都圏に来る機会がある時は、なるべく顔を出すようにしてくれている。
 もっとも、平賀もまた『若き天才学者』として東京の大学に呼ばれることも多く、その機会は実際に多い。
「いざとなりゃ、今度平賀先生が来た時にでも起動してもらうさ」
「はい」
 しかし、リンとレンの身に何が起きたのかまでは、ここにいる新顔達には教えられることは無かった。

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