報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夏休み前の3連休」

2022-09-21 16:06:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日08:15.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅日本橋口→東京駅構内]

 私達は自宅からタクシーで、東京駅に向かった。
 都営バスの東20系統が廃止されて以降、タクシーに乗る機会が増えたような気がする。
 もっとも、今回は車で行けたところを、高橋が免停食らったせいというのもあるんだがな。
 また、今日はデイライトさんからの仕事の依頼ということもあり、タクシー代は後日請求できる。
 忘れてはいけないのが、リサの存在。
 欧米なら、車で送迎されるほどの存在なのである(VIP待遇ではなく、監視の為)。

 愛原:「すいません、タクシーチケットで……」
 運転手:「はい、どうぞ」

 タクチケで料金を払っている間、リサは先に降りる。

 リサ:「リンとリコ」

 日本橋口、丸の内中央ビル正面エントランス前で上野姉妹が待っていた。
 2人とも、制服姿である。
 それに対して、リサは私服。
 リサとこの姉妹の、これからの動きに違いがあるからである。

 愛原:「よし、お待たせ」
 上野凛:「おはようございます!今日はよろしくお願いします!」
 愛原:「ああ、よろしく」
 上野理子:「よろしくお願いします」
 愛原:「よろしく。一緒に行くだけだから、大したことないよ」

 今回の私の任務は、ただの引率者だ。
 何しろ、本物のBOW1人と半BOWが2人いるんだからな。
 多くの人で賑わう駅構内に入って行く。

 愛原:「SuicaやPasmo、ちゃんとチャージされてるか?」
 凛:「はい、大丈夫です」
 高橋:「オケッす!」
 リサ:「片道だけOK」
 理子:「片道ィ?」
 高橋:「リサだけ帰りは歩いて帰るんだとよ」
 理子:「ほーほー」
 愛原:「……後でチャージしてやるよ」
 リサ:「おー!」

[同日08:39.天候:晴 JR東京駅・中央線ホーム→中央快速線893T電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、8時39分発、中央特快、高尾行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、神田に停車致します〕
〔この電車は中央線、中央特快、高尾行きです。停車駅は神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野、三鷹、国分寺、立川と立川から先の各駅です〕
〔「お待たせ致しました。信号が変わりましたので、発車致します。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 まずは中央特快に乗り、高尾駅に向かう。
 そこから、中央本線の普通列車に乗り換えて、藤野を目指すという大したことの無い計画だ。
 で、藤野駅には善場主任達が迎えに来ている。
 ホームから、賑やかな発車メロディが響いて来た。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車は1~2分遅れで東京駅を発車した。
 どうも、私達が乗る前に、どこかの駅で安全確認を行った影響らしい。
 まあ、この程度の遅れなら大勢に影響は無い。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は中央線、中央特快、高尾行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕

 電車が発車すると、私は揺れる車内で善場主任にLINEを送った。
 これが定時連絡。
 東京駅を1~2分遅れで発車した旨も伝えておく。
 この程度では、高尾駅での乗り換えには影響が無いことも添えておいた。
 すぐに返信が来て、特に何か指摘されるようなことはなかった。
 強いて言うなら……。

 善場:「承知しました。安全最優先で宜しくお願いします。今回は現地において、リサの暴走が想定されます。十分、ご注意ください」

 とのこと。
 リサが暴走するかも、というのはどういうことか。
 今回の旅の目的は、藤野の国家機関直営研究施設に収容されている、上野姉妹の母親の仮釈放手続きである。
 リサが一番怒りを感じており、生きて収容すら許さない。
 処刑すべきという考えを辞していなかった。
 それが仮釈放とは、どういうことかという思いで一杯なのである。
 実際に襲われた私としては、この件に関してはデイライトさんに一任することにしている。
 そのデイライトさんが仮釈放だと決定したのだから、致し方無い。
 もっとも、彼女の刑期……というか、そもそもの収容期間自体、私は知らされていないのだ(強いて言うなら、『不定期的無期』。基本的には『無期』だが、場合によっては有期に切り替えるというもの)。
 BOWの扱いは人間の犯罪者とは、全く別である為。

 愛原:「いいか、リサ?今回はデイライトさんの決定によるものだ。オマエはもちろん、俺も口を挟むことは許されない。オマエの怒りはもっともだが、けして勝手なことをしないように。分かったか?」
 リサ:「……何度も聞いたよ」
 愛原:「高橋もだ」

 リサの次に怒りが強かったのは、高橋である。

 高橋:「分かってますって。先生に御迷惑は、お掛けしませんよ」

 そう言いつつ、昨夜は手持ちのマグナムに銃弾を一杯に詰めていたのを私は見ている。

[同日09:37.天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅]

〔まもなく終点、高尾、高尾。お出口は、左側です。中央本線、大月、甲府方面と京王線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 電車は途中で回復運転できたのか、高尾駅に着く頃には定時に戻っていた。

〔「今度の中央本線下り、普通列車の松本行き、4番線から9時57分の発車です。京王高尾線は、一旦改札口を出てからのお乗り換えとなります。……」〕

 リサ:「少し時間ある?」
 愛原:「そうだな。一服でもトイレ休憩でも、行ってきていいぞ」
 リサ:「分かった」

 電車は車止めのある1番線に到着した。
 つまり、東京方向からの折り返しなどに使われるホームということである。

〔たかお~、高尾~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 ここで電車を降りる。
 乗客の多くは、京王線方面に向かって行った。
 東京の観光地で有名な、高尾山に行くのだろう。
 今日は天気も良いので、絶好の登山日和と言えるかもしれない。

 高橋:「先生はどうされるんです?」
 愛原:「俺は4番線に行くよ。一服したいなら、行ってこいよ」
 高橋:「サーセン」
 凛:「先輩、私達、トイレに行きますけど、どうします?」
 リサ:「わたしは先生と一緒に行く。乗り換える電車には、トイレ付いてるでしょ?」
 愛原:「あるけど、211系のトイレじゃ、和式だろうな」
 リサ:「凛達と行ってきまーす」

 和式はなるべく使いたくないリサだった。
 アンブレラの研究所で、実験と称して公開排泄を和式トイレでやらされたからだろう。
 というわけで、高橋は喫煙所に、3人のBOW少女達はトイレに、私は乗り換え先の4番線に向かった。

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