報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「民泊を調査」 2

2023-07-02 15:12:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日17時00分 天候:曇 栃木県日光市某所 某民泊施設]

 愛原「あー、くそっ!ダメだ!ダメだ!」

 私達の調査は徒労に終わった。
 マンホールはいくつかあったものの、1つは水道メーターの蓋だったり、もう1つは下水道に通じる別の排水管だったり、その程度のものだった。
 古井戸の跡でもあればと思ったが、それすら見つからなかった。
 完全に埋められてしまったか、或いは元から無かったのだろう。
 因みに最初に開けたマンホールをもう1度開けてみたが、やはり公共の下水道に通じる配管くらいしか見当たらなかった。

 高橋「そう、うまくはいかないもんスね」
 リサ「うーん……」

 結局、雪かきしただけだった。

 絵恋「お疲れ様です。パールが温かいお茶を入れてますので、どうぞ」

 玄関まで出迎えに来た絵恋がそう言った。
 彼女は既に風呂から上がり、学校のジャージに着替えている。

 愛原「ああ、ありがとう」
 リサ「スコップ、しまわないの?」
 愛原「だから、一旦家の中に入らないと物置部屋には行けないから、戻せないんだよ」

 改めて雪かきをしてしまった為、スコップはまた濡れている。
 この家が普通の民家だった頃、その住人は物置部屋の構造について、何も不便を感じなかったのだろうか?

 愛原「……ん?」
 高橋「どうしました、先生?」
 愛原「そういえばさ……。さっき裏手に行った時、物置小屋があったよな?」
 高橋「イナバの物置っスね。でも、鍵が掛かってて入れなかったじゃないスか」

 その物置小屋も怪しいわけであるが、鍵が掛かっていた上、その鍵がどこにあるのかも分からない以上、中を調べることはできなかった。
 一応、リサにドア越しに匂いを嗅いでもらったり、或いは通気口から匂いを嗅いでもらったりしたが、特に血や鬼の臭いはしなかったという。
 物置小屋そのものは、比較的新しいものだった。
 ステンレス製のものだ。
 私の実家の裏庭にも、似たようなものがある。
 ただ、こちらの家にある方が古いとは思うが。
 少なくとも、この家が建てられた頃から置かれているとは思えなかった。
 平成に入ってから設置されたものだろう。
 私の建て直す前の実家にも、裏庭には物置小屋はあった。
 しかし、その時の物置小屋は木造の古い建物であった。
 家を建て直す際に、その物置小屋も取り壊し、今のイナバの物置を設置したというわけだ。
 で、あるなら、もしも物置小屋が地下室の入口を兼ねているのなら、やはりイナバの物置を改めて設置するとは思えない。
 まあ、そう思わせといて、実は……という線もあるにはあるが、先ほども言った通り、鍵は無いし、かといって、緊急性があるわけでもないのに、壊してこじ開けるわけにもいかないだろう。
 私が感じた違和感は、その物置小屋よりも……。

 愛原「物置小屋が外にあるのに、わざわざ物置部屋が家の中にあるのは、どういうことなんだろうな?」
 高橋「掃除用具入れとかじゃないスか?」
 愛原「そうかなぁ?」

 確かに掃除用具なんかも置かれていた。
 他にも自転車で来た人用の為なのか、その空気入れが置かれていたり……。
 それにしても、掃除用具入れ程度の用途しか無いと思うし、それにしては比較的広い。
 畳3~4畳分くらいの広さがある。
 試しにこの物置小屋の道具もどかして、床などを調べてみたが、何も無かった。

 愛原「うーん……参ったなぁ……。痕跡すら見つからない……」

 昔は痕跡があったのかもしれないが、民泊として再活用される際、その痕跡を消されたのかもしれない。
 壁紙でも剥がせば出て来るのかもしれないが、やはりそれもちょっと躊躇されてしまう。

 パール「お茶が入りました。夕食は18時からでよろしいですか?」
 愛原「うん、頼むよ」
 パール「かしこまりました」
 高橋「スーパーで、お茶のティーバッグを買って来たんです」
 愛原「そういうことか」

 パールが入れたのは緑茶。
 メイドが入れるお茶と言えば、紅茶かコーヒーを思いつくが、たったの1泊でそれは躊躇したそうだ。

 高橋「天井裏とか、どうっスかね?」
 愛原「天井裏ぁ?どうやって調べるんだよ?」
 高橋「確か、押し入れとかに点検口とか無かったっスかね?」

 高橋は押し入れを開けてみた。
 因みに、既に押し入れは探索済みである。

 愛原「いや、無いだろ」
 パール「御嬢様、まもなく乾燥機が終わりますので……」
 絵恋「分かったわ。私が自分で取りに行くから」
 リサ「チャンネル少ないなぁ……」

 リサは大広間内にあるテレビを点けて、チャンネルを回していた。
 それにしても、この家の照明も少し変わっている。
 ほとんどが電球だ。
 もちろん、今はLED電球に変わっている。
 それでも、この大広間も廊下もトイレも、照明が電球なのである。
 色が昔ながらの黄色っぽいそれなので、温かみがあるし、古い家だけに、ノスタルジーも感じる。
 蛍光灯が使用されているのは、玄関の街灯、玄関、浴室、洋室、台所である。
 それだけは普通の蛍光灯だった。
 LED蛍光灯ではない。

 愛原「ちょっとトイレ……」
 高橋「お供します!」
 愛原「せんでいい」

 私は大広間から廊下に出た。
 もう17時だ。
 冬の17時の日光は、もう真っ暗である。
 だから、廊下には電球が灯っていた。
 柱の上に行燈のような形で設置されているものと、天井に等間隔で設置されている物の2つのタイプがある。
 だから、両方点けると、とても明るい。
 旅館とか料亭の廊下ならそれでも良いのだろうが、かつては一般の民家だった建物で、こんなに照明が必要だったのだろうか。
 今はLED電球が普及しているから、そんなにエネルギーも使わないだろうし、その分電気代も掛からないだろうが、昔ながらの白熱電球だとそうは行かなかっただろう。
 試しに天井の照明を消してみた。
 すると、柱の上に等間隔で設置されている行燈型の照明だけでも、十分に明るいことが分かった。
 逆に、天井の方は間隔が大きい為に、それだけだとやや薄暗い。
 まあ、夜は常夜灯として使う分には十分だろう。
 ……常夜灯としての用途だったのか???
 まあ、いい。
 トイレに行こう。

 リサ「わたしもトイレ!」
 愛原「まさか、こっちのトイレを使うつもりじゃないだろうな?」

 私は男子用小便器のある個室を指さした。

 リサ「えー?女の子のわたしに、立ちションしろってぇ~?先生、マニアック~!」

 リサはニヤリと笑って言った。

 愛原「アホか!」
 リサ「先生が命令してくれたら、してあげてもいいよ?」
 愛原「いいから、お前はそっちのトイレを使え!」

 私は隣の洋式トイレの個室に、リサの背中を押した。

 リサ「はーい。でも、何だか廊下が眩しいね」
 愛原「さすがに、柱の上と天井の照明は明る過ぎだよな」
 リサ「この姿だと、目がチカチカしてダメだよ」

 リサは未だに第1形態の鬼の姿をしている。

 愛原「だったら、人間の姿に化けろよ」
 リサ「そうだね」

 私は男子用の個室に入り、そこで小用を足した。
 どちらのトイレにも、窓が付いている。
 さすがに曇りガラスであるが。
 引き戸式の開閉窓になっており、採光だけでなく、換気の為に設置されているものだと分かる。
 その為か、さすがに換気扇は設置されていない。
 外は寒いが、少し開けておくか。
 私は用を足し終わると、水を流して、窓を少し開けた。
 開けると、寒風が吹き込んで来る。
 どうやら、風が出て来たようである。
 まあ、天気が悪くなったら閉めればいいか。

 愛原「……?」

 この時、私はふと他の窓が気になった。
 リサはまだ隣の個室を使っている。
 確か、外から見た分には、そのトイレの窓も同じタイプだったはずだ。
 基本的に、どの部屋の窓も互い違いの引き戸タイプになっていた。
 だが、それでも私は何か言い知れぬモヤモヤを感じていた。
 窓なんか、何も関係無いだろうに、一体何なのだろう?

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