[6月25日17:15.天候:曇 新潟県新潟市中央区 新潟港国際旅客ターミナル]
ホテルの会議室で打ち合わせをした後、私達は車に乗って新潟西港へ向かった。
車には善場主任だけでなく、主任の部下も乗っていて、運転手役を務めている。
車は黒の高級ミニバン。
新潟ナンバーで、しかもレンタカーではない。
どうやら、デイライトは新潟にも事務所を持っていて、そこから拝借した車のようだ。
愛原:「んん?」
新潟西港の中央埠頭は、誰でも出入りできるわけではない。
国際旅客ターミナルへ続く道の入口から先は、港湾道路に指定されており、一般車の進入は禁止となっている。
私が首を傾げたのは、実は事前にグーグルマップのストリートビューで、その様子を確認していた。
ストリートビューでは『一般車進入禁止』という看板が出ているだけだったのが、今は目の前にゲートが設置されていた。
ただ、急ごしらえのゲートなのだろう。
見た目は、飲酒検問のあれをもっと厳重にした感じ。
2車線ある道路を、バリケードでわざと1車線に狭めている。
ゲートの入口まで行くと、警察官が近づいて来た。
運転手役の善場主任の部下は、運転席の窓を開けて……。
運転手:「デイライトの者です」
部下の人はダッシュボードに掲げた許可証と、自分の身分証を見せた。
今気づいたのだが、デイライトの職員証は縦2つ折りの警察手帳に似ている。
それを見る限り、やはりこの人達はどこかの国家公務員なのだろうと推察できる。
で、さすがに私もそろそろ気づいている。
多分、この人達、JCIAとか内閣調査室辺りから出向しているのではないかと。
その中でも、特にバイオテロに特化した組織として、隠れ蓑のNPO法人デイライトが立ち上げられているのではないかと。
警察官:「お疲れ様です」
警察官は身分証を確認したり、提出された書類を確認した。
かなり、厳重な警備だ。
警察官:「デイライト関係者2名、他協力業者3名……」
私達も身分証の提示を求められた。
といっても、社員証などは無く、私と高橋は免許証。
リサは学校の学生証を提示するしかなかった。
そうして、ようやくゲートの中へと入れる。
愛原:「なかなか、警戒が厳重ですね」
善場:「普段使われていない国際線旅客ターミナルを急きょ使うことになりましたからね。昔、北朝鮮からの船が出入りしていた頃もゲートがあったんですよ」
愛原:「へえ!」
まあ、北朝鮮の船はしょうがないかな。
ヘタすりゃ工作員輸送船だったもんな。
で、今回はロシアからの船だが、ロシアもロシアで信用できない、と……。
しばらく進むと、またゲートがある。
しかし、そこは警察官や警備員がいただけで、スルーできた。
恐らくそのゲートが、かつて北朝鮮の船が出入りしていた時に使われていたものなのだろう。
愛原:「はー……」
私が感嘆したのは、ターミナルの外も広く使われていたからだ。
警察関係者の車が止まっているだけでなく、許可されたマスコミの車もあったし、恐らく帰国した乗客達を乗せる為のものと思われる観光バスも到着していた。
そして、テントがいくつか建っていて、臨時の検疫所であるようだった。
高橋:「まるでコロナ第一波の時、バイオハザードが起きた豪華客船の港みたいですね」
愛原:「! そうか!あの光景だ!」
ダイヤモンドプリンセス号が到着した港の光景に似ている。
もちろん、バイオハザードといっても、蔓延したのは新型コロナウィルスであって、ゾンビウィルスではない。
しかし、今回は……ヘタすると……いや、やめておこう。
まだ、確信が持てない。
善場:「では、打ち合わせの通りにお願いします」
愛原:「分かりました」
既に船は湾内に入っている。
埠頭に接岸するのは、時間の問題だ。
善場:「……えっ、何ですって!?」
善場主任が現場の関係者に話し掛けた時だった。
主任の顔色が変わった。
愛原:「何かあったんですか?」
善場:「どうやら、予定を変更しなければならなくなったようです」
愛原:「と、言いますと?」
善場:「既に症状が出ている乗客が散見されるとのことです」
愛原:「は?はぁーっ!?」
高橋:「もうゾンビになってんのか!?」
善場:「それはまだ分かりません。もしかしたら、コロナの症状かもしれないのです。結局、ゾンビウィルスの初期症状は似ていますから」
高熱が出るという症状だけじゃなかったか?
あとは、全身が腐っていくので、強い痒みが発生したりする。
『腕(胸)の腫れ物、掻き毟ったら、肉が腐り落ちた』という感染者が書いた日記のフレーズは有名だ。
善場:「症状のある乗客は、船内の客室に隔離しているそうです」
愛原:「主任、もしかして、ロシア側が飛行機じゃなくて、船にしたのは……」
善場:「これが理由なのかもしれませんね。飛行機よりも船の方が隔離しやすいですから」
高橋:「それじゃ、俺達の出番無いのか?」
善場:「ちょっと待っててもらえますか?全員が症状があるわけではないそうなので、そういう乗客は降ろして検疫を受けさせるのかもしれません」
愛原:「コロナウィルスもそうですが、ゾンビウィルスでも感染無症状という場合がありますからね」
ただ、両者で違うのは、後者の場合、その理由はちゃんとした抗体を持っているからである。
私がそうらしい。
高橋は元感染者だったが、霧生市で手に入れた抗ウィルス剤、その後にワクチンを投与して事なき得ている。
前者の場合は、ただ単に無症状なだけ。
抗体があってウィルスを倒しているわけではない。
船内の感染者が新型コロナウィルスのそれなのか、あるいはゾンビウィルスのそれなのかで対応が変わって来る。
因みに、両方というのは考えられないらしい。
ゾンビウィルスの方が強く、コロナウィルスをも食べてしまうらしい。
なので、コロナ感染者がいれば、ゾンビウィルス感染者はいないということになる。
愛原:「あっ、乗ってったな」
船が着岸すると、防護服を着た関係者がぞろぞろと船内に入っていった。
リサ:「ん?」
その時、リサのスマホに着信があった。
リサ:「ヨンヒからだ」
善場:「!」
リサ:「もしもし?どうした、ヨンヒ?……うん、いま新潟。これから、バイト。……うん、そうだけど……」
段々リサの顔も強張ってきている。
ヨンヒ:「これからロシアの船を韓国BSAAが拿捕するから、離れてて」
リサ:「いや、ここ日本だよ!?」
その時、船内から銃声が聞こえてきた。
愛原:「!?」
高橋:「せ、先生!?」
愛原:「どうやら、ゾンビウィルスだったようだな……」
更に上空からはヘリコプターの音。
空がどんよりと曇っているせいでよく分からないが、恐らくBSAAのヘリだろう。
船首甲板にあると思われるヘリポートに着陸したかと思うと、そこからBSAAの軍服を着た軍人達が突入していった。
愛原:「……俺達の出番、無くね?」
高橋:「……多分、無いっスね」
愛原:「……帰ろっか?」
高橋:「帰りますか」
善場:「いや、ちょっと待ってください!まだ、出番はあります!」
ホテルの会議室で打ち合わせをした後、私達は車に乗って新潟西港へ向かった。
車には善場主任だけでなく、主任の部下も乗っていて、運転手役を務めている。
車は黒の高級ミニバン。
新潟ナンバーで、しかもレンタカーではない。
どうやら、デイライトは新潟にも事務所を持っていて、そこから拝借した車のようだ。
愛原:「んん?」
新潟西港の中央埠頭は、誰でも出入りできるわけではない。
国際旅客ターミナルへ続く道の入口から先は、港湾道路に指定されており、一般車の進入は禁止となっている。
私が首を傾げたのは、実は事前にグーグルマップのストリートビューで、その様子を確認していた。
ストリートビューでは『一般車進入禁止』という看板が出ているだけだったのが、今は目の前にゲートが設置されていた。
ただ、急ごしらえのゲートなのだろう。
見た目は、飲酒検問のあれをもっと厳重にした感じ。
2車線ある道路を、バリケードでわざと1車線に狭めている。
ゲートの入口まで行くと、警察官が近づいて来た。
運転手役の善場主任の部下は、運転席の窓を開けて……。
運転手:「デイライトの者です」
部下の人はダッシュボードに掲げた許可証と、自分の身分証を見せた。
今気づいたのだが、デイライトの職員証は縦2つ折りの警察手帳に似ている。
それを見る限り、やはりこの人達はどこかの国家公務員なのだろうと推察できる。
で、さすがに私もそろそろ気づいている。
多分、この人達、JCIAとか内閣調査室辺りから出向しているのではないかと。
その中でも、特にバイオテロに特化した組織として、隠れ蓑のNPO法人デイライトが立ち上げられているのではないかと。
警察官:「お疲れ様です」
警察官は身分証を確認したり、提出された書類を確認した。
かなり、厳重な警備だ。
警察官:「デイライト関係者2名、他協力業者3名……」
私達も身分証の提示を求められた。
といっても、社員証などは無く、私と高橋は免許証。
リサは学校の学生証を提示するしかなかった。
そうして、ようやくゲートの中へと入れる。
愛原:「なかなか、警戒が厳重ですね」
善場:「普段使われていない国際線旅客ターミナルを急きょ使うことになりましたからね。昔、北朝鮮からの船が出入りしていた頃もゲートがあったんですよ」
愛原:「へえ!」
まあ、北朝鮮の船はしょうがないかな。
ヘタすりゃ工作員輸送船だったもんな。
で、今回はロシアからの船だが、ロシアもロシアで信用できない、と……。
しばらく進むと、またゲートがある。
しかし、そこは警察官や警備員がいただけで、スルーできた。
恐らくそのゲートが、かつて北朝鮮の船が出入りしていた時に使われていたものなのだろう。
愛原:「はー……」
私が感嘆したのは、ターミナルの外も広く使われていたからだ。
警察関係者の車が止まっているだけでなく、許可されたマスコミの車もあったし、恐らく帰国した乗客達を乗せる為のものと思われる観光バスも到着していた。
そして、テントがいくつか建っていて、臨時の検疫所であるようだった。
高橋:「まるでコロナ第一波の時、バイオハザードが起きた豪華客船の港みたいですね」
愛原:「! そうか!あの光景だ!」
ダイヤモンドプリンセス号が到着した港の光景に似ている。
もちろん、バイオハザードといっても、蔓延したのは新型コロナウィルスであって、ゾンビウィルスではない。
しかし、今回は……ヘタすると……いや、やめておこう。
まだ、確信が持てない。
善場:「では、打ち合わせの通りにお願いします」
愛原:「分かりました」
既に船は湾内に入っている。
埠頭に接岸するのは、時間の問題だ。
善場:「……えっ、何ですって!?」
善場主任が現場の関係者に話し掛けた時だった。
主任の顔色が変わった。
愛原:「何かあったんですか?」
善場:「どうやら、予定を変更しなければならなくなったようです」
愛原:「と、言いますと?」
善場:「既に症状が出ている乗客が散見されるとのことです」
愛原:「は?はぁーっ!?」
高橋:「もうゾンビになってんのか!?」
善場:「それはまだ分かりません。もしかしたら、コロナの症状かもしれないのです。結局、ゾンビウィルスの初期症状は似ていますから」
高熱が出るという症状だけじゃなかったか?
あとは、全身が腐っていくので、強い痒みが発生したりする。
『腕(胸)の腫れ物、掻き毟ったら、肉が腐り落ちた』という感染者が書いた日記のフレーズは有名だ。
善場:「症状のある乗客は、船内の客室に隔離しているそうです」
愛原:「主任、もしかして、ロシア側が飛行機じゃなくて、船にしたのは……」
善場:「これが理由なのかもしれませんね。飛行機よりも船の方が隔離しやすいですから」
高橋:「それじゃ、俺達の出番無いのか?」
善場:「ちょっと待っててもらえますか?全員が症状があるわけではないそうなので、そういう乗客は降ろして検疫を受けさせるのかもしれません」
愛原:「コロナウィルスもそうですが、ゾンビウィルスでも感染無症状という場合がありますからね」
ただ、両者で違うのは、後者の場合、その理由はちゃんとした抗体を持っているからである。
私がそうらしい。
高橋は元感染者だったが、霧生市で手に入れた抗ウィルス剤、その後にワクチンを投与して事なき得ている。
前者の場合は、ただ単に無症状なだけ。
抗体があってウィルスを倒しているわけではない。
船内の感染者が新型コロナウィルスのそれなのか、あるいはゾンビウィルスのそれなのかで対応が変わって来る。
因みに、両方というのは考えられないらしい。
ゾンビウィルスの方が強く、コロナウィルスをも食べてしまうらしい。
なので、コロナ感染者がいれば、ゾンビウィルス感染者はいないということになる。
愛原:「あっ、乗ってったな」
船が着岸すると、防護服を着た関係者がぞろぞろと船内に入っていった。
リサ:「ん?」
その時、リサのスマホに着信があった。
リサ:「ヨンヒからだ」
善場:「!」
リサ:「もしもし?どうした、ヨンヒ?……うん、いま新潟。これから、バイト。……うん、そうだけど……」
段々リサの顔も強張ってきている。
ヨンヒ:「これからロシアの船を韓国BSAAが拿捕するから、離れてて」
リサ:「いや、ここ日本だよ!?」
その時、船内から銃声が聞こえてきた。
愛原:「!?」
高橋:「せ、先生!?」
愛原:「どうやら、ゾンビウィルスだったようだな……」
更に上空からはヘリコプターの音。
空がどんよりと曇っているせいでよく分からないが、恐らくBSAAのヘリだろう。
船首甲板にあると思われるヘリポートに着陸したかと思うと、そこからBSAAの軍服を着た軍人達が突入していった。
愛原:「……俺達の出番、無くね?」
高橋:「……多分、無いっスね」
愛原:「……帰ろっか?」
高橋:「帰りますか」
善場:「いや、ちょっと待ってください!まだ、出番はあります!」