報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「民泊を調査中」

2023-07-02 12:06:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日15時00分 天候:曇 栃木県日光市某所 某民泊施設]

 高橋「ただいま戻りましたー」

 近所のスーパーに買い出しに行っていた高橋とパールが戻って来る。

 リサ「お帰り!お兄ちゃん、洗剤は!?」
 高橋「ああ、これか?今から洗濯すんのか?」

 高橋はレジ袋の中から、1回分ずつ小分けにパックされた洗剤を取り出した。
 それが10パックほどで1箱である。

 リサ「これだ!」
 パール「御嬢様がもうお風呂に?どうかなさったのですか?」
 リサ「えっ、えーと……」

 リサは高橋をチラッと見た。
 パールが1人だけなら、正直に言うのだが、高橋が一緒だと言い難い。

 リサ「外の調査をしていたら、エレン、体を冷やしちゃって……。それで、風邪引く前にお風呂に入れてるの」
 パール「そうだったのですか」
 高橋「先生は?」
 リサ「今、家の中を調査中」
 高橋「なにっ!?俺もお手伝いしねーと!先生!」

 高橋は私を探しに行った。
 因みに私はトイレの中。
 今の彼らのやり取りは全部、トイレの中に筒抜けだ。
 体を冷やしたのは、絵恋だけじゃないんだがな。
 歳のせいもあってか、尚更トイレが近い。

 愛原「おい、高橋!こっちだ!」

 私は小便器の水を流すと、ドアを開けて高橋を呼んだ。
 小便器の方はそんなにリニューアルされておらず、板張りの床に朝顔形の便器と小さな洗面所があるだけ。
 ボタンを押して水を流すタイプであったが、そのボタン部分だけはリニューアルされたのか、ここだけ少し新しい。
 もしかしたら、かつては水洗ですらなかったか、或いは水道の蛇口みたいに、それを回して水を手動で流すタイプだったのかもしれない。

 高橋「あっ、先生!」
 愛原「そんなに慌てるなっての」

 尚、この隙をついてリサがパールにそっと耳打ちしているのが見えた。
 リサに耳打ちされたパールは、急いで脱衣所に向かった。

 高橋「調査中っスね!お手伝いさせて頂きゃす!」
 愛原「いいから、お前は飯作ってくれよ。今日はすき焼きだろ?」
 高橋「そうです。これ、領収証っス!」
 愛原「ああ。預かっておく」
 リサ「お兄ちゃん!肉一杯買ってきてくれた?!」
 高橋「どーだかなw 野菜たっぷりかもしれねーぞ?」
 リサ「ちょっと!」

 それにしても、風呂とトイレも血の臭いがしない。
 つまり、この家には血の気は無いということだ。
 埼玉の家とは偉い違いだ。
 本当にこの家は、『鬼の棲んでいた家』なのだろうか。
 私は玄関に行き、そこで家の見取り図(間取り図)を見た。
 埼玉の家みたいに不思議な空間があったり、窓の無い部屋なんて1つも無い。
 大広間は外側に縁側が付いているほどの大きな窓だし、それこそ高窓ながら物置部屋にも窓があるほどだ。

 愛原「……秘密の地下室でもあるのかな?」

 私は合宿所の地下にあった秘密の研究施設を思い出した。
 この家の地上部分が、そんな秘密の地下施設を隠す為のカムフラージュだとしたら、当然ここは普通の造りになっているだろう。
 そういえば、マンホールが他にもあったような気がする。
 アメリカのラクーン市は、下水道がアンブレラの秘密研究所に繋がっていたというし……。

 愛原「高橋、ちょっと手伝ってくれ!」
 高橋「了解っス!」

 私は秘密の地下室の入口があるとしたら、それは家の中だと推理した。
 先ほどのように庭先にあるのだとしたら、冬は雪が積もる日光市では不便過ぎる。
 台所には、床下収納は無かった。
 食器棚の下とか、或いはシンクの下に扉が無いかどうか調べてみたが、それは無かった。
 あとは洋室のベッドの下を覗いたり、廊下のカーペットを剥がしてみたり、大広間の布団をしまっている押し入れの中を調べてみたりしたが、床下に隠し扉など無かった。

 愛原「あー、くそっ!やっぱり外か!?」
 高橋「そうかもしれませんね?」

 尚、押し入れの下の段には夏に使うと思われる扇風機や冷風機が置かれていた。
 よく見ると、この家にはエアコンは無い。
 暖房は、ガスストーブが使われている。
 また、脱衣所には電気ファンヒーターが置かれていた。
 ガスストーブは石油ファンヒーターと同様、定期的な換気が必要だが、こんな寒い中、窓を開けたくないのは人情。
 その為か、居室には換気扇が付いていた。
 まあ、秘密の地下室とは関係無いだろう。

 愛原「ちょっと、外行こう」
 高橋「俺も行きます」

 私と高橋は防寒着を羽織ると、再び外に出た。
 その際、恐らく裏庭は除雪されていないだろうからと、玄関に置いてあったスコップを持ち出す。
 外はリサが言う通り、曇ってきていた。
 ついに、太陽が隠れてしまうほどだ。
 こりゃ、日が暮れたらまた雪でも降ってくるかもしれない。
 少なくとも、この寒さで雨はないだろう。

 高橋「そのスコップ、玄関にありましたっけ?」
 愛原「物置部屋から取って来たんだよ。変な導線でさ、玄関から中に入らないと行けないんだよ。雪かきして濡れたままのスコップを、家の中に入れるわけにはいかないだろ」
 高橋「あー、確かにそうっスね」
 愛原「この古い家だ。裏庭に行くと、井戸とかあったりしてな?」
 高橋「井戸っスか!?」
 愛原「そう。そしてその井戸こそ、秘密の地下室への入口かもしれん」
 高橋「さすが先生っス!」

 そんな淡い期待を胸に抱き、5cmほど積もった雪を踏みしめて、家の裏手に回る。
 浴室からはシャワーの音がし、換気扇からは湯気が出ていた。
 また、脱衣所の配管からは水が流れ出て来る音が聞こえる。
 恐らく、洗濯機を回しているのだろう。

 高橋「もしかして、あのレズガキ、雪でスッ転んだんじゃないスか?それで服とかビショビショになったもんで……」
 愛原「どうだかな……」
 高橋「どうだかって、先生、御一緒だったんスよね?」
 愛原「そんなのどうでもいいじゃないか。それより、井戸は……無いな」

 そう、都合良くあるわけないか。
 やっぱり、マンホールだろうか。

 愛原「そっちのマンホールは、下水道に通じる奴だ。他のマンホールを探せ」
 高橋「了解っス!」

 私はマンホールを探す為にスコップで雪を退かした。

 リサ「先生!」

 と、そこへリサがやってきた。

 愛原「リサ!寒いから家の中にいていいんだぞ!」
 リサ「わたしは大丈夫。それより、わたしがマンホール開ける係!」
 愛原「ん?」
 リサ「ほら、もしかしたら、他のマンホールから血や鬼の臭いがするかもしれないでしょ?」
 愛原「……それもそうだな。よし、それはリサに任せる」
 リサ「おー!」
 高橋「じゃあ、俺が雪かきしますよ」
 愛原「ああ、頼む」

 私達は他のマンホールを調べることにした。

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