報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「アリスとシンディの救出へ」

2017-02-23 19:17:40 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月4日15:15.天候:曇 JR静内駅前]

 苫小牧駅から1両単行のディーゼルカーに揺られること、およそ30分。
 鵡川駅から代行バスへの乗り換えを余儀無くされた敷島達。
 連絡運輸がされているということもあり、駅前にバスが横付けされていた。
 バスは一般路線バスタイプではなく、観光バスタイプ。
 2時間近くも掛けて走行するのだから、確かにこのタイプの方がいいのだろう。
 ただ、やはりバスだと定時性に難があるようだ。
 少なくとも、敷島には定刻通りに走っている感が無かった。
 雪道で、ゆっくり走っている感じがしたからだ。
 ようやく静内駅に着いた時には、15分遅れになっていた。

 敷島:「えーと……待ち合わせの人達は……」

 駅舎の中から2人の男が出て来た。
 どちらもスーツにコートを着ている。

 ???:「敷島エージェンシーの敷島さんですか?」
 敷島:「はい、そうです」
 ???:「新ひだか警察署の星警部補です」
 ???:「同じく矢ヶ崎巡査部長です」

 星警部補は40代くらいの痩身の男で、矢ヶ崎巡査部長は30代くらいだった。
 どちらも私服刑事であろう。

 敷島:「敷島エージェンシーの敷島です。警視庁の鷲田警視からは、どのくらい話を聞いてますか?」
 星:「今回のDCJロボット未来科学館の職員拉致・監禁事件の犯人達をあなたが知っているということで、捜査協力をすると」
 敷島:「目星が付いているというだけで、別に確信はしていませんよ」
 矢ヶ崎:「それじゃあ……?」
 敷島:「場所だけは知っています。近づけるだけ近づけたところで、あとはこのロイド達が潜入しますから」
 エミリー:「マルチタイプ1号機のエミリーです。よろしくお願いします」
 萌:「MOE-409、萌です。ボクは車で待機ということで」
 エミリー:「こいつも潜入捜査に使いますので、ご安心ください」

 エミリーはガシッと萌を掴んだ。

 星:「話は聞いています。本当にできるんですか?」
 敷島:「御心配無く。とにかく、現場までご案内します」
 星:「分かりました。乗ってください」

 やってきたのは鷲田の見立て通り、シルバーのデリカだった。
 雪道なら、こういうRV車の方がいいだろう。

 星:「矢ヶ崎君、キミが運転してくれ」
 矢ヶ崎:「はい」

 エミリーがナビをするので助手席に座った。

 敷島:「それじゃ、お願いします」
 星:「ああ。本当に大丈夫なんですか?」
 敷島:「ええ。アリス達を救出し、テロリスト達も一網打尽にして一躍ヒーローになるチャンスですよ。何階級も特進できます」
 矢ヶ崎:「本当ですか?」
 敷島:「失敗したら、私達全員の死亡記事が一般紙を飾ります」
 矢ヶ崎:「え〜……」
 星:「とにかく、行ってみよう。いざとなれば、本署に応援を頼めば良い」

[同日16:15.天候:曇 日高郡某所]

 エミリーのナビで進む覆面パトカー。
 現場に近づく度に、周囲は荒れ地が広がる。

 星:「こんな所にテロリスト達のアジトが?」
 敷島:「そうですね」
 エミリー:「あの建物です」

 エミリーが指さした所には、木造の建物があった。

 矢ヶ崎:「あれは確か廃業したペンションですよ」
 敷島:「そうなんですか?」
 矢ヶ崎:「そうです。確か、昨年に廃業したんですよ」
 敷島:「つい最近ですね」
 矢ヶ崎:「元々オーナー夫妻が老齢化していて、しかも日高本線が不通になって、復旧の目処が立たない状態になってしまいましたからね。昨年の観光客数は惨憺たる有り様なもんで、それで廃業したと聞いています」
 敷島:「そのオーナー夫妻は?」
 矢ヶ崎:「どこかに引っ越したらしいですが……」

 また廃業して1年しか経っていないのに、だいぶ荒れているように見えた。
 元々建物自体も老朽化していたらしい。

 星:「矢ヶ崎君、あの林の近くに車を止めてくれ」
 矢ヶ崎:「はい」
 星:「もしテロリスト達のアジトと化しているのなら、死角になっている所を選んだ方がいいからな」
 矢ヶ崎:「はい」
 敷島:「あとはここからエミリー達が向かいます」

 車を止めると、バッテリーを交換したエミリーと萌が車から降りた。

 敷島:「警部補、エミリーに銃を貸してやってもらえませんか?」
 星:「はあ?」
 敷島:「国家公安委員会がうるさくて、右手に取り付けていた銃を取り外してしまったんですよ」
 矢ヶ崎:「右手に銃を仕掛けていたんですか!」
 星:「あいにくですが、そこまでは命令を受けていません。あくまで、潜入捜査の協力でしょう?テロリスト達の存在や人質の存在を確認してくれるだけで結構です。そこまでしてくれたら、あとは警察の方でやりますから」
 敷島:「ロボット・テロリスト達だったら、人間の機動隊100人相手でもキツいだろうな……」
 矢ヶ崎:「何か言いました?」
 敷島:「いや、別に……。じゃ、エミリー。悪いけど、自分の力で何とかしてくれ」
 エミリー:「かしこまりました」
 敷島:「いざとなったら、テロリストから銃を奪い取ってそれで応戦していいから」
 エミリー:「かしこまりました」
 星:「いや、ちょっと、それは困ります!」
 敷島:「警部補、相手はヘタすりゃ、あのKR団の生き残りかもしれないんですよ?私ゃ何も、エミリーに人間のテロリストを射殺しろとは言っていない」(←でもホテルでそう言っていた人)
 星:「いや、しかしですね!」
 敷島:「テロ用途のロボットが配置されていたら、それはモノなんだからブッ壊したっていいでしょ。何でしたら、後で証拠品として1機くらい生け捕りにしてもらいますから。な?エミリー」
 エミリー:「御命令頂ければ」
 敷島:「とにかく、こうしている間にもアリス達が危険なんですから、とっとと行ってもらいましょう」
 星:「……一躍ヒーローか、殉職かの二者択一ではなく、懲戒免職も含まれてるんですなぁ……」
 敷島:「そういうことです。ま、ご安心ください。あなた達が懲戒免職を食らう時は、私も会社を畳んで刑務所に入ることになるでしょう」
 矢ヶ崎:「恐ろしい人だ……」

 エミリー達が行ってしまうと、敷島はエミリーや萌を監視している端末を開いた。
 といっても、ノートPCである。

 星:「ほお、これは……」
 敷島:「ええ。これはエミリーの視点です。右上に小さく映っているのは、萌の視点ですね。こうして、いつでも切り替えることができます」

 敷島は萌の視点に切り替えた。
 基本はエミリーを操作することになるので、エミリー視点の画面にしておく。

 敷島:「エミリー、俺の声が聞こえるか?」
 エミリー:「はい。感度良好です」
 萌:「同じく」
 敷島:「よし。……こうして、彼女らとの通信も可能なわけです」
 星:「それは凄い」
 矢ヶ崎:「ハイテクですね」

 エミリー達は廃ペンションに向かった。
 近づくといきなり銃撃が……ということは無かった。

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