報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「一夜明けて」

2017-02-22 22:45:12 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月4日07:00.天候:晴 北海道札幌市 東急REIホテル・客室]

 敷島:「う……」

 敷島はカーテンの隙間から入る朝日の光で目が覚めた。
 そして、ガバッと上半身を起こす。

 敷島:「おい!ミクからの連絡はどうした!?」

 既に充電も終わり、スリープモードに入っていたエミリーは椅子に座っていたが、敷島の声の反応して起動する。
 萌はエミリーの膝の上で寝ていた。

 エミリー:「昨夜、連絡がありました。社長の伝言を伝え、そのようにさせました」
 敷島:「どうして俺を起こさなかった?」
 エミリー:「社長はお疲れです。アリス博士のことでここ数日、よく眠れておりません。ミクへの伝言と指示は私でもできますので、お任せください」
 敷島:「……それで、どうなった?」
 エミリー:「小山副館長の予想通りでした。ミクはシンディへの通信で件の歌を歌い、シンディは再起動しました」
 敷島:「おおっ!」
 エミリー:「ですが、またシャットダウンしてしまったのです」
 敷島:「バッテリー切れか何かか?」
 エミリー:「いいえ。強い衝撃を受けたことによる、出力低下によるものです。それによって作動した安全装置による強制シャットダウンです」
 敷島:「どういうことなんだ?」
 エミリー:「何者かによって攻撃を受けたようです。これがその時の画像です」

 エミリーは右手の人差し指を変形させた。
 それがUSBポートのような形状になる。
 敷島が持ってきたノートPCに接続すると、早速その画像が浮かび上がった。

 敷島:「何だこれは!?」

 それはシンディが廃屋の外に1歩外に出た途端、背後から襲われた時のもの。
 一瞬でも屋外に出たことでGPSや電波が入るようになり、ちょうどシンディと通信をリンクさせようとしていたエミリーと繋がり、最後の記憶の映像が送信されたものだ。
 それは右手に大きなスタンガンを持った男。
 年齢は50代から60代といった初老の年齢。
 黄色いっぽいシャツに、眼鏡を掛けている。
 顔立ちは日本人とは思えないほどの彫りの深い顔立ちだ。

 男:「Welcome to the family,missy!」

 などとシンディに英語で喋っている。

 敷島:「『家族へようこそ、お嬢さん』???」

 敷島は首を傾げながら直訳した。

 エミリー:「『お前も家族だ』でいいと思います」
 敷島:「何だそれ?……ていうか、シンディを一撃で倒すなんて……俺以上じゃん!?」
 エミリー:「はあ……」
 敷島:「俺の代わりに、このオッサンがアンドロイドマスターになった方がいいんじゃないのか?」
 エミリー:「そういう問題ではありません」
 敷島:「で、この画像の場所はどこなんだ?」
 エミリー:「それは……」

[同日07:30.天候:晴 東急REIホテル]

 敷島は朝食会場に行った。
 恐らく、そこで鷲田警視達が朝食を取っているだろうと踏んでのことだった。 

 敷島:「ん?鷲田警視達、いないな?」
 エミリー:「まだ、お休みになられているのか、それとも……」
 敷島:「シンディはまだ再起動しないのか?」
 エミリー:「はい。何度も通信リンクを試みてはいるのですが、繋がりません」
 敷島:「そうか。もう1度、ミクにやってもらうか。いや……」

 敷島はシンディの再々起動を躊躇った。
 恐らくシンディは今、敵の手中に落ちているだろう。
 すぐにまた攻撃されたのは、敵にとってシンディを起動されたらまずいからかもしれない。
 もしまた起動させたら、今度こそ壊されるかもしれない。
 少なくとも今はまだ壊されていないことは、エミリーが分かるのだそうだ。

[同日08:30.天候:晴 同ホテル・フロント]

 敷島:「えっ!?鷲田さん達はもうチェック・アウトされたんですか!?」
 フロントマン:「さようでございます。敷島様に伝言をお預かりしておりますので、こちらです」

 フロントマンは敷島に1枚の封筒を渡した。
 すぐにそれを敷島は開ける。
 中にはこう書いてあった。

『事件解決は近い。犯人一味の一網打尽と人質全員救出の為に、先に出発する。事件解決のニュースを見るまでは連絡不要』

 敷島:「何だ?一気に動いたのか?」
 エミリー:「偽バスの行方を追えば、自ずとアリス博士達の捕まっている場所も分かりそうなものですからね」
 敷島:「じゃあ、ついでにシンディも助けてくれるか。何だ。鷲田警視達もやる時ゃやるんだな」
 エミリー:「そのようですね。申し訳ありません。何だか、お役に立てなくて……」
 敷島:「いや、いいよ。マルチタイプが完全にその機能を発揮するのは、いつでもどこでも……というのは違うと思ってるから」
 エミリー:「違う?」
 敷島:「ああ。一旦、部屋に戻ろう」

 敷島達はエレベーターに乗り込んだ。
 他にエレベーターに乗っている客はいない。

 敷島:「お前達、マルチタイプは、ゲームでいうボスだ。中ボスから大ボスまで張れるくらいの。ボスが最初から出てくるパターンなんて無いだろう?」
 エミリー:「それはそうですが……」
 敷島:「東京決戦では、シンディは割と序盤から出てたけどな」
 エミリー:「今でもそうですが、シンディは戦法というものに疎いのです。敷島社長は奇しくも、そんなシンディの弱点を突いて、東京決戦に勝ったのです」
 敷島:「そうかね?あの時は無我夢中で、あんまりよく覚えていないんだが」
 エミリー:「そうですか」

 エレベーターが敷島の宿泊している部屋のフロアに到着する。
 エミリーはサッと降りて、エレベーターのドアを押さえた。
 ビジネスマナーとしては上席者を先に降ろすらしいが、エミリーの場合は敷島の護衛も兼ねているからだろう。
 先に降りて、敵の待ち伏せを警戒する為である。

 エミリー:「私があの時のシンディの立場なら、先に平賀博士を襲いには行きません」
 敷島:「じゃあ、どうする?」
 エミリー:「ウィリアム博士の横に付いて、敷島社長達を待ち受けていたでしょう」
 敷島:「なるほど。だとしたら、ウィリーもバカだってことさ。シンディに、『出迎えてやれ』と命令したらしいぞ」
 エミリー:「そのようですね」

 前期型のシンディは様々なウィルスに冒されていて、完全にウィリーのロボットと化していた。
 マルチタイプは基本、オーナーの命令は何でも聞くことにはなっているのだが、時折意見することもある。
 そこがロボットとの大きな違いである。
 意見したり、提言したりすることもあって、それもまたマルチタイプの持ち味である。
 敷島はよくシンディにも意見を求めていた為、エミリーにはマルチタイプの持ち味を生かしていると好意的に受け止められていた。

 エミリー:「私なら、大きく構えて迎え撃つ方を提案していました」
 敷島:「そうか。さすがの俺も、そんなことされたら蜂の巣になっていただろうな。良かったよ。お前が敵じゃなくて」
 エミリー:「全幅の信頼、ありがとうございます」

 敷島はカードキーで部屋のドアロックを解除した。
 部屋では萌が留守番していたはずだが、敷島達が部屋に入ると、慌てて飛んできた。

 萌:「社長さん!エミリー!大変だよ!」
 敷島:「何だ、どうした!?」
 萌:「テレビを観てください!」

 萌はずっとテレビを観ていたようだった。
 敷島達は部屋の中に入ると、テレビの画面に目をやった。
 そこに映っていたのは……。

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