報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「事件はまだ終わっていない」

2017-02-23 12:06:11 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月4日09:00.天候:晴 北海道札幌市 東急REIホテル]

 萌がテレビを観て何やら騒いでいる。
 どうやら、何か事件があったようだ。
 敷島とエミリーも、テレビの画面に目をやった。

〔「……先月末より行方不明になっていたツアー客が無事、発見されました。行方不明になっていたのは、埼玉県さいたま市にあるデイライトコーポレーション・ジャパン、ロボット未来科学館の職員達で、1月30日より2泊3日の慰安旅行で北海道に向かったところ、何者かによって拉致・監禁されていたものです」〕

 敷島:「マジかよ!?鷲田警視達、やるなぁ!」
 エミリー:「申し訳ありません。何のお役にも立てず……」
 敷島:「いや、いいよ。お前達は切り札だ。警察が役に立たなくなったら、お前達の出番ってことでいいから」
 エミリー:「ありがとうございます」

 テレビではちょうど人質達が救出されるシーンが映っていた。

 敷島:「おおっ、西山館長!皆、元気だな!」

 全員が歩いて監禁場所から警察に誘導されて出て来た。
 そのまま警察が用意したバスに乗り込んで行く。
 時間は午前6時くらいになっていた。
 早朝を狙って踏み込んだらしい。
 だが、なかなかアリスの姿が見当たらない。
 シンディは……まあ、電源が切られているから当たり前か。
 シンディが再起動したことで、テロリスト達は慌てたのかもしれない。
 何とかまたシンディの電源を切ることには成功したが、その時既に警察は駆け付けていて、その騒ぎに乗じて踏み込んだ……と思ったのだが……。

 敷島:(時系列が合わないな。どういうことだ?)

 その時、画面に映し出された現場の名前を見てエミリーが反応した。

 エミリー:「社長。シンディがいた場所と一致しません」
 敷島:「そうだな!」

 西山館長達が監禁されていたのは、札幌市郊外となっていた。
 郊外にある廃屋に監禁されていたらしい。
 元々はバブル期にリゾートホテルとして開発された所だったが、バブル崩壊の煽りで廃業した所である。
 テレビ映像は、マスコミが飛ばしているヘリコプターによる上空からの映像に切り換わる。
 するとその廃ホテルの一角に、1台のバスが止まっているのが見えた。
 全体的に白いバスで、年式は古いものだったが、ホテルと一緒に朽ちた廃車というわけではないようだ。
 あれがアリス達を騙して連れ去った偽バスだろうか。

〔「……警察が現場に踏み込んだ時は、既に犯人達は逃走した後で、警察では犯人達の行方を追っています」〕

 敷島:「見つけ次第、全員射殺でいい。エミリー」
 エミリー:「イエス!……と、言いたいところですが、私はもう銃火器は取り外されているのですが」
 敷島:「ああ、知ってる。だからわざと言ってみた」

 敷島はスマホを出してみた。

 敷島:「見た目には無事だろうが、一応病院で診察は受けるだろうからな。どこの病院か、鷲田警視に電話してみよう。もうこの番組は見たんだからいいだろう」
 エミリー:「はい。シンディが別の場所にいることが気がかりですが……」
 敷島:「奴らにとってシンディは脅威だからな、わざとシンディだけ別の場所に運んだのかもしれない」

 敷島は鷲田警視に電話をしたみたが、電話が繋がらなかった。
 まだ忙しいのだろう。

 敷島:「しょうがない。俺達でシンディだけでも回収してこよう。場所は列車の本数も少ないところだからな。うかうかしていると、日が暮れちゃう」
 エミリー:「奥様はいいのですか?」
 敷島:「無事に発見されて病院に運ばれたところまで確認できればいいよ。あとはシンディだ。シンディがブッ壊されてたりでもしてみろ?俺の命も危ない」
 エミリー:「? 夫婦間の問題ですか?」
 敷島:「そういうことだ。行くぞ」
 エミリー:「は、はい」

[同日09:35.天候:雪 JR札幌駅]

 敷島達は札幌駅に行き、そこに止まっていた列車に乗り込んだ。
 まだ発車まで時間があったが、寒いので車内にいる。
 ロングシートの通勤車両だったが、さすがにそこは北海道。
 乗降ドアは半自動で、停車中でもドアが閉まっている。
 朝ラッシュも終わった時間帯で、尚且つ郊外へ向かおうという電車なせいか、たった3両編成でも閑散としている。
 敷島は先頭車となる車両に乗り込み、ドア横の座席に座っていた。
 エミリーは着席せず、敷島の横に立っている。
 護衛としての本分を発揮しているわけだ。
 萌は敷島の真上、つまり網棚に乗っていた。

〔「ご案内致します。この列車は9時40分発、千歳線上り、苫小牧行きの普通列車です。終着、苫小牧までの各駅に停車致します。恵庭、千歳、南千歳へお急ぎのお客様は、この後このホームから発車致します9時50分発、新千歳空港行き快速“エアポート”96号をご利用ください。……」〕

 3両編成であっても札幌都市圏ではワンマン運転はしないらしい。
 実際、運転室の前を見てもワンマン機器は設置されていない。
 車内は比較的静かなのは、これは本当の電車だからだろう。
 他のホームに止まっているディーゼルカーからのエンジン音の方が響いてくる。

 敷島:「ん?」

 と、そこへ鷲田から着信があった。

 敷島:「ちょっと出てくる」
 エミリー:「はい」

 敷島はドアボタンを押して電車の外に出た。
 その間はエミリーが座っておく。

 敷島:「もしもし?」

 ディーゼルカーの音がやかましいので、敷島は片耳を押さえて通話しなくてはならなかった。

 鷲田:「ああ、私だ。今、どこにいる?」
 敷島:「札幌駅です。シンディの回収に行ってきますので」
 鷲田:「シンディだと!?どこにいる!?」
 敷島:「静内町……あ、いや、今は別の名前に変わってるんでしたっけ?どうも、そこにいるらしいんです」
 鷲田:「何で勝手に行く!?」
 敷島:「いや、何でって……。鷲田警視達、忙しいでしょうから」
 鷲田:「キミの奥さんもそこにいるかもしれない上、テロリスト達が潜んでるかもしれんのだぞ!?」
 敷島:「人間のテロリストが何人いようが、うちのエミリー1人で十分ですよ。ガチの一騎当千ですから。……ってか、何でアリスが?アリスは無事だったてんでしょう?」
 鷲田:「テレビを最後まで見たまえ!人質の数が足りないんだ!」
 敷島:「はあっ!?」
 鷲田:「足りないのはただ1人。キミの奥さんただ1人だ!」
 敷島:「どういうことですか!?」
 鷲田:「テロリスト共の目的は、ただ単にDCJに対する嫌がらせだけではないってことだよ。むしろ、奥さんやシンディが目的だったのかもしれん。それをカムフラージュする為に、一応全員かっさらったのかもな。静内だな?キミは勝手な行動をせず……」

 そうこうしているうちに、発車の時間が迫ってきた。

〔6番線から、苫小牧行き、普通列車が発車致します。まもなく、ドアが閉まりますからご注意ください〕

 ディーゼルカーの大音量には負けないくらいの自動放送がホームに響いた。

 エミリー:「社長、急いでください!発車します!」
 敷島:「おっと!じゃ、すいません、警視。私は先に行きます!」
 鷲田:「おい、ちょっと待……」

 ピイーッ!ピッ!(車掌の笛)

 敷島:「危ねぇ、危ねぇ!」

 ピンポーンピンポーン♪(ドアチャイムの音)

 敷島は座席に座った。
 インバータの音が響いて、3両編成の通勤電車が発車する。

〔この先、揺れることがありますので、お気をつけください。お立ちのお客様は、お近くのつり革、手すりにお掴まりください。今日もJR北海道をご利用頂きまして、ありがとうございます。この列車は千歳線、苫小牧行き、普通列車です。次は、苗穂に止まります。……〕

 敷島:「危うく、この後の快速で追い掛けるところだったじゃないか。……この辺は首都圏とあんまり変わらんね」
 エミリー:「そうですね。さっきのお電話は?」
 敷島:「あ、そうだった。実は……」

 敷島はエミリーに電話の内容を伝えた。
 それにはさすがのエミリーも、顔を曇らせたのである。

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