報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「戦いの後」

2020-09-07 19:43:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日22:00.天候:晴 宮城県遠田郡美里町 国道108号線上→愛原公一の家]

 戦いを終えた愛原達は、取りあえず愛原公一の家に戻ることにした。
 公一のプリウスはブレーキとアクセルを踏み間違えて吉田家に突入した際、西日を浴びた吉田美亜の自然発火により、家が全焼した為、それに巻き込まれてしまった。
 帰りの足は高橋が乗って来た軽トラがあったが、それは2人しか乗れない。
 しょうがないので愛原学と公一はその軽トラに乗り、高橋とリサは善場達が乗って来た車で向かうことにした。
 道をよく知っている公一運転の軽トラの後ろに続くリサ達。
 軽トラはマニュアル車なので、さすがの公一も、今度こそはブレーキとアクセルを踏み間違えることはないだろう。
 善場達の車は公安SPが乗るような黒塗りゼロ・クラウンの覆面パトカーである。
 今度は出動しているわけではないので、赤色灯は収納し、サイレンも鳴らしていない。
 運転は善場の部下が行い、善場は助手席に座っている。

 高橋:「ガチの覆面パトカーじゃん。落ち着かねぇなぁ……」
 善場:「よほどのことが無い限り、覆面パトカーで連行されることはないと思いますが?」
 高橋:「よほどのことをヤっちまったんスよねぇ……」
 善場:「ま、それは今は聞かないことにしましょう。それよりリサさん、あなたは本当に強いんですね」
 リサ:「強い。せっかく強いんだから、これで愛原先生と高橋兄ちゃんを守る」
 高橋:「まさか、化け物に守ってもらえるなんてよ……」

 高橋は泣きそうな、しかし嬉しそうな、そんな複雑な表情を浮かべていた。

 善場:「さっきからどうしたんですか?リサ・トレヴァーは上級BOWです。本来、何の訓練も受けていない人間が勝てる相手ではありません。あのBOWに負けたことを悔やんでいるのであれば、それは気にすることはないと思います」
 高橋:「いや、まあ、確かにアンタの言う通りなんだけどよ。せめて、一発ぐらい当てたかったなぁと……」
 善場:「アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーは、普段は愚鈍な動きをしていたそうですが、いざ戦闘となったら素早い動きをして特殊部隊を翻弄したそうです。分かりますか?ここにいる完全版より脆弱なオリジナル版とはいえ、専門的な訓練を受けた特殊部隊でさえ翻弄する相手なんです。一発も当たらなくて当然ですよ」
 高橋:「ちっ、キビしい姉ちゃんだぜ……。リサ、俺の銃弾、交わせるのか?」
 リサ:「……うん。ゴメンね。実はそうなの」

 リサが高橋のマグナムを怖がらないのは、何も被弾したって致命傷にならないからというのもあるが、そもそも簡単にヒョイと交わせる自信があるからである。
 例え至近距離から撃たれたとしても、だ。

 高橋:「先生の仰る通りだったか。くそっ……」
 善場:「それに気づいただけでも、素晴らしいことです。愛原所長の下で鍛練を積めば、きっと強くなりますよ」
 高橋:「へいへい。気休め、あざっす!」
 善場:(それにしても……)

 善場はリアシートに座るリサをチラ見した。

 善場:(いくら完全版だからと言っても、さすがに強過ぎる。本当にこのリサ・トレヴァーは、1人も食人していないのだろうか……?)

 こうしてリサ達は愛原公一の家に到着した。

 善場:「こちらですか。確かに、晴耕雨読の生活をなさるには打ってつけの立地条件ですね」
 高橋:「……だな。送ってくれて、あざっス」
 リサ:「ありがとうございます」
 善場:「リサちゃん」
 リサ:「はい?」
 善場:「もしも過去に人間を襲って食べた記憶が戻ったら、すぐに教えてね。自首してくれるなら、情状酌量の余地はあるから」
 リサ:「私、本当に人間の血とか肉とか食べてないです。そりゃ、たまに食べたくなるけど……」
 善場:「だから、それを思い出したらね。今は忘れてるだけかもしれないでしょ?」
 リサ:「むー……」
 愛原学:「善場さん、今日はありがとうございました」
 善場:「いえ、こちらこそ。高橋助手が間違ってくれたおかげで、こちらもBOWを退治することができました。御協力、感謝致します」
 高橋:「くそっ、まさか間違いだったとは……」

 高橋が愛原達の行き先だと思って手に入れた住所は、実は吉田律子の家ではなかった。
 同じ名字の、他人の家だったのである。
 確かに愛原公一の知人宅ではあったが、ただ単に公一の発明品の譲渡先の1つというだけであって、実は違った。
 愛原達は本当に吉田律子の実家に行って話を聞きに行ったものの、高橋が違う家に行っていることを知り、高橋のスマホのGPSで場所を特定して追ったというわけである。

 愛原学:「おかげで大活躍だったじゃないか」
 高橋:「俺は行き先をミスっただけで、何もしてないッスよ」
 愛原学:「それじゃ善場主任、また明日」
 善場:「ええ。明日、10時頃にお伺いします」
 愛原公一:「何でしたら、うちにお泊り頂いてもよろしいですぞ?」
 善場:「お気遣いありがとうございます。ですが、もう既に宿泊先のホテルは確保してありますので……」

 善場はそう言うと、再び車に乗り込んで去って行った。

 愛原公一:「どれどれ、家の中に入ろう。暑いし、疲れたべ?風呂を沸かすから、適当に寛いでてくれ」
 愛原学:「ありがとうございます」

 リサ達は家の中に入った。

 ジョン:「ワン!ワンワンワンッ!」

 家の中に入ると、留守番をしていたジョンが尻尾を大きく振って走って来た。
 飼い主の公一にではなく、何故かリサに。

 リサ:「ジョン!ちゃんとお留守番できてた!?」
 ジョン:「ハッハッハッ!」
 愛原公一:「……何か、いつの間にか飼い主の座を取られたっちゃね~」
 愛原学:「ええ、まあ。何故かリサは、主導権サクッと握るの得意なんですよ」
 愛原公一:「布団なら押入れの中にいっぱい入ってっから、適当に引いてくれ」
 愛原学:「はい。俺達はそっちの部屋で寝るから、リサは隣の部屋で寝てくれ」
 リサ:「はい」
 高橋:「何でこんなに布団が一杯?」
 愛原公一:「たまに来客が多い時があってな。それ用だ」

 リサは押入れから布団一式抱えて、寝室となる場所に持って行った。

 ジョン:「…………」

 柴犬のジョンが後ろから付いてくる。

 リサ:「一緒に寝る?」
 ジョン:「ハッ、ハッ、ハッ!」

 ジョン、笑顔になって尻尾を振る。

 リサ:「でも、ダメ」
 ジョン:「ハッ!?」
 リサ:「私と一緒に寝るのは、愛原先生かサイトーって決まってるの。犬のあんたは食べれないから」
 ジョン:「ワウッ!?」
 愛原学:「リサー、風呂沸いたら先に入っていいぞー!」
 リサ:「はーい!」

 今夜の宿泊先は愛原公一の家。
 戦いの後は、穏やかな夜を過ごせそうだ。

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