報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「鉄路上の魔道士達」

2022-09-01 20:21:24 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月19日18:03.天候:晴 山梨県甲府市 JR身延線4009M列車1号車内→甲府駅]

 特急“ふじかわ”9号は、順調に身延線を走行している。
 種別は特急ながら、身延線内における最高速度は時速85キロである。
 東海道本線の時速110キロ運転を除けば、同じJR東海の飯田線を走る特急“伊那路”と同じく、『日本で最も遅い特急』と言われる。
 もちろん、全区間を時速85キロで走るわけではなく、線形の悪い所はもっとゆっくりと走る。
 線形が悪い故の低速度である為、例え種別を急行から特急へ上げ、車両も特急仕様にしたところで、所要時間は急行時代と変わらぬのだそうだ。
 さり気なく急行時代には停車していた西富士宮駅を特急になってから通過しているが、少しでも評定速度を上げたかったのだろうし、創価学会が日蓮正宗から切り離されたことで、大石寺参詣者の利用が見込めなくなったから切り捨てたか
 とにかく、特急にしてはのんびりと走る列車であるから、例え景色の良い所を走るとはいえ……。

 マリア:「

 眠くなるのは必然である。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。ご乗車、ありがとうございました。まもなく終点、甲府です。中央線は、お乗り換えです〕
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、甲府、終点、甲府です。4番線に到着致します。お出口は、右側です。到着の際、列車が左右に揺れますので、ご注意ください。お乗り換えのご案内を致します。中央線下り、普通列車の小淵沢行きは、18時9分に1番線から発車致します。その後、特急“あずさ”41号、松本行きは18時29分に、1番線から発車致します。中央線上り、普通列車、高尾行きは18時9分、その後の特急“あずさ”50号、千葉行きは18時35分、いずれも2番線から発車致します。車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、甲府です」〕

 車内放送でマリアは目を覚ました。
 他の寝ていた乗客も、同じくそのようにしている。
 車内チャイムはオリジナルのオルゴールだが、良い目覚ましになっている。

 勇太:「おはよう。もうすぐ到着だよ」
 マリア:「あ、あー……。いつの間にか寝てしまった」
 勇太:「まあ、眠くなりそうなスピードと、インバータの音だからね」

 因みに新幹線もそうだが、在来線においても、あまり車内放送で『JR東海』とは言わないのがJR東海である。
 何かあるのだろうか?

 勇太:「荷物を降ろそう」
 マリア:「うん」

 マリアは脱いでいた魔道士のローブを羽織った。
 電車の中というと、たまに冷房が効き過ぎて寒いということがままあるが、この373系電車にあっては、そういうことはない。
 デッキのドアが無い上、乗降ドアの半自動機能は使用しないので、駅に停車中は冷房がダダ洩れしてしまうのである。
 甲府駅はJR東日本が管理している。
 ここでは4番線と5番線がJR東海専用ホームで、それ以外がJR東日本である。
 つまり、身延線は4番線と5番線ということだ。
 そのうち、特急は4番線に到着する。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、甲府、終分、甲府です。……」〕

 ドアが開くと、勇太達は列車を降りた。

 勇太:「やっぱり山梨も暑いなぁ……」

 今夜は熱帯夜のようである。
 ここでは、身延線が付属のような感じだ。
 改札階に行くには、中央線上りの1番線を通らないといけない。
 で、改札階に上がると……。

 勇太:「やった!駅弁売ってる!ここで夕食の駅弁が買えるぞ!」
 マリア:「それは良かった。……お土産は売ってる?」
 勇太:「売ってる!甲府のお土産らしく、“桔梗信玄餅”売ってるよ!」
 マリア:「ワインは?」
 勇太:「ある!」
 マリア:「よし。ここで師匠へのお土産をゲットだ」

 他にもNEWDAYSがあり、そこでもお土産は買える。
 駅弁はだいぶ残っているし、営業時間もまだ余裕があるので、先にNEWDAYSに行った。
 駅のコンビニとして、これから必要な物を購入する為だ。

 勇太:「ここで全部調達できるとはね!さすがは、県庁所在地の駅だ」

 ここでマリアは“信州おとなの牛めし”を、勇太は“鰈の西京焼き弁当”を購入した。
 あとは飲み物として、お茶のペットボトル。

 勇太:「こんな所でいいか」
 マリア:「うん。こんなところだね」

 あとは、中央本線下りの2番線に向かう。
 2番線は下り本線で、3番線は副線。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、18時29分発、特急“あずさ”41号、松本行きです。……〕

 ATOSと略称される、東京圏輸送管理システムならではの言い回しの放送が流れる。
 中央本線では、この甲府駅が導入駅の最東端である。
 尚、あくまでもこのシステムはJR東日本のオリジナルである為、JR東海の身延線ホームでは流れない。
 JR東日本ではこのように、放送で『JR東日本』とよく言うのだが、JR東海は何故かそのようなアピールをしない。

 マリア:「12号車って、1番後ろ?」
 勇太:「いや、1番前」
 マリア:「狙ったの?」
 勇太:「いや、JR東海の券売機じゃ狙えなかった。……から、偶然だね。因みに“ふじかわ”は、あの先頭車だけが指定席だったから」
 マリア:「そうか……」

[同日18:29.天候:晴 JR甲府駅→中央本線5041M列車12号車内]

〔まもなく2番線に、特急“あずさ”41号、松本行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、9両です。……〕

 12号車があるのに9両編成というのは、基本編成のみの編成であり、附属編成である3両編成(1号車から3号車)が連結されていないという意味である。

 マリア:「新宿駅からはよく乗ったけど、ここから乗るのは初めてだな」
 勇太:「そうだね。で、この駅も発着しているはずなんだけど、よく覚えてないっていうね」
 マリア:「確かに。だいたいこの辺りだと、寝てるもんな」

 そんなことを話しているうちに、列車がやってくる。
 そこそこの乗車人数が乗っていたが、甲府駅でぞろそろと降りて来た。
 “かいじ”と合わせて、特急が賑わうのはここまでのようである。
 が、そこはさすがに本線を走る特急。
 身延線のようなローカル線を走る特急の3倍の車両が連結され、グリーン車も連結されているということもあり、賑わいは別格だった。
 車内に入り、指定されている席に向かう。
 座席のシートピッチは広いとは言えないが、座席の形状はJR東日本の新幹線の普通車のものによく似ていた。
 今度は進行方向左側に座り、テーブルを出して駅弁と飲み物を置く。
 停車時間は僅か1分なので、そうしているうちに列車が走り出す。

〔♪♪♪♪。この列車は、特急“あずさ”41号、松本行きです。停車駅は韮崎、小淵沢、富士見、茅野、上諏訪、下諏訪、岡谷、塩尻、終点松本の順に停車致します。……〕

 勇太:「先生には途中経過を報告しなくて大丈夫だろうか?」
 マリア:「大丈夫だろう。一応、今日の予定は師匠に伝えてあるし、何かアクシデントがあった時だけ報告すれば」
 勇太:「そうか」

 冬ならもう真っ暗という時間帯だが、真夏の今はまだ明るい。
 西日が眩しいくらいだ。
 列車は西に向かって走っているので、正に『夕日に向かってダッシュ!』といったところか。
 2人の魔道士は、夕食である駅弁を楽しみながら帰宅の旅を続けた。
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“大魔道師の弟子” 「下山2人旅」

2022-09-01 11:51:55 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月19日16:00.天候:晴 静岡県富士宮市 JR富士宮駅]

 藤谷のベンツが富士宮駅前に到着する。

 藤谷:「ここでいいかい?」
 勇太:「ありがとうございます!」

 勇太とマリアは、車から降りた。

 藤谷:「気をつけて帰れよ」
 勇太:「はい!ありがとうございました!」

 藤谷も、このまま静岡市内まで帰るという。
 今日は平日だが、前日までの連休は働き詰めだった為、今日は休業にしたとのこと。
 勇太とマリアは車を降りて藤谷に分かれを告げ、駅構内へと入る。

 勇太:「そうだ。先にキップを渡しておこう」
 マリア:「ありがとう。これは乗車券だけを、改札機に通すんだっけ?」
 勇太:「そう!」

 改札口の近くで、勇太はマリアの分のキップも渡した。
 ここから白馬駅までの乗車券と、ここから甲府駅までの特急券、甲府駅から松本駅までの特急券である。

 勇太:「飲み物でも買って行くか。車内販売なんて無いし」
 マリア:「そうなんだ」
 勇太:「まだ電車が来るまで、時間がある。気掛かりなことがあったら、今のうちにね」

 列車を待ちますか?

 『はい
 『いいえ』

[7月19日16:26.天候:晴 JR富士宮駅→身延線4009M列車1号車内]

 

 富士宮駅のホームは2面3線。
 1番線専用のホームがあり、あとは2番線と3番線が共用する島式ホームが1つだけある。
 で、現在は殆ど2番線と3番線しか使われていない。
 というのは、1番線はその昔、創価学会専用列車が発着していたホームだからだ。
 1番線だけ有効長が長いのは、各地から学会員を満載した団体列車が発着していたからである。
 この駅に乗り付けた学会員達は、2階の改札口を通らず、そのまま専用の出口から駅の外に出て、そこに横付けされている貸切バス(大富士観光バス?)に乗って大石寺を目指した。
 身延線が富士~富士宮間だけ複線化されている理由は、そこにある。
 また、かつては富士宮駅構内に、学会員専用列車を留置した広大な留置線があったが、今はそれも無くなっている。
 晩年は草が生い茂っていたそうだ。
 アンチ日蓮正宗の学会員は、『学会員のいなくなった大石寺は荒れ果ててペンペン草が生えている』と言っていたそうだが、実際にペンペン草が生えたのは、そのような留置線や駅の施設だったのである。

 
(創価学会が破門されたことで学会員専用列車の留置が無くなり、荒れ果てた留置線。夏はペンペン草が生えてもおかしくない)

 恐らくは顕正会の前身、妙信講も日蓮正宗追放(事実上の追放。本来の処分内容は、創価学会と異なる)前は団体列車で登山していたと思われるが、あまり追放前の事は語りたくないのか、創価学会ほど資料は残っていない(が、団体列車で登山していたことがあるのは事実のようである。それが妙信講専用列車だったのか、或いは他の法華講支部との混乗だったのかは不明)。

 マリア:「お待たせ」
 勇太:「おっ……」

 マリアがトイレから戻って来た。
 富士宮駅のトイレは駅の外の公衆トイレの他、改札内においてはホーム上にある。
 1番線には無い。
 あったとしても今は閉鎖されているだろうし、当時のスケジュールから察するに、学会員達は駅でのトイレ休憩は取られていなかったものと思われる。

 勇太:「大丈夫なの?」
 マリア:「まあね」

 マリアがトイレに行ったのは、何も具合が悪いからではない。
 ショーツが尻に食い込んでいるのが気になって、直しに行っただけである。
 欧米人女性がよくTバックを穿いているのは、ここに理由がある。
 アジア系よりも尻が大きくなりやすいので、Tバックの方が都合が良いらしい。
 だが、勇太はあまりTバックが好きではないらしい。
 そこで、マリアもそれは穿かないようにしているのだが……。

 勇太:「……お尻が大きくなった?」
 マリア:「あのね!……そこは『体が成長した』って欲しいな」
 勇太:「ご、ゴメン!た、確かに胸も少し大きくなったよね」
 マリア:「ベルフェゴールがね、『結婚に近づく度に、体を普通の成人に近づけてやろう』なんて言ってるの」
 勇太:「ベルフェゴールの暇潰しか!?」

 確かに出会った当初、勇太はマリアを小中学生くらいの女の子だと思ったくらいだ。
 体が小さいのは生まれつきである。

 マリア:「どうだろうね。悪魔の考えてることは、全て理解できるわけじゃないから……」
 勇太:「まあね」

 勇太と『先行お試し契約』となっているアスモデウスはアスモデウスで、契約時まで童貞だった勇太を『性の匠にしてやろう』と言って来た。
 そのせいだか分からないが、アジア人よりはイきにくいとされる白人のマリアを、まるでエロゲ―の主人公の如く何度もイかせる性技を披露している(AVで白人女優に対し、日本人男優が必ず電マなどを使用するのはその為。白人はイきにくいのだそうだ)。

〔ピンポーン♪ まもなく、下り列車が参ります。危険ですから、黄色い点字ブックの内側まで、お下がりください。まもなく、列車が参ります。ご注意ください〕

 そんなことを話していると、簡易的な接近放送がホームに鳴り響いた。
 2両編成ワンマン列車の時は、特に他に放送は無いのだが、今度のは特急ということもあり……。

〔「今度の3番線の列車は、特急“ふじかわ”9号、甲府行きです。停車駅は内船、身延、下部温泉、甲斐岩間、鰍沢口、東花輪、南甲府、終点甲府の順です。ご乗車には乗車券の他に、特急券が必要です。列車は、3両編成です。自由席は中ほど2号車、後ろの3号車です。……」〕

 駅員の肉声放送も流れる。

 

 しばらくして、列車がやってきた。
 特急車両ではあるのだが、乗降ドアは両開きの2枚扉で、実はデッキが無い。

 

 車内はリクライニングシートが並んでいる所は、特急仕様である。
 先頭の1号車に乗り込むと、2人は指定されている進行方向右側の座席に座った。
 マリアはいつもの通り、人形の入ったバッグを荷棚に置く。
 バッグの中からは、コミカルな人形形態をしたミク人形とハク人形が顔を出した。

〔「3番線、ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ドアチャイムが鳴って、ドアが閉まる。
 座席の部分とは仕切り板があるのだが、デッキのドアが無い為、ドアチャイムの音色がダダ洩れである。
 音色はJR東海の在来線そのまんま。
 東京だと京王電車のそれと同じ。
 そして、列車はインバータの音を響かせて発車する。
 その音色はJR東日本とはまた違うタイプで、どちらかというとJR西日本で聴けるような、眠気を誘う音色と言えば良いのか。

〔ご乗車ありがとうございます。特急“ふじかわ”9号、甲府行きです。次は、内船(うつぶな)です〕
〔「富士宮からご乗車のお客様、お待たせ致しました。ご乗車ありがとうございます。特急“ふじかわ”9号、甲府行きです。停車駅は……【以下略】」〕

 

 座席を横から見ると、こんな感じ。
 特に広いわけではないが、シートピッチは首都圏で運転されている中距離電車のグリーン車と同じである。

 勇太:「特急といっても、これから山あり谷あり川ありの所を通って行くから、そんなにスピードは出せないらしいよ」
 マリア:「そうなの」
 勇太:「ここから単線になるしね」

 特急“ふじかわ”の最高速度は110キロであるが、これは東海道線内における最高速度。
 身延線においては、時速85キロが限界だそうである。
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