報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「日高地方」

2017-02-23 15:14:47 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月4日10:56.天候:雪 JR千歳線普通列車内→苫小牧駅]

 敷島:「冬の北海道だから当たり前だが、雪か……」
 エミリー:「ですが、雲は薄いようです。僅かに太陽が見えています」
 敷島:「テロリスト共め。もっと救出しやすい所に行けってんだ」

 無茶を言う敷島だった。

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終着、苫小牧に到着致します。お出口は、右側です。苫小牧からのお乗り換えをご案内致します。【中略】日高本線下り、鵡川行きの普通列車は1番線から12時23分です。【中略】今日もJR北海道をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 敷島:「じゅ……?!12時……!?」
 エミリー:「ローカル線ですからね」
 萌:「テロリスト達はどうやって、シンディをあそこまで運んだんだろうねぇ……」
 エミリー:「車か何かだろう」
 敷島:「こんな雪ん中、さすがに車で向かったら事故るわ」

 雪道は不慣れの敷島だった。

 エミリー:「ですが、現場は駅からも遠く離れた場所です。車は必要不可欠ではないかと」
 敷島:「タクシーで行けるような場所かな?」
 エミリー:「御命令下されば、社長は安全な場所にいて頂いて、私達だけで向かいますよ」
 萌:「えっ、ボクも行くの?」
 エミリー:「当たり前だ」
 敷島:「ふーむ……。取りあえず、なるべく近くの駅まで行ってみよう」

 電車がホームに停車する。
 苫小牧駅は2面4線のホームで、そのうちの1つに到着したわけだ。

 ピンポーンピンポーン♪(ドアチャイムの音)

 敷島:「ううっ、寒い!こんなんで、1時間以上どこで時間潰せってんだ……」
 エミリー:「取りあえず、駅前のどこかのお店に入りましょう。少し早いですが、昼食を取った方がいいかもしれません」
 敷島:「そうするか」

 敷島達は改札口を出ると、駅前の複合施設に入った。
 そこへまた鷲田警視から連絡が入る。

 敷島:「はい、もしもし?」
 鷲田:「あー、私だ。もう現場に着いたのか?」
 敷島:「いや、まだですよ。まだ、苫小牧駅の周辺です。どうも列車の本数が少なくて……」
 鷲田:「そりゃそうだろう。それと、静内……今は新ひだか町だが、鉄道で行けなくなってるからな」
 敷島:「はい?」
 鷲田:「キミ、知らずに向かってたのか。2015年の高波災害で、日高本線は鵡川から先は列車が行けなくなってるんだ。鵡川駅から代行バスに乗る必要がある」
 敷島:「ええーっ!何だってシンディはそんな所に……!?」
 鷲田:「そんなのは犯人達に聞いてくれ。まあ、交通不便な所に連れ込んで、少しでも追跡を免れる為だとは思うがな。それより、こっちはこっちでやることがあるから、やっぱりキミ達に捜査協力を頼む」
 敷島:「おおっ、来ましたか」
 鷲田:「但し、無理はするなよ。いいか?静内駅前に着いたら、道警の警察官達がキミ達と合流する。テロリスト達にバレないように、覆面パトカーだろう。できるだけ、その警察官達の指示に従ってくれ」
 敷島:「分かりました。西山館長達は無事なんですよね?」
 鷲田:「病院で検査を受けたが、全員がほぼ無事だ。飛行機の予約が取れ次第、急いで戻るそうだ。何しろ、科学館の臨休が続いてるからな」
 敷島:「あっ、そうか!」

 偽ツアーに参加したメンバーとも接触が取れた。
 アリスの代わりを演じられたポルトガル人女性は、東京の大学院に通う院生で、偽ツアーと知らずに参加してしまったのだという。
 観光気分で写真を撮りまくったのだが、何故かツアコン役は絶対に写真に写りたがらなかったとのことだ。

 敷島:「偽ツアーの参加者の中に、容疑者はいないということですか」
 鷲田:「その方向で見ている。もちろん、写真に写りたがらなかったというツアコン役については物凄く怪しいがな」
 敷島:「そりゃそうでしょうね」

[同日12:23.天候:雪 JR苫小牧駅→日高本線列車内]

 札幌から苫小牧まではSuicaが使えたが、ここから先は使えない。
 自動券売機で乗車券を購入する必要があった。
 で、確かに、そこかしこに日高本線の列車は鵡川駅までしか運転しておらず、そこから先は代行バスになる旨の表示がしてあった。
 但し、乗車券はそのまま通しでいいらしい。
 今度はキップで改札口を通り、途中まで走る列車が出る1番線に向かうと、1両のディーゼルカーが停車していた。

 敷島:「電車も3両編成だったけど、今度は1両か……」

 ディーゼルカーならではのエンジン音を響かせている。
 敷島達はその列車に乗り込んだ。
 さすがに車内は暖房が効いて暖かい。
 デッキが付いているので、保温性も良い。
 空いているボックスシートに、エミリーと向かい合って座った。
 萌はシンディの肩に乗っている。

〔「この列車は12時23分発、日高本線、鵡川行きの普通列車です。終着、鵡川で静内行きの代行バスに連絡しております。終着、鵡川には12時52の到着予定です。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 ワンマン運転なので、運転士が肉声方向を行うのだろう。
 ドアが閉まる音がすると、今度はディーゼルエンジンの唸り声が聞こえてきた。

 敷島:「何だか、いきなり旧式になったって感じだな……」

 窓の外を見ると、雪がちらついていた。

 敷島:「着いたら猛吹雪なんてことは勘弁だな……」
 エミリー:「天気予報では日高地方は曇時々雪です。この予報では、吹雪になることは無いと思います」
 敷島:「だといいけどな。シンディはまだ起動していないか?」
 エミリー:「まだです」
 敷島:「そうか……。もし現場に着いたら、ミクに頼んで再起動の作業をしてもらおうか……」
 エミリー:「いえ、それは危険だと思います」
 敷島:「そうか?」
 エミリー:「はい。シンディしか捕らわれていないのであればそれでも良いかもしれませんが、アリス博士も人質になっているのであれば、シンディを再起動させることで、犯人達を刺激する恐れがあります」
 敷島:「う……そうか」
 エミリー:「私と萌で救出に行きますから、どうかご安心ください」
 敷島:「分かったよ」

 列車はまだ苫小牧市街を走る。
 次の停車駅、勇払駅までの距離は13キロ以上もある。
 もちろんこれは各駅停車の鈍行だ。
 所要時間も次の駅だけで10分以上も掛かる。
 これでは静内駅まで行くのに、何時間掛かるのかは【お察しください】。
 それだけ北海道が広いということなのか、それとも……。

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