報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仮釈放?護送?」

2022-09-21 20:22:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日09:51.天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅→中央本線437M列車6号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の4番線の列車は、9時57分発、普通、松本行きです。この列車は、3つドア、6両です。……〕

 私が先頭車が来る辺りで電車を待っていると、リサ達がやってきて、高橋も合流した。

〔まもなく4番線に、当駅止まりの列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、3つドア、6両です。折り返し、9時57分発、普通、松本行きとなります。……〕

 普通列車にしては、随分と遠くへ行く列車だ。
 JR東日本の列車というのは、中途半端に走行距離が短かったり、或いは中途半端に長かったりする。
 もちろん、18きっぱーとしては後者の方が良いのだろうが……。

〔「4番線、ご注意ください。普通列車の松本行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください」〕

 私が予想した通り、211系と呼ばれる中距離用の車両が入線してきた。
 ロングシートオンリーの車両かなと思ったが、ボックスシート付きの車両が来た。
 これなら、長野県まで乗って行っても……疲れるか。
 私達は先頭車に乗ったが、私はあえてドア横の2人席に腰かけた。
 高橋も、ホイホイと隣に座って来る。
 リサ達はボックスシートに座った。

〔「ご案内致します。この電車は9時57分発、中央本線下り、普通列車の松本行きです。大月、甲府、小淵沢方面、松本行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 リサ達はまるでこれから遠くまで行くかのように、窓の桟にジュースを置いたり、駅で売っていたであろうお菓子を食べて寛いでいた。
 上野姉妹にとっては、やっとの思いで母親が仮釈放になるのだから、はしゃぐのはしょうがないと思う。
 だが、リサにとってはどうなのかと思うが、あの様子だと大丈夫かな?

[同日09:57.天候:晴 JR中央本線437M列車6号車内]

 発車の時刻になり、ホームから発車メロディが聞こえてくる。
 どうやら、定刻通りに発車できそうだ。
 私はスマホを取り出して、定時連絡を入れることにした。

〔4番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 旧国鉄時代からJR化初期に掛けて製造された車両。
 だいぶ旧型化してきているが、あまり鉄ヲタからの注目度は高くない。
 初期型は旧国鉄時代から製造されているが、その時期があまりにも末期過ぎて、あまり国鉄っぽい所が少ないからだろう。
 また、まだJR東日本やJR東海を始め、亜種の213系という車両等まで含めれば、JR西日本やJR四国にまで残っている為、レア感が無いというのもある。
 とはいえ、何のドアチャイムも無く、大きなエアー音を響かせて開閉する乗降ドアや、その後、発車の際に響いて来るモーター音を聞けば、昔の電車という感じがする。
 尚、JR東海の車両だと、後付けでドアチャイムが付けられている物もある。

〔「お待たせ致しました。本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。9時57分発、中央本線、普通列車の松本行きです。これから先、相模湖、藤野、上野原、四方津、梁川、鳥沢、猿橋、大月の順に、終点の松本まで各駅に停車致します。【中略】次は相模湖、相模湖です」〕

 自動放送が無いのも、今ではレアな感じがする。
 高尾までは、それなりに賑わってていた車窓だったが、高尾駅を出ると、一気に景色は一変する。
 それまでは郊外であっても、まだ大都市近郊区間って感じの雰囲気だったが、高尾から西は一気にローカル線の雰囲気と化す。
 また、トンネルが全く無かった中央快速線だったのに対し、ここからは断続的にトンネルが続く。

 愛原:「よし、送信完了」

 LINEの送信が完了すると、また善場主任から返信があった。
 車で藤野駅まで、迎えに来てくれるらしい。
 それに乗って、研究施設に向かうとのことだ。

[同日10:15.天候:晴 神奈川県相模原市緑区小渕 JR藤野駅]

〔「まもなく藤野、藤野です。お出口は、右側です」〕

 高尾駅から次の相模湖駅までは駅間距離が長く、10分近くも走行する。
 また、相模湖駅で後続の特急の通過待ちで5分停車した。
 たった2駅の距離なのにも関わらず、20分弱も掛かったのは、それが理由だ。
 トンネルが断続的に続くような所では、駅も造れないのだろう。
 で、ようやく下車駅に着いたというわけだ。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野原に止まります〕

 高尾以西は、本当は乗降ドアは半自動となる。
 乗客はドア横のボタンを押して、ドアを開閉させるのだ。
 しかし、昨今のコロナ禍で、車内保温よりも車内換気が優先されたことで、その機能は止められている。
 つまり、高尾以東のように自動ドアというわけである。
 さすがにワンマン列車においては、不正乗車防止の方が更に優先され、半自動ドアは引き続き行われている。

 愛原:「こっちの方が涼しい……という程でも無いか?」
 高橋:「まあ……若干涼しいって感じっスかね。若干」
 愛原:「そうだな」

 まあ、多少は標高のある場所で、しかも近くに相模湖があることから、風が吹けば少しは涼しいのかもしれない。
 平地の少ない場所に造った駅ということもあり、ホームの幅は狭い。
 島式ホームだが、少しでも幅を確保する為、上下線ホームは、やや互い違いになるような構造になっている。
 普通列車しか止まらない駅であり、特急列車はもちろん通過で、この辺りは貨物列車も通過する。
 小さな駅ではあるが、それでも駅員が配置されているし、まだSuicaやPasmoが使える自動改札機が設置されている。
 またまだ都内への通勤圏なのだと分かる。
 正直、私はここから通勤したいとは思わないが。

 善場:「お疲れ様です。愛原所長」

 自動改札機を通って、駅の外に出ると、スーツ姿の善場主任が待っていた。

 愛原:「あっ、善場主任、お疲れさまです」
 善場:「無事に彼女達を連れて来てくれたようですね。では、早速向かいましょう。車に乗ってください」
 愛原:「ありがとうございます」

 駅前の広場に行くと……。

 愛原:「こ、これは……!」

 中型の観光バスに、赤色灯が付いた車が止まっていた。

 高橋:「護送車じゃないっスか!」
 善場:「その通りです」

 しかも、警察の護送車ではなかった。
 バスの車体はくすんだ緑色に塗られており、後ろ半分には窓が無い。
 まるで、荷物を載せるスペースのようである。
 バスに乗り込むと、前半分は普通の内装だった。
 しかし、後ろ半分の所へ行こうとすると、頑丈なドアがある。
 BSAAの護送車であった。
 なので、運転席にはBSAAの軍服を着た職員が座っている。

 愛原:「善場主任、もしかして、この奥にあの人を……?」
 善場:「はい。現地に着くまでは、油断できませんから」
 愛原:「はは……」

 バスは研究施設に向かって走り出した。
 仮釈放といっても、人間のそれとはだいぶ違うのだなと改めて思い知らされる。

 リサ:「わたしも暴れたりしたら、後ろに乗せられる?」
 善場:「場合によっては、そうなるかもね」
 リサ:「わー……」

 リサはヒくような反応をした。
 仮釈放というよりは、ただの護送のような気がする。
 聞いた話では、仮釈放の後は栃木のホテル天長園に戻るようだが……。
 そこまで、このバスで向かうのだろうか。
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“私立探偵 愛原学” 「夏休み前の3連休」

2022-09-21 16:06:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日08:15.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅日本橋口→東京駅構内]

 私達は自宅からタクシーで、東京駅に向かった。
 都営バスの東20系統が廃止されて以降、タクシーに乗る機会が増えたような気がする。
 もっとも、今回は車で行けたところを、高橋が免停食らったせいというのもあるんだがな。
 また、今日はデイライトさんからの仕事の依頼ということもあり、タクシー代は後日請求できる。
 忘れてはいけないのが、リサの存在。
 欧米なら、車で送迎されるほどの存在なのである(VIP待遇ではなく、監視の為)。

 愛原:「すいません、タクシーチケットで……」
 運転手:「はい、どうぞ」

 タクチケで料金を払っている間、リサは先に降りる。

 リサ:「リンとリコ」

 日本橋口、丸の内中央ビル正面エントランス前で上野姉妹が待っていた。
 2人とも、制服姿である。
 それに対して、リサは私服。
 リサとこの姉妹の、これからの動きに違いがあるからである。

 愛原:「よし、お待たせ」
 上野凛:「おはようございます!今日はよろしくお願いします!」
 愛原:「ああ、よろしく」
 上野理子:「よろしくお願いします」
 愛原:「よろしく。一緒に行くだけだから、大したことないよ」

 今回の私の任務は、ただの引率者だ。
 何しろ、本物のBOW1人と半BOWが2人いるんだからな。
 多くの人で賑わう駅構内に入って行く。

 愛原:「SuicaやPasmo、ちゃんとチャージされてるか?」
 凛:「はい、大丈夫です」
 高橋:「オケッす!」
 リサ:「片道だけOK」
 理子:「片道ィ?」
 高橋:「リサだけ帰りは歩いて帰るんだとよ」
 理子:「ほーほー」
 愛原:「……後でチャージしてやるよ」
 リサ:「おー!」

[同日08:39.天候:晴 JR東京駅・中央線ホーム→中央快速線893T電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、8時39分発、中央特快、高尾行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、神田に停車致します〕
〔この電車は中央線、中央特快、高尾行きです。停車駅は神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野、三鷹、国分寺、立川と立川から先の各駅です〕
〔「お待たせ致しました。信号が変わりましたので、発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 まずは中央特快に乗り、高尾駅に向かう。
 そこから、中央本線の普通列車に乗り換えて、藤野を目指すという大したことの無い計画だ。
 で、藤野駅には善場主任達が迎えに来ている。
 ホームから、賑やかな発車メロディが響いて来た。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車は1~2分遅れで東京駅を発車した。
 どうも、私達が乗る前に、どこかの駅で安全確認を行った影響らしい。
 まあ、この程度の遅れなら大勢に影響は無い。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は中央線、中央特快、高尾行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕

 電車が発車すると、私は揺れる車内で善場主任にLINEを送った。
 これが定時連絡。
 東京駅を1~2分遅れで発車した旨も伝えておく。
 この程度では、高尾駅での乗り換えには影響が無いことも添えておいた。
 すぐに返信が来て、特に何か指摘されるようなことはなかった。
 強いて言うなら……。

 善場:「承知しました。安全最優先で宜しくお願いします。今回は現地において、リサの暴走が想定されます。十分、ご注意ください」

 とのこと。
 リサが暴走するかも、というのはどういうことか。
 今回の旅の目的は、藤野の国家機関直営研究施設に収容されている、上野姉妹の母親の仮釈放手続きである。
 リサが一番怒りを感じており、生きて収容すら許さない。
 処刑すべきという考えを辞していなかった。
 それが仮釈放とは、どういうことかという思いで一杯なのである。
 実際に襲われた私としては、この件に関してはデイライトさんに一任することにしている。
 そのデイライトさんが仮釈放だと決定したのだから、致し方無い。
 もっとも、彼女の刑期……というか、そもそもの収容期間自体、私は知らされていないのだ(強いて言うなら、『不定期的無期』。基本的には『無期』だが、場合によっては有期に切り替えるというもの)。
 BOWの扱いは人間の犯罪者とは、全く別である為。

 愛原:「いいか、リサ?今回はデイライトさんの決定によるものだ。オマエはもちろん、俺も口を挟むことは許されない。オマエの怒りはもっともだが、けして勝手なことをしないように。分かったか?」
 リサ:「……何度も聞いたよ」
 愛原:「高橋もだ」

 リサの次に怒りが強かったのは、高橋である。

 高橋:「分かってますって。先生に御迷惑は、お掛けしませんよ」

 そう言いつつ、昨夜は手持ちのマグナムに銃弾を一杯に詰めていたのを私は見ている。

[同日09:37.天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅]

〔まもなく終点、高尾、高尾。お出口は、左側です。中央本線、大月、甲府方面と京王線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 電車は途中で回復運転できたのか、高尾駅に着く頃には定時に戻っていた。

〔「今度の中央本線下り、普通列車の松本行き、4番線から9時57分の発車です。京王高尾線は、一旦改札口を出てからのお乗り換えとなります。……」〕

 リサ:「少し時間ある?」
 愛原:「そうだな。一服でもトイレ休憩でも、行ってきていいぞ」
 リサ:「分かった」

 電車は車止めのある1番線に到着した。
 つまり、東京方向からの折り返しなどに使われるホームということである。

〔たかお~、高尾~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 ここで電車を降りる。
 乗客の多くは、京王線方面に向かって行った。
 東京の観光地で有名な、高尾山に行くのだろう。
 今日は天気も良いので、絶好の登山日和と言えるかもしれない。

 高橋:「先生はどうされるんです?」
 愛原:「俺は4番線に行くよ。一服したいなら、行ってこいよ」
 高橋:「サーセン」
 凛:「先輩、私達、トイレに行きますけど、どうします?」
 リサ:「わたしは先生と一緒に行く。乗り換える電車には、トイレ付いてるでしょ?」
 愛原:「あるけど、211系のトイレじゃ、和式だろうな」
 リサ:「凛達と行ってきまーす」

 和式はなるべく使いたくないリサだった。
 アンブレラの研究所で、実験と称して公開排泄を和式トイレでやらされたからだろう。
 というわけで、高橋は喫煙所に、3人のBOW少女達はトイレに、私は乗り換え先の4番線に向かった。
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