報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「一触即発」

2022-09-22 20:12:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月16日11:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター]

 地上部は国家公務員用の研修施設となっているが、地下は厚生労働省やBSAA極東支部日本地区本部が運営している研究施設である。
 日本国内で捕えられたBOWやクリーチャーも、ここで飼育・研究されている。
 上野姉妹の母であり、人間だった頃のリサの妹かもしれない上野利恵もここに収容されている。
 上野利恵も日本アンブレラにより、Gウィルスと特異菌の混合薬を投与されたことで、リサとはまた違う鬼女となった。
 リサよりも更に人に近くなり、人間との交配も可能で、娘を2人生んでいる。
 但し、満月の夜に理性を失って人の血肉を求める鬼と化すという点もリサと違う(リサはどちらかというと、生理の周期や空腹感の強弱によって変わる)。

 上野利恵:「この度は、大変申し訳ございませんでした。あのような事が2度と無いよう、固く固く自制致します」
 リサ:「ウゥウ……!キサマ、どのツラ下げて……!!」
 愛原:「リサ、やめろと言ってるだろ?」

 仮釈放が行われるに当たり、人間同様、釈放式が行われる。
 ここの施設の所長やBSAAの日本地区本部長、そしてデイライトからは善場主任と東京事務所の副所長が参加していた。
 リサは私と高橋に挟まれ、抑え込まれている。
 第1形態に変化して、両手の爪を鋭く長く伸ばしていた。
 マスクを着けているから分からないが、口元からも牙が覗いているだろう。
 額からは一本角が生え、両耳も長く尖っている。
 怒りで紅潮している為か、まるで赤鬼のようである。

 研究施設所長:「……己の体質・性質をよく理解し、猛省に猛省を重ね……」

 所長が訓示を行う。

 高橋:「ムショの釈放式と似てますね」
 愛原:「シッ!」

 それにしても、どうしてリサを参加させるのだろう?
 こうして私達が抑えていないと、リサは今にも利恵に飛び掛かりそうだ。
 一応、腰縄と口枷も用意しているが、これではどちらが収容者か分からない。
 しばらくして、釈放式が終了した。

 リサ:「わたしは許さないからな!待て!逃げるな!!」
 愛原:「リサ、やめろ!!」
 高橋:「先生、このバカにマグナム撃ち込んでいいっスか!?」
 善場:「発砲は許可しません。もしも発砲したら、高橋助手を現行犯で拘束します」
 高橋:「姉ちゃん!?俺のマグナムは、こういうバカな化け物に撃ち込む為に許可されてるんだろ!?」
 善場:「所持は許可しますが、現段階においての発砲は許可しません」

 上野利恵は退室時に、もう一度深々と私達に向かって御辞儀をした。
 そして、娘達や守衛、BSAA隊員に護衛されるかのように退室して行った。

 リサ:「あんなヤツ、死刑にすればいいんだ!!」
 高橋:「俺もそう思う。被害者が先生だから、禁固刑からの仮釈放ってのはさすがに甘すぎるんじゃないか?」

 高橋は案外冷静だが、リサがいるから却って冷静になれているのだろう。
 もしもリサがいなかったら、高橋が暴れていたかもしれない。

 高橋:「どうなんだ、姉ちゃん?」
 善場:「……私も同意見ではあります。ただ、彼女にはまだ利用価値があると、上は思っているのです。Gウィルスと特異菌の混合薬を投与されたBOWは、あの上野利恵ただ1人だけです。彼女が今後辿る変質のデータを取りたい、というのが上の本音のようです。もちろん、彼女に反省の態度が無かったり、既に理性の無い化け物と化してしまった場合はこの限りではありませんが」
 愛原:「でしたら、尚更この施設にいた方が良いのでは?」
 善場:「彼女が独り身であれば、そうしたでしょう。しかし、彼女には娘達がいます。ついでに、娘達のデータも取りたいのでしょうね。しかし、何の罪も無い娘達もここに収容するわけには参りません。彼女達はリサと違って、人間の戸籍を最初から持っています。つまり、日本国憲法に定められた基本的人権の所有者達です。日本政府が、それを率先して破るような真似はできません」

 リサにはそれが無かったので、扱いがまた違ったのだ。
 因みに今は、仮の戸籍を与えられている。
 人間の仮釈放者は保護司との面談を定期的に義務付けられているが、そうではない利恵は違う。
 BSAAが定期的に向かうので、変質のデータを取らせろというものだ。
 見た感じ、特に変質しているようには見えないのだが……。

 愛原:「政治的な理由も絡んでいるようですな。これ以上は、私達が口出しできることではなさそうだぞ、高橋?」
 高橋:「は、はい。そのようっスね……」
 善場:「御理解が早く、助かります。愛原所長方さえ良ければ、途中までお送りしますよ?」
 愛原:「そうですか。では、藤野駅までお願いできますか?」
 善場:「藤野駅ですか?分かりました」

[同日11:50.天候:晴 同市同区内 JR藤野駅→中央本線538M列車6号車内]

 私達はあのBSAAの護送車に便乗して、藤野駅まで送ってもらった。
 やはり、上野利恵は護送車の後部に乗車しているらしい。
 窓も無いような荷物スペースだと思っていたが、馬運車のそれのような小窓が付いているのが分かった。
 しかし、人間の護送車よりも家畜扱いである。
 リサは壁をブチ破らんばかりであったが、リサのような上級BOWでも壊れない構造になっているという。
 それも去ることながら、そんなことし次第、BSAAがリサを攻撃するだろうがな。
 一応、先に利恵が乗っていて、リサからは見えないようになっていた。
 上野姉妹も藤野駅で降りる。

 善場:「それでは私達は、彼女を送って行きます。所長方は、娘2人の方を頼みます」
 愛原:「分かりました」

 1本前なら直通の中央特快があったのだが、残念だ。
 その次の高尾止まりの電車に乗る事にする。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、11時50分発、普通、高尾行きです。この列車は、3つドア、6両です。……〕
〔まもなく2番線に、普通、高尾行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。この列車は、3つドア、6両です。……〕

 リサ:「先生、お腹空いた」
 愛原:「あー、ちょっと待ってくれな。高尾駅で、特快に乗り換えできる。それで神田駅まで行って、そこで昼食にしよう。それでいいか?」

 神田駅なら、この姉妹達も銀座線で帰れる。
 また、私達も近くに岩本町駅があるから、それで帰れるというわけだ。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、相模湖に停車致します〕

 やってきた電車は往路と同じ、211系の6両編成だったが、ボックスシートの無いオールロングシート車であった。
 取りあえず最後尾に乗り込み、それぞれ空いている席に座った。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 大きなエアー音がして、ドアが閉まる。
 そして、電車はガクンと大きく揺れて発車した。
 このアナログな揺れ方も、昭和末期或いは平成初期に製造された車両だと分かる。

〔「次は相模湖、相模湖です」〕

 上野凛:「あの……先輩。今日は、ありがとうございました」
 リサ:「フン……。わたしは許していない」

 リサは既に第0形態に戻っていたが、明らかに不機嫌だった。
 それでも私の隣に座りたがり、私にくっつくようにして座っていたのだが。
 神田駅まで、昼食がお預けになったというのも不機嫌の理由か。
 本当は高尾山にでも行きたいところだったが、リサの精神状態からして、そんな余裕は無いと分かった。
 ので、都心まで真っ直ぐ帰ることにした由。
コメント (1)
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